増税が決まっていく仕組み

 ここでは増税が決まっていく仕組みについて解説いたします。

 税制改正は毎年行われる「年中行事」です。夏の終わりから翌年の春にかけ、省、内閣、自民党、国会など数多くの機関が審議を重ねて新税制を練り上げていきます。

 しかし、その大半が国民が見ていないところで行われます。

 まずは8月末、財務省が各省から税制に関する要望を集めます。

 その内容を集約したものが10月、内閣府に属する「政府税制調査会」で審議されます。

 次にその内容は11月「自民党税制調査会」で審議されます。

 そこで決められた税制改正案は、12月与党によって「税制改正大綱」という形でまとめられます。ここで初めて国民は新税制の全貌を知らされます。

 それを元に作成された「税制改正法案」が翌1月、内閣によって国会に提出されます。

 たいていは与党が賛成票を投じ3月には新税制が法律として成立し、公布されます。

 最近では、主に財務省が各所に「根回し」を行い、自分たちの思ったような税制が実現されるように誘導していることが多いようです。

 例えば財務省は、今回の所得税増税についても、安倍晋三首相にしっかりと根回しをしていたと言われています。

 安倍首相は今、「与党勢力を維持するために、公明党のご機嫌をとりたい」と思っています。公明党は、「消費税率を上げた時に、軽減税率を導入すること」を支持者に約束しています。安倍首相としても、それを叶えてあげたい。

 そこで財務省は首相に、「軽減税率を導入する代わりに、その穴埋めとして、所得税を上げましょう」とささやき、了承を取るわけです。

 同様のレクチャーを、与野党の大臣や議員などにも行います。そのため、複雑な過程にも関わらず増税案がスムーズに通っていくのです。