規模の経済

規模の経済

 「規模の経済」とは、より多くを他社よりも売ってシェアを伸ばし、より多くを生産すれば、売上に対して相対的に固定費を減らして利益を出やすくする戦略です。

 全体的な平均費用が下がります。原材料を仕入れる時も、大量一括購入によって他社よりも有利な条件で買い付けることができます。

 生産量の増大に伴い、原材料や労働力に必要なコストが減少する結果、収益率が向上するわけです。スケールメリットを活かした企業活動を指す。

 1人で1個作るのと10個作るのではどちらが効率的でしょうか。もちろん、時間がかかるのは後者ですが、ケーキ1個当たりの時間でみると、当然後者の方が早いはずです。これは、材料を買ったり、デザインを考えたり、ホイップクリームを混ぜたり、盛り付けをしたりなど、あらゆる仕事を10個分まとめて同時にできて効率的だからです。

 事業の経済性とは戦略をコスト面から分析する考え方なのです。

 事業の経済性には大きく5つの要素があり、業界特性や製品ライフサイクルにより必要な戦略を策定していきます。

 規模の経済性とは、事業規模が大きくなるほど単位あたりのコストが低下し、競争有利になる効果のことを指しています。

 そして、規模の経済性を生み出す要因は「固定費」です。製品の材料費は生産量に比例して増減しますが、工場の家賃、設備費、人件費などは固定であることから、生産量が増加することで、単位あたりの生産コストが低下します。結果、利益率が向上するなど、事業拡大を図ることができます。

 一般的に、大量生産を行うと、単位あたりの生産コストが減少します。これはある一時点での生産規模に注目しています。通常、生産規模の大きな企業ほど累積生産量も大きく、そのため経験曲線の中に規模の効果が織り込まれていることが多いのです。

 規模の効果が生まれる主な要因は、管理費をはじめとするコストの中の固定費用が分散されることが挙げられます。規模の効果は生産コストのみならず、調達コストや営業コストなどのあらゆるコスト要因について働きます。規模の効果を分析することで、同じ土俵で競争を続けることが可能かどうか、あるいは、合併などによりそのコスト差を埋めることが可能か否かなどがわかります。ネットワーク型の事業において、規模の効果は最も顕著に現れます。例えば、電子メールの利便性は、普及率のほぼ2乗で効いてくることが知られています。

 パソコンのOSなど、互換性が問われる機器についても、デファクトスタンダードを握る(現在ではWindows)が規模の効果を享受し、一人勝ちを続けていると言えます。

 規模の効果の効き方は、コスト項目毎に異なっていますが、生産、調達、営業のコストのみならず、広告費や開発費にも影響を及ぼします。その中でも、広告費や開発費には大きな影響を及ぼすと言われています。そこで、広告費について、規模の効果が出るには臨界量に達するまで一定量を集中的に投入することが必要となり、費用と効果をグラフ上にプロットすると、通常S字型のカーブが得られます。

 

規模の経済のメリット

利益率が上がる

規模の経済の一番のメリットともいえるのが利益率のアップだ。価格を変えなければ製品1個あたりの平均コストが下がった分が利益分に移行される。

 

価格競争で優位になる

下がったコストをすべて利益分に回さなくてもある程度の利益を確保しつつ価格低下に反映させることも可能だ。一般的に規模の経済性による価格低下は、製品のクオリティには影響しない。消費者は、以前と同じ品質のものをより安く購入できることになる。価格競争で競合他社よりも優位な位置に立てる。

 

市場シェアを高められる

規模の経済が効いている状態というのは、市場に自社製品が多く出回る状態でもある。品質を落とさずに価格を下げ消費者により購入してもらうことで市場シェアを向上させることもできる。

 

参入障壁を築ける

すでに市場シェアを高められていれば他社の新規参入をけん制できるメリットもある。仮に自社と似た製品を販売したい場合には、より安い価格、あるいはよりハイスペックな製品を提供することが必要だ。そのためには資金力や技術力が必要になり、簡単には新規参入できない。

