がんを癒す「免疫力」

NK細胞の戦力をアップさせる「免疫調整物質」ががん予防と治療の新たな可能性をひらく

参考

 免疫に関して最近特に注目されているのが「がん」との関係です。

 免疫システムの基本原理は、人間の体が「自己(Self)」と「非自己(Non-Self)」とを見分けて、非自己を攻撃することだとされています。たとえば、NK細胞が がん細胞を「こいつは自分(=その人の体)の一部ではないぞ」と認識して攻撃、破壊することです。

NK細胞

   ナチュラル・キラー(生まれつきの殺し屋)細胞といって白血球の一種です。白血球は血中に存在して免疫機能を担っている細胞で、なかでもNK細胞はその名の通り、がん細胞を退治する優秀な特殊部隊なのです。このNK細胞を活性化することが、がんの予防や治療に効果があります。

 NK細胞は、1970年代後半から1980年代初期に発見されました。1986年にハワイでの国際シンポジウムでようやく「NK細胞」という名前に決まりました。

 すると、今度は別の問題が出てきたのです。このNK細胞の由来は何でしょうか。同じく、白血球の一種であるマクロファージなのか、T細胞か骨髄か。NK細胞ががん細胞を殺すメカニズムの研究も始まりました。まだわからないことのほうがずっと多く、全体像は見えていませんが、少しずついろいろわかってきてはいます。

 がん というのはバクテリアやウィルスのように体の外から来るものではなく、体の中から発生するものです。先程の免疫システムでいえば、がん細胞は、もとはと言えば「自己」なんです。

 ところが、たとえば手の甲の皮膚の細胞が、長時間日光にさらされて皮膚がんになったとしましょう。その細胞を調べると正常な細胞とはまったく異なっています。細胞が新しい受容体を獲得して別の性格を持ち、もう「自己」とは呼べないものになっている。

 その結果、自分をコントロールする力を失ってどんどん分裂を繰り返すようになる。要するに、がん細胞を正常細胞から分ける違いを一言でいえば、細胞分裂に関して「自分をコントロールする能力を失っている」ということです。

 多くの要因が重なっていると思います。たとえばタバコを吸う人でも、がんになる人とならない人がいるし、タバコを吸わないのにがんになる人もいる。そこには飲酒、大気や水の汚染、屋内や屋外のいたるところで使用されている200種類以上もの、危険性のある化学物質などもかかわってくるわけです。最近は特に、遺伝的な要因も注目されています。

 そして、ストレスの問題も大きい。長期間ストレスの下に置かれるとNK細胞などの免疫が下がって、がんに対する防御機能が落ちていくわけです。これもがん発症の要因です。

・人間の体には「非自己」を攻撃する免疫システムが備わっている
・特にNK細胞は、がん細胞を攻撃する強い力を持っている
・がんとは細胞が何らかの理由で自己コントロールを失い、異常に分裂を繰り返すようになったもの
・物質的要因に加え、ストレスが体に影響してNK細胞などの免疫力が低下すると、がん細胞に対する防御機能が落ちてしまう

 通常は体の中でがん細胞が生まれると、NK細胞などがそれを発見して破壊します。

 私たちの体の中では、自分たちを守って勢力を広げようとするがん細胞と、がん細胞を殺して自らの役割を果たそうとするNK細胞の間で、まさに「戦争」が行なわれているのです。がん細胞には免疫細胞たちの力を弱める物質を分泌するという武器もあります。ですから、がんの予防や治療にあたっては、免疫システムの側を何かで強化してやることが大切になってくるわけです。

 ところが一つ問題があります。がんの治療は手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法を組み合わせるのが一般的ですが、抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞も大量に殺してしまうという副作用があります。抗がん剤の投与によってNK細胞その他の白血球も破壊され、免疫システムがダメージを受けるので、患者は他の感染症や新たながんにおびえなければならなくなる。

 そのため、第四の療法として「免疫療法」が研究されるようになりました。これは先ほどの三つの療法でがん細胞の絶対数を減らした後、体の免疫力を高めてやり、残ったがん細胞にその力で立ち向かうというものです。免疫の活性を高める「免疫調整物質」を求めて多くの学者が研究を重ねてきましたが、動物実験ではOKでも人体には有害な物もあり、難しさもありました。

NK細胞を強化する物質

 バイオブランは、アラビノキシランという物質の誘導体です。アラビノキシランは食物繊維の一種で、米やトウモロコシなどイネ科の植物の種子を保護している部分の成分を変性させたものであり、米では米ぬかの部分に含まれています。

 このアラビノキシランが、NK細胞を活性化する非常に優れた免疫調整物質であることがわかりました。その誘導体のバイオブランは、現在40ヵ国でがん患者に用いられ効果を上げています。日本でも機能性食品として販売されています。

