「マクロ経済スライド」による年金額の改定

 マクロ経済スライドとは、平成16年10月から実施された「現役世代の負担と年金給付のバランスを取れる仕組み」のことをいう。年金受給世代が増え現役世代が減少する少子高齢社会にあっても、年金制度が持続可能であるために、人口バランスの変化と一人当たりの年金額との関連づけをする年金額改定の仕組みである。

 年金額の改定において、公的年金被保険者の減少と平均余命の伸びに基づいて、 スライド調整率が設定され、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率 から控除するものです。

 これまでは、物価の変動率や賃金の水準の伸びによって年金額の実質的な価値を保つための「完全自動物価スライド制」が行なわれた。新規裁定時に1人当たりの平均賃金の上昇率に合わせ、昔の賃金に再評価率を用いて現在の水準に直していた(賃金スライド)。

 また、毎年度物価の変動によって年金額を改定(物価スライド)してきた。

 平成16年の年金制度改正によって、平成17年4月に、財政均衡期間にわたり年金財政の均衡を保つことができないと見込まれる場合に、給付水準を自動的に調整する仕組みであるマクロ経済スライドを導入することとしました。

 今後の年金額改定は、物価変動のほか、被保険者数(年金を支える力)の減少・平均寿命の伸びも反映させ、年金額の調整を行っている期間は年金額の伸びを賃金や物価の伸びよりも抑えることとした。

 「マクロ経済スライド」の導入により、平均賃金の上昇率や物価の変動率から労働力人口の減少率や平均余命の延び(受給者数の増加)を控除し、年金額を改定することになる。

 その時々の現役世代の賃金水準の上昇や物価の上昇をそのまま額に反映させずに、年金額の伸びを抑制させることから、年金の価値が下がることになる。  

 年金額の伸び率を抑制することで現在の給付水準(モデル世帯:夫40年厚年40年・妻専業主婦で59.3%)を低下(モデル世帯で50.2%になるまで)させる。

 2023度まで行えば50.2%になると見込んでいる。  

 賃金スライドについては・・・「1人当たり手取り賃金の伸び率 - スライド調整率」

 物価スライドについては・・・「物価の伸び率 - スライド調整率」

 スライド調整率 現在の日本は、少子高齢化とともに年金を支える人がどんどん減少している。「マクロ経済スライド制」を導入することで、さらに一定の比率を「スライド調整率」として年金額の計算に反映させ、物価の伸びに対して年金額を抑えてこむようにしています。そのように調整することで、実際の年金の給付水準と負担能力のバランスをとっているのです。 「スライド調整率」は、公的年金の被保険者の減少率(およそ0.6%)に平均余命の伸びを考慮した一定率(およそ0.3%)を合計した割合(0.6% + 0.3%=)0.9%になる。

    (平成25年までは平均年0.9%を見込んでいる。)
 具体的には、物価によるスライドではなく、名目賃金変動率や公的年金被保険者の変動数、物価スライド率などに応じて改定される「改定率」を用いることとした。

「改定率」という指標に、(1) 被保険者数の減少分としてマイナス0.6%、(2) 平均余命の伸びを勘案してマイナス0.3%、を組み込む。

 たとえば、賃金・物価の伸びが仮に1%あったとしても、年金額はそこから(1)と(2)で合計0.9%を差し引いた伸び率になるため、結果として0.1%しか伸びないという計算になる。

A 賃金(物価)の上昇率が0.9%より大きい場合スクリーンショット (14)

 賃金(物価)の伸びを、被保険者数の減少や寿命の伸びに基づきマイナス調整して、年金改定率とする。

例 物価が1.2%上昇したケース

 年金額改定率は 1.2% - 0.9% = 0.3%

 

B 賃金(物価)の上昇が0.9%以下の場合スクリーンショット (9)

 名目額がマイナスとならないよう被保険者数の減少や寿命の伸びに基づくマイナス調整を小幅にして、年金改定率を 0%とする。

例 物価が0.6%上昇したケース

  0.6% - 0.9% = -0.3%となるのではなく、

 年金の改定率を「0.6% - 0.9% = -0.3%」とすると、前年の年金額より下がってしまうことになります。このような場合は、0.0% を改定率として年金額の改定は行わず、年金の名目下限が維持されます。-0.3%については、景気が回復するときまで持ち越しになります。

マクロ経済スライドのキャリーオーバー制度の導入(平成30年4月1日施行)

 平成30年度より、その年度に調整しきれないスライド未調整分を翌年度以降に繰り越し、その繰越分を翌年度以降の賃金・物価が上昇した際に調整できるしくみに改定されました。

 

C 賃金(物価)が下落した場合

 被保険者数の減少や寿命の伸びに基づくマイナス調整は行わず、賃金(物価)の下落だけを反映させる。

例  物価が0.6%下落したケース

  -0.6% -0.9% = -1.5% となるのではなく、改定率は -0.6%

 

2019年度の年金額の改定 に続く