再生医療

 再生医療とは、生まれつき、あるいは疾病・不慮の事故・加齢に伴い、欠損・損傷・機能低下した組織や臓器を、患者の体外で培養した細胞や組織を用いて修復再生し、機能を補完する医療です。

 従来の対症療法に対し、欠損・損傷した臓器を再建させることで、疾病や損傷への根治療法が可能となり、患者や高齢者、障害者の生活の質(QOL:Quality of  life)が飛躍的に向上し、社会復帰と生活自立が可能となるため、医療分野にとどまらず、産業構造、社会構造の変化をもたらすことが期待されています。

 厚生労働省は再生医療について次のように定義しています。

 1 患者の体外で人工的に培養した幹細胞等を、患者の体内に移植等することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療。

 2 ないしは、患者の体外において幹細胞等から人工的に構築した組織を、患者の体内に移植等することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療

 

 従来の医療では、生まれつき、あるいは加齢や疾病、不慮の事故で、組織や内臓の機能を失った場合それを補てんする対症療法を主としてきました。ひとたび発病、受傷すると、対応する治療法はあるものの闘病生活は長期間に及び生涯にわたって投薬治療や人工透析、ペースメーカー、人工関節などの医療機器、医療器材に依存せざるを得ず、患者の生活の質と自立が制限されてきました。 闘病が長期化することにより、患者本人や看護・介護をする家族は離職をせざるを得ない状況となることもあり、経済的負担、精神的負担も社会問題化しています。医療費も増加の一途をたどり、看護業界や介護業界の人材不足も引き起こしています。根治療法となりうる臓器移植は、拒絶反応や感染症のリスクがあるため、術後に免疫抑制剤の内服が必要となるうえ、ドナーが絶対的に不足している現状から、従来の医療にかわる標準的治療としては未だ確立していません。

 再生医療は、細胞や組織を再生し失われた人体機能そのものを回復させるという、従来の医療とは全く異なるアプローチから根治療法を目指しています。根治療法の確立によって、長期間に及ぶ内服治療や医療器材の使用も必要がなくなり、闘病生活が短縮化され、患者の社会復帰が容易になります。同時にこれまで治療法のなかった、脊髄損傷や脳梗塞後の麻痺の改善、難病の治療法の確立、加齢に伴い変形する関節や骨格、臓器の機能回復も見込まれます。従来の闘病生活と比べ、患者や高齢者、障がい者のQOLが格段に向上し、日常生活の自立が可能となり、家族の看護・介護負担も軽減されます。

 再生医療は、人間の体に眠っているこの力を引き出すもの しかし、それは科学の進歩だけがもたらすものではない。時代を超えて語り継がれる神話のなかにも、現代人が忘れ去った、人体再生の神秘が伝承されてきた。人間の霊的な側面に目を向けたとき、医学は唯物論の限界を乗り越え、新たな可能性が開けてくる。宗教と科学を融合させてこそ、人体の神秘の力を引き出す未来の医療が現実のものとなる。

 

再生医療のメリット

 ◎主に自分自身の細胞を使うため、拒絶反応が起きない。

 ◎自分自身の細胞が持つ再生力を活用する。

 

 再生医療 iPS細胞胞 の研究は進んでいるが、あらためて考えてみたい。

 急速に進歩を続ける再生医療。この分野では、世界の中でも特に日本人研究者たちの活躍が目立つ。このほど開発された新型万能細胞「TiPS細胞」もその一つだ。一方、アメリカでは、失った体の一部を再生させる「魔法の粉」が注目を集めている。細胞に眠る未知の可能性を引き出すことで、医学の進歩はどこまで進むのだろうか。

 エジプトの古代神話では、エジプト全土を支配したオシリスの死後、王位継承を巡り、オシリスの弟セトと息子ホルスが神の法廷で激しく争う様子が描かれている。あるとき、セトは木陰で眠っているホルスを襲い、彼の両目をえぐり取ってしまう。セトの追撃から身を隠しているホルスを見つけた女神ハトホルは、家畜のガゼルから乳を搾り、それを垂らしてホルスの目を再生させる。愛と癒しを象徴する女神ハトホルを崇拝して建てられたハトホル神殿は、療養施設を備えており、癒しの奇跡が起きる場所とされていた。当時、医師を兼ねていた神官たちは、この神殿で様々な秘術を執り行い、病に苦しむ人々を癒し、けがで失った体の一部を再生することさえあったという。

 神話の世界で伝えられてきた人体再生術。その秘儀がほぼ4千年を経た現代において、「再生医療」として蘇った。この分野では、新たな発見が相次ぎ、夢の人体再生が現実味を帯び始めている。

