心の成長

 「心(顕在意識)」は、生まれつきほぼ大枠が決定していますが、それは地上人生を通じてどのように変化していくのでしょうか。よく言われる「心の成長」とは、顕在意識(心)の中の「霊的意識の拡大」のことなのです。それは、顕在意識につながる「霊の心」そのものを、より神に近づけることになります。こうした形での霊的成長が、心の成長ということなのです。

 生まれつきの「心(顕在意識)」の大枠は決定していると言っても、それは、物質のように固定したものではなく、液体や気体のように柔軟性を持っています。特に、その中の「霊的意識」は、絶えず自在にふくらんだりしぼんだりします。その変化にともなって、心全体の中に占める「本能的意識」との比率が変化することになります。本能的意識は、脳という物質的存在に規定されているため、霊的意識のような柔軟性・流動性はありません。

 もし、人間が「霊的意識」を意図的に維持しようとしないならば、たちまち霊的意識は心(顕在意識)から締め出されたり、心の片隅に追いやられてしまいます。そして、「本能的意識」が心(顕在意識)全体を支配するようになってしまいます。必要な霊的エネルギーが上位の「霊」からもたらされないと、心の中に占める霊的意識は小さくしぼんでしまうのです。「心(顕在意識)」は、常にこうした流動的な状態に置かれています。

 生まれつき決まっている「心の大枠」とは、「霊的意識」が心全体をどの程度まで占めることができるかという可能性のことなのです。しかし、それはどこまでも生まれつき与えられている可能性であって、常にその通りになるというわけではありません。どれほど高い可能性を持っていても、意図的な努力をしなければ十分に霊的意識を発揮することはできません。

 「心(顕在意識)」の中の霊的意識を広げ、さらに引き上げていくことが「心の成長」ということなのです。霊的意識は利他性を指向し、本能的意識は利己性(自己性)を指向します。そのため、心の中では、絶えず利他性と利己性の葛藤が生じることになります。霊的意識の拡大(霊的成長)を別の言葉で表現するならば、「利他的な意識の拡大」ということになります。

 この「利他性の拡大」は、霊的意識に支配性・優位性をもたせるための努力(霊主肉従の努力)と、利他性そのものを引き出すような正しい育児・教育や社会環境・自己努力など、さまざまな体験を通じて達成されていくことになります。こうした後天的な努力によって、生まれつきの心の大枠は変化し、成長していくことになります。

 

「心の病気」発生の前段階とストレスの形成

 心が本能的意識に支配され、霊的意識の働きが阻害されるようになる(肉主霊従の状態になる)と、「霊の心」からのエネルギーの流入は極端に減少します。そして、「心(顕在意識)全体」がエネルギーの枯渇状態に陥ることになります。現代人の多くがこのような状況にあります。

 心の「肉主霊従」は、すでに「心を病んでいる」ということです。この段階ではまだ決定的な破滅・破綻レベルには至っていませんが、こうした状況が長引き、エネルギーの欠乏状態が深刻化すると、ちょっとしたストレスが引き金となって一気に破綻状態に至ります。

 「肉主霊従」という心の状態は、「慢性的な軽度の精神障害」なのです。本能的意識が中心となっている心では、自己中心性・自己愛が支配的になります。霊的成長とは利他愛の拡大のことですが、こうした自己中心的な状態では、いつまで経っても心は成長することができません。未熟な段階にとどまってしまいます。未熟な心・霊的エネルギーが枯渇した心は、外部からの刺激によって容易に心の中に「精神的ストレス」を生み出すことになります。

 精神的ストレスとは、絶望・恐れ・怒り・悲しみ・孤独といったマイナスの感情であり、心の痛みです。成熟した心・利他性が支配的な心では、外部の刺激に対して広い視野から対処し、それをストレスとして溜め込むようなことはありません。

 同じ刺激やトラブル・困難に遭遇しても、それをストレスにする人とそうでない人がいるのは、こうした理由によります。

 抱え込んだストレスの一撃が、心全体のバランスを大きく崩し、決定的に破綻させることになります。スピリチュアル・ヒーリングでは、精神的ストレス(恐れ・心配・悲しみ・怒り・絶望など)を心と肉体の病気の重大な原因とみなしています。ストレスは、もともとエネルギーの乏しくなっている心に強烈な打撃を与え、これを一気に破綻させてしまいます。

 また、ストレスは、顕在意識につながる「霊の心」をも乱すことによって、上位の「霊」にまで影響を及ぼし、「魂の窓」を閉ざして霊的エネルギーの摂取を制限してしまいます。同時に、霊的エネルギーの中継ポンプとしての「霊の心」の役割を果たせないようにして、霊体・肉体のエネルギーレベルを低下させます。こうして、ストレスは、身体全体の異常を引き起こします。まさに、ストレスは万病の原因なのです。

 ただし、ここで忘れてならないことは、ストレスの大半は、本人自身の心の未熟さと性格がつくり出しているという点です。真面目すぎる(生真面目)・気が弱い・人目を気にしすぎる・繊細すぎるといった性格の人は、そうでない人と比べ、ストレス(マイナスの感情)をさらに増幅させることになります。

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