就業規則(23)
○表彰
長期雇用慣行の変化や賃金の減額などによって、従業員の会社への忠誠心が薄まれば、モラール(やる気)の低下にもつながります。そこで、会社への貢献度が高い者を表彰し、心理的・経済時に報いることで、従業員のモラールの低下を防ぎます。賞金は少額でも、従業員にとっては大きな動機づけ(インセンティブ)になります。
会社や社会に貢献した従業員を報奨する規定を定めます。
○懲戒
懲戒処分は、懲戒の種類とこれに対応した懲戒事由を定めます。
懲戒の事由
どのような行為が、どのような制裁にあたるのか、制裁理由とそれに対応する制裁の種類と程度を具体的に定めておきます。
使用者は、懲戒事由として、業務命令違反、職務懈怠、職務上の非違行為や経歴詐称などのほか、労働者の私生活上の犯罪行為や会社を批判する行為など、企業外の行為を定めることがあります。
特に懲戒解雇とする行為に関しては、トラブルとなることが多いため、出勤停止や減給などとは別に定めておきます。
就業規則の絶対的必要記載事項に「解雇の事由」を含めることとなっております。懲戒解雇については、その事由を限定列挙する必要があり、明示がなければ懲戒することができません。
懲戒処分をするには、その禁止事由が就業規則に定めてあるものに該当した行為の違反でなければならない。例外としては、明らかに企業秩序違反行為であると認められるレベルの行為は定めがなくても認められています。
いずれにしても、出来るだけ、具体的に禁止事項を明示する必要があります。古い就業規則は、禁止事項が抽象的なものが多く、『就業規則に定めがないのに、懲戒を命じるのは労基法違反だ』というように、反撃されないように、見直しが必要です。
・懲戒事由に包括条項を設けます。
『その他、この規則に違反し、又は前各号に準ずる行為があったとき』 該当事項がない場合は包括規定に該当するかどうかで判断します。
解雇の事由は絶対的必要記載事項(必ず記載しなければいけない事項)ですから、就業規則に必ず記載しておくことが必要ですが、その際解雇事由を列挙し、「その他前各号に掲げる解雇事由に準ずるやむを得ない事由がある場合には解雇する」旨の包括的解雇事由を規定しておくことが、後のトラブル防止になります。
「その他があったとき」とは、いわゆる包括条項と呼ばれる規定で、就業規則を作成する時点では想定できないような事情であって、かつ、他の事由との比較衡量からして、懲戒解雇に処することが必要である場合が発生する可能性があることを想定して規定しているものです。
就業規則懲戒規定の記載例 第○条(譴 責) 次の各号の一に該当するときは譴責とする。但し情状により訓戒とすることがある。 ①~⑤ 略 ⑥ 会社内において、性的な言動によって他人に不快な思いをさせたり、職場の環境を悪くしたとき 第○条(出勤停止) 次の各号の一に該当するときは、出勤停止とする。但し情状により譴責とすることがある。 ①~⑤ 略 ⑥ 会社内において、性的な関心を示したり、性的な行為をしかけたりして、他の従 業員の業務に支障を与えたとき 第○条(懲戒解雇) 次の各号の一に該当するときは懲戒解雇とする。但し情状により諭旨退職とすることがある。 ①~⑧ 略 ⑨ 職責を利用して交際を強要したり、性的な関係を強要したとき |
○労働者の損害賠償責任
労働者が使用者に損害を与えた場合には、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償責任を負うことがあります。 また、労働者が事業の執行に付き第三者に損害を及ぼし、使用者が使用者責任に基づいてこれを当該第三者に賠償した場合には、使用者の労働者に対する求償権の行使が認められています。
しかし、使用者の労働者に対する損害賠償請求や求償権の行使は、資力に乏しい労働者にとって過酷な結果をもたらし、また、使用者が労働遂行から経済的利益を得ている以上そこから生ずる損害のリスクを全て労働者に負担させることは公平を欠くことがある。このため、判例においては、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる」(茨石事件 昭和51年最高裁判決)として、労働者の損害賠償責任を制限してきた。
しかし、判例法理であることから、その内容が労使当事者に必ずしも知られていない状況にあると考えられる。
就業規則に機密保持義務及び機密漏洩に対する懲戒の定めがある場合には、在職中の社員については、その定めに基づいて懲戒処分に付すことができます。また、退職後の社員については、営業上の秘密に接した者に限っては守秘義務契約を締結しておけば、もしこれに違反して機密を漏洩し会社が損害を受けたときは、損害賠償等の法的措置をとることができます。
就業規則の作成・診断は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。 こちらへ