ミドル・マネジメント

階層別マネジメント

 マネジメントには階層があり、役割が異なります。

トップ・マネジメント

 トップ・マネジメントとは組織の最高経営者層のことです。いわゆる経営者層と言われる人々で構成されています。一般的な企業であれば、会長や社長、CEO、取締役員などがこれにあたります。

 トップ・マネジメントは、組織の基本方針の決定や経営戦略や計画の策定など、組織を運営するうえで重要な意思決定を行います。また、トップ・マネジメントとして求められる具体的な仕事は、組織に求められる目的や戦略、活動内容などによって異なるとしています。

 非常に多岐に渡る範囲の内容に対して、的確かつスピーディな意思決定を行う必要があることから、ドラッカーはトップ・マネジメントをチームで行うべきとしています。

 

ミドル・マネジメント

 ミドル・マネジメントとは、中間管理者層のことで、日本で言えば支店長や事業部長、部長、課長などがこれにあたります。

 トップ・マネジメントが その役割をスムーズに果たせるよう、サポートするのがその役割であり、トップ・マネジメントから伝わる全体方針を基に、自身が管理する組織の運営を行います。トップ・マネジメントからの意思を正しく組織内に伝え、ロワー・マネジメント層が実行にあたるための計画立案を手助けしたり、課題や報告をトップ・マネジメント層に伝える役割もあります。

 トップ・マネジメント層とロワー・マネジメント層のどちらの感覚も理解しつつ、橋渡しや調整の役回りを求められるため、プレイング・マネージャーとして活躍する人もいる一方、求められるスキルの範囲が広く、人材育成が難しいとも言われています。

 

ロワー・マネジメント

 ロワー・マネジメントは、もっとも現場に近い管理者です。一般的には、リーダーや係長、主任などがこれにあたります。

 ミドル・マネージャーから伝わる方針を理解した上でブレイクダウンし、従業員個々の具体的な行動(タスク)に置き換えることが期待される重要な役割です。また、現場に最も近いこともあり、進捗管理や現場で発生する課題の報告、トラブル時の迅速な報告と対応などが求められます。

 

マネジメントの3階層

 

トップマネジメント

ミドルマネジメント

ロワーマネジメント

役職

社長

部長、課長

係長、主任

役割

戦略の策定・選択
・明示

戦術の策定・遂行、
戦略の提言

実践計画の策定・遂行、
戦術の提言

ミドルマネジメント(中間管理職)の役割 
 会社の中には、管理職が十分機能しないため、トップの方針や危機感が全社に徹底せず、社長と管理者、一般社員との間で意識に大きな段差が生じていることが少なくありません。
 そこで、中間管理職の役割について徹底(教育)することが大切です。 
 中間管理職であるミドルマネジメントは、「経営目標の推進者」と「経営理念の伝導者」という二つの役割をもっています。
 したがって、ミドルマネジメントは、全社的な経営計画や経営方針の策定に参画するとともに、自らが責任を持つ部署で経営方針を具体化し、仕事と部下を取りまとめながら経営目標を推進し、その一方で、経営理念や企業ビジョンの伝導者として部下の育成、指導に当たらなければなりません。また、自らの業務を確実に遂行することも大切です。
 そこで、管理者が以上のような役割を果たすように、しっかりとその役割を自覚