シュレーディンガーの猫

 「パラレル・ワールド」という説は、SFなどで「もう一人の自分がいる不思議な世界に迷い込んでしまう」というストーリーで描かれる世界です。

 「パラレル・ワールド」は、量子力学と相対性理論の両方で存在し得ると言われています。

 量子力学では、原子核の周りを回る電子の位置は、観測するときには1つに決まりますが、観測していない時には、電子は一定の空間の中を飛び回っています。その空間のどこかにある「確率」は分かりますが、どこにあるかは分かりません。部屋の中の人間に置き換えると、誰かに見られない限り、部屋中のあらゆる場所に何パーセントかの確率で存在しているというオバケのような状態です。

 その違和感を指摘する思考実験があります。箱の中に、猫と、半分の確率で毒が出る瓶を入れます。量子力学に従えば、箱を開けるまで、猫は「生きながら死んでいる」という変な状態になります。これを解決する説の一つに、「猫が生きている世界と死んでいる世界に分裂する」という解釈があるのです。元々は、光(フォトン)が粒子(物質)か波(電磁波)かのどちらかの状態をいったりきたりするという事が元になっている。  箱の中にネコが入っていて、このネコを光(フォトン)になぞらえて箱を開けてみると、粒子状態の時はいる事になり、波(電磁波)状態の時はいない事になる。  それで月を見上げた時、ある時に月は確率的に無かったりする事になるのかということで、アインシュタインが「神はサイコロを振りたまわず」なんて言われた。  ネコや月が消えるとしたら、それを構成している物資が全て波の状態でなければならない。その確立は天文学的数字になるので、ネコが実際に消えて見える事はまずないでしょう。そのようなわけで、量子論領域においては、物というものは「確かな物」としては存在しないことになります。

 ここで言う「シュレーディンガーの猫」とは、量子力学の(未解決)命題である思考実験で、「量子的な状態に置かれた猫は、生きている状態と死んでいる状態が同時に重なり合っている」というものです。

シュレディンガーという理論物理学者の思考実験ですが、二重スリットの実験で出てきた主張である「電子(量子)は確率の波として振る舞う。すべての状態は可能性として存在していて、それを決定するのは人間の観測である」(ノイマン・ウィグナー理論)という考えを否定するために考えられたものです。

 なお、思考実験と言っておりますが、実際に実験するわけでなく、頭の中だけでのシミュレーションのことを言います。

 まず、最初に猫を箱に入れる。箱の中には放射性物質のラジウムとガイガーカウンターが1台、青酸ガスの発生装置が入っていて、もし、箱の中にあるラジウムがアルファ粒子を出すと、ガイガーカウンターが感知して、その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、青酸ガスを吸った猫は死んでしまう。だが、ラジウムからアルファ粒子が出なければ、青酸ガスの発生装置は作動せず、猫は生き残る。一定時間経過後、果たして猫は生きているか、死んでいるか。放射線を出す過程は量子力学的な過程であることが知られています。そして、この思考実験の中では放射線を出す確率を50%であると仮定しておきます。

 放射線が放出されると放射線観測機(ガイガーカウンター)が動いてハンマーを動かします。

ハンマーが動くと毒ガス入りの瓶が割れ、猫が死んでしまいます。

ここが重要なのですが、猫が死ぬかどうかは放射線が出るかどうかによって決まっています。そして、放射線が出るかどうかは量子力学の世界なので観測するまでわかりません。

つまり、人間が箱の蓋を開けて観測するまでは「猫は死んでいる」または「生きている」のです。

 箱の中身を見る前・・・死んでいるか生きているか決まっていない

 箱の中身を見た時・・・人間が見て初めて生きているか死んでるかが決定する

 シュレーディンガーは、100年ほど前、量子力学の発展に貢献した偉い科学者です。量子力学は、電子や原子と言った「肉眼では見ることの出来ないほど小さな物質」についての学問です。直接見ることは出来なくても、我々の体などは原子の集まりで出来ていますし、検出器などで調べれば、確かに存在していることが分かります。この「原子の存在」を、数学的な「式」で表したものを、「シュレーディンガーの方程式」と言います。

 この方程式を解いてみると、実験的な事実と同じ答えが出てくるので、正しいと考えられてます。例えば、原子力爆弾や、コンピュータのLSI、テレビなどのブラウン管などは、この「シュレーディンガーの方程式」に沿って動いています。

 「シュレーディンガーの猫」は、「箱に入った猫」のことです。ただし、箱の中には「核分裂をする原子」「核分裂を検出する装置」および「検出器が動くと、毒ガスを発生する装置」も入っています。そして、「核分裂をする原子」はシュレーディンガーの方程式に沿って、ある時間後に核分裂をします。いつ分裂するかは、箱の外からでは分かりません。いつ分裂するかはわからないけれど、分裂した時は毒ガスが発生して、猫が死にます。

 この実験で箱のなかの猫は、放射性物質のアルファ崩壊という量子力学的な振る舞いにのみ生死が決定するため、生きている猫と死んでいる猫が 50 : 50 で重ね合わせで存在している事になる。つまり、観測者が箱を開けて中を観測しない限り、猫は生きてもいないし、死んでもいない状態なのである。

 この時、箱を開ける前の「原子の状態」は、どのようになっていると言えるでしょうか。量子力学では、「観測するまでわからないので、分裂していない原子と、分裂した原子が混ざった状態である」となっています。「混ざった状態」とは普通では考えられません。普通は、どちらか片方の状態であるはずです。しかし、「シュレーディンガー方程式」では、「混ざった状態」と言う解が出てくるのです。

 そうすると、箱を開ける前の「猫の状態」は、どうなるのでしょうか。原子の状態によって、猫の生死の状態が決定されるのですから、猫の状態も「生きた猫と、死んだ猫が混ざった状態」となってしまいます。何とも不思議です。これが、「シュレーディンガーの猫」と言うわけです。

 常識的には、「箱を開けるまでは生死は分からない。いつの間にか猫が死んでいて、箱を開けた時に死んだ状態を観測する」となります。量子力学では、「箱を開ける前は、生と死が混ざった状態で存在する。箱を開けた時に、生きるか死ぬかのどちらかの状態に変化する」となります。

 つまり、観測するまでは生きている状態と死んでる状態が重なっている状態だという妙な理論です。この理論をもう少し論理的に説明できるのが「多世界解釈」というものです。つまり、猫が生きている世界と死んでいる世界、そこに両方の確率があれば、確率ごとに世界は分裂していくという立場です。例としてタイムマシン もこの理論に当てはまるわけです。量子力学の描く世界では、このように宇宙は無限に分岐しているというものです。これも、証明できるかという話とは無縁の原理ではあります。

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