洪水伝説

聖書以外にも見られる洪水伝説  

 洪水とノアの箱舟のエピソードは聖書の物語として有名ですが、大昔に神が洪水を起こして生き物を滅ぼしたという物語は聖書以外にも見られます。

 各地に残る洪水伝説は、はるか昔に、実際起きた事件をモデルにしてつくられたものではなかったかとされている。そして、数えきれないほどの文献に記された大洪水の伝説は、すべて、同一事件についての描写ではなかったかとも考えられるのである。また、それを裏付けるように、近年の発掘によって、これらの古代都市に過去に大洪水に見舞われた痕跡があることが明らかにされつつあるのです。

 

シュメール人の洪水伝説

 5つの都市に天から神が降臨し、5つの都市があった。神はヒトを神に代わって労働をするものとして創造した。しかし、人々は後に神の意にそぐわぬような振る舞いをするようになった。そこで、最高神エンリルや、その父である天空神アヌはヒトを滅ぼすことを決定、誓われた。その神々の決定を知ってしまった知恵神・エンキは、「永遠の生命」という意味を持つ神官にして王でもあったジウスドゥラ王に、こっそりと大洪水が起こることを告げ、巨大な舟をつくって洪水を逃れるようにと啓示した。やがて嵐がやって来て、7日7晩が過ぎた。嵐の後に、太陽の神がやって来て、天と地に光を放った。洪水が引いた後、ジウスドゥラは船を降りて、神々に、牡牛と羊を生贄として捧げた。洪水を起こす決定をした天空神と、大気神は、ジウスドゥラに「永遠の生命」を与え、海の彼方、東方のディルムン(地名でバーレーン付近か)に彼を住まわせた。

 この「大洪水」のストーリーは、ゼカリア・シッチンに言わせれば、「氷河期が終わって、南極の氷が溶けたときの話」ということになる。人類はほとんど絶滅したが、一部の人類が生き残って、新しい時代を作った。それが、現代のわれわれにつながっている。このとき、「人類を創成した宇宙人」たちは、大洪水になった地球を見捨てて、彼らの母星・ニビルへと帰っていったという。

 

ギルガメッシュ叙事詩の洪水伝説 

 古代メソポタミアには、「ギルガメッシュ」という叙事詩がある。

 シュメール人の洪水伝説は、例の楔形文字で残された粘土板が紛失してしまった関係で不完全なものであるという。それを継承した形になっているのが アッカド語で記された「ギルガメッシュ叙事詩」の洪水伝説の一節だという。  

 それによると、神々の一人、天空の神エンリルが、増え過ぎた人間たちの騒ぎ立てる音で、ついに不眠症になってしまったところから原因が始まる。苛立ちを覚えたエンリルは、様々な天変地異をもたらして人間たちに反省を促そうとしたが、人間は少しも改める様子がなく彼らの騒ぎ立てる騒音は、ますますひどくなる一方であった。

 とうとう頭に来たエンリルは、大洪水を起こして、劇的にすべてを始末してしまおうと考えた。計画は、成功しそうに見えたが、寸前のところで出産の女神イシュタルは、絶望のあまり泣き出し、知恵の神エアは、好意を持った一部の人間に箱舟のつくり方を教えて、様々な動物とともに大洪水から救ったのであった。こうして、人間は、繁殖と知恵の神の計らいで辛くも滅ぼされそうになったところを救われたのである。

 すなわち、神々は大洪水を起こす事を企んだ。そのような中、エア神は大洪水がやって来るという秘密を漏らした。主人公ギルガメシュが出会ったウトナピシュティムという人物は、「不死の人」という意味を持つ。ウトナピシュティムは船をつくって、その船に家族、親類、動物たちを乗り込ませた。やがて嵐がやって来た。洪水となり、その洪水は凄まじい猛威で、神々さえも震え上がらせるものであった。7日目に大洪水が引いた。船はニムシュの山に漂着した。最初に鳩を放ったが鳩は船に戻って来た。次に燕を船から放ったが燕も戻って来た。三番目に鴉(からす)をはなったところ、鴉は戻って来なかったので、洪水が引いたことを悟った。ウトナピシュティムは神々に生贄を捧げた。その生贄の匂いによって最高神エンリルは生き残った人間が居る事を知り、立腹したが、エア神がとりなした。最高神エンリルは、ウトナピシュティムとその妻を神々のようにし、はるか遠くの河口に住むよう命じた。

 この叙事詩「ギルガメッシュ」は、紀元前3千年頃にメソポタミアで書かれたものとされ、おそらく世界最古のものである。つまり、旧約聖書が書かれる2千年以上も前に存在していたことになる。その後、この叙事詩は、何世紀もの間に中近東の至る所で書き写されていった。そのあらましは、形を少しずつ変え異なってはいるが、一様に大洪水の伝説の形で記されている。したがって、古代オリエントの文献にいろいろある大洪水にまつわる伝説は、すべて、この話を起源にしているとみてよい。

 旧約聖書の場合は、エホバ神であるが、「ギルガメッシュ」の叙事詩では、多くの神々が登場してくる。おそらく、イスラエル人が紀元前2千年から紀元前1千年にわたり、近東の地を放浪する過程でこの話を吸収し、自分たちの世界観、価値観に当てはまるようにアレンジしていったのだと思われる。こうして、旧約聖書のノアの洪水伝説が出来上がっていったのでしょう。

 したがって、オリジナルという点から見れば、はるか後になって書かれた旧約聖書の話の方が二番煎じであることは否応のない事実なのです。

 そのほかにも、ギリシア神話や古代インドの神話など、古い文明がもつ神話や伝承に洪水のエピソードが語られています。

 これらの事実から、各地に残る洪水伝説は、はるか昔に実際起きた事件をモデルにしてつくられたものではなかったかと結論づけられる。そして、数えきれないほどの文献に記された大洪水の伝説は、すべて、同一事件についての描写ではなかったかとも考えられる。また、それを裏付けるように、近年の発掘によって、これらの古代都市に過去に大洪水に見舞われた痕跡があることが明らかにされつつあるのです。

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