都市の未来と「垂直都市ビル」構想
日本のように国土が狭く、さらに数少ない平野部に人口が集中している国(国土の約25%に人口の9割が住んでいる)にとって、「垂直都市ビル」というのは非常に合理的な施設です。
1 職住分離型→職住接近型
日本は近代化を図る過程で、都市機能を分化し、用途を純化していきました。まず、都市がスプロール化(無秩序に拡大していく現象)し、その結果ドーナツ化現象が起きた結果、首都圏では、毎日「民族大移動」が繰り返されています。この移動にかかる時間は平均2時間を超え、生涯計算をすると、合計4年間以上通勤・通学に費やすことになります。サラリーマンは、友人、知人、家族とゆっくり過ごす時間や、自己啓発の時間を奪われているのです。このように、「水平拡張」していった都市構造を見直す必要があります。そのカギとなるのが「垂直都市ビル」です。「垂直都市ビル」を建設してくことは「職住分離型→職住接近型」へと都市構造を変えていくことになります。
この様々な機能を持ったビルは、「住み、かつ働く街」であり、ライフ&ワークスタイルも全く違ったものになり、女性や高齢者の社会参加も容易になり、子育てもしやすい環境が実現されます。
「垂直都市ビル」を建設してくことは「職住分離型→職住接近型」へと都市構造を変えていくことになります。
2 インフラの更新
日本のインフラなどの公共施設の多くが、高度成長期、特に東京五輪前後の時期に建設が進められました。その多くが、これから耐用年数と言われる50年を超え、建て替えの時期を迎えようとしています。
この他にも、下水道の老朽化による道路の陥没が頻発しているなど、状況はかなり切迫しています。
日本の都市は、今までの延長線上のその場しのぎの工事ではなく、将来を見据えて投資していかねばなりません。
3 防災対策
垂直都市ビルは災害時にも非常に強いのです。
現在、日本にはたくさんの木造住宅密集地域(木密地域)があります。東京においても、山手線の外周部を中心に広範に分布しています。
この木密地域は道路や公園等の都市基盤が不十分なことに加え、老朽化した木造建築物が多いことから、「首都直下地震による東京の被害想定」(2006年東京都防災会議)においても、倒壊・火災など大きな被害が想定されています。
これらの地域の建物を鉄筋コンクリート仕様などに建て替え、不燃化に膨大な予算を費やすよりも、効率的でかつ防災性も高い街づくり(=垂直都市ビル)を考えるべきです。
近年になって、前出のような高層の複合型ビルが建てられてきていますが、依然として日本の都市は空中を活用できていません。
高層ビルを建てれば良いというわけではありません。しかし、今はせっかくの土地を無秩序に利用し、閉塞感が漂っています。
「垂直都市ビル」は現代における最先端技術の結晶であり、適切に建てることによって、新しい概念や文化が生まれてきます。