自動車運転改善基準

 自動車運転者の労働時間等労働条件の改善を図るため、厚生労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準)及び関係通達が示されております。

 改善基準には、拘束時間の限度と休息期間の確保、運転時間の限度、タクシーにおける累進歩合制度の廃止等の基準が示されました。

 対象となる労働者は、労働基準法第9条に規定する労働者であって、四輪以上の自動車の運転の業務に主として従事する者です。

 対象となる自動車は一般道路を走行する車両が対象となります。

トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント

バス運転者の労働時間等の改善基準のポイント

タクシー運転者の労働時間等の改善基準のポイント

 

○トラック運転手の「改善基準」の概要

拘束時間・休息時間

 始業時間から終業時間までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間を「拘束時間」といい、勤務と次の勤務の間で睡眠時間を含む労働者の生活時間として労働者にとって全く自由な時間を「休息時間」といいます。

 この拘束時間と休息時間について基準が以下のように定められています。

1ヵ月の拘束時間

 1ヵ月の拘束時間は原則として293時間以内です。

 ただし、毎月の拘束時間の限度を定める書面による労使協定を締結した場合には、1年のうち6ヵ月までは、1年間の拘束時間が3,516時間を超えない範囲内において、1ヵ月の拘束時間を320時間まで延長することができます。

1日の拘束時間と休息期間

 1日(始業時間から起算した24時間をいいます)の拘束時間は13時間以内を基本とします。

 これを延長する場合であっても16時間が限度(15時間を超える回数は1週間につき2回が限度)です。  1日の休息期間は継続8時間以上とする必要があります。

休息期間の取扱い

 休息期間については、運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所での休息期間より長くなるように努めなければなりません。

休日の取扱い

 休日は「休息期間+24時間」の連続した時間となります。

 いかなる場合であっても、30時間を下回ってはなりません。  2日続けて休日を与える場合は、2日目は連続24時間以上あれば差し支えありません。

 

運転時間の限度

1日の運転時間

 1日の運転時間は2日(始業時間から48時間)ごとの平均で9時間以内にする必要があります。

1日当たりの運転時間の計算に当たっては、特定の日を起算日として2日ごとに区切り、その2日間の平均とすることが望ましいですが、少なくとも3日間のうち1日目と2日目の平均及び2日目と3日目の平均がそれぞれ9時間を超える場合は改善基準に違反することになります。

1週間の運転時間

 1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間以内にする必要があります。

 1週当たりの運転時間の計算に当たっては、特定の日を起算日として2週間ごとに区切り、その2週間ごとに平均を算出することになります。

連続運転時間

 運転開始後4時間以内または4時間経過直後に30分以上の休憩等を確保することにより運転を中断しなければなりません。  ただし、運転開始後4時間以内に運転を中断する場合の休憩等については、少なくとも1回につき10分以上としたうえで分割することもできます。

 

時間外労働及び休日労働の限度

時間外労働の限度

 時間外労働及び休日労働は拘束時間の限度の範囲内でしかできません。

また、時間外労働及び休日労働を行う場合には、労働基準法第36条に基づく「時間外・休日労働に関する協定届」を事前に労使により締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出の必要があります。

休日労働の限度

 休日労働は2週間に1回の頻度でしか行えません。

 

休息時間の特例

休息期間分割の特例

 業務の必要上、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合は、当分の間、一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。

 この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上でなければなりません。

2人乗務の特例

 運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合(ただし、車内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る)においては、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、また、休息期間を4時間まで短縮できます。

隔日勤務の特例

 業務の必要上やむを得ない場合には、当分の間、次の条件の下に隔日勤務に就かせることができます。

 2暦日における拘束時間は21時間を超えないこと。ただし、事業場内仮眠施設または使用者が確保した同種の施設において、夜間に4時間以上の仮眠時間を与える場合には、2週間について3回を限度に、この2暦日における拘束時間を24時間まで延長することができます。 この場合においても、2週間における総拘束時間は126時間を超えることはできません。

 勤務時間終了後に継続20時間以上の休息期間を与えること。

 

フェリーに乗船する場合の特例

 運転者が勤務の中途においてフェリーに乗船する場合には、フェリー乗船時間のうち2時間(フェリー乗船時間が2時間未満の場合には、その時間)については拘束時間として取扱い、その他の時間については休息時間として取り扱います。

フェリー乗船時間が2時間を超える場合には、上記により休息期間とされた時間を休息期間8時間(2人乗務の場合4時間、隔日勤務の場合20時間)から減じることができます。

