ヒッグス粒子 「神の粒子」が発見された!

「神の粒子」が発見された!

 2012年7月、「神の粒子ついに発見!」というニュースが世界を駆け巡りました。ヒッグス粒子は別名「神の粒子」とも呼ばれ、素粒子に質量を与えているものです。もし存在しなければ、この世界の物質は重さを失い、すべてがバラバラになってしまいます。もちろん、私たちの体を作っている物質も例外ではありません。

 ここで、物理学の歴史を振り返ってみます。

 古典物理学の本格的な始まりは、1665年にニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て「万有引力の法則」をひらめいたことでした。

 

物理学を揺るがす発見や報告

1610年

ガリレオが地動説の証拠の一つとなる、木星の衛星を報告

1687年

ニュートンがニュートン力学の始まり『プリンキピア』を出版

1873年

マクスウェルが電磁気学の基礎『電気磁気論』を出版

1905年

アインシュタインが特殊相対性理論に関する論文を発表

1911年

ラザフォードが「原子核とその周りを回る電子」という原子モデルを提唱

1926年

シュレーディンガーが量子力学の基礎、波動力学に関する論文を発表

1931年

加速器で発生させた陽子線を使って核反応の研究が始まる

1957年

エヴェレットが「多世界解釈」を提唱し、パラレル・ワールドの存在を予言

1984年

超弦理論が注目を集める

2012年

ヒッグス粒子の発見

 

物体の運動を表すニュートン力学

 私たちが普段目にする物体の運動は、ニュートン力学ですべて説明がつきます。「地球とリンゴの間に働く力(万有引力、重力)は、太陽や地球、月など、遠く離れた天体同士にも働いている」と考えたニュートンは、それまで謎だった天体の動きを次々と解明したのです。リンゴと地球の間に働く引力が、太陽と地球の間など、天体にも働いているという発見です。

 その後、私たちの目に見えている物質は、とても小さな原子が集まってできており、その原子は原子核と電子でできていることが分かってきました。

 

極小の世界の運動を表す量子力学

 原子や電子など、ものすごく小さな世界では、私たちの普段の感覚とは違うことが起きています。それを表しているのが量子力学です。「光や電子は、粒でもあり、波でもある」というのが この世界の常識です。

 この原子核をもっと細かく見ていくと、陽子、中性子、それをさらに分解していくとクォークになります。クォークや電子などが、今のところ物質の最小単位である「素粒子」だと言われています。

 

素粒子の世界はまるで霊界

 この素粒子は、物質として現れたり重さを持たないエネルギーになるなど、私たちの目に見える物質では考えられないような性質を持っています。

量子力学などこれまでの理論で素粒子を「粒」として考えると、とんでもない計算結果が出てきます。これを解決できそうなのが、物質の最小単位が、「粒」ではなく「ひも」でできていると考える超弦理論です。この理論では、この世界は10次元空間まであると考えると、つじつまが合うことが分かってきました。縦・横・高さの3次元空間以外の次元とは いったいどんな空間なのでしょうか。

 

素粒子を見つけるには山手線大の実験装置が必要

 では、どのようにして、そんなに小さな粒子のことが分かったのでしょうか。

 素粒子を見つける実験には、「加速器」という装置が使われます。筒の中で陽子などを飛ばして加速し、光の速さに近づけて正面衝突させると、陽子がバラバラになって素粒子ができるのです。いわば、おにぎり2つを全力で投げ合って空中でぶつけ、飛び散った米粒を観察するようなものです。

 陽子と陽子を正面衝突させて、飛び散った粒をすべて観測します。すると、もともと知られているクォークのほかに、未知の素粒子があることが分かりました。その1つがヒッグス粒子です。

 小さな陽子とはいえ、光速近くまで加速するのは大変です。そこで科学者たちは、2008年に1周がJR山手線ほどもある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)という実験装置を、スイスのジュネーブ郊外に完成させました。スイスのジュネーブ郊外、地下100メートルに「加速器」がありますが、円周状のトンネルの長さは、およそ27キロメートルあり、山手線の34キロメートルに迫る大きさです。これだけ大きなものを作ってはじめて、ヒッグス粒子が発見されたのです。

  現代の物理学では、標準理論で説明できない「重力」の問題や、宇宙の30%を占めるといわれる暗黒物質の問題などを解明する新しい理論の登場が待たれている。どんどん「霊界」に近づく最先端の科学からは、これからも目が離せない。

 

