ドラッカー マネジメント

 マネジメントとは、組織の目標を設定し、目標を達成するために組織の経営資源(人、情報、お金、モノ)を管理して効率的に活用し、さらにはリスク管理を行うことである。

 組織と社会、社員個人をマネジメントすることで、社会と個人がつくった組織に対して、成果を上げさせ、機能させることができるでしょう。たとえば、組織は自社の製品などを通して社会貢献することで発展が期待できます。個人(社員)は組織で働くことで自己実現を可能とするのです。そして、組織は その機会と対価、地位を与えます。

 あらゆる先進社会が組織社会になったことにより、主要な社会的課題はすべて組織の手に委ねられた。人の命とまではいかなくとも、現代社会の機能がその組織の仕事ぶりにかかっている。そして、その組織は、マネジメントによって運営される永続的存在である。(ドラッカー「マネジメント」より)

 組織が機能するには、マネジメントが成果を上げなければならない。社会の願望・価値・存続そのものが、マネジメントの成果・能力・意思・価値観に依存する。ドラッカーは、「社会と経済の発展をもたらすものはマネジメントである」とまで言い切る。そして、マネジメントが所有権・階級・権力から独立した存在でなければならないとする。

 ドラッカーは、自らを生物環境を研究する自然生態学者とは異なり、人間によって作られた人間環境に関心を持つ社会生態学者と規定している。彼の関心・興味は企業の世界にとどまらず、社会一般の動向にまで及び、人を幸福にすることにあった。そのためには、個人としての人間よりも、社会(組織)の中の人間にアプローチする必要があるとした。

参考

 自らの組織に成果をあげさせるものがマネジメントであり、マネジメントの力である。

 ドラッカーの経営論は、社長のスーパーマン経営から中規模大企業に入っていくための経営論である。その特徴は、天才でなくとも組織運営ができる仕組みづくりである。

 ドラッカーは、自らを社会生態学者と捉えていた。地政学や人間学を深く探究し、ある答えを得た。それは「一人の天才による経営には限界がある」ということ。

 天才一人では限界があり、ましてや死ぬとほとんど滅ぶ。天才には継続性がない。ドラッカーは、これに対して継続性を持たせ、能力を引き継ぐために、凡人でも同等以上の成果を出せるよう天才を平凡なパーツに分解し、体系化した。

 ドラッカーがやったのは、天才指導者を平凡なパーツに分解し、体系化した。そして、出来上がったものが経営学の体系である。ドラッカーがやったのは「孫子の兵法」と同じように、一人の天才を平凡なパーツに分解・体系化という手法を採った。

 客観的にかつ論理的に仕事をいくつかの要素に分解(平凡な作業(パーツ)に分解)し、それを一つのプロセスとして統合(体系化)する。そして、それぞれのパーツに強みを持つ人材を充てる(適材適所)。これをプロセスとして管理する。

 平凡な人、ちょっと上の秀才の人、この人たちを組み合わせることによって、天才がいるのと同じ成果を出せる。非凡な成果を出せる。これが彼のマネジメントの胆のところです。

 「あらゆる非凡は平凡の組み合わせに置き換えることができる」「あらゆる非凡は平凡の組み合わせによって生じる」 これが組織論である。

 なぜ平凡なパーツの組合せで非凡・天才が出るかと言うと、天才の本質は結合にあるからです。平凡な人が個々に持つ強みの組み合わせから生まれる。それが、組み合わせから生まれるシナジー(相乗)効果というものである。

 シナジー(相乗)効果を生み出すための秘訣は次の3点です。

 自分をよく知ること、強みと弱み、ワークスタイル、価値観を知ること。

 共に働く人の強み弱み、ワークスタイル、価値観を相互に理解すること。

 相手をよく理解したのち、お互いに活用し合うこと。自分の仕事は、他人に利用されて初めて成果に結びつく。

 2番目の相互理解こそ、ただの総和を相乗効果に変えるキーポイントである。そのために、お互いのコミュニケーションが重要である。

 ドラッカーの経営論を端的に表現するならば、「個々人の強みを活かして組織としての体制をつくり、かつ、教育・訓練のシステムをつくれ」ということになります。これは、競争社会において「勝つべくして勝つ組織づくり」ということになります。まさに現代版「孫子の兵法」です。

 

 ドラッカーは、マネジメントを「組織の成果を上げさせるための道具・機能・機関」と定義しています

 ドラッカーは、あらゆる組織は社会の機関として位置づけました。そして、組織が社会の機関である以上、社会やコミュニティ、個人のニーズを満たすために存在しなければならないと指摘します。社会やコミュニティ、個人のニーズを満たさぬ組織は、存在する必要がないということです。そして、組織が社会やコミュニティ、個人のニーズを満たすというミッション(使命)を達成し、その成果を上げるために存在するのが、ドラッカーの言うマネジメントなのです。

 ドラッカーのこの考え方を、組織の一形態である企業にあてはめて考えてみましょう。ドラッカーの考えからすると、社会やコミュニティや個人のニーズを満たすことが、企業のミッション、社会機関としての企業の存在理由になります。

 企業にとって社会やコミュニティ、個人は、ひとくくりに「顧客」と表現できるでしょう。したがって、企業は顧客のニーズを満たし続けなければなりません。

 これは、顧客の創造が企業にとって唯一の目的になるということに他なりません。そして、この顧客創造のために、企業がもつべき機能は2つだけだとドラッカーは指摘します。マーケティングイノベーションがそれです。

 マーケティングとは、顧客のニーズを探り、対応する製品やサービスを提供する機能です。

 一方、イノベーションとは、顧客の新しい満足を創り出していく機能を指します。したがって、企業のマネジメントは、このマーケティングとイノベーションという二つを有効に機能させることが、最重要の命題となるわけです。

 マーケティングとイノベーションという両輪を、マネジメントというハンドルで企業目的に向かわせるものなのです。

 マネジメントとは、部下の管理のみを指すのではありません。また、トップ・マネジメントのみを指すわけでもなければ、権力やボスの意味でもありません。組織をして成果を上げさせるもの、それがマネジメントなのです。