量子テレポーテーション

 テレポーテーションは、人や物を瞬間的に遠隔地に移動させる手法で、SFの世界では古くからあるアイデアである。テレポーテーション(瞬間移動)という言葉を耳にすると、「SF映画やアニメの世界」で、目の前の物体が姿を消したと思えば、瞬きをする間に別の場所に現れることを想像する人が多いことでしょう。

 テクノロジーによる方法もあれば超能力者の技として出てくることもあるが、いずれにしても想像の産物に過ぎなかった。スタートレックの転送技術も、たとえ遠い将来であっても到底実現するとは考えにくい。しかし1990年代に入ってから、非常に微かだが光明が見えてきた。スタートレックの転送技術のネックは量子レベルの不確かさであったが、この方法はそれを逆手に用いたものである。そのテレポーテーションが、全く非現実的なアイデアではなく、次世代の通信技術と目される量子通信では「量子テレポーテーション」が応用されており、まさに「遠隔地への瞬間移動」を通信に活用しようとしている。

 

量子テレポーテーション

 光の粒子(光子)や電子の量子的な性質を通信に応用し、遠隔地にいる受信者に情報をほぼ瞬時に届けられる技術である。暗号通信に応用すれば、盗聴されるとすぐに量子通信の特徴から突き止めることが可能で、通信の遮断などの対策を打てるようになるという。

 量子通信に使われる量子テレポーテーションを理解するカギは「量子もつれ(量子エンタングルメント)」で、これなくしては量子通信そのものも語れない。

この「量子エンタングルメント」とは、異なる系の量子がもつれ合い、同じ状態を共有するというもの。つまり、もつれ合いの状態にある2つの量子のうち、どちらか1つの量子の状態を測定すると、もう一つの量子の状態も確定されるということである。一方の量子から他方の量子へ情報が瞬間移動(テレポーテーション)したように見える、不思議な性質と言える。

 まず、AさんとBさんがエンタングルメントの関係にある2つの粒子AとBを1つずつ持ちます。そして、月と火星とに別れてから、Aさんはテレポートしたい第3の粒子Cと自分の粒子Aとでエンタングル測定という測定を行います。これは、AとBのエンタングルメントを断ち切ってCとAとをエンタングルさせるようなものです。このとき、粒子Bはどのような状態を取り得るかというと、エンタングル測定の4通りの測定結果に対応して、4通りの状態のどれかを取ります。ここで重要なことは、この段階ではBさんの粒子Bの状態は特別な場合を除いて必ずしもテレポートしたい粒子Cと同じ状態になっていないということです。つまり、量子エンタングルメントだけではテレポーテーションは完成しないということです。そこで、必要になるのが古典通信です。Aさんが通常の通信手段で自分の測定結果をBさんに知らせてやることにより、Bさんは自分の粒子Bの状態を100%粒子Cの状態に変換することができます。こうして、古典通信の助けを借りることで量子テレポーテーションが完成するのです。

 

テレポーテーションの実用と応用

 量子テレポーテーションが、1つの粒子の量子状態だけではなく、もっと大きな物質でも実現されるとすれば、人類が今まで発明してきた輸送方法にとって一大変革になるでしょう。しかし、現在のところ、テレポーテーションの成功例として報告されているもっとも大きな物質は原子です。さらに大きな物質となると量子状態が壊れやすいため、技術的には非常に難しいと考えられます。しかも、ここで「大きな物質」と言っているものも、量子力学が扱う対象として大きいという意味であり、実際にはSTM顕微鏡(走査型トンネル顕微鏡)のようなものを使わないと見えない程度の大きさなのです。

 量子テレポーテーションは、物質を運ぶ装置よりもむしろ情報通信処理に役立つでしょう。その1つが量子コンピュータです。実用化には技術的な難問がまだまだ多く残っていますが、量子コンピュータの量子レジスター上にいわゆる量子テレポーターみたいなものを沢山構築することができれば、量子コンピュータの性能を一層飛躍させることができるかも知れません。

 

可能性の数だけ世界が存在する多世界解釈

 状態の重ね合わせを前提とする量子力学では、この「重ね合わせ」というものはそもそも何かということが議論の対象となります。この議論は「量子力学の解釈問題」と呼ばれています。  量子力学が登場するまで、実在は人間の観測とは関係なく客観的なものだと考えられていました。しかし、量子状態の重ね合わせは観測によってある状態に収縮します。では、実在は客観的なものではないのでしょうか。  現在正統とされている量子力学の解釈は「コペンハーゲン解釈」と呼ばれております。  

