売れる営業マンに必要なスキル

 営業のノウハウには属人的な面が多くあり、顧客特性や商品・サービスによって効果的な手法が異なるなど、成果を上げるコツというのは一概には言えません。

 ただし、どのような営業であっても、考えなしに 場当たり的な対応をしていても成果は上がらないことだけは確かです。

 営業には必ず相手がいて、その相手が購買すると決めなければ成果は生まれません。

 営業マンは、相手をよくみて、その考えを知り、商品・サービスを購買したいと思うような提案をする必要があります。

 そのため、営業マンに求められるのは、

 ・予測:ニーズを予測し、商談をシミュレーションする

 ・質問:ニーズや要望などを聞き出す

 ・提案:Win-Winの提案を考え、分かりやすく伝える

という3つの技術が必要です。
これらは、営業活動であれば顧客特性や商品・サービスを問わず必要となるスキルですが法

人営業では特に重要となります。

 法人営業では、「購買決定にかかわる人が複数にわたることが多い」「厳密に予算が定められている」ことが一般的です。

 営業マンは、「予測」「質問」「提案」を駆使しながら、こうした要因を見極めて、商談を進めていくことが求められます。

 3つのスキルは、営業活動のすべての場面で必要となりますが、特に、アプローチするときには「予測する」、ヒアリングするときには「質問する」、プレゼンテーションするときには「提案する」が重要になります。

ここで注意すべき点は、スキルの習得を営業マン個人に期待したり、求めるのではなく、組織としての営業の仕組み(標準化されたトーク、ツール)を作成し、全員が活用することです。

 そうすることで、売れる営業マン同様に、そうでない営業マンも同程度の品質を保つことが可能となります。

 

予測する

1 予測とは

 予測するとは、顧客のニーズをあらかじめ予測し、「どのような商品・サービスをいくらで提案するか」という商談のゴールを事前に想定するスキルです。

 また、商談ごとに、「今回の商談の目的」「今回の商談で示される顧客のネガティブな反応」などを事前にシミュレーションしておくことも予測力に含まれます。

 商談ごとに得た新たな情報を加味し、必要であれば想定したゴールを見直すことも大切です。

 

2 事前の情報収集

 営業活動では、「とりあえずこの商品で売り込みを行ってみる」という、商品ありきの方法では計画的に成果を上げることはできません。

 あらかじめ、「顧客のニーズは何か?」ということを予測し、「顧客のニーズを満たすためにどのような自社の商品・サービスを提案するか?」ということを想定しながら、商談を進めていかなければなりません。

 もちろん、相手に詳細な話を聞く前のアプローチ段階では正確なニーズを知ることはできません。
 ですから、アプローチ段階では、さまざまな情報源を利用して関連情報を収集した上で、過去の経験などを基に、顧客が持っているであろうニーズを自分なりに予測する必要があります。

 また、アプローチ段階では難しいかもしれませんが、現在利用している競合製品(商品)やその利用状況、あるいは、競合他社との商談状況についても情報収集しておくとよいでしょう。
 現在利用している競合商品やその利用状況が分かれば、顧客が解決したいと考えている課題を知るためのヒントが見つかるかもしれません。

 また、競合他社が営業を行っている商品・サービスが分かれば、そこから顧客のニーズを推察し、自社のどの商品・サービスが訴求力があるかを予測する上で参考になります。

 こうした情報は自社内の上司や同僚などから情報収集したり、可能であれば顧客に聞いてみることも必要です。

 

3 ロールプレイング(商談のシミュレーション)

 商談の前には、商談の流れをシミュレーションしておくことが大切です。

 その際のポイントは2点あります。

(1)商談ごとの目的を設定する

 商談の前には、「今回の商談の目的」を決めておかなければなりません。

 例えば、「顧客のニーズを聞き、次回の自社の商品・サービスを提案するためのアポイントをもらう」「自社の商品・サービスの提案内容の評価を聞き、相手が不満に思っている点を明らかにして再提案する機会をもらう」といったようにです。
 目的が決まったら、商談の流れを具体的にシミュレーションしていきます。

 シミュレーションするときには、「相手が知りたいと思うことは何か」を考えながら進めることが大切です。

 また、シミュレーションすることで、「相手に確認しなければならない点」「伝えなければならない点」を想定することができます。

 こうした点は、抜けや漏れがないようにリストアップしておきます。
 なお、実際の商談の場でも、商談の目的を最初に明らかにし、相手と商談の目的を共有しておくことで、商談をスムーズに進めることができます。

