「身分制度」を打ち破り、自由参入を

 医療や農業、教育などの職業集団が一つの特権階級となり、江戸時代に負けない「身分制」をかたちづくっている。

 農業は、いまだに農家に生まれなければ、簡単には農業に携われない枠組みを維持している。株式会社による農業生産法人への出資を通じて農地を持つことはできるが、農業生産法人の役員が実際に農業に従事していないといけないなどさまざまな制約が課せられている。

 教育も特に大学では政府が参入を阻み、競争が乏しい。「教育は国家が行うべきもの」という枠組みを明治以来、今も守っているためだ。保育分野で数万人単位にのぼる「待機児童」が存在するのも、民間企業の新規参入を積極的に認めていないためです。

 この「身分差別」を打ち破って、自由に参入できるようにすべきです。株式会社が病院や農業をやっても何の問題もない。塾が学校として認められても構わない。オランダでは町内会でも教会でも学校設立をしてもいいのだという。高齢者が退職後に協力して学校をつくるケースがあってもよい。

 同時に単なる保護のためだけの補助金はやめる(利用者に対するバウチャー方式の補助金はあり得る)。それでまかなえない部分は、親がプラスして出す方式である。

 そうすれば新たな起業が爆発的に増え、高齢者にとって、正社員もそうだが、パートタイムなども含め、仕事がたくさん生まれるでしょう。

 ハイエクは、それぞれの人がその能力を発揮して世の中に貢献することの価値について、『自由の価値――自由の条件』で、こう述べている。

 「事物なり人間自身の能力なりのより上手な利用方法を発見することは、一個人がその仲間の福祉のためにわれわれの社会でなしうる最大の貢献の一つであり、またそのために最大限の機会を与えることが自由社会を他の社会よりもはるかに豊かにするにちがいない」

 「最大限の機会を与える」ことが「ジョブ・クリエーション」です。これが二宮尊徳精神の「勤」に基づく「生涯現役社会」の土台となるでしよう。

 「セルフヘルプの精神」に基づいて、老後の生活を政府に依存するのではなく、個人や民間企業の力、家族の助け合いで生計を立てることができる、充実した「生涯現役社会」を目指していくことです。

 社会保障負担を考えるとき、「健康面における老後」の始まりを遅らせるだけでなく、高齢者雇用を創り出すことで「社会的な老後」の始まりを遅らせることも大切になってくる。高齢者が元気で働くことで自分の存在理由や生きがいを見出し、それによって健康が増進する効果も期待できる。高齢者の健康問題と雇用を両輪で考えていくべきでしょう。

 国民の意識としても、重税を前提とする「老後の生活は国が何とかしてくれる」という考え方から、「老後は自分や家族、地域で守る」という、自助努力型に切り替えていく時期でしょう。

 雇用に関する規制を緩和して労働市場の流動化を進め、転職をしやすくする環境をつくることで、長期的にはチャンスの平等が生まれます。

 転職が当然の社会になれば、各自の年齢や経験、体力や技能に応じた職場への道も開けるでしょう。

 高齢者雇用のパイをいかに増やしていくかを考えるべきです。

 「生涯現役社会」の実現は、経済政策、景気回復策とセットで進め、若者も高齢者も雇用を増やしていくことが大切です。

幸福実現党の政策が実現すれば、新たな基幹産業を創り出すことで、若者にとっても魅力的な職場が増えていくことが期待されます。

 ある試算によれば、2010年は高齢者1人に対し生産人口2.77人ですが、2031年には1.83人の生産人口で1人の高齢者の年金を負担することとなるそうです。そのために、消費税を上げようとしているわけですが、消費税増税は景気を冷え込ませ、そのしわ寄せは全世代に及びます。