ダム経営

 ダム経営とは、経営に必要な人・モノ・金に余裕を持った経営をする方法のことです。例えば、工場で機械が100%動いていなければ利益が出ないようでは、何かがあればすぐに利益が出なくなります。そうではなく、80%稼働でも利益が出るようにしなければなりません。人に対しても同じです。社員の80%が働けば利益が出るようにすることを指します。資金についても、例えば、銀行から融資を受ける時にも、返済に余裕があるようにすることです。

 ダム経営とは、人・モノ・金に余裕を持たせることです。

 以下、松下幸之助先生のダム経営の講演を聴いた経営者との有名なやり取りです。

(某経営者)

 「うちの会社は人も金も汲々としている。松下さんのような大企業はダム経営ができるかもしれませんが、我々のような小さな会社がダム経営をできるようにするにはどうすればいいのですか?」

(松下幸之助先生)

 「どうしたらダム経営ができるようになるのか、方法論は私にもわからない。しかし、そうなりたいと強く思うことが重要だ。」

参考

 企業経営というものは、いついかなるときでも堅実に発展していくのが原則でありそして、それはやり方次第で可能なことである。そして、そのような企業にしていくために必要な考えとして、「ダム経営」というものがある。

 ダムというのは、改めて言うまでもなく、河川の水をせきとめ、蓄えることによって、季節や天候に左右されることなく、常に必要な一定量の水を使えるようにするものである。

 そのダムのようなものを、経営のあらゆる面に持つことによって、外部の諸情勢の変化があっても、大きな影響を受けることなく、常に安定的な発展を遂げていけるようにするというのが、このダム経営の考え方である。設備のダム、資金のダム、人員のダム、在庫のダム、技術のダム、企画や製品開発のダムなど、いろいろな面にダム、言い換えれば、余裕、ゆとりをもった経営をしていくということである。

 設備であれば、百パーセント創業しなければ赤字というのではなく、八十パーセントなり九十パーセントの操業率でも採算が採れるようにしておく。そして、常時はその範囲で稼働させておく。そうすれば、需要が急に増えても、設備にゆとりがあるから、それに十分対応して生産を増強することが出来る。

 資金であれば、10億円必要な事業をする場合に、10億円だけを用意したのでは、何か事が起こって10億円ではすまなくなったときに、それに対応できない。だから、10億円必要なときには、11憶円なり12億円の資金を準備しておく。つまり、資金のダムである。

 そのほか、常に適正な在庫を持って、需要の急増に備えるとか、製品開発にしても、いつも次の新製品を準備しておくこととかいったことが いろいろ考えられよう。

 ただ、ここで気をつけなくてはいけないのは、設備のダムとか在庫のダムというものは、いわゆる過剰設備、過剰在庫とは違うということである。

 単なる過剰設備、過剰在庫などは、いわば経営のムダであるけれども、「ダム」という考えに基づいたものは、一見ムダのように見えても、いわば経営の安定的発展を保障する保険料のようなもので、けっしてムダにはならないのである。

 特に、資金のダムは、資金繰りに苦しんだ経験からつくられるケースが多い。

 好況・不況の波にかかわらず安定した経営をしていくためには、「ダム経営」が大事である。

 つまり、雨が降ったときに雨水をためておき、雨が降っていないときにも、少しずつ水を流しながらタービンを回し続けて発電するように、経営を行なっていく。

 このダム経営というものを一つ頭のなかに入れておけば、非常に安定した発展が望める。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『日本の繁栄は、絶対に揺るがない』で以下のように説かれました。

「松下幸之助は、もともとの出発点は低く、元手もあまり持っていなかったので、経験を智慧に変えて成功していった人です。そういう人の言葉は、やはり、珠玉の言葉です。学問的ではないのですが、経験から出てきた言葉には、オリジナリティーや独創性が、あちこちに光っていて、とても参考になりました。例えば、彼の有名な言葉の一つに、「雨が降れば傘をさす」というものがあります。禅問答のようですが、これは“経営のコツ”を言っているのです。「雨が降る」とは、どういうことかというと、それは、不況のとき、あるいは経営が苦しいときです。「そういうときには、ごく自然に傘をさしなさい」と言っているのです。「その傘に当たるものが、いったい何であるかを、お考えください」ということでしょう。  彼自身は、「九十数年、自分は無理をせず、天地自然の理に合わせて生きてきた。そうしたら、大成功し、大きなものが出来上がった」というわけです。「なるほどな」と思う面があります。もう一つ、印象的な言葉として、「ダム経営」という言葉があります。昔、松下幸之助が経営者を集めてセミナーを行ったときに、「好況・不況の波にかかわらず、安定した経営をしていくためには、ダム経営というものが大事なのだ」という話をしたのです。雨はいつも降るわけではないので、雨が降ったときに、水甕であるダムに水をためておいて、必要なときに放流します。それによって、田畑を潤すとともに、発電もしています。「雨が降ったときにだけ発電して、晴れたら発電が止まる」ということでは困るので、雨が降ったときに雨水をためておき、雨が降っていないときにも、少しずつ水を流しながらタービンを回し続けて発電するわけです。これが「ダム経営」の考え方です。水量を調整するダムという考え方は非常に大事であり、「このダム経営というものを一つ頭のなかに入れておけば、非常に安定した発展が望める」ということを彼は教えています。  これは、サラリーマンとしての立場で読んでいるうちは分からないかもしれません。私も、独立して、幸福の科学という団体をつくり、それを運営する段になってから、彼の言っている意味が本当によく分かるようになりました。今、世間では、「ひどい不況だ」「金融恐慌前夜だ」など、いろいろなことが言われていますが、幸福の科学のほうは、景気の波に左右されることなく、堅実に精舎建立の計画等を進めています。それはなぜかといえば、私がダム経営を実践してきたからです。今、当会は金融機関等からの借入金はゼロであり、無借金経営です。幸福の科学は、規模から見て、他の宗教に比べて支部などの建物を建て始める時期は少し遅かったと思います。十年ぐらい遅れたのですが、やり始めたら速いのです。海外の展開も、おそらく同じようになると思います。これがダム経営の強さなのです。」

 ダム経営の実践の仕方について、松下幸之助は以下のように述べている。

 「だから大切なことは、いろいろなかたちに現れた経営のダムもさることながら、それ以前の心のダムというか、そのようなダムを経営のうちにもつことが必要なのだと考えるダム意識と言うべきものである。」

「「ダム経営型」について言えば、いろいろなものの“ダム”がありうると思うのです。
農閑期のように商売が低調だったり、不況期で景気が悪く、人がやや余剰気味で、仕事があまりなかったりする時期もあります。そういうときにはしっかりと研修をして、人材の価値を上げておくことが大切でしょう。すなわち、好況時にしっかりと働けるように研修をしておくことで、人材の付加価値を上げていったり、経営担当者の候補生を育てていったりするわけです。そういう“人のダム”というものもありえます。
 「ダム経営をしていくことによって、景気の変動や、万一のときに備える」という考え方を持っていることは、経営者にとって、社会的公器としての会社の役割を果たし、従業員の雇用を守るためにも非常に大事なことなのだと、松下幸之助さんは言われています。(『「経営成功学の原点」としての松下幸之助の発想』より)

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