入管難民法改正 外国人労働者の受け入れを拡大

出入国管理・難民認定法(入管難民法)改正

 2018年12月、入管難民法が改正、可決、成立した。外国人労働者の受け入れ拡大に大きくかじを切ることになる。 

 これまで、日系人、日本人の配偶者や、医師、弁護士、研究者など高度な資格を持った人に限定してきた事実上の「永住」範囲を拡大する大きな変化です。今回の改正は、「建設、介護、宿泊、農業など単純労働の分野で新たな在留資格を与える」ということ。つまり、「単純労働の分野で外国人がより長い間堂々と働ける」ということである。

 今まで、これらの分野で働く外国人は「技能実習」という枠組みで日本に来ていた。「日本に技術を学びに来る」制度であり、「母国に技術を持ち帰る」のが前提。最大5年で帰国させられる。しかし、受け入れた企業からは、「ちょうど熟練した頃に帰られてしまう」と、不満が相次いでいた。そこで、今回新たな在留資格が検討されてきたのです。

 厚生労働省によると、「留学」「技能実習」などの在留資格で働く外国人は、2017年10月末で127万8670人。2008年の48万6398人の2倍超と急速に増えている。

 少子高齢化のあおりで深刻化している人手不足を補うため、単純労働を含む分野まで外国人労働者の受け入れを拡大する「歴史的政策転換」である。

 改正法は2019年4月1日の施行予定で、政府は2019年度から5年間に14業種で最大34万5150人の受け入れを見込んでいる。

 安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は採らない」と繰り返し表明しているが、事実上の移民受け入れに転換と考えられる。

これまで、日本は、いわゆる単純労働に当たると見られる業種については外国人の就労を認めてこなかった。技能実習生などの「便法」によって、事実上単純労働力を受け入れてきたが、実習生が失踪してより割の良い業種で不法就労するなど、問題が顕在化している。一方で、人手不足は一段と深刻化しており、外国人労働者「解禁」を求める声も強い。そのような中で、政府が打ち出したのが在留資格の新設なのです。

 安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は採らない」と繰り返し表明しているが、事実上の移民受け入れに転換と考えられる。

 これまで、日本は、いわゆる単純労働に当たると見られる業種については外国人の就労を認めてこなかった。技能実習生などの「便法」によって、事実上単純労働力を受け入れてきたが、実習生が失踪してより割の良い業種で不法就労するなど、問題が顕在化している。一方で、人手不足は一段と深刻化しており、外国人労働者「解禁」を求める声も強い。そのような中で、政府が打ち出したのが在留資格の新設なのです。

 2018年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」、いわゆる「骨太の方針」では、「新たな外国人材の受け入れ」として以下のような文章が書きこまれた。

 「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある」

 「このため、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する」

 「また、外国人留学生の国内での就職を更に円滑化するなど、従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組む」

参考

 法改正には2つの在留資格の新設を盛り込みました。

特定技能1号

 「相当程度の知識または経験を必要とする技能」

 一定の知識・経験を要する業務に就く人材を対象に、日本語試験や簡単な技能試験に合格した外国人に、最長5年の在留を認めるもの。

 3年間の「技能実習」を受けた場合は、試験なしでこの資格を取得できる。

 「技能実習」の期間は最大で5年なので、あわせて最大10年間日本で働けるわけである。

 春から秋に仕事が集中する農業のような業種では、仕事がない季節に一時帰国し、就労期間のみ算入する運用も認められる。

対象

 1.介護業 2.ビルクリーニング業 3.農業 4.漁業 5.飲食料品製造業 6.外食業 7.素形材産業  8.産業機械製造業 9.電気・電子情報関連産業 10.建設業 11.造船・舶用工業 12.自動車整備業 13.航空業 14.宿泊業 の14業種。

 対象14業種は所管省庁からの希望がベース。コンビニエンスストアなど受け入れを望む業界は他にもあり、政府は対象業種が将来的に拡大していく可能性を認めている。

 コンビニエンスストアなど、今でも外国人留学生アルバイトを大量に雇用している業界からも希望は出されているが、小売りにまで対象を広げれば、ほぼ全業種に広がってしまう。外国人労働者に「単純労働」を全面解禁することになる。

 政府が外国人労働者の全面解禁に事実上踏み切る背景には、言うまでもなく深刻な人手不足があるからです。

 政府が導入を目指している新たな在留資格「特定技能」の対象14業種のうち、今後外国人の受け入れ数が最も多くなるとみられるのが「介護」です。

 介護については、すでに、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定での受入れを行っており、2017年11月には、外国人技能実習制度の対象に「介護」が加わりました。それでも、介護分野の人手不足は深刻です。厚生労働省調査によれば、約6割の事業所が人手が足りないと回答しています。

