ブラック企業

 「ブラック企業」は、もともと詐欺などの違法行為を生業にする企業を指す言葉であった。しかし、長引くデフレ不況でコスト削減が進み、従業員に長時間労働や過剰なノルマを課す企業が増えたことで、労働条件の厳しい企業を広く ブラック企業 と呼ぶようになった。 

 確かに、故意に違法な行為をしていて、改善する気のない企業は問題です。しかし、上司が厳しいとか、忙しくて休みが取れないというケースを ブラック にすると、日本企業のほぼ全部がブラック企業になってしまいます。

 そもそも、ブラック企業 という言葉は定義が曖昧です。「何をもって ブラック と言っていますか」と尋ねても、人それぞれ全然違う基準を言います。自分に都合の悪いことを ブラック と言う労働者が増えている。

 ハローワークというひとつの政府機関が、ブラック企業を「定義」することになり、政府に強い権限が付与されることになる。すると、金融機関の融資査定に大きな影響を及ぼすのみならず、政府が「求人受付拒否」をちらつかせ、企業に何らかの圧力を与えることも可能となる。企業にとっては「規制強化」そのものと言えるでしょう。

 長時間労働、残業代の不払い、過剰なノルマ、パワハラ・・・世間から「ブラック企業」のレッテルを貼られることは、企業にとってはイメージダウンとなり、業績の大幅減、事業存亡の危機に直結する。

 それに、ブラック企業批判はいつどこから生まれるかわからない。「まるか食品」製造のカップ焼きそばにゴキブリが混入していた事例や、「日本マクドナルド」が販売したナゲットやポテトに異物が混入していたといった不祥事は、労働環境に不満を抱いた従業員によるものと見る向きもあり、そこで新たにブラック企業の嫌疑をかけられてダメージを受けるケースもある。

 企業も、こうしたレッテル貼りを回避するのに必死です。厚生労働省は、2013年度から「若者応援企業」の宣言事業を始めた。これは、離職者数や有給休暇取得状況の開示などを公表する中小企業が、自らを「若者応援企業」と大々的に宣言することで、ハローワークに優先的にPRしてもらえるというもの。これは、、事実上政府が企業に「お墨付き」を与える仕組みです。

 もちろん、法律違反が横行している本当のブラック企業なら問題であり、公の場できちんと正されるべきです。だが、同じ条件下でも生き生きと働いている従業員もいる。様々なケースがあるのに一律に「ブラック企業」呼ばわりするのは彼らに対して失礼でしょう。

 幸福の科学大川隆法総裁は、ブラック企業批判について次のように述べている。

 「経営者には、一定の厳しさが要るだろうとは思うのです。その厳しさのところを、単に、『ホワイトか、ブラックか』と考えるようでは、『甘い』と思います。『与える愛』の考えとして、単に『ホワイト企業』と言われる『非常に優雅で、楽な生活ができる会社』のようなものを理想としているのなら、それには、厳しいものがあると言わざるをえません」(『経営が成功するコツ』)

 会社から好条件を与えられることを望んだり、政府のような大きな組織に頼ったりするのではなく、「たとえ厳しい環境であっても、自分には何ができるか」を考える個人が増えてこそ、この国の富の総量も増えていく。今こそ、自ら智慧を絞って努力する人を肯定し、真の意味での「ブラック(黒字)企業」を目指すべきではないでしょうか。行き過ぎたブラック企業批判は、そうした資本主義精神を傷つけかねない。

 参考

企業を苦しめる労働法の規制

 ブラック企業批判は新たな「労働運動」とも言えそうです。実際、共産党などは「労働規制の緩和が原因なので、もっと労働者を保護すべきだ」と主張するが、果たしてそうでしょうか。

 本来、雇用契約は、企業と労働者が自由な合意に基づいて結ぶことを原則とする。しかし、組織や資本を持つ企業と労働者は対等ではないとして、労働者側を保護する法律が整備されてきた。ただ、労働者の権利のみを拡大することは、企業を苦しめ、かえって労働者の首を絞めることになる。

 労働契約法によって、企業は正社員を解雇することが極めて難しいのが現状です。ミスが続いて会社の評判を落としたり、会社の方針に反対したりしても、それだけでは解雇できない。

 そのため、企業側は、厳しいノルマを課したり、逆に意味のない仕事をさせたりして、自分の意思で辞めてもらおうとする。

 彼らの言う「ブラック企業」を減らすには、逆に労働規制を緩和した方がよい。解雇できるが、再就職や転職もしやすい。雇用の流動化を進めた方が現実的だからです。

 ここでは労働時間だけが問題となり、何を生み出したかは問われない。この発想の根底には、「商品の価値は、商品を生産するための必要労働時間によって決定される」というマルクスの労働価値説がある。同じ時間働いても、人によってアウトプットは異なる。それを労働時間だけで管理せよというのは酷な話です。