 例えば、「今日は前回のご提案内容について、ご不明な点や改善すべき点をお伺いし、その上で、改めて次回、ご提案のスケジュールを詰めさせていただきたいと思っています」といった形で、最初に話しておきます。

(2)相手の「ネガティブな反応」を予測

 商談の流れをシミュレーションしていると、「これについて聞かれたらどうしよう?」という、顧客に対して説明しにくい質問、自分の権限では答えられない質問などが出てくるものです。そうした点については、事前に対応方法を検討しておかなければなりません。

 また、商談の締めにさしかかっているなど商談の段階によっては、特に大切なのが、相手が示すかもしれない「ネガティブな反応」を予測しておくことです。
 ネガティブな反応とは、不満・不安・心配などのことで、「それほどメリットがあると思えない」「活用シーンがピンと来ない」「価格が高い」といった例が挙げられます。

 商談の締めの段階でこうしたネガティブな反応を示してくれるとすれば、それは相手が本気で購買を検討してくれている可能性が高いとも考えられます。

  事前に対応を決めておくことで、成約に結びつきやすくなるかもしれません。
ネガティブな反応を予測するには、営業経験豊富な上司や同僚を相手にロールプレイングを

すると効果的です。

 実際の商談では、自分では考え付かないようなネガティブな反応を相手が示すことがありますが、営業経験豊富な上司や同僚を相手役にロールプレイングを行うことによって、こうした点に対する準備不足を補うことができます。

 なお、ロールプレイングの相手役には、過去の経験を踏まえてできるだけ意地悪な顧客になってもらうと、よりきめの細かい準備をすることができます。

 

無意識の要因

 お客様から受け入れられる要素のうち95%が無意識の要因だといわれています。

 つまり、営業マンを、「好きだ」「嫌いだ」「信用できる」「信用できない」のどれかを選んでいるのです。

 たった30秒で人の中身を知ることはできないはずですが、ただ、「あの営業マンは嫌いだ」と無意識に判断しているのです。

 お客様から受け入れられるための条件として、以下のことを理解しておくとよいでしょう。
セールスにおいて、ほとんどの営業マンがお客様を説得しようとします。

 説得ではなく『質問する』です。

 売れる営業マンは、そうでない営業マンの3倍質問をします。   

 多弁すぎる営業マンがいますが、お客様はあなたの商品やサービスについてすべて聞く必要はないのです。

 営業マンは、皆、あまりにも自分たちの仕事に熱心で、お客様の気持ちを読むということを忘れて、どんどん売り込みモードに入ってしまうのです。
 そして、お客様をうんざりさせてしまいます。

 人は、自身のために行動するのですから、あなたが話すこと、あなたが伝えることは、全て彼らの立場に立って表現され、まとめられなければなりません。

 あなたは、自身のセールスにおいて以下のことに気付いているでしょうか。
 
理由について

 あなたは、お客様になぜこれを買うといいか、理由を言っていますか?

 ただ話し続けただけではないでしょうか。

 お客様にとって必要であること、欲しいものであること、買う理由を言っていなかったのです。

金額について

 お客様が、否定の言葉として「高すぎる」と言うとき、そのうちの60%以上は本当にそう思ってはいないということです。

 そう言ったほうが あなたとの話を早く終わらせられると知っているのです。

 この台詞を聞く場合、二つのことが起きています。

 お客様が、あなたに嘘をついているか、あなたがプレゼンテーションに失敗したか、の どちらかです。

共通性について

 人は自分と共通する点があると親近感を覚えます。

 私達は、自分とつながりのある人や どこか似ていると感じる人を受け入れたいものです。

 それは、その人の意見であったり、ライフスタイルであったり、バックグラウンドであったりします。

 あなたが良く見えれば、それだけ信頼でき、賢い人だと思われ、お客様は自動的にあなたをより良い人だと思うのです。

問題は、コミュニケーションに関するもので、その基本は「聞く」ということなのです。
 私達は、自分達が聞きたいものだけを聞いたり、やりたいことだけやったりしています。

 その結果営業においても、本当に「聞く」ということを知りません。

 あなたは「言いたいことを言う」のではなく、お客様が「聞きたいことを言う」のです。

 「聞きたいことを言う」、言い換えるなら、『質問する』と言ってよいでしょう。

 セールストークはテクニックではありません。『的確な質問をし、聞く』が重要なのです。

 

質問する

1 質問とは

 質問とは、商談を進める上で必要な情報を相手から聞き出すスキルです。

 法人営業では、「ニーズ」「予算」「意思決定者の意向」「時期」「提供方法」など聞かなければならない事項や、聞いておいたほうが より効果的に商談を進めることができる事項があります。