 

 

規模の経済のデメリット

 

多額の初期投資が必要

規模の経済を効かせるためには、大量生産できるだけの大きな設備が必要だ。そのため中小企業にとっては、資金力のある大企業に比べて厳しい面もある。設備が整っていない場合は、大規模な工場・機械などの設備投資からスタートする必要があるため、多額の資金が必要になる。企業状況によっても異なるが融資に頼ったり債券を発行したりするなど初期投資をするためのハードルは高い。

 

売れなくなったときのリスクが大きい

多額の初期投資をして大量生産し順調に売上を伸ばしていけば利益も膨らみ投資額も回収できるだろう。しかし売れなくなれば規模の不経済へと逆転してしまい、売れずに在庫を抱えると在庫管理のための費用も発生しかねない。また、業績がマイナスになる可能性がある。

幾種もの製品で規模の経済を効かすことができれば1種の売上が落ち込んでも他の製品での販売利益によって不採算分をカバーすることも可能だろう。しかし中小企業が規模の経済を効かせようとしても製品の種類が絞られてしまうケースも多く、リスク分散がしにくい。

 

 

規模の経済を活かしやすいビジネスモデル

規模の経済は、生産量が増えるほど1単位あたりの固定費が薄まり全体のコストダウンにつながる。そのため事業コスト全体に対して、研究開発費や減価償却費、広告費などの固定費の割合が大きいタイプの事業であれば規模の経済が効きやすい。

 

規模の経済が効きやすい分野

規模の経済が効きやすい代表例は製造業である。ただし製造業に限られたものではない。例えば、研究開発費が大きいソフトウェア分野や人件費が大きいサービス分野などでも規模の経済が効きやすい。近年では、デイサービス(通所介護)業界での規模の経済性が考えられる。施設の規模が大きければ人員はもちろん機能訓練・リハビリのための機器設備やプールなどへの投資が可能になる。

小規模施設に比べて提供できるサービスの種類・質も充実し、利用者もより多く集まる。

 

規模の経済の成功例

(1)アパレル

アパレルの中でも特に「ユニクロ」「H&M」「ZARA」などの「ファストファッション」は、規模の経済の活用できた業界と言えます。そもそもファストファッションとは、低価格の衣料品を大量に生産し販売する業態の事を指します。スピーディーかつ大量に商品を提供する事で、規模の経済の成功例となりました。

一昔前なら「ルイ・ヴィトン」などのラグジュアリーブランドが流行していた時代もありましたが、昨今の不況で消費者の需要が低価格を求めるようになったことにより優位性を保てていると言えます。

実際に国内だけでもあらゆる街中やショッピング施設にファストファッションのショップが参入しており、我々の身近な存在になっていると言っても過言ではありません。

 

(2)コンビニ

コンビニに行ったら見かけるプライベートブランドの商品も、工場で大量生産し全国の店舗で販売しています。例えばセブンイレブンの国内店舗数は2万店を超えますが、これだけの店舗数だと全ての店舗に商品を供給させるためにそれ相応の固定費が掛かりますし、生産量も莫大になってきます。そのぶん規模の経済が働くことになり、相当の売上が見込めます。

さらに、コンビニは「ATM」「公共料金の支払い」など、販売以外のサービスも充実していますし身近で便利な面も売りとしている分極端な値引きをしなくても良い”という面もあるので、さらなる利益の確保が可能となります。

 

(3)自動車メーカー

自動車を製造する際にメーカーは、できる限り材料を安く仕入れて利益を上げるという事をやってきました。日本ではトヨタ、欧米ではGM(ゼネラルモーターズ)などの生産規模の大きい自動車メーカーが、規模の経済によって成功した例と言えます。

そして自動車メーカーは国内のみならずグローバルに展開しています。欧米や世界最大の市場となる中国はもちろん、アフリカや東南アジア等の発展途上国にまで市場と共に生産の規模も拡大させています。

 

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