就業規則(13)
○年次有給休暇
年次有給休暇の取得の当日の請求は、事後報告と判断され、どう判断するかは会社の裁量に任されています。当日に届出された場合、これは拒否することが可能です。なぜなら、会社には上記の時季変更権があるため、時期変更の検討する期間が必要だからです。よって、通常は「○日前までに」、連続休暇する場合は「1週間前までに」などの規定を設けることも可能と考えます。
ただ、会社がこの当日の請求に応じるとしても問題はありません。当日の届け出は急の疾病などによるものが多く、全て拒否するのは問題です。事後許可制を設けておくことが重要と考えます。
なお、運用上、事後に使用者に申し出することで有給休暇扱いにしている会社で、急病等のやむを得ない理由によって当日に突然休んだ場合、例えば申し出のあった労働者が気に入らないということで「事後の有給休暇の請求を認めない」とするような使用者側の裁量権の濫用があった場合は、違法と判断されることになります。
「事後の振替請求もできる」とだけ規定してある場合は、労働者の権利といった誤った認識をさせることがあり、直前での請求を助長させ、事業の運営に影響を及ぼしかねません。事後の振替請求は、基本的には急病といった事態を想定したものであり、事後請求はあくまでも使用者の「承認」という裁量に委ねる旨の規定とすべきでしょう。
就業規則で明確に年次有給休暇の請求方法・時期について定めておく必要があります。
第 条(年次有給休暇)
・・・
年次有給休暇を取得しようとする者は、所定の様式によりその取得日および理由を記載し、3日前までに所属長に申し出なければならない。ただし、会社は業務の都合により申出の取得日を変更することがある。
就業規則規定例 第○条 (年次有給休暇) ・・・ 年次有給休暇の取得届は、緊急やむを得ない場合を除き、事後の届出は受理しない。当該提出届の提出締め切り日は原則として希望日の3日前とする。 |
有給を一度に取得する日数に制限を設けることは、原則として出来ません。かといって、急に1週間や2週間も休まれては、仕事にならない場合もあるでしょう。ですから、それらを防止できるような規定を盛り込む必要があります。
年次有給休暇の時季変更権について、就業規則には必ず記載しましょう。
就業規則規定例 第○条 (年次有給休暇) ・・・ 年次有給休暇は、本人の請求があった時季に与えるものとする。ただし、従業員が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが、事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。 |
年次有給休暇の取得を許可制とすることは禁止されています。
有給を一度に取得する日数に制限を設けることは、原則として出来ません。
かといって、急に1週間や2週間も休まれては、仕事にならない場合もあるでしょう。ですから、それらを防止できるような規定を盛り込む必要があります。
「年次有給休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であるとするのが相当である」との判例があります(白石営林署事件 最2小 昭48.3.2)。
就業規則規定例
第○条 (年次有給休暇)
・・・
ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、あらかじめ届け出ることが困難であったと会社が承認した場合には、事後の速やかな届出により当該欠勤を年次有給休暇に振り替えることができる。ただし承認は会社又は所属長の裁量に属するものとし、必ず行われるものではない。
就業規則規定例
第○条(欠勤への休暇振替)
従業員が傷病、事故、その他やむを得ない事由により欠勤した場合は、本人の申出があった場合、会社は年次有給休暇へ振り替えることができる。
年次有給休暇の計画的付与
変更の必要があって、計画的付与日を変更するためには、計画的付与を定めた労使協定そのものを変更する必要があります。 例えば、次のように、就業規則に指定日(計画的付与の日)を変更することがある旨を定めておくとよいでしょう。
就業規則規定例 第○条 (年次有給休暇) ・・・ この協定の定めにかかわらず、業務遂行上やむをえない事由のために指定日に出勤が必要と認められる場合には、会社は従業員代表と協議のうえ、本協定条に定める指定日を変更することができるものとする。 |
ただし、この場合にも、変更した指定日について労使協定を締結しなければなりません。
年次有給休暇取得日の賃金の取扱について、就業規則に明確に定めましょう。
就業規則規定例 第○条 (年次有給休暇) ・・・ 4 年次有給休暇を取得した期間、産前産後休暇期間、育児休暇期間、介護休暇期間及び業務上の傷病による休業期間は、出勤率算定に際し出勤したものとみなして算定する。 5 年次有給休暇を取得した場合は、通常の賃金を支払うものとする。 |
年次有給休暇の賃金計算方法は、働いたものとみなす賃金の支払よりも平均賃金を取るほうが安くなることが多くなります。就業規則に定めて運用することで可能となります。
その年度(付与された年度)に使用されなかった年次有給休暇は、次年度に限り繰り越しできます。
労使間に特に取り決めがない限り、繰越分から使われていくことになりますが、繰越した年次有給休暇と新たに発生した年次有給休暇については、どちらから先に使用するかについては労働基準法に規定がありません。
どちらから先に使用するかについて就業規則に定めておくとよいでしょう。
就業規則規定例 第○条(年次有給休暇) ・・・ 年次有給休暇に前年度繰り越し分と本年度分がある場合は、前年度繰り越し分より請求に基づいて付与するものとする。 |
使用者が半日付与を認める場合は、就業規則に明示する必要があります。
年次有給休暇は、原則として労働日を単位に付与するものですので、仮に半日休暇の請求があった場合にも、就業規則に半日単位に付与する旨の定めがない場合には、半日休暇を与えることができないことになります。
就業規則規定例 第○条(年次有給休暇の半日分割付与) 年次有給休暇は、原則として1労働日を単位として与えるが、従業員から特に申し出があった場合には、当年度に付与された休暇のうち5日を限度として半日を単位として分割して請求することができる。この場合の取得日の所定労働時間は4時間とする。 |
労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。 労働相談はこちらへ