 それに対して、いくつかの解釈が提唱されています。その1つに「多世界解釈」があります。多世界解釈では、重ね合わせの数だけ世界が分岐し並行世界が存在するとされています。観測によって状態が1つに収縮するのではなく、観測により2つの並行世界が出現するのです。観測者自体が観測により分岐し、どちらか一方の世界しか知り得ないため、1つに収縮したように思えるというのがこの解釈の主張なのです。実用的な量子コンピュータが実現されれば、この多世界解釈が実証されることになるという解釈もあります。その目的で量子コンピュータが考え出されたらしい。

 アインシュタインの特殊相対性理論によれば、物体の速度が光速に近づくにつれて、その質量が増える。光速で飛ぶ物体は、無限の質量を持つことになる。重さ1キログラムの物体でも、宇宙全ての物質を足した重さより重くなってしまうのです。

 さらに、同理論によると、光速を超えた物体の時間は逆流することになる。例えば、近くの恒星に光速を超える速度で行き、光速を超える速度で帰ってきた場合、「出発する前に地球に帰ってくる」といった矛盾が生じることもある。そのため、光速を超えることは不可能だとも言われる。

 しかし、一部の科学者たちは、それでも何とか光速を超えられないかということを検討している。もし、目的地との距離を縮めることができれば、それは「光速を超えたことと同じようなもの」となるからです。

 

量子もつれ

 「量子もつれ」という、今物理学でもっとも注目を集めている分野・現象の一つが、この問題を解決できるかもしれない。

 「量子もつれ」とは、2つの粒子が、「0秒」(瞬時)で情報を交換しているように見える現象です。

 アインシュタインが考え出した有名な E=mc2 の式(エネルギー=質量×光速の2乗)によれば、エネルギーは物質に変わることがある。

 例えば、東京と大阪の中間地点で、エネルギーが物質に変わったとします。こうしてできる物質は2つの粒子である。これらのうち1つが東京に向かい、もう1つが大阪に飛んでいったと仮定する。このとき、東京側の粒子に「何か」をした場合、大阪側の粒子にも同時に影響が出る。2つの粒子の距離に関係なく 0秒で、これは量子力学上、2つの粒子が一対のものであることに起因している。これが「量子もつれ」である。

 私たちが経験から知っているように、この宇宙で私たちが直接に影響を及ぼすことのできる物体は直接触れているものだけである。しかし、量子力学によると、「量子もつれ」という性質がもたらす遠隔作用が存在し、2つの粒子が何の媒介もなしに同期して振る舞う。この非局所効果は、単に直観に反しているだけではない。アインシュタインの特殊相対性理論に深刻な問題を投げかけ、物理学の根底を揺るがすものです。

 量子もつれとなる特性はいろいろある。例えば,それぞれの自転の向きがはっきり決まっていないにもかかわらず、反対向きに自転していることが確実な2個の粒子がありうる。量子もつれは、粒子がどこに存在するかによらず、粒子が何であるかによらず、互いにどんな力を及ぼし合っているかによらずに,2つの粒子を関連づける。原理的には,銀河の両サイドに遠く離れた電子と中性子が量子もつれになっている例も考えられる。

 一方で、量子もつれは「非局所性」という非常に気味悪く徹底的に直観に反する現象を引き起こす。対象に触れず、そこまでつながったどんな実体の連鎖にも触れることなく、物理的影響が及ぶ可能性が生じるのです。

 非局所性の最大の問題は、その圧倒的な奇妙さを別とすると、特殊相対性理論に重大な脅威をもたらすという点である。ここ数年で、この昔からの問題がついに物理学の真剣な議論の対象となった。議論の行方によって、物理学の基盤は最終的には崩れるか、歪められるか、再創造されるか、確固たるものになるか、あるいは腐敗のタネがまかれることになるでしょう。

