スピリチュアルケア

 スピリチュアルケアとは、人々のスピリチュアルペインを和らげるケアを指す。

 近代ホスピス運動の歴史のなかで、末期がん患者の抱える痛みには、「身体的な痛み」のほかに、不安や孤独感、うつ状態などの「精神的痛み」、仕事上や経済的な不安、家族への心配などの「社会的な痛み」のほかに、四つ目の痛み、スピリチュアルペインがあるとされ、これはWHO(世界保健機関)の緩和ケア(身体と心の両面の痛みを和らげるケア)の定義でも採用されている。

 このスピリチュアルペインとは、「私だけがなぜこんな病気になるのか?」という不公平感や「私の人生は何も価値がなかった」という無価値感、また「この苦しみをどうしたらいいのか」という困惑感など、魂の奥底から生じる痛みのことだ。また、あの世や宗教を信じていても、「神仏は私を見捨てられた」「罰が当たったのかもしれない」などと感じることも含まれる。

 参考

 スピリチュアルケアは、この痛みを対象として、主として欧米において、キリスト教など特定の宗教・信仰に限定されないケアを指すものとして生まれた。ただ、患者が希望すれば、深い宗教的な話に移ることもある。その際、仏教的視点で行なわれるものを『仏教的スピリチュアルケア』と呼ぶ。

 交通事故や過労死などで自分や愛する人が傷つく場合、「なぜ私が?」「なぜ今?」という深い苦しみが生じます。

 科学的には、「運転手の前方不注意」「働きすぎ」など、原因は説明できます。しかしそれは何の慰めにもなりません。この「人生の意味が見つからない」という苦しみがスピリチュアルペインと言えます。この痛みに答えるには、科学も医学もほとんど無力で、宗教や哲学が必要です。

 

転生輪廻を考える仏教では2つの答え方があります

 一つは「原因説」。「以前、自分がそれに相当する害をこの世に及ぼしたから、因果が巡ってきた」という考えです。科学的には証明不能でしょうが、解釈によっては謙虚に自分の言動を控えることにもなり、加害者への許しの気持ちも出てきます。

 もう一つは「目的説」。「ここから何を学びとらなければいけないのか」と考える方法です。

 スピリチュアルケアとは、考え方を変えることによって、意識や心の癒しを目指すケアと言えます。