 NK細胞には、がん細胞を攻撃するための「顆粒」というのがあるんです。銃の弾丸みたいなものですね。がん患者のNK細胞はこの顆粒を持たなくなってしまっているのですが、バイオブランを投与すると顆粒が飛躍的に増えるんです。いわば、空になった銃に実弾が補充される。

他の免疫調整物質と比べて優れている点
・自然界に存在する天然物質であり、副作用がまったくない
・比較的安価で製造できる
・免疫が早い時間で活性化し、しかも高レベルで長時間持続する

 まとめると
・私たちの体内では、がんと免疫細胞の「戦争」が行なわれている。
・抗がん剤(放射線治療も)には免疫の働きを弱める副作用があるので、この免疫を強化してやる「免疫療法」が研究されている。
・免疫調整物質の一つであるバイオブランは、NK細胞の「顆粒」を復活させ、がんと戦う免疫力をアップさせる効果がある。
・他の療法に免疫療法を組み合わせ、さらに本人の前向きな気持ちがあってこそ、治療に最大の効果が期待できる。

 私たちの心の中で起こっていることは、確実に免疫システムに反映してきます。逆もまた真で、体が疲れている時や病気の時は怒りっぽくなったりするでしょう。医者の多くが患者の心と体を切り離して見ているのは、間違いです。

 長期間ストレスの下に置かれると、NK細胞などのがんに対する防御機能が落ちていくので、ストレスをためないようにすることは予防の上でも非常に重要。心と体は密接につながっているのです。

 私たちの体の中では日々、がん細胞が生まれては消えている。それが根づいて大きくなれば、がんの病変だが、通常は免疫の働きが、がん細胞の増殖を抑えているわけです。

 

 がん をはじめとする生活習慣病の主たる原因はストレスだと言われている。ならば体の免疫力と同時に、毎日、毎時間のストレスをそのつど中和して消し込む「心の免疫力」も大事になってくる。

1 がんは「ハッピーな病気」だと考える

 心筋梗塞などでコロッと死ぬのは長く苦しまなくて楽だという考えもある。だが裏を返せば、いろいろなことをやり残して心残りを抱えたまま、ある日突然、人生のステージから引きずり降ろされる。逆に、脳梗塞で半身不随の寝たきりになったりすると、もちろん介護する家族も大変だし、本人も思考能力がどんどん鈍磨して最後は認知症のようになってしまう。この場合も、充実した人生のエンディングを飾るのは難しい。それに比べて、がんの場合は、いよいよ治らないとなってから何ヵ月か時間があります。その間に自分の人生の最終仕上げができるという意味では恵まれてると思う。最後まで意識がはっきりしていて、よい形で家族とのお別れができることも多い。「がんでよかった」と考えたほうが確かに気は楽になりそうです。

2 がんを受け入れ・諭し・委ねる部分も

 がんに負けない、がんと戦うという気持ちは大切。だが、ここに微妙な落とし穴がある

 病気に対してあまりに敵対心を持っていると、治療してもなかなか、よくなるのが難しいと思います

 がんは自分のそれまでの生活習慣がつくったものだから、生活習慣を変えようとするのはよい。だが、そこで過去の自分を否定してしまうのも得策ではない。

 「自分の過去は過去としてある程度受け入れ、自分の不完全さを許す。その上で病気という相手を、『いいか、よく聞けよ』という感じで諭していく。そうやってだんだん自分の心を入れ替えながら、病気とお付きあいしていくほうが良い。

 さらに、あまりにも(治さないといけない。自分が治そう)という気持ちが強過ぎる人より、(自分としてやることはやるけれど、あとは委ねよう)という姿勢の人のほうがよい経過をたどることが多い。

 病気への「敵対心」や過去の自分の「否定」、そして治癒への「執着」。これらの心は決してプラスの方向ではないため、かえって自分を苦しめている場合がある。受け入れ、許し、委ねる心も必要です。

3 「こんな自分でもできること」や「目的意識」を見つける

 あれもできない、これもできない。人がああしてくれない、こうしてくれない。これらは何のプラスも生まない非生産的な思考。「病気の自分にも何ができるか」と、人から「してもらう側」から「与える側」に回ることで、病状が好転するケースも実際にある。

 家族や病院の人に感謝を伝えるだけでも大きなことです。

4  最大のストレス「死の恐怖」を中和する

 人間にとって最大のストレスは自分の死。小さなストレスが解決できても死の恐怖という一番大きなストレスが残っていたら、それがずっと重荷になる。逆に死の問題がクリアできれば、他のストレスは比較的小さくなって気が楽になり、がん の経過にもプラス。最終的に治らなくても、笑って大往生できます。

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