就業規則(19)

○退職

 退職の手続きでは、

 ・退職の具体的事情(自己都合退職、定年退職、懲戒解雇、死亡等)の手続を規定します。

 ・退職日は明確にします。

 ・業務の引継ぎや退職希望者の義務を列挙します。

 「退職の承認があるまでは退職できない」旨を明記しておきます。

 「7日以内に賃金を精算しなければならない」等とする労働基準法上の金品の変換の規定は、権利者の請求が前提となります(労働基準法23条)。

第○条 (退 職)

従業員が次の各号の一に該当するに至ったときは、その日を退職とする。

 (1) 退職を願い出て会社が承認をしたとき

 (2) 定年に達したとき

 (3) 死亡したとき

 (4) 期間を定めて雇用された者が雇用期間を満了したとき

 (5) 休職期間が満了し、復職できないとき

 (6) 役員に就任したとき

 (7) 行方不明になって30日が経過したとき

 (8) 会社都合により転籍を命じられたとき

 (9) 経営上の都合により退職勧奨に本人が応じたとき

2 従業員が自己の都合により退職しようとするときは、少なくとも1ヶ月前までに退職願を提出しなければならない。

3 退職願を提出した者は、会社の承認があるまでは従前の業務に服さなければならない。

4 従業員が退職、解雇の際には、身分証明書・健康保険証など、会社から貸与された金品を速やかに会社へ返納しなければならない。

5 従業員が退職、解雇の際には、業務上の書類、名刺など会社から貸与された書類を速やかに会社へ返納しなければならない。

6 寮、社宅入居者については、退職日の翌日から3日以内に明け渡しを行わなければならない。

 

 退職(合意解約)は、両当事者間の合意事項ですので、いつやめるか、いつまでに申し出させるかは、解約内容によると考えられます。このため、1ヵ月以上前もって申し出させることも可能です。

退職願の提出は、対処日の1ヶ月前と定めている会社が多いが、法律上の効力はない。民法上は、期間の定めのない雇用の場合は、従業員は退職する2週間前にはその意思表示をすることが必要となっています(民法627条)。退職(合意解約)に限っていえば、退職日の14日前までと規定せず「1ヵ月前までに」と規定することも可能です。

 退職や解雇時の会社から貸与した商品の返還について規定しましょう。

 

 退職にて引継ぎが不十分な場合で、就業規則に「業務上必要がある場合には退職者を呼び出すことがある」と、業務の引継ぎの進捗状況によっては退職後も出社を命じる定めを設けている企業はあまり見られません。

 なぜなら退職者にはこのような規定をしてもその効力が及ばないからです。

 「業務上必要がある場合には退職者を呼び出すことがある」旨を規定することが法律上問題あるかどうかということですが、就業規則に定めること自体には問題ありません。

 退職者には就業規則の効力が及ばないため、就業規則に定めた退職後の呼び出し義務に応じない場合に退職金を減額したり、制裁を加えることはできません。この点について裁判例でも、「その行為(業務の引継ぎを不完全なまま退職したこと)は、責められるべきものであるけれども、未だもって労働者である被控訴人らの永年勤続の功労を抹消してしまうほどの不信行為に該当するものと解することができない」(昭和59.11.29大阪高裁判決『退職金等請求控訴事件』)と、業務の引継ぎが不完全なまま退職することは、退職金を支給しないと取扱うほどの不信行為には当たらないものとして退職金を支払うべきものとしています。  この規定には法的な効力がありませんので、引継ぎが不十分なときは、自由意思による協力を求めるほかないでしょう。

 

年次有給休暇一括申請を抑制する業務の引継ぎ

 退職間際に年次有給休暇の請求があった場合には、他の時季に変更する余地がなく、会社の時季変更権は認められず、結果的に年給を一気に消化させることとなります。退職によりやむを得ない場合には、消化しきれない年休を買い上げるなど円満な解決方法もよいのですが、過去の未消化年休だけでなく、新たに年休が発生する更新日をまたがって請求するケースもあります。このような場合、民法上の職務の適正誠実遂行義務の一環として、「引継ぎ業務を行わない場合は、退職金を減額又は留保する。」などといった規定を設ければ、過剰な権利行使を思いとどまらせる効果もあります。

 

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