特定技能2号

 「熟練した技能」

 熟練した技能が必要な業務に就く人材と認められた外国人に認め、在留期間の更新を可能にするというもの。

 1号よりも難しい日本語と技能・技術の試験に合格した外国人労働者は、1~5年の在留期間を何度でも更新できる。もちろん、定期的な審査で問題があれば帰国させられるが、永住が事実上可能となった。配偶者や子どもを母国から呼び寄せて暮らすこともできる。

対象

 当面、建設業と造船業の2業種に限られる見通し。

 熟練技能者として認定する「特定技能2号」については、様子見の業界が多く、制度開始から当面は事実上の凍結となる見通しである。

 ここで、資格を取得するには、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度」の日本語能力も必要。日本語能力については、各業種で活用できる共通テストを外務省と国際交流基金が準備中。技能試験に関しては、自動車整備業のように「筆記と実技で自動車整備士3級相当の技能を確認する」(国土交通省)と定まっている業種もある。ただ、外食業や宿泊業での接客など資格試験のない分野は、いまだ手探り状態である。
 

中途半端な「移民政策」が招く混乱

 ただ、政府はあくまでも「これは移民政策ではない」と言い張っています。

 人手不足解消のみを目的とした場当たり的な制度にするなら、さまざまな矛盾が生じ、問題が噴出する可能性があります。

 どのような問題が予想されるのでしょうか。

参考

不安定な要素が多く、外国人労働者の人生を狂わせる

 国連などの国際機関では、移民を「1年以上外国で暮らす人」と定義しますが、これですと留学生も入ってしまいます。一般的には、「外国に移住する人」を指すと考えてよいでしょう。

 そうなると、今回新設される「特定技能2号」取得者は「移民」と言えます。

 しかし、移民政策には根強い反対があります。そこで、政府は、、「移民」と区別するために、定期的に在留資格を審査・更新し、重大な違反があった場合は帰国させるとしています。

 さらに、受け入れは、人手不足が深刻化している14分野に限定し、人手不足が解消された場合、受け入れを中止するとのことです。

 今のところ、どんな審査が行われるのかは不明ですが、もし、些細なことで資格を取り消されるようなことがあれば、外国人労働者たちは不安定な立場に立たされます。たとえば、10年くらい日本で働き、家族を呼び寄せた労働者が、意図せぬトラブルに巻き込まれ、帰国を促されることになれば、その家族の人生も狂わすことになります。

 また、「人手不足が解消したので、この分野の外国人労働者の受け入れは来年から中止します」など、日本の都合でコロコロ制度を変えれば、日本で働くことを夢見ていた外国人にとっては突然ハシゴを外されることになります。

 さらには、転職を希望する場合は、特定の分野に限られます。今後、次から次へと人手不足の分野が出てくるでしょうし、10年単位では経済環境や産業構造も変化します。

 勤務先企業の倒産やリストラで、引越ししなければ同じ分野の仕事に就けないとなれば、外国人の家族にとっても負担が大きいでしょう。

 特定の分野内でしか転職ができないということは、生活の糧も選択肢も限られます。

 「特定技能2号」は、外国人が日本に永住する制度としては使い勝手が悪いと思われます。

 

矛盾を抱えた「技能実習制度」はそのまま

 最大5年の在留資格を認める「特定技能1号」の取得条件の一つとして、「技能実習」の経験が挙げられています。

 そもそも、この制度は「途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的とする」としています。国際貢献にある。一方、新しい資格は「人手不足対策」を目的としています。

 国際貢献が目的なら、母国に帰って取得した技術を生かした職に就くよう促すべきです。しかし、新制度は、最大5年の「技能実習」を終えた外国人に対し、さらに5年、できればもっと長く日本に残ってほしいというわけです。矛盾があります。

 「技能実習」が人手不足の穴埋めに使われていたことは「公然の秘密」でしたから、実態に近づいたといえなくもありませんが、あまりにも虫が良すぎます。

 実習生希望者と直接面談をし、双方が納得した上で受け入れる企業もありますが、少数派です。受け入れ企業の96.6%は、足りない人手を補おうと、管理団体に実習生の派遣と管理を委託しています。そのため、「日本語が話せると聞いていたのに全然話せない」「聞いていた条件と違う」など、行き違いも生じています。