 既に、日本は従業員雇用のために相当な努力を払っている。日本の「労働分配率」は、71%と諸外国よりも高い。これに加えて、厚生年金や健康保険など、従業員の社会保険料の負担が増え、「パート社員にも福利厚生を充実させよ」「派遣切りをするな」などと言われたら、企業は雇用をためらい、働く場所そのものがなくなる。

 労働基準監督官 とは

ブラックか否かは価値観次第

 「市場価値が高まる優良企業ランキング」の上位に名を連ねる企業は、その一方でブラック呼ばわりされ、非難されがちです。

 そうした企業は、ハードワークでノルマが厳しく、上司からのプレッシャーも強い反面、短期間でさまざまな経験ができ、成長できるメリットがあります。

 結局、ブラック企業批判は、「価値観の衝突」によるものだと言えます。仕事に何を求めるかは、人それぞれです。給料やブランド、知名度、やりがいや成長する機会、残業がないなど、何を重視するかは価値観の違いに過ぎません。

 もし、残業なしで休日をしっかり取りたいタイプの人が、成長意欲の高い企業をブラック企業と批判するならば、筋違いではないでしょうか。

 

「ブラック企業」呼ばわりされる主な基準

1 給料以上に働かされる    

  長時間労働で低賃金    

  サービス残業・徹夜が常態化    

  残業手当が払われない

2 過酷な労働環境    

  過剰なノルマを課される    

  業績が悪いと厳しく叱責される(パワハラ)    

  休みが取れない    

  ベンチャー企業、新興成長企業で変化が激しい

3 人を使い捨てにする    

  福利厚生が不十分    

  成果を出さないとすぐ解雇    

  離職率が高い

参考

本当にブラック企業ならばいずれ淘汰される

 そもそも本当に従業員を使い捨てるだけの会社であれば、永続的に発展することはない。

 もし、ほとんどの従業員が「わが社はブラックだ」と思っている会社があるとしたら、遅かれ早かれ淘汰されるでしょう。

 企業の業績は、いかに従業員の能力を引き出し、生かすかによって左右される。社員の士気を下げることは、提供する商品やサービスの質の低下につながり、結果的に顧客に見放されることになるからです。

 企業は厳しい経済環境の中で成長を求め、努力と工夫を重ねている。その「資本主義の精神」を破壊しかねない、「流行」を看過するわけにはいかない。

 

条件ばかり気にする若者

 経営者はビジョンを示すことが一番大事な仕事ですが、ブラック企業批判をする若者たちは、ビジョンではなく、条件ばかりを重視します。それは、他人と自分を比較しているからです。自分の仕事にやりがいを見出せていないために、他の人の給料や待遇が気になるのです。

 しかし、仕事は量が質を作るので、最初の3年間くらいは仕事のやりがいや面白味など分からないと思います。地道に基礎を積んで、「自分はこれでやっていくんだ」という実感をつかんだころに、仕事のやりがいが時々見えるようになるのです。就活時点で仕事のやりがいなど分かるはずがありません。

 

魅力的な企業づくりを

 企業側としては、残業代など本来払うべきものを払えるビジネスモデルをつくる努力は必要です。特に、景気が良くなってくると、アルバイトも含めて人材の取り合いになります。

 その時、ミッションやビジョン、成長性、待遇など、何か自社で働くメリットが見出せないと採用も難しくなります。魅力的な企業をつくることが大切ではないでしょうか。

 ブラック企業という言葉が広まって、就活する学生はとてもナーバスになっています。1ヵ月に40時間以上残業をしている企業は ブラック と判断している就活生もいるようですが、それだと日本の多くの企業はブラックになってしまいます。

 しかし、企業とは本来、世の中に役立つために存在していることを忘れてはいけません。経営者はブラック企業批判など気にせず、新しい製品やサービスを生み出して事業を発展させ、世の中を変えていくことを目指すべきです。

 事業は実績が物を言います。例えば、アップルがアイフォンを開発していた時は、社員はブラック企業並みの働き方をしていたはずです。スティーブ・ジョブズは相当激しいワンマン社長でしたが、素晴らしい成果を出して世界中の人々のライフスタイルを変えました。経営で重要なのは、プロセスよりも、結果的に社会に貢献して人々を喜ばせたかどうかです。

働き方改革 へ

「仏法真理」へ戻る