マクロ経済スライド キャリーオーバー制度の導入

 マクロ経済スライドとは、賃金や物価の改定率を調整し年金の給付水準を引き下げて、年金制度が将来にわたって維持できるように調整する仕組みです。

 保険料収入と年金負担が均衡するまで毎年自動で年金給付を抑制するものです。年金は、これまで物価や賃金の伸びに合わせて引き上げられたり引き下げられてきましたが、調整をかけて徐々に年金の給付水準を引き下げて、納めた保険料と年金給付が均衡する所まで持っていくもの。年金制度が将来にわたって維持できるように調整する仕組みです。

 現在の給付水準は現役世代の給与水準の60%程度(モデル世帯:夫40年厚年40年・妻専業主婦で59.3%)ですが、年金額の伸び率を抑制することで2035年度までに50.2%になるまで低下させることにしています。

 

 2004年に年金改革が行われました。当時の坂口力厚生労働大臣が「100年安心の年金を作った」と発言したので、「100年安心プラン」と呼ばれている改革です。

 その主な内容は
(1)保険料を2017年までに18.3%にまで引き上げ
(2)賃金、物価の伸びに応じた給付の抑制
(3)基礎年金部分の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げ
の3点。

 「負担を増やし給付を減らす」内容です。

 政府は平成27年4月にマクロ経済スライドが発動されました。

 今後年金を下げ続け、物価が上がっても年金の引き上げは抑制されます。

 平成30年度から、その年度に調整しきれないスライド未調整分を翌年度以降に繰り越し、その繰越分を翌年度以降の賃金・物価が上昇した際に調整できるしくみに改定されます。

 マクロ経済スライドによる調整率(被保険者数の減少と平均余命の伸長を数値化したもので、毎年度変わる率)を仮に0.9%としています。

Ⅰ 賃金が1.2%上昇したと仮定します。 年金の改定率は、「1.2%-0.9%=0.3%」なります。

Ⅱ  賃金が0.5%上昇したと仮定します。 年金の改定率が「0.5%-0.9%=-0.4%」となり、調整すると前年の年金額より下がってしまうことになります。このような場合は年金額の改定は行わず、年金の名目下限が維持され、-0.4%については、景気が回復するときまで持ち越すことになります。

Ⅲ 景気回復期に賃金が1.4%上昇したと仮定します。  年金の改定率は、「(1.4%-0.9%)-0.4%=0.1%」となります。