リーダーシップを執るための具体的なスキルと行動

 ジョン・アデアは、イギリスにおける組織に関するリーダーシップ論の第一人者です。アデアの思想は、職種や業種などを問わず、すべてのリーダーに当てはまる実用的なものであることから、非常に関心の高いものとなっています。

行動中心型リーダーシップ Action-Centred Leadership

 行動中心型リーダーシップは、30年以上にわたって多くの企業文化に溶け込み、個人のリーダーシップスタイルとして活用されています。

 行動中心型リーダーシップのモデルは、シンプルな上に実用的なモデルです。3つの重なり合う円で描かれており、3つの円はそれぞれ「仕事(タスク)」「チーム」「個人」を表しています。リーダーは、この3つの円に働きかけることが責務となります。

 ・仕事を遂行する

 ・チームを構築し、維持する

 ・個人(部下)の能力を開発する

 アデアは、これらの働きかけを行うことがリーダーシップを構成する要素と考えました。その理由はきわめてシンプルなものでした。誰でも、人は自分のリーダーに「仕事を遂行する手助けを行ってほしい」「チームワークをつくり出してほしい」「個人の要求を満たしてほしい」と考えているからです。

 

リーダーシップ 8つの機能的行動

 アデアのリーダーシップは、3つの側面「仕事」「チーム」「個人」に働きかけることでそれぞれのニーズを満たすことです。さらに、アデアは、リーダーが遂行しなければならない 8つの機能を説明しています。

1 仕事を明確にする

 一つは「仕事を明確にする」ことです。

 チームと個人に対して、仕事の目標を明確に、そして、SMARTに提示する必要があるとしています。

 SMARTとは、

 ・具体的(Specific)

 ・測定可能(Measurable)

 ・達成可能(Achievable)

 ・現実的(Realistic)

 ・期限付き(Time Constrained)

 といった それぞれ頭文字を取ったものです。SMARTの提示がリーダーシップの遂行に欠かせない要件とされています。

2 計画する

 次に挙げられているのが「計画する」です。

 アデアは、リーダーが遂行すべき課題に、計画の立案をするだけでなく、計画の段階では複数の代替案を用意することも求めています。

 このため、

 ・組織メンバーとタッグを組み打ち解けた雰囲気をつくる必要がある

 ・そのうえで、建設的、独創的な方法を共に編み出していく

 ・不測の事態に備えた計画の立案

などに言及しています。さまざまなケースを想定することが重要です。

3 説明する

 アデアが次に説くのは、「チームへ説明する」ことです。

 チームへ目標設定や達成するためのアクションプラン、進捗状況などを説明することで、情報共有が促されます。

 同じ価値観を持ったチームの雰囲気は非常に良く、チームワークはより促進されます。同じ方向を向いて業務に取り組むため、目標達成もしやすくなるでしょう。同時に、個々のモチベーションも高まるので、一石二鳥のリーダーシップ機能といえます。

4 統制する

 リーダーシップを遂行するための機能には、「統制する」という概念も登場します。

 アデアは、著書『リーダーシップの技術』の中で、「優れたリーダーは最小のインプットで最大のアウトプットを出す」と書いています。そのためには、もちろんメンバー自身のセルフコントロールも重要ですが、部下に対する効果的委任や指揮監督能力といった、コントロールシステムを機能させる必要があると言うのです。

 リーダーシップにおいて「統制する」という側面も、アデアは重要視しています。

5 評価する

 アデアは、業務の指示にとどまらず、その結果を「評価する」ことをリーダーシップの遂行要素としています。

 リーダーは、チームが得た結果からその業績や過程を評価し、個人の役割について査定を行います。評価の結果から指導を行うこともあるでしょう。

 リーダーは、チームの人員を正しく評価するための能力も求められます。人の能力を見極める力に長けていなければ、リーダーシップは発揮できず、リーダーの仕事は務まらないと言えます。

6 動機づけする

 リーダーには「動機づけ」を行うことも求められます。動機づけするための8つの法則があります。

 ・自分自身がやる気になる

 ・モチベーションの高い人物を選び出す

 ・各人を個人として扱う

 ・現実的で挑戦的な目標を設定する

 ・前進はモチベーションとなることを肝に銘じる

 ・意欲をかき立てるような環境をつくる

 ・公平に報酬を与える

 ・認める

 リーダーは、これら8つの法則に従って動機づけを遂行することが必要です。

7 組織化する

 リーダーは組織の編成にも取り組まなければなりません。優れたリーダーは、自分が率いるチームについて、適切な組織構造やプロセスも含めた組織を体系化できることが求められます。

 チームとして機能し、チームの目標を達成するといった結果を出すための明確な目的と、それに対する効果的な命令が必要です。指示系統を作る組織化も必須項目でしょう。

 また、組織は、一旦組めばよいということではなく、業務や方針転換時、フレキシブルに見直す必要があります。

8 模範を示す

 自らが模範となって、手本を示すこともリーダーの遂行すべきミッションです。

 リーダーの姿を見て部下が育つ側面はどの世界にもあります。リーダーは、メンバー一人ひとりだけでなく、組織全体に対しても規範を示すことが求められるのです。

 悪い見本はすぐ目に付きますが、良い見本が個人やチームに浸透するには、時間がかかります。良い行動規範がチームに浸透するまでの間、辛抱強くポジティブな規範を示す必要があるでしょう。

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