社会保障給付費

 社会保障給付費は、国民が利用した医療や介護費、高齢者らに給付される年金額の総額で、その財源は、医療保険、介護保険、年金などの社会保険料と税金です。

 2015年度の年金、医療、介護などの社会保障給付費 114兆8596円

 国民1人あたりの給付費 90万円3700万円

 社会保障給付費は毎年2~3兆円ほど増え続けており、今のところ減少する兆しはありません。114兆円ものお金が給付されているということは、一方でそれを負担している人もいるわけです。社会保障の財源は、本来「保険料」でまかなうべきですが、それでは足りなくなっているため、年々、税金で補填する割合が大きくなっています。 「保険料」も半強制的に徴収されますので、事実上の「税金」といえるでしょう。2016年ベースでは、給付費の4割が国税と地方税でまかなわれることになっています。

 参考

 現在、政府が提供している福祉など公共サービスの費用をそのまま国民に負担してもらう場合、世帯の平均所得が890万~920万円ないと維持できない計算になる。2014年時点で1世帯あたりの平均所得は529万円。各世帯が毎年400万円ぐらいの”過剰サービス”を政府から受けていることになる。

 政府は現在の制度を維持するため、小手先の対策を行っています。高齢者医療費の自己負担分を引き上げ、現役世代が払う介護保険料を増やす一方、年金受給に必要な年金保険料の納付期間を短縮するなど。

 増大する社会保障給付費は、増税を正当化するための根拠としても使われています。

 消費増税をしたら税収は減ってしまう。今の社会保障の仕組みを維持しようとしたら「何らかの税金や社会保険料など、国民の負担を増やさないといけない」という議論は続くでしょう。

 もちろん、社会保障の仕組みをまったくなくしてしまうのも非現実的です。

 65歳以上の1人当たりの社会保障費は、2010年時点で253万円です。これは、ある現役家庭がリタイアした父母2人に、約500万円を毎年「仕送り」しているのと同じです。児童のいる働き盛りの世帯の平均所得は688万円なので、とても出せる金額ではない。制度自体に無理があります。

 さらに、この社会保障の総額は、高齢化などに伴って、毎年3~4兆円のスピードで増えています(年金、医療保険、介護保険などの合計)。一方、消費税を2%上げても、増える税収は年に4兆円かそこら。1年でチャラです。

 税金と、年金や医療、介護といった社会保障を合わせた「国民負担率」を見てみると、昭和時代は20%台だったのが、今や43.4%にも及びます。もはや、江戸時代の「五公五民」です。

 「国家が老後の面倒を見てくれる」「あらゆる薬や治療法についてサポートしてくれる」と考えるならば、働いても自由に使えるお金がほとんどなくなり、息苦しい社会になってしまうでしょう。

 社会保障は確かにありがたい仕組みですが、何事も行き過ぎれば悪となります。老後の生活や介護は原則自己責任と考え、家族や近所でサポートする仕組みを基本としなければ、社会保障費は増え続ける一方です。

参考