 しかし、商談の進ちょく状況や顧客との信頼関係の深さなどにもよりますが、一般的に、ニーズや予算、意思決定者の意向は簡単に教えてくれるものではありません。

 そのため、質問に工夫をしながら 聞き出していかなければなりません。

2 顧客からニーズを聞き出す

 言うまでもなく、営業に当たって顧客のニーズをつかむことは不可欠ですが、顧客のニーズを聞くことは簡単なことではありません。

 ニーズが知りたいからといって、唐突に「御社のニーズは何ですか?」と聞いて、相手が率直に答えてくれることはほとんどありません。 

 また、漠然とした問題意識を持ってはいるものの、相手自身が解決すべき課題など 真のニーズに気がついていないことも少なくありません。
 こうした相手に対して「ニーズを教えてください」と聞いても、「そんな大ざっぱな質問をされてもどう答えていいか分からない」と相手を困らせてしまうだけです。

 そこで、ニーズを聞き出すためには、情報収集した客観的事実を交えながら、相手が答えやすいように、より具体的な質問をするということがポイントになります。

3 相手から「予算」や「意思決定者の意向」を聞き出す

 法人の場合、厳格に予算が定められており、その予算内でなければ どれほどよい商品・サービスであっても購入してもらうことは容易ではありません。

 また、購入に関する意思決定には、複数の人が関与することが一般的であり、相手の判断だけで購入を決定することはほとんどありません。

 そのため、営業マンとしては「予算はいくらか?」「意思決定にかかわっている人は誰で、その人はどのような意向か?」、などの点は知っておきたい情報です。
 とはいえ、予算も意思決定者も顧客内部の情報であり、なかなか答えてもらえません。

 そこで大切になるのは、明確に答えてもらえなかったとしても、相手の答えから推測できるような質問を試してみることです。

(1)予算についての質問

 予算については、はっきりと「予算はどのくらいですか?」と聞いてしまうのも一策です。

 相手が本気で購買を検討している場合などは、予算を明確に答えてくれることがあるからです。

 また、予算を聞くことによって、顧客の立場に立った提案をしようとしているということを知ってもらうこともできるでしょう。

(2)意思決定者の意向

 

 一般的に、法人営業では、直接話をする相手が最終的な購買決定権を持っていることは まれで、最終的な意思決定者は、相手よりも役職が上の部門長などです。

 また、最終的な意思決定者が相手の部門長であっても、その部門長は、実際のユーザー、費用について決裁権のある部門、品質について決裁権のある部門の了承を得て決めるといったように、多数の部門や相手が意思決定に関与することも少なくありません。
 営業マンは、なるべく早い段階で、意思決定者か意思決定者に対して「意思決定者が意見を重んじる人」と接点を持ち、意思決定者の意向を知ることも必要です。

 しかし、相手からすると、「自分が責任を持って担当している業務である」という意識があるため、商談の最終段階など重要な場面以外は、営業担当者と意思決定者などが直接会う機会を設ける必要性は感じていないのが一般的です。

 そのため、営業マンが意思決定者に直接会うことは容易ではありません。

 そうした場合は、意思決定者や「意思決定者が意見を重んじる人」、それらの人の持つ意向を推測できるような質問をしてみます。

 相手との関係性が良好で比較的話がしやすいのであれば、直接的に「導入の最終決定をされる方にこの商品・サービスをご説明されるとき、ポイントとなる点はどこでしょうか?」と聞いて、意思決定者の意向を明らかにしてもよいでしょう。

 

提案する

1 提案とは

 提案とは、顧客と自社、双方にメリットのある提案内容を考え、それを分かりやすく相手に伝えるスキルです。

 商品・サービスの機能や価格などを説明するだけではなく、顧客視点に立った顧客のメリット(価値)も含め、「どのような提案内容であれば顧客と自社の双方にメリットがあるか」を考え、「どのように伝えれば分かりやすいか」を工夫することが求められます。

 

 

2 Win-Winの提案内容

 提案内容は、「『予測する』で予測し、『質問する』で明らかにした顧客のニーズを満たす商品・サービス」である必要があります。

 また、法人営業の場合、予算や意思決定者の意向などを踏まえたものでなければなりません。提案内容は、顧客の視点に立って考えることが大前提です。

 しかし、顧客の視点にだけ立てばよいということではなく、提案内容は自社にとってのメリットについても考えなければなりません。
 例えば、コスト面で自社が赤字になるような無理のある提案内容では、いくら顧客にとってよい提案であっても実現する可能性はありません。

