若い世代に増えている非定型うつ病
非定型うつ病というのは、従来からあった定型的なメランコリー親和型うつ病とは少し違った症状があるタイプのうつ病です。最近のデータによれば、10~40歳代の若い世代に多くみられ、特に30歳代で圧倒的に多く、また、女性に多くみられるうつ病とも言われています。
うつ病の約30%近くが、この非定型うつ病ではないかと想定されています。ただ、青年期に非定型うつ病だった患者が、40歳、50歳と年齢を重ねていくにしたがい、やがて定型的なメランコリー親和型のうつ病に移行していく臨床例もあるようです。
非定型うつ病が従来の定型的なうつ病とどこが違うかについて、その項目を挙げると、
①気分反応性
②拒絶への過敏性
③過食
④過眠
⑤疲労感
の5つです。
「気分反応性」は、生活の中で良い出来事があれば気分が明るくなって舞い上がり、良くないことが起きれば意気消沈してひどく落ち込むといったように、周りの状況に気分が大きく左右されやすいというのが特徴的です。
「拒絶への過敏性」というのは、他者に拒絶されたり批判されたりすると、過敏に反応して気分が落ち込み、怒ったり、仕事や家事における大事な責任を放棄したりします。したがって、いつも誉めそやされていないと心が安定しないので、拒絶を恐れて対人関係を回避することがあります。
以上の2つが特に非定型うつ病を特徴づける症状といえます。
「過食」ですが、心を満たすかのようにむちゃ食いをするため、短期間に体重が増えたりします。
「過眠」は、とにかく眠くてたまらず、1日10時間以上眠ってしまうことが週に3日以上もあります。
「疲労感」は、極端に疲れやすく、体が鉛のように重く感じられる症状です。
これらは、いずれも単独では他の精神疾患でもよく見られます。
診断にあたっては、よく似た症状をもつ摂食障害や境界性パーソナリティー障害など、他の精神疾患との関連を見極めながら慎重に確認していく必要があります。また、非定型はパニック障害などのような不安障害との併発も多いのが特徴です。