 さらに、一部の悪質な企業では、転職もできず、帰国を促されるため退職もできない技能実習生を違法な賃金や条件で酷使するケースもあるという。

 新制度の導入を機に、矛盾と問題を抱えた技能実習制度はやめ、「雇用」であることを認めるべきでしょう。

 外国人労働者が気持ちよく働ける環境をつくらなければ、新制度も定着しない。

 

外国人労働者への教育は企業に丸投げ

 外国人労働者が戦力化するためには教育がカギです。語学教育はもちろんですが、日本でのマナーや習慣、文化にもなじんでもらう必要があります。

 新制度では、「日本語教育を含む生活支援を、受け入れ先企業などに義務付ける」としています。企業に丸投げするわけです。

 国際貢献として技能実習生を受け入れている企業の中には、外国人を家族のように扱い、育てているところもあります。このような志ある企業が増えることを望みたいところですが、実際に、そこまで外国人労働者に教育投資できる企業ばかりではありません。いずれは家族も呼び寄せてよいとなれば、さらに負担がかかります。企業も、家族への日本語教育や生活指導までは さすがに手が回らないでしょう。

 外国人労働者受け入れ拡大を目指すなら、外国人労働者の配偶者や子弟の教育、相談窓口など、自治体を含めた受け入れ体制の整備が必要となります。

 また、来日前に日常生活レベルの日本語教育、日本の生活ルールや日本の精神などを教える機関をつくることも必要となります。外国に研修施設を作っている民間企業もありますが、中小企業の人手不足に対応するならば、国家戦略として取り組む必要もあるでしょう。

 

経済界は歓迎だが「治安悪化」など懸念相次ぐ

 企業にとって、そして、出稼ぎしたい外国人にとってはうれしい知らせであるが、この法案には さまざまな批判が出ている。代表的なのは「治安の悪化」である。

 身近な生活レベルでも、ゴミの出し方など外国人のマナーを問題する声は多い。さらに「技能実習」においては、長時間労働や賃金の不払いなど、外国人を機械のように扱う事例が多い。そのため、失踪や、不法滞在も相次ぎ、社会問題化しつつある。こうした問題を抱えたまま、外国人の在留を拡大するのでしょうか。

 また、多くの外国人が事実上の永住をすれば、日本社会のあり方も大きく変わる。移民政策が犯罪や暴動などにつながった、一部欧州などの事例の二の舞になることが懸念されている。

 とはいえ、企業の人手不足は深刻です。日本の生産年齢人口減少も深刻。経営学者のドラッカーが「日本は今後、絶対に移民政策をやらなければいけなくなる」と指摘したように、外国人の力を借りなければ、この国は経済崩壊のリスクさえある。

 ここで鍵を握るのは、「外国人をどのように日本に招くか」です。

 日本が外国人活用を成功させるためには、「単なる労働力として補充する」というイメージではなく、「新たな日本人としてスカウトする」くらいの姿勢が鍵になる。

 もちろん、こうした手間をすべて企業が負担するのは難しい。ここは政府が各地に教育機関を設置し、「日本語・日本的精神やマナー・技能」を教え、人材を発掘するくらいの発想が求められる。日本の未来を左右する「第二の公教育」と位置づけ、投資するべきです。

 入管法改正を推し進める安倍政権は、治安悪化などへの懸念に対し、「あくまで移民ではない」と強調する。しかし、中途半端な受け入れではなく、長期的な視野で健全な移民政策を設計しなければ、それこそ治安悪化を招いてしまうでしょう。

 安倍首相が「いわゆる移民政策は採らない」と言い続けていることで、将来に禍根を残す懸念が生じている。移民政策は採らないということは、受け入れる外国人労働者は「いずれ本国に帰ってもらう」ことが前提ということになる。将来にわたって日本に定住し、社会を支える役割を担ってもらうという発想を「封印」している。

 

新しい日本人を育てるつもりで戦略的受け入れを

 「このままでは、働き手がいなくなる」という産業界の危機感の高まりを受け、政府は新制度を急ぎ導入しようとしています。

 確かに、人手不足対策は待ったなしですが、外国人を「人手不足の穴埋めをする労働者」としか見ていないなら、長期的に見て、日本に来る外国人はいなくなってしまいます。

 人口減少は、国家の活力を低下させます。一時的な「労働力」ではなく、日本の文化を支え、日本をともに発展させる「日本人」として受け入れるべきです。

 日本に住む上で重要なのは、血脈ではなく、日本を愛する心です。人種や言葉の壁を乗り越え、日本を愛する「日本人」を育てていく、長期的な国家戦略が必要です。

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