 そこで考えるのは、顧客と自社の双方にメリットのあるWin-Winの提案内容です。

 提案内容の検討は、まずは顧客に焦点を当てて検討し、その後に自社の視点を加えて検討すると整理しやすいでしょう。

 顧客の視点からは、「ニーズ」「予算や意思決定者の意向」「スケジュールや提供方法など顧客の要望」などを検討する必要があります。
 自社の視点からは、「利益」「将来性」「企業活動への影響力」などを検討しなければなりません。

 顧客の視点、自社の視点の全てを満すことができれば理想的ですが、そうでなければ、今回の商談で優先すべき点は何かを考えてみるとよいでしょう。

 そのほか、その顧客に対して、自社にとっての競合他社が存在する場合には、競合他社に対して品質や価格などの面から優位性があるかも考えなければなりません。

3 分かりやすく伝える

 「自社の商品・サービスを活用することで顧客のニーズを満たすことができる」ということを相手に伝え、それを相手が納得して初めて成約に結びつきます。

 営業マンは、相手がそうした点を正しく理解できるよう、分かりやすく伝えなければなりません。

 提案内容を伝えるときには、最初に、商品・サービスを活用することで期待できる効果を明示します。
 そうすることで、相手は自社のニーズを再確認できると同時に、提案内容の方向性を理解しやすくなります。

 その上で提案内容の詳細などを伝えていくことになります。

 その際には、以下の2点に注意します。

(1)具体的に話す

 抽象的な説明よりも、具体性のある話のほうが理解しやすく、印象にも残りやすいものですし、相手が意思決定者をはじめとした他の人にも伝えやすくなります。

 例えば、「大幅なコストダウンが見込めます」といった説明よりも、「現在よりも約○%ものコストダウン効果が期待できます」と、おおよそでもよいので数字を使ったほうが分かりやすいでしょう。

 また、他社の成功事例も相手にとっては分かりやすく、実績のある提案内容として信頼性のあるものとして受け止めてくれるでしょう。

(2)相手と歩調を合わせる

 相手にうまく伝わっていない、相手が疑問に思うといった点は、相手が話を理解する上で阻害要因になります。

 話のポイントごとに、相手に伝わっているか(理解しているか)を確認し、うまく伝わっていない、あるいは疑問に思う部分があるようであれば、それを取り除きながら話を進めるように心掛けます。
 また、説明などに際して、見落としがちなのが使用する用語です。自社の商品・サービスに関する説明が中心となるため、つい自社内でしか通じない用語や難解な専門用語を使ってしまいがちです。

 こうした用語は相手の理解を妨げる要因となるので、平易な用語にしたり、相手が使用している用語に置き換えたりする必要があります。
 上記のような方法で提案内容を相手に分かりやすく伝え、理解してもらった上で、最終的に「いかがでしょうか?」と提案内容の検討結果を聞きます。

 このとき、相手から「予測」の項で紹介したネガティブな反応(不満・不安・心配など)が返ってくることがあります。

 ニーズを十分に満たしていない、あるいは、予算、意思決定者の意向、時期や提供方法などの要望に十分に応えられていないのかもしれません。
 もう一度「質問」を使って、相手がネガティブな反応を示した理由を聞き、場合によっては提案内容を調整するなどして再度提案することになります。

 このように、提案内容を伝えることとニーズを聞き出すことを、必要に応じて繰り返しながらゴールを目指して進めていきます。

 商談を前に進めていくのも提案のうちです。

 

営業マンに求められる能力

 

 売れる営業マンとなるためには、その他にも、相手との距離感を縮め、信頼関係を築くために、コミュニケーションを図る「会話」や 要所要所で適切な判断をする「判断」なども大切です。
 営業は営業マンの持つ「総合力」が試される業務なのです。

 営業の現場では、最終的な購買決定の判断は相手が下します。そのため、時にはあなたがどれほど努力したと思っていても、成果が上がらないこともあります。

 しかし、そこで「自分は営業に向いていない」と心が折れてしまわないことです。

 成果が上がらなかった理由を組織で考え、仮にあなたの商談プロセスに改善点が見つかったなら、それを改善して次のチャンスに生かすことが大切です。
 そうした意味では、日々、チームで知識と思考の幅を広げて自身を成長させ、たとえ成果が上がらなかったとしても、次の営業機会につなげようとする継続力こそが、売れる営業マンに求められる何よりも重要なスキルといえるでしょう。

 これらの総合的なスキルを、営業マン個人に求めるのではなく、組織として仕組みをつくることが求められます。 

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