時間単位の年次有給休暇

 労働基準法39条では休日以外のまとまった期間の休みを付与を目的に、年次有給休暇を定めています。このまとまった期間の休みの付与が、労働者の心身の疲れを回復させることによって、労働生産性向上が見込まれています。

 労働基準法39条の目指す「ゆとりある労働生活の実現」では、年次有給休暇を細切れではなく、1日や半日といった形で、土日祝日と併用して旅行などを可能にすることを意図している部分がある一方で、1時間単位での使用の要望もあります。そこで、労働基準法39条では、時間単位年休を認める一方でその使用日数を上限5日までとすることでバランスを図っています。

 1日の所定労働時間が7.5時間の会社では、1日の労働時間は1時間単位に切り上げられるので、1日の時間数は8時間ということになり、5日の時間単位年休を付与する場合には、40時間分の時間単位年休があるということになります。

 時間単位年休制度はフレキシブルな働き方の実現を目指すものなので、1時間以外の時間をたとえば、2時間などとすることもできます。その場合には、その時間数を会社で規定することが必要となってきます。

 ただ、合計40時間というのは、1日8時間のフルタイム勤務の場合のことです。

   8時間 × 5日 = 40時間

 1日5時間勤務のパートの場合は25時間となります。

   5時間 × 5日 = 25時間

 1日5時間30分勤務のようなパートの場合は、時間単位の繰り上げで6時間で考えます。

   6時間 × 5日 = 30時間

 なお、年休の取得手続きでは病気欠勤で事後報告での年休振替を認めることがあると思いますが、1日単位の年休の取得手続きでは、事後報告での年休振替を認めず、事前申請としてください。というのは、遅刻常習の人が遅刻を1時間年休振替をしょうとするからです。

 

労使協定の締結

 時間単位の年休制度を取り入れるには労使協定を結ぶ必要があります。

労使協定に規定する内容

(1)対象労働者の範囲(労働基準法39条4項1号)

 一斉に作業を行うことが必要とされる業務など、時間単位の年休取得になじまない仕事をしている労働者があり得るため、時間単位年休の付与が事業の正常な運営と両立しない場合には、時間単位年休の対象者から除外することが可能です。

 ただし、年次有給休暇の利用目的は労働者の自由であることから、育児を行う労働者に限定するなど、利用目的によって時間単位年休の対象労働者の範囲を定めることはできません。

(2)時間単位年休の日数(労働基準法39条4項2号)

 まとまった日数の休暇を取得するという年次有給休暇制度本来の趣旨に鑑み、時間単位年休の日数は年間5日分が上限とされています。  

 前年度に取得されなかった年次有給休暇の残日数・残時間数が翌年度に繰り越されている場合でも、当該繰り越し分も含めて5日以内です。

(3)時間単位年休1日の時間数(労働基準法施行規則24条の4第1号)

 1日分の年次有給休暇が、何時間分の時間単位年休に相当するかを定める必要があります。

 所定労働時間数に1時間に満たない時間数がある労働者にとって不利益にならないようにする観点から、時間単位に切り上げて計算します。  

 たとえば、所定労働時間が7時間45分で5日分の時間単位年休を与える場合は、7時間45分を8時間に切り上げます。その結果、時間単位年休は40時間(8時間×5日=40時間)となります。

(4)1時間以外の時間を単位とする場合の時間数(労働基準法施行規則24条の4第2号)

 時間単位年休の取得単位を1時間以外の時間単位とする場合は、2時間、3時間など、その時間数を規定します。  

 労働基準法施行規則24条の4第2号において、「1日の所定労働時間数に満たないものとする」とあるのは、1日の所定労働時間数と同じまたはこれを上回る時間数を取得単位にすることは、時間単位年休の取得を事実上不可能にするものであることから、そのような労使協定の定めはできないことを確認的に規定しているものです。

 

 なお、半日単位の年次有給休暇は、労使協定を締結しなくても就業規則に規定するだけで導入できます。