国際リニアコライダー(ILC)計画

 このほど、2025年に大阪で万博が開催されることが決定し、日本中が湧き立った。しかし、東北がさらなるビッグプロジェクトを誘致しようとしていることはあまり知られていない。そのプロジェクトとは、国際将来加速器委員会(ICFA)が推進している「国際リニアコライダー(ILC)」計画である。

 ILCとは、「ヒッグス粒子を生成させ、徹底的に調べる場所」のことである。そして、ILCは、電子とその反粒子である陽電子を超高エネルギーで正面衝突させ、ヒッグス粒子などを生成させる装置である。約30~50キロメートルの直線形の加速器で、地下約100メートルに設置される。

 現在の世界最高性能の加速器は、スイス・欧州合同原子核研究所(CERN)にある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)。2012年、この加速器によってヒッグス粒子が発見され、理論提唱者がノーベル物理学賞を受賞した。ILCはその次世代加速器にあたる。

 

ILCの目的は、「宇宙のしくみ」を解明すること

 新たにILCをつくる目的は、ヒッグス粒子をより詳しく調べ、「宇宙の仕組み」を解明することにある。

 現在、宇宙の仕組みとして、「宇宙は超対称性という仕組みでできている」「宇宙にはパラレルワールドがある」「複数の宇宙が存在する」などの学説が示されている。ヒッグス粒子を詳しく研究することで、どの学説が正しいかが分かるという。

 また、ヒッグス粒子は暗黒物質に関係が深いとされており、ILCによってヒッグス粒子が暗黒物質へと変わる過程も観測できるかもしれない。

 こうした素粒子研究を進めて大宇宙の姿を解明することは、地球の科学と人類の進歩にとって必要不可欠なことであり、極めて意義深いことである。

 

ILCが建設されれば、東北が「科学の一大拠点」になる

 そして、ILC建設地として名乗りを上げたのが岩手県・北上山地である。

 東北ILC推進協議会は、「(東日本大震災から復興するには)ここに住むものが夢と希望を持ち続けて進んでいける大きな国家的プロジェクトが必要である。いま、ILCの建設地の選定が大詰めの時期に差し掛かっている。この上は是が非でもILC建設を東北の地で実現したい」と、強い熱意の下、ILC誘致に取り組んでいる。

 日本は素粒子物理学の先端国であり、世界最高レベルの研究者と研究施設がそろっている。さらに加速器関連の技術を持つ日本の企業は、約5000社に上る。日本はILCの建設地としての好条件を備えている。

 もし、東北にILCが建設されることになれば、100ヵ国以上の研究機関から2000人を超える研究者が集う「科学の一大拠点」になる。ノーベル物理学賞の受賞者も、多数輩出されるでしょう。

 また、経済波及効果も高い。岩手県ILC推進協議会によると、ILC建設(10年)・運用(10年)の20年間で、国内産業への波及効果は約3兆100億円、生産誘発額は約5兆7200億円に上るという。

 素粒子研究から派生する分野も幅広く、長期的にはILC周辺に関連企業が次々と生まれることが期待できる。未来産業を創出する上でも、ILC計画はかなり有望と言える。

 国内外の素粒子物理学者たちは、日本のILC建設を強く望んでいる。あとは日本政府が意思を示すだけなのだが。

 

素粒子研究の中心地は日本であるべき

 欧州は、素粒子物理戦略を5年ごとに見直すため、ILC建設を進めるには、次の2020~24年版の戦略にILC計画が盛り込まれる必要がある。そのため日本政府は、学術会議の審議を踏まえて、今年中にILCを誘致するかどうかの結論を出すことになっている。

 だが、学術会議の審議結果は、ILC建設に否定的なものだった。「約8千億円とされる巨額の建設費の分担の見通しがない中、誘致を決定するのは危険」という理由からだった。

 ILC立地国が建設費用の約半分を負担し、あとの半分は他国や国際機関が負担することになる。関連施設などを含めると、日本の負担は5000億円前後になるとみられる。日本政府はILCの重要性を認識しつつも、巨額の建設費に頭を悩ませている。

 だが、中国が2021年にも新たな円形加速器の建設を始めると表明している。もし日本がILC建設に手を挙げなければ、素粒子物理学者は中国へ渡り、研究の中心地が中国になる可能性が高い。

 日本政府はILC建設の決断を下すべきです。この事業は日本の未来を明るくし、科学の未来を明るくする。絶好のチャンスを逃してはならない。

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