宇宙の始まりの謎に迫る

 東京大学などの研究チームが、欧州原子核研究機構(CERN)で、反物質でできた最小の反原子である「反水素」を作成し、ビーム状にすることに成功したと発表した。

 反物質とは、電子や陽子などの物質と比べて、質量などの性質が同じで電荷の正負が反対のものをいう。たとえば、プラスの電荷を持つ「陽子」の反物質は「反陽子」でマイナスの電荷を持っており、マイナスの電荷を持つ「電子」の反物質は「陽電子」でプラスの電荷を持っている。今回ビーム状にできた反水素は、反陽子ひとつと陽電子ひとつでできている。

 これまでも反水素を作ることはできていたが、できた途端に四方に飛び散って壁にぶつかって壊れてしまったり、飛び散らないように強い磁場をかけると、その性質が調べられなくなってしまっていた。

 今回研究チームは、陽電子を雲状に集めた中に反陽子を送り込み、そこでできた反水素をビーム状にして2.7メートル離れた検出器に送ることに成功した。この方法で反水素は80個検出できた。

 今後、この反水素ビームを調べることで、反物質の性質を研究できると期待されている。

 宇宙の始まりのビッグバンの時、物質と反物質は同じ量が存在し、互いにぶつかり合うことで両方とも消滅してエネルギーに変わるという現象が起きたと考えられている。すると、物質も反物質も消えてなくなってしまうはずだが、なぜか、この世界には物質だけが存在している。反物質の研究は、「宇宙の始まり」の謎に迫るものである。