 再生医療は、病気やけがで失われた組織や臓器を再生させ、その機能を回復させることを目指している。2006年、京都大学の山中伸弥教授が、あらゆる組織や臓器の細胞に変化できるiPS細胞胞をマウスから開発したことにより、日本の再生医療研究が世界中で注目を集めるようになった。

 iPS細胞とは、普通の細胞(体細胞)に数種類の遺伝子を導入することにより、非常に多くの細胞に分化できる万能性をもった細胞 (人工多能性幹細胞)のことである。

 しかしその後、米国の研究グループが、iPS細胞胞を使って難病のマウスを治療する研究に世界で初めて成功。また、ヒトiPS細胞胞の開発でも、米国に追いつかれる結果となった。

 「このままでは豊富な資金力を持つ米国に追い抜かれ、応用技術の特許は米国に押さえられるのでは」という危機感も広がっていたが、今年7月、慶応大学の福田恵一教授らの研究グループが、iPS細胞胞の限界を乗り越える「TiPS(ティップス)細胞」を開発したと発表し、再び日本の再生医療研究が脚光を浴びている。

  iPS細胞胞・・・人工性多能性幹細胞。人間の体を構成するあらゆる細胞に変化する能力を持っている。皮膚などの細胞から作れるため、受精卵を破壊して作るES細胞に比べて倫理的な問題が少ない。

 iPS細胞胞の開発以来、皮膚や角膜から始まり、神経、心筋、肝臓、膵臓など、さまざまな臓器の細胞が再生されている。再生医療が治療と研究の両面から飛躍的に前進することが期待される。

参考

 ES細胞とは、受精卵が細胞分裂し、細胞が増えていく過程で内部にできる細胞で、さまざまな細胞に分化できる万能性をもった細胞(胚性幹細胞)で、英語の頭文字を取り、ES細胞と呼ばれる。 生体外にて、理論上すべての組織に分化する分化多能性を保ちつつ、ほぼ無限に増殖させる事ができる。

 iPS細胞もES細胞も万能性を持つため、再生医療への応用が期待されている。人の病気は、自分の細胞に異常が起きるために起きるが、もし異常が起きても、これらの万能細胞を利用して、新しい細胞に置き換えたならば、元通りのからだに治すことができる。

 人間が本来持っている能力を引き出す再生医療が発達すれば、やがて臓器移植が必要なくなる時代がやってくる。

 再生医療では、人間の細胞を使うが、その細胞の種類や作られ方に関して、さまざまな議論が起きている。

 再生医療に使う細胞には、成人の体から採る体性幹細胞と、受精卵を人為的に操作して作り出すES細胞がある。

 体性幹細胞には、拒否反応の心配はないが、限られた種類の細胞にしか変化しないという限界がある。一方、ES細胞に関しては、結果的に受精卵そのものを破壊することになるため、倫理的な是非が問題になるうえ、大量に培養・増殖できるものの移植後に拒否反応が起きやすい難点がある。

 こうした問題を解決するものとして研究されているのが、「クローン胚」を使ったES細胞だ。クローン胚はクローン技術を応用したもので、卵子から核を取り除き、代わりに他の人の遺伝子情報が入っている核を移植して作る。これを培養してES細胞を作り、核を提供した人に移植すれば、遺伝情報が同じになるため、拒否反応が避けられるというわけだ。しかも、大量に作り出すことも可能。

 しかしこのクローン胚は、そのまま母胎に戻せばクローン人間が生まれるため、その是非を巡って議論が起きてきた。

 そうしたなか、政府の生命倫理専門調査会(薬師寺泰蔵会長)は、このほど基礎研究に限ってクローン胚を容認することを決めた。同調査会は、クローン人間が生み出されることを事前に防止する枠組みが整備されるまでは、研究を解禁しないとしているが、クローン人間つくりに歯止めがかけられるのかなど懸念も強い。

 霊的真実から言えば、人間の肉体には人間の魂が宿っているが、クローン技術で作られた人間は、通常の生殖過程を経ないために、動物霊などの低級霊が宿る可能性があるとされる。

 

 再生医療の具現化に向けて、平成25年11月に再生医療等安全性確保法と、薬事法改正法(医薬品医療機器等法)が制定されました。  旧薬事法の下では、日本の再生医療開発における薬事承認は3件のみにとどまり、海外特に欧米の開発競争に立ち遅れていましたが、新薬事法では再生医療の実用化に向け、従来の「医薬品」「医療機器」とは別に新たに「再生医療等製品」というカテゴリーを設け、一定数の有効データが得られれば販売認可が下りるよう改正しました。再生医療等安全性確保法と薬事法改正法は、平成26年11月25日に施行され、最短2年で再生医療の実用化が可能となりました。  

 

再生医療の将来性

 経済産業省は、再生医療産業の世界市場規模は2012年時点の1000億円程度に対し、2020年に1兆円、2030年には約12兆円に達するという試算を発表しています。国内市場規模では、2020年には950億円、2030年に約1兆円に達すると見込まれ、細胞の培地や、低温輸送、分析機器など再生医療周辺産業においては、世界市場規模で2030年に5.2兆円、国内市場規模で5500億円に拡大する見通しとなっています。