 アインシュタインは量子力学にかなり多くの疑問を感じていた。「神はサイコロ遊びをしない」という彼の言葉とともに、よく知られている量子力学の気まぐれさに対する懸念は、その一例にすぎない。彼が公式に明瞭に異議を唱え、わざわざ論文まで書いた唯一の反論は、量子もつれの奇妙さに関するものであった。3人の著者、アインシュタインとその共同研究者であるポドルスキー、ローゼンの名をとって「EPR論文」といわれるものがそれです。「物理的実在の量子力学的記述は完全と考えられるか?」と題された1935年のこの論文で、彼らは自分たちが提起した問いに確固たる論考をもって「No」と答えた。

 これに対して、物理学者 ニールス・ボーア が反論したことはよく知られている。その後、非局所性に関する議論は長らく物理学研究の表舞台にのぼらなかったが、アイルランド人物理学者 ベル による1960年代の理論研究や、フランスの実験物理学者 アスペ らによる1980年代以降の実験などによって、物理世界の非局所性が確証された。

 特殊相対論は局所性を少なくとも前提にしている。量子力学に現れる非局所性は「絶対的な同時性」を要求するようで、特殊相対論にまさしく不気味な脅威をもたらす。特殊相対論が世に出て100年余りたったいま、その状況は突如として疑問だらけとなった。これは、量子力学に対するアインシュタインの長く忘れられていた未完成議論を、物理学者と哲学者がついに完遂したことから生じた。アインシュタインの天才ぶりを示すもうひとつの証拠となった。

量子のもつれ 物理的実在論と量子的実在論

宇宙航行するなら通信手段も進歩が必要

 最近は宇宙映画が多いが、人類が実際に宇宙に出て行こうと思ったら、宇宙航行の方法だけではなく、通信手段も、現在の常識を超える進歩を遂げる必要がある。実は、「量子もつれ」という、今物理学でもっとも注目を集めている分野・現象の一つが、この問題を解決できるかもしれない。

 「量子もつれ」は、2つの粒子が「0秒」(瞬時)で情報を交換しているように見える現象である。アインシュタインが考え出した有名な「E=mc2」の式(エネルギー=質量×光速の二乗)によれば、エネルギーは物質に変わることがある。

 例えば、東京と大阪の中間地点で、エネルギーが物質に変わったとする。こうしてできる物質は2つの粒子である。これらのうち1つが東京に向かい、もう1つが大阪に飛んでいったと仮定する。このとき、東京側の粒子に「何か」をした場合、大阪側の粒子にも同時に影響が出る。2つの粒子の距離に関係なく 0秒で起こる。これは、量子力学上2つの粒子が一対のモノであることに起因している。

 

「量子もつれ」を使った情報通信は光速を超えるのか?

 「量子もつれ」を利用した情報通信は「量子テレポーテーション」とも呼ばれる。もし、これを通信技術として実現できれば、現在では考えられないほど速く、安全な情報交換が可能となる。しかも、距離に関係なく瞬時に伝わるので、火星と地球の通信でも12分もかからない。

 もっとも、「量子もつれ」の現象は観測されているものの、理論的に解明できておらず、それが本当に「光速を超えている」かどうかはわかっていない。しかし、この現象を利用したコンピューターや、新しい情報暗号化の方法の研究が、世界中で行われている。

 オランダのデルフト工科大学の研究チームは、3メートル離れた2つの地点の間で、情報を100%の精度で瞬間移動させる実験に成功した。これは「量子テレポーテーシション」と呼ばれる現象です。1つの光の粒子を2つの量子に分裂させたとき、片方に情報をインプットすると、もう片方に瞬時に伝わるという原理を用いたものである。東京大学の古澤明教授が世界で始めて「完全な実証」に成功し、世界を驚かせた。

 この原理の応用の対象として、最も期待されているのが「量子コンピュータ」の実現です。今まで数万年かかると言われていた複雑な計算を、数分でできるようになり、産業や生活にも大きな進歩をもたらすという。

 この原理には、さらに驚くべき可能性がある。同大学のハンソン教授は、「人間をひとつの原子の集合体と捉えれば、原子の集合体のテレポーテーションも可能」と述べている。つまり、未来には人間のテレポーテーションも可能になるかもしれないということである。

 光速を超える情報交換の手段ができれば、大規模な宇宙航行の手がかりになるかもしれない。今後の研究成果に期待したい。

 

