「売る力」の秘訣

セブン-イレブン成功の遺伝子は継承できるか

「顧客のため」ではなく、「顧客の立場」に立って、売り手の都合を厳しく排除していく姿勢。安易な安売りに走らず、高付加価値を志向する考え方。商品の補給体制を整えつつ、特定地域内に集中的に店舗を展開するドミナント戦略。

参考

「手軽さ」と「上質さ」の両立で差別化

どこも同じように見えるコンビニだからこそ、「差別化」が大事になってきます。鈴木氏は繰り返し、セブンの強さの秘訣として、「新しいものを生み出すイノベーションをとことん追求してきた」と述べています。

日本で初めて、24時間営業のコンビニを始めたセブンイレブンは、「これまで存在しなかった概念のものを生み出すこと」に成功しました。また、同社のプライベートブランド(PB)である「セブンプレミアム」の新商品開発によって、「既存のものに新しい価値を付け加えること」を絶えず行っています。

セブンプレミアムの売上高は約1兆円(2015年)と、競合他社のPBを3倍近く引き離す強さを見せており、セブンのブランド構築に貢献しています。鈴木氏は、PB商品の販売力の強さについて、前掲書で次のような主旨のことを述べています。

PB商品は、メーカーのナショナルブランド(NB)よりも安いという位置づけが一般的でした。しかしセブンは、低価格優先ではなく、「上質さ」を追求した結果、大ヒット商品の「金の食パン」などが生まれました。コンビニの「手軽さ」と、それまでになかった「上質さ」を組み合わせることで、市場の空白地帯を掘り起こすことに成功したのです。

「コンビニでここまでやるのか」と専門家に驚かれるぐらい、ぎりぎりまで「上質さ」を追求したことで、「セブンはおいしい」というブランドをつくり、少し遠くてもセブンの商品を選ぶ顧客を作り出しました。

 

絶えず「新しい提案」をし続ける

セブンイレブンの強さの秘訣として、店を訪れるたびに、「新しい提案がある」ことも挙げられます。移り変わる顧客ニーズをつかむために、本部に「遊軍」のような存在を設けています。20代~40代前半の数名の特命部隊が、「未来のコンビニ像を模索せよ」という指令を受け、ありとあらゆる現場に足を運び、未来のコンビニに必要なものを探ってくるのです。

企業は、本来一つの目的に向かっていく集団ですが、こうした「遊軍」は、社内の人とは別の方向に目を向け、「おや」と思うようなことに気づき、探してくるために存在します。

「コンビニとはこういうもの」という過去の経験や常識に捉われず、常に「未来のあるべき姿」を追求し続ける姿勢が、飽きやすい顧客の心をつかみ続ける秘訣といえるでしょう。

 

「売り手」の都合ではなく「お客様の視点」

鈴木氏は繰り返し、「売り手の立場ではなく、お客様の立場に立つこと」の大切さを強調しています。

それは、こんなエピソードにも表れています。

鈴木氏は、毎日昼に、セブンのお弁当や総菜類の新製品を実際に買って食べ、もしおいしくなければ、お客様に提供すべきでないと判断し、本部の負担で、20分以内に1万8千店を超える全店舗から撤去させたといいます。もちろん何千万円もの膨大な廃棄ロスが生まれるため、「売り手」の都合ではこのような判断はできないでしょう。

しかし、お客様に「買って良かった」と満足してもらうのがセブンの仕事であるという考え方から、顧客満足のために決して妥協しない姿勢を見せています。

常にすべてのお客様の立場から考えるという、変わらない「視点」を持ちながら、新しい「ネタ」を生み出すことを日々追求し続ける姿勢が、セブンの圧倒的な強さにつながっているのです。

 

幸福の科学大川隆法総裁は、2016年5月、浄土真宗の中興の祖である蓮如の霊言を収録。蓮如の霊は、質問者との対話の中で、現在、鈴木氏として生まれていることをほのめかしました。

蓮如は、「公称100万人の信者を抱えていた」と言われており、現在で言えばマーケティング能力に極めて長けていたと言えます。この点、1万8千以上の店舗を持つコンビニチェーンを築き上げた、鈴木氏に通じるものがあります。

「すべてのお客さんを幸福にすることですよ。そうすると、富は集まってくるんですよ」

「お客様の信頼に応えて、最高のものを提供する。そして、それが最も新鮮で、最も廉価で手に入って、気持ちよく買い物ができて、あと、『損はさせられていない』という気持ちになる。そうなったら、同業他社との競争はあるけれども、比べてみると、やっぱり、こちらに行く回数がどうしても増えてくる。そういうことが大事だ」

 

この発言から、すべての人を幸福にするという愛の心を持ち、売り手が変わり続けるイノベーションの姿勢が、あらゆる事業に共通する成功ポイントであることが学べます。

「言うは易し、行うは難し」ですが、常にこの原点に立ち返ることが大切といえます。

 

参考

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