 ただし、その場合においても、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはなりません。

 

 ○タクシー運転手の「改善基準」の概要

 拘束時間・休息時間

 始業時間から終業時間までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間を「拘束時間」といい、勤務と次の勤務の間で睡眠時間を含む労働者の生活時間として労働者にとって全く自由な時間を「休息時間」といいます。  この拘束時間と休息時間について基準が以下のように定められています。

1ヵ月の拘束時間

 1ヵ月の拘束時間は299時間以内でなければなりません。  なお、顧客の需要に応ずるため状態として車庫等において待機する就労形態のタクシー運転者(「車庫待ち等の運転者」といいます)については、書面による労使協定により1ヵ月の拘束時間の限度を322時間まで延長することができます。

1日の拘束時間と休息期間

 1日(始業時間から起算した24時間をいいます)の拘束時間は13時間以内を基本とし、これを延長する場合であっても16時間が限度です。  1日の休息期間は継続8時間以上とする必要があります。  つまり、拘束時間と休息時間は表裏一体のものであり、1日(24時間)=拘束時間(16時間以内)+休息期間(8時間以上)となります。

車庫待ち等の運転者の特例

(1) 顧客の需要に応ずるため常態として車庫等において待機する就労形態のタクシー運転者(「車庫待ち等運転者」)は、書面による労使協定により1箇月の拘束時間を322時間まで延長することができます。

(2) 車庫待ち等の運転者については、以下の要件の下に1日の拘束時間を24時間に延長することができます。

・勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えること

・1日の拘束時間が16時間を超える回数が1ヵ月について7回以内であること

・1日の拘束時間が18時間を超える場合には、夜間4時間以上の仮眠時間を与えること

 

隔日勤務者の拘束時間及び休息期間

1ヵ月の拘束時間

 1ヵ月の拘束時間は262時間以内でなければなりません。 ただし、地域的事情その他の特別な事情(例えば顧客需要の状況等)がある場合には、書面による労使協定によって1年のうち6ヵ月までは1ヵ月の拘束時間の限度を270時間まで延長することができます。

2暦日の拘束時間と休息期間

 2暦日の拘束時間は21時間以内とされています。勤務終了後、継続20時間以上の休息 期間を与える必要があります。

車庫待ち等の運転者に係る特例

 2暦日の拘束時間の限度を夜間4時間以上の仮眠時間を与えることにより、労使協定に定める回数(1ヵ月について7回以内)に限り24時間まで延長することができます。  この場合、1ヵ月の拘束時間の限度を262時間または労使協定により262時間を超え270時間以内で定めた時間に20時間を加えた時間まで延長することができます。

 

時間外労働及び休日労働の拘束時間の限度

時間外労働の限度

 時間外労働及び休日労働は1日または2暦日の拘束時間及び1ヵ月の拘束時間(日勤勤務者:原則1日16時間以内、1ヵ月299時間以内、隔日勤務者:原則2暦日21時間以内、1ヵ月262時間以内(書面による労使協定がある場合は270時間以内))の範囲内でしかできません。

 時間外労働及び休日労働を行う場合には、労働基準法第36条に基づく「時間外・休日労働に関する協定届」を事前に労使により締結し、所轄の労働基準監督署に届け出の必要があります。

休日労働の限度

 休日労働は1か月の拘束時間の限度内で2週間に1回の頻度でしか行えません。

ハイヤーの運転者の時間外労働

 ハイヤーについては拘束時間や休息期間等の規制は適用されませんが、時間外労働をさせる場合は、1ヵ月50時間または3ヵ月140時間及び1年間450時間の範囲内で労使協定を締結する必要があります。

 

賃金制度等に関する基準

保障給

 歩合給制度が採用されている場合には、労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金(原則として、各労働者の標準的能率で歩合給の算定期間に通常の労働時間を満勤した場合に得られると想定される賃金)の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めなければなりません。

累進歩合制度

 累進歩合制度(トップ賞、奨励加給を含む)は廃止する必要があります。

年次有給休暇の不利益取扱いの禁止

 年次有給休暇を取得したときに、不当に賃金額を減少させる等の不利益な取扱いをしてはいけません。

労働時間の適正管理

 運行記録計(タコグラフ)の活用等により、運転者個人ごとに労働時間を把握し、適正な労働時間管理を行う必要があります。

 

休日の取扱い

 休日は「休息期間+24時間」の連続した時間です。

 いかなる場合であっても、その時間が32時間を下回ってはいけません。なお、2日続けて休日を与える場合は、2日目は連続24時間以上あれば差し支えありません。

 

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