「量子のもつれ」と「不確定性原理」

 テレポーテーションは、人や物を瞬間的に遠隔地に移動させる手法で、SFの世界では古くからあるアイデアである。テクノロジーによる方法もあれば超能力者の技として出てくることもあるが、いずれにしても想像の産物に過ぎなかった。スタートレックの転送技術も、たとえ遠い将来であっても到底実現するとは考えにくい。しかし、1990年代に入ってから、非常に微かだが光明が見えてきた。スタートレックの転送技術のネックは量子レベルの不確かさであったが、この方法はそれを逆手に用いたものである。

 東京大学の古澤明教授らが、光の速さを超えて情報を伝達することができる、完全な「量子テレポーテーション」に成功したという論文が、2013年8月の英科学誌ネイチャーに掲載されました。

 ここで言う「テレポーテーション」は、物質の瞬間移動ではなく、情報を瞬時に伝えることを指しています。

 「量子テレポーテーション」は、「小澤の不等式」と並んで、スーパーコンピュータをはるかに超える能力を持つ「量子コンピュータ」の基礎になる技術です。 

原子や電子といったミクロの世界では、我々が普段生活している世界では起きないことが起きます。その仕組みを明らかにするのが量子力学です。「量子テレポーテーション」で使われているのは、量子力学の中の「量子のもつれ」「不確定性原理」です。

 「量子のもつれ」とは、光子を二つに分割すると、二つの光子がまるで一つの光子のように、一体となって振る舞うことをさします。二つに分けた光子を情報の送る側と受ける側に分け、送る側の光子に情報を送ると、受ける側のもう一方の光子も同じく変化します。このとき、光の速さを超えて情報が伝わるのです。

 送る側の光子に情報を伝えるときに利用するのが「不確定性原理」です。ミクロの世界では、位置と運動量を同時に正確に測ることができない、ということが起きます。位置を測ると運動量(質量と速度を掛けたもの)が変化し、運動量を測ると、その間に位置は変わってしまいます。これを利用して、送る側の光子の位置を測定することで、受ける側のもう一方の光子の運動量を変化させて、情報を伝えるのです。

 古澤教授らは、これまでは光子の粒としての情報を送っていましたが、今回は光子の波としての情報を送ることで効率を100倍以上にでき、伝達率を61%まで高めたとのことです。

 今までのコンピュータでは数万年かかってしまう複雑な計算を、たった数分間でできるようになる「量子コンピュータ」が、また一歩実現に近づきました。

 スーパーコンピュータ「京」。その計算速度は世界トップクラスですが、「量子コンピュータ」というそれよりもさらに速いコンピュータの実現に一歩ずつ近づいているようです。

 きっかけは東北大学と名古屋大学がこのほど、量子力学の基本原理の1つである「ハイゼンベルクの関係式」が破れている(成り立たない場合がある)ことを証明する「小澤の不等式」について、実験での検証に成功したと発表したことです。

 「ハイゼンベルクの関係式」とは、原子などミクロの世界で、ある粒子の位置と運動量(重さに速度を掛けたもの)を同時に正確に測定することはできないというものです。

 しかし、名大の小澤正直教授はこの「ハイゼンベルクの関係式」の破れを発見し、より正確に表した「小澤の不等式」を2003年に発表しました。「小澤の不等式」では誤差ゼロの測定ができることになります。今回はこの「小澤の不等式」が、理論だけではなく、光を使った実験でも、正しいと証明されたのです(中性子での実証実験は2012年に行われています)。

 「小澤の不等式」は、従来のコンピュータに比べて数千万倍の速さで計算できる、「量子コンピュータ」の基礎研究の一つ。今回の証明で、さらなる研究の進展につながることが期待されます。

 従来のコンピュータでは、集積回路の部品であるピン1つについて、0か1のどちらかの数字だけが指定できます。このピンを複数個並べることで2進法で1つの数字を表し、電流を流して計算します。ピンをたくさん並べれば、計算は速くできるようになりますが、コンピュータをその分大きくしなければなりません。

 「京」などのスーパーコンピュータになると、建物を埋め尽くすほどの大きさになってしまい、この方法では実現できる速さに限界があります。そのため、従来のパソコンで桁数の大きい素因数分解などの難しい計算をしようとすると、数十億年単位の時間がかかってしまうとも言われます。

 しかし、量子コンピュータでは、1つのピンに0、1、2、3・・・と、いろいろな数字を指定できるようになり、計算の効率が高まります。これによって、小さなコンピュータで、今のスーパーコンピュータの能力を超えることも期待できます。暗号解析など、今のスパコンでも数十年かかっていた計算を数十秒でできるようになります。

 また、量子コンピュータは「テレポーテーション」の開発にも役立つ可能性があります。あるイギリスの大学生の研究チームは、1人の人間をテレポーテーションさせるために、その人の持っている情報(肉体と精神)を解析し、送り先に届けて再構築する方法を取ったとき、その人の情報を転送するには、140億年の35万倍かかるという試算を出しました。あまりに時間がかかりすぎますが、こうした情報のやり取りも、量子コンピュータを活用すれば「夢物語」ではなくなるのかもしれません。

 現代は、インターネットや携帯電話など、昨日までSFに過ぎなかったものさえ家電になる時代です。物理は確実に進歩しており、新しい未来に我々を導いてくれます。

 

多者間で情報通信のネットワークが組めることを実証

 量子テレポーテーションとは、「A点での量子状態が消え、それが別のB点に現れる」ことです。まるでSFみたいな話ですが、A点での量子状態がB点に現れるのですから、この量子状態に情報としての意味を持たせれば、A点からB点に情報が伝わったことになります。量子テレポーテーションが将来の情報通信・処理技術の基礎中の基礎、つまり土台と言われるわけです。古澤教授は3つの光子(光)に共通した量子的なもつれ(量子エンタングルメントと言います)を持たせて3者間でこれを制御、世界で初めて3者間での量子テレポーテーション実験に成功しました。今回の成功で量子による情報通信・処理のネットワークが組めることが実証されました

 

現在の情報通信・処理技術には限界が  

 物理的な量の最小単位である「量子」は極めて不安定ですが、量子力学的効果を積極的に用いることにより従来は不可能であった動作が可能となります。  現在の通信、例えばファクシミリで原稿を送れば、受信側には原稿のコピー(言わば分身)が現れ、送信側には原稿が残ります。ところが量子テレポーテーションでは、郵送でもないのに原稿自体が相手に届いた様になるのです。量子には孫悟空のような分身は許されないので、AB両点に同時に姿を見せることはあり得ず、B点に現れたということはA点では消えたことになるのです。電流、電圧、磁場、光の強弱など、いわゆる古典的物理学の動作原理に基づく現在の情報通信・処理技術は、処理速度や記憶容量を日々向上させて来ました。それでも「何時かは限界を迎えるでしょう」と、2000年に東大に来るまで、国内の光学メーカーに籍をおき、光化学ホールバーニング、フォトンエコー、量子光学の研究をしていた古澤教授は言います。

 古澤教授によると「ディスクの記録密度を上げようと、光のスポットをどんなに絞っても光の波長以下には出来ません。また、それほど大容量化すると、読み出し時のディスクの回転速度を猛烈にアップしなければなりません。それが極限まで行くと、回転が早くなったことでディスクから跳ね返って来る光子の平均個数が1個以下になってしまいます」。こうなると、光を拾えなくなりますから、普通のやり方ではそこが限界なわけです。

 一方、「半導体の集積度は1年半から2年で倍増する」というムーア(米国インテル社創業者の一人)の法則によると、2020年にはLSI(大規模集積回路)中の1個のトランジスタのゲートを走る電子は1個を切ってしまう計算です。前述の光子の場合と同様に、古典的な考え方なら、ここで行き止まりです。  そこで、こうした限界を乗り越えようと、量子物理学に立脚した、今回の成果のような新しいアプローチが始まっている

 

3者の情報が揃って、はじめて量子テレポーテーションに  

 量子もつれ制御による量子テレポーテーションは、電子系やイオン系でも可能ですが、今回の実験は光子系で行われました。何故なら、光の量子状態は、ミラー(鏡)で光を跳ね返している限りは壊れないので、実験がやり易いためです。  実験は以下のように行なわれました。1回の実験の中で3つの光子(光)は、送信者/受信者/制御者のいずれかの役割を果たします。もちろん、役割は互いに変えられます。  まず、3者全員に量子的にもつれさせた光ビームを送ります。これで3者は見えない糸で量子もつれを共有したことになります。  送信者は、この光ビームと送りたい量子情報を含む光ビームを合わせて測定、その結果を受信者に送ります。制御者も自分の所に来ている量子もつれの光ビームを測定、その結果を受信者に送ります。受信者は、送信者と制御者からの情報の雑音を、自分の所に来ている量子的にもつれた光ビームを用いて消し、送信者が入力した量子情報を再現します。  

 ここで、制御者無しでは送/受信者間の量子テレポーテーションは起きません。3者ではお互いに量子的にもつれているけれど、2者同士ではもつれていないので、そのままでは量子テレポーテーションはあり得ないのです。しかし、3者でなら互いにもつれている制御者が加わること、つまり、3者全員の情報が揃って初めて送/受信者間の量子テレポーテーションが実現するのです。古澤教授は、米国カリフォルニア工科大学で研究中の1998年に2者間での量子テレポーテーション実験に成功していますが、今回の成功でネットワークが組めることが証明されたのです。

意義大きい今回の成功  

 古澤教授は「量子テレポーテーションが2者で出来たことと、3者で出来たことでは、意義は決定的に違うと思います」と言い、その理由を「2者での量子もつれの制御は、握手のようにお互いが片手だけで結ばれたようなものです。それが、3者の量子エンタングルメント制御になると、3人が互いに両手を伸ばして結ばれたようになります。これで初めてリングとなり、ネットワークが組めるのです」と語ります。  「2」が「3」になるのは、数的には、たった1つのプラスですが、「3」で出来たということは、さらに「4でも」「5でも」・・・と無限に続く可能性への第1歩なのです。3者で成功なら、さらに複雑なネットワークも可能でしょう。2者の量子テレポーテーション成功と3者のテレポーテーション成功では、同じ成功と言っても決定的に意義が違うのです。  ただし、こうした検証と、ハードとしての量子コンピューターや量子暗号の実用化といったこととは話は別です。実際、量子コンピューターの実用化には、まだまだ数多いハードルがあるそうで、この研究グループは今のところ、量子コンピューターそのものの研究はしていません。

 

量子トンネル  

 我々の世界では、電子は貫通不能なはずのガウス場の外に突然飛び出すことができる。これは、密封されたガラス壜に入れられたコインが突然外に抜け出すようなものである。純粋な物理世界では、このようなことは起こりえない。しかし、我々の世界では起こり得る。  ところで、量子論では、時折、電子が上記のように振る舞うことを要求する。なぜなら、量子波は物理的な障害があっても広がり、電子はそこにある任意の点でランダムに崩壊するからである。それぞれの崩壊は、我々が物理現実と呼ぶ映画の1コマであり、次の1コマが決まっていない限り、確率に応じてランダムに発生する。つまり、貫通不可能な場を通過する電子トンネルは、映画の登場人物が室内から外に出るシーンをカットしてしまったようなものである。

 ある状態から別の状態へのテレポートは、あらゆる量子物質が移動する方法そのものである。我々は、物理世界が観測無しでも存在すると思っているが、量子論の観察者効果は、ゲーム内の環境のように、そこに視線を向けた瞬間に現れることを示唆している。ボーム解釈では、幽霊のような量子波が電子を導くが、本理論では電子がその幽霊のような波なのである。量子的実在論では、量子世界こそが現実であり、物理世界はその産物であると捉えることで、量子パラドックスを解決する。

 

量子はテレパシーを使える?

 量子には、ペアをつくって互いに影響を与える状態を作ると、片方の状態を変えた瞬間にもう片方の状態も変わるという性質があります。これはペアの量子が離れた場所にある場合でも瞬時に起きます。最近では、この量子もつれの性質を利用して情報を伝達する「量子テレポーテーション」の研究が進んでいます。

 量子もつれの現象で、ペアの量子の状態が変わるのは瞬時であり、距離は関係ありません。つまり、光速を超えて情報が伝わるということです。

 光速を超えて伝わるもの、テレパシーや虫の知らせといった未知の現象がこれに似ています。もちろん、その関係は不明ですが、テレパシーは量子を介して人間の脳に伝わっていたということもあるかもしれません。

 すべての物質や生体には「トーション・フィールド(ねじれ率場)」という、磁力場・バイオフィールドがあると提唱しました。この概念は、長年おもにロシアの科学界を中心に研究が行われてきましたが、このねじれ率場を通じて次元を超えた相互作用や情報のやりとりが可能になるとされています。(1800年代後期のロシア人科学者、N. P. ミシュキン教授、ロシアの科学者N. A. コジリェフ教授(1908-1983))

 アルバート・ロイ・ディヴィスやウォルター・C・ロールズの研究によれば、人間の生体が発生させている微弱な電気、磁気、電磁気およびそのエネルギーの流れ(ねじれ率場)は、絶えず人の生体系を出入りしていることを、機器により観測しました。そして、このエネルギーの流れは、人の意識的な意図の力で強化・調整されることが観測によりわかっています。私たちは、切り離されていると感じている他のものとも、このねじれ率場を媒介として、しっかりと繋がっているのです。

 ねじれ率場とは、いわば量子力学における波動関数が一つの状態に収縮する前の状態のことで、私たちが目にし、実体として感じられるこの三次元世界に出現するものや出来ごとは、すべては、このねじれ率場を通じて多次元でその原型が創造され、そのあとさまざまな意識や意図の作用を通じて現実化されるようです。そこにアプローチするための媒体が、人間や宇宙も含めた物質や生体系に備わる微細なエネルギー、つまり、意思の力ということになります。

 何かを変えようと思うなら、すでに形として現れてしまっている三次元世界の現実のほうではなく、すべての可能性を包括している形になる前の多次元に、ねじれ率場を通じて働きかけ波動を起こすことで、まったく違った行動や経験や物質を出現させることができるのです。そこでは、人間の心と感情が起こす意図と意思の力が重要なファクターになります。

 

「瞬間移動」の研究進む テレポーテーションに心と体は耐えられるか

 オランダのデルフト工科大学の研究チームは、このほど3メートル離れた2つの地点の間で、情報を100%の精度で瞬間移動させる実験に成功した。

 これは「量子テレポーテーシション」と呼ばれる現象。1つの光の粒子を2つの量子に分裂させたとき、片方に情報をインプットすると、もう片方に瞬時に伝わるという原理を用いたものである。東京大学の古澤明教授が世界で始めて「完全な実証」に成功し、世界を驚かせた。そして今回の実験は、その時に60%ほどだった伝達の精度が、100%にまで上がったという点で大きな前進と言える。

 この原理の応用の対象として、最も期待されているのが「量子コンピュータ」の実現である。今まで数万年かかると言われていた複雑な計算を、数分でできるようになり、産業や生活にも大きな進歩をもたらすという。

 この原理には、さらに驚くべき可能性がある。今回の研究を率いた同大学のハンソン教授は「人間をひとつの原子の集合体と捉えれば、原子の集合体のテレポーテーションも可能」と述べている。つまり、未来には人間のテレポーテーションも可能になるかもしれないということである。科学技術は驚くべきところまで来ている。

 しかし、新たな科学技術には、しばしば「扱う側の人間の手に負えない」という問題がつきまとう。もし、人間が瞬間移動する技術ができた場合、予想されるのが「精神は正しく移転されるのか」という問題である。「フィラデルフィア計画」と呼ばれる有名な話があります。1943年にアメリカ軍がフィラデルフィア沖合で「ある機器で駆逐艦に特殊な磁場を発生させ、戦艦をレーダーに映らないようにする」という実験を行った。実験の結果、レーダー上での表示どころか、船自体が2,500km以上も離れたノーフォークにまで瞬間移動し、数分後に再び瞬間移動で元の場所に戻ってきた。だが、偶然の産物といえる瞬間移動は、乗組員に大きな被害をもたらした。多くの死亡者、行方不明が生まれ、生存者の中には発狂者が続出したと言われている。

 幸福の科学大川隆法総裁は、人類の歴史の霊的背景や、未来の歴史について書かれた『黄金の法』の中で、「西暦2800年代前半に、人体のテレポーテーションが可能になる」と予言している。しかし、テレポーテーションを起こした際、魂が肉体をコントロールできずに精神異常をきたす人が増えるという問題が発生することも指摘された。

 以上の話は、政府の公にしていない情報、そして遠い未来の話だが、「身体が物理的に移動しても、精神がうまく移動できない」という理屈は理解できる。これは、クローン技術など生命体そのものを生み出す技術にも共通する問題だが、「生命とは何か」「精神とは何か」という問いに答えることができなければ、人間は一定レベル以上の科学技術を扱うことはできなくなるでしょう。

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