「教育無償化」によって、むしろ「学習塾」のニーズが増える

 教育の無償化によって考えられるのは、学校の教育の「質」が落ちていくこと。「顧客」が身銭を切らなくなり、教える側の競争原理が働かなくなるためだ。こうした中、家庭は子供を受験勉強で勝ち抜かせるために、無償化で浮いたお金を、そのまま塾に使う。

 「大学無償化」も、学習塾ニーズを喚起する。大学の授業料を無償化することで、大学への入学希望者が増え、受験競争がさらに熾烈になる。高所得の家庭ほど、子供をいい大学に通わせるために、さらに塾代に投資する。

 また、受験競争激化に備え、高所得の家庭は、早くから子供に高度な教育を受けさせようと、高校受験、中学受験、そして小学受験に取り組む。そしてまた子供を、塾に通わせる。

 「教育無償化」は、家庭環境による教育格差を緩和するために持ち上がったもの。しかし、結局、高所得の家庭が有利になる構造が強まっていくことになる。

 「教育無償化」のひとつの盲点は、子供たちは、たとえ同じ公立学校に通っていても、学校の外で「所得格差による教育格差」にさらされるという点です。

 日本の家庭が塾や家庭教師などの「補助学習費」に費やすお金は、公立小学校で年平均8.6万円、公立中学校では年平均24.5万円、公立高校で年平均13.4万円だ(文部科学省「平成26年度子供の学習費調査」)。

 教育無償化で教育の質が下がれば、家庭はさらに多くの塾代を出さなければいけなくなるのです。

 本気で教育の”所得格差”を是正するつもりであれば、日本全体の学校教育の質を高め、教育力を底上げすることから始めなければならないのですが。