プロダクトエクステンション
一般的な製品は、製品ライフサイクルの軌跡をたどるようにして、やがて衰退していきます。必ずしもすべての製品が製品ライフサイクルをたどるわけではありませんが、発売当初から永続的に売れ続ける商品というのはありません。消費者の志向や生活スタイルの変化もありますが、競合他社の存在も大きなポイントとなります。
しかし、企業は存続していかなければなりません。そのために新しい製品を作り続ける必要があるのですが、新製品の開発にはコストがかかることもあり、また、確実に売れる保証があるわけではありません。そのため、新製品開発は、場合によっては大きなリスクともなり得るのです。そこで考慮するべきなのが「プロダクトエクステンション(Product Extention)」です。
プロダクトエクステンションとは、衰退期を迎えてしまった製品に対し、さまざまな施策を講じることによって、ライフサイクルのスパンを意図的に引き伸ばしたり、第二の成長期を創出するためのマーケティング手法です。
とくに、過去、爆発的にヒットした製品は、プロダクトエクステンションによってブームを再燃させることも可能です。
たとえば、今でこそ居酒屋での基本メニューとなっている「ハイボール」は、かつてのウイスキー人気を取り戻すために、サントリーが仕掛けたプロダクトエクステンションと言えます。新しいウイスキーの飲み方を提案することによって、ビールに取って代わる地位を確立させたのです。支持層も これまでの中高年から若年者へと広がっています。
プロダクトエクステンションを行うには、「ターゲット市場の再定義」「再定義した市場に適合するように、製品を改良する」「新たな市場と製品に合わせたマーケティングを展開する」という3つの過程を経るのが一般的です。
ターゲット市場の再定義
最初に、プロダクトエクステンションの対象となり得る製品に対し、ターゲット市場の再定義を行います。
ハイボールのように、かつては中高年をターゲットにしていたものを若年層にまで広げるというように、製品そのものの立ち位置を定義し直すのです。そうすることで、これまでとは違った戦略を構築することが可能となります。
再定義した市場に適合するように製品を改良する
次に、新しく定義しなおした市場に対応できるよう、製品を改良します。
ウイスキーのようなアルコール飲料の場合には、中身を変えることなく、新しい飲み方を提案するという方法もあります。そうすることで、製品の改良にかけるコストを削減できるばかりでなく、よりスピーディーに新規顧客の獲得を実現することが可能となります。
新たな市場と製品に合わせたマーケティングを展開する
最後に、新しい市場と改良した製品に合わせて、マーケティング戦略を展開していきます。
いわゆるマーケティング・ミックス(4P:製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion))の実施です。
ポイントとなるのは、既存製品をいかに現在の市場に適合させるかということです。顧客のニーズを的確に把握し、より効果的に改良を加えることで、新しい市場を開拓することも可能となります。新製品の開発だけでなく、既存製品の再利用が企業業績を好転させるという点を理解しておきましょう。
プロダクトエクステンションは、既存製品の改良という手法を選択することによって、よりエコに企業業績を回復させる役割を担います。
新しい製品を開発することも大切ですが、すでにあるものを市場に適合させることによって、より経済的にイノベーションをおこすことも可能なのです。
資源を上手に活用するという観点からも、現代社会に合っているマーケティング手法と言えるでしょう。
プロダクトエクステンションにおける3つの修正方法
既存製品のどの部分を修正するのかによって、その後の売れ行きは大きく変わります。
基本的には、3種類の修正のいずれかだけを選択するというのではなく、どのようなバランスで修正するのかという点がポイントとなることでしょう。
製品を修正する
もっとも一般的なのが「製品の修正」です。
消費者のニーズが どのように変化しているのかを調査・分析し、それに合わせて修正を加えることによって、新しい価値を提供することができます。
市場を修正する
「市場の修正」も重要です。
かつてのターゲット市場がこれ以上広がらないと判断できた場合には、積極的に打ち出し方を変えていくべきでしょう。
新しい市場にはライバルが少ない可能性もあります。
マーケティング・ミックスを修正する
最終的には、総合的な「マーケティング・ミックスの修正」を敢行することが大切です。
既存製品を改良し、新しい価格やサービスにて打ち出してプロモーションを行うことで、顧客の創出につながります。