就業規則(9)

服務心得の具体的事項

○秘密保持義務

就業規則規定例 1 第○条(秘密保持義務)

 従業員は、在職中はもちろんのこと退職後においても、自己の職務に関すると否とを問わず、会社の内部事項または業務上知り得た機密にかかる事項及び会社の不利益となる事項を許可なく他に漏らしてはならない。会社及び顧客に関する情報を複写等の方法によって社外に持ち出してはならない。

 

就業規則規定例 2 第○条(退職後の秘密保持義務)

 従業員が退職する場合には、退職後会社の機密事項を保全するため、別に定める「機密事項等の保全に関する誓約書」を提出し、退職後も会社の機密を守らなければならない。

2 退職した従業員が企業の機密を漏洩した場合は、退職金の全部又は一部の返還を求めることがある。

 「個人情報保護法の施行」(平成17年4月1日)に伴い、個人情報管理の規定を定めることが必要となりました。

 服務規律の中への追加、制裁の条文の中への追加が必要です。

就業規則規定例  従業員は、会社が保有する個人情報を会社の業務の目的の範囲外で利用し、または第三者に開示・漏洩し、或いは第三者の知り得る状況に放置するなどの不適切な管理や、権限を有しない他の従業員に取り扱いをさせるなどしてはならない。

 なお、従業員は、当該情報等を厳重に管理しなければならない。

 多くの会社の就業規則で、「会社の許可を受けずに他に雇用され、又は事業を行ってはならない。」とし、その違反を懲戒事由として定めています。しかし、勤務時間中はともかく、勤務時間外には、労働者は、本来、使用者の支配を離れ、自由であるとしてその効力が争われることがあります。これについて、裁判所は就業規則で二重就職・兼職を禁止することの合理性を一応認めているようです。

 例えば、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま、他に雇われたとき」の規定は、労働者が就業時間外に適度な休養をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、又、兼業の内容によっては会社の経営秩序等を害することもあり得るから、合理性があるとしています(小川建設事件 東京地裁 昭57.11.19)。

 就業規則には、兼業禁止規定を設け、許可制にするとよいでしょう。

 休日をどう使うかは自由ですが、休日に労働することで、翌日の仕事に影響が出る場合や、同業他社などで企業秘密が漏れる可能性がある場合は許可しないなど、禁止の妥当性がある場合を列挙し、運用のルールを統一すべきでしょう。

就業規則規定例 第○条(二重就職の禁止)  従業員は、会社の承認を受けないで、在籍しているままでほかの会社に入社したり、ほかの仕事をしてはならない。

 会社側としては、就業規則に退職後も「競合避止義務」があることを規定します。

 さらに「誓約書」をとる必要があります。退職時にこの「誓約書」を取るのは困難なケースが多いので、このような「誓約書」入社時にとるとよいでしょう。なお、特に必要のある者については、退職後の競業禁止の特約(競業避止特約)を退職時に結ぶのがよいでしょう。そして、誓約に違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくことです。

就業規則規定例 第○条(退職後の競合避止義務)  退職し又は解雇された従業員は、会社の承認を得ずに離職後1年間は会社と競業する他社への就職あるいは役員への就任ならびに同業の自営を行ってはならない。また、会社在職中に知り得た顧客と離職後1年間は取引をしてはならない。

2 前項の適用従業員とは、競業避止特約誓約書を締結する。

3 競合避止義務に反した場合は、退職金の一部を減額又は返還を求めることがある。