ストレスチェック

 平成27年12月から、うつ病など職場の従業員の心理的な負担を調べる「ストレスチェック」の実施が、従業員50人以上の事業所で義務づけられた。過労などでストレスを抱える労働者の増加を受け、「メンタルヘルス(心の健康)対策の強化・充実」が急がれていることが背景にある。   ストレスチェック制度はこちら

 従業員は年に1回希望制で「職業性ストレス簡易調査票」にある57のチェック項目に答える。その内容は、抑うつなどの心の状態、食欲や睡眠の状態、仕事の量や周囲の支えの有無など。調査結果は数値化され、一定以上の数値が出た場合は、「高ストレス者」に該当し、医師の面接指導を受けるよう勧められる。なお、医師と面接したい場合は、企業にその旨を申し出ることになっている。

 ストレスチェックの費用は全額、企業持ち。診断には従業員1人当たり500~1000円、医師の面談なども含めると数千円にふくらむ可能性もあり、企業への負担は決して小さくないという。政府はこれ以上、企業の競争力を弱めるような政策を採るべきではない。

 一方、従業員にとっても、「からだを大変よく使う仕事だ」や「一生懸命働かなければならない」など、業種や本人の仕事への情熱に大きく左右される項目に答えた結果をもとに、「高ストレス者」か否かを判定されるのは、真実性に乏しい。一定の条件の下で働いても、能力や体力、意欲によって個人差はあるはずだ。「リストラや降格の口実にされてしまうのではないか」という不安もついてまわるでしょう。

 企業が従業員のストレスに積極的に目を向け、カウンセリング体制を整えたり、職場環境を改善したりする動機づけになるという点では効果はありそうだ。だが、これは果たして「国が主導してやるべきこと」なのでしょうか。スイス人思想家のカール・ヒルティは自著『幸福論』の中で、「仕事は、人間の幸福の一つの大きな要素である」と説かれました。ストレスなどの仕事の負の側面よりも、仕事のやりがいや働くことの楽しさ、社会の役に立つ喜びが世の中に広く実感されることが望ましい。

 ストレスの原因となる悩みや苦しみは、宗教的に見れば、心を磨き、人格を向上させる材料です。人間の本質は「心」であり、多くの学びを求めて、あの世からこの世に生まれ変わってくる。そこで出会う悩みや苦しみには必ず意味があり、人生という一冊の問題集を解く中で、心の糧となっていく。悩みや苦しみが、単に人生に邪魔なものではないと捉えることは、ストレスをコントロールする力にもつながる。

 第一に、政府は不必要な法改正によって企業に介入し、活動を委縮させるべきではない。第二に、仕事に対して積極的な意味にも注目し、各企業・各人が潜在的な力を発揮できる環境を作るべきです。

参考

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