超ひも理論が登場するまで

 「標準理論」が1970年代半ばまでに完成されました。「標準理論」によると、物質の構成要素には、クォーク族(陽子や中性子を構成する)とレプトン族(電子、ニュートリノなどから成る)の2種類があり、これらの間の相互作用を媒介するものとして、グルーオン、弱ボソン、光子の3種類のゲージボソンが存在する。大型加速器を使った実験データは、「標準理論」の正当性を立証するものだった。ここに到って、素粒子物理学は、初めて高い精度を持って理論が実験結果を予測できる精密科学としての地位を獲得したのである。

 しかし、「標準理論」はいくつかの欠陥を抱えていました。第一の欠陥は、素粒子の種類が(数え方によっては)3ダース以上に上り、「究極の理論」とは考えにくい点である。こうした状況を打開するために、「大統一理論」や「複合模型理論」など新しい理論がいくつも提案された。しかし、素粒子の種類を減らすという点では必ずしも成功を収めなかった。

 もう1つの欠陥は、「発散の困難」と呼ばれる問題で、相互作用を行う素粒子の間の距離を無限に小さくして計算すると、いろいろな物理量が無限大になってしまうというものである。この点に関して、ミクロの極限では理論が破綻をきたすという点で、理論の根幹にかかわる大問題と言える。さらに、20世紀の理論物理学において量子力学と双璧をなす一般相対論(重力理論)が取り入れられておらず、これを取り込もうとすると、「発散の困難」がくりこみ理論でも始末できないほど厄介なものになってしまうという問題もあった。

 そして、「超ひも理論」は、これらの欠陥を一気に解決する驚くべき理論として注目を浴びてきた。

 歴史的には、1970年代に展開された2つの理論、すなわち、南部陽一郎博士らによる中間子をひも状の素粒子として扱う「ひも理論」と、シャークらによる「力」と「物質」を統一する「超対称性理論」が合体してできあがった理論です。1984年のグリーンとシュワルツによる論文が、現代的な「超ひも理論」の出発点とされている。この理論によれば、力と物質をあわせた万物の構成要素は、大きさが10-35m程度の1種類の「ひも」であり、これが、いろいろな形に捩れたり巻き付いたりしたものが、クォークやゲージボソンなどの多種類の素粒子に対応するというのである。また、「発散の困難」は、素粒子を点状のものと考えたことに起因するもので、大きさを持ったひもを扱うときには、こうした困難は(ある条件の下で)回避される。さらに、「超ひも理論」によれば、時間や空間は、ひもがその内側に持っている「内部自由度」から派生的に生み出されるものであり、時空の性質としての一般相対性や重力法則も、ひもの振舞いに起源を持つことになりうる。実際、あるタイプの超ひも理論からアインシュタインの重力理論が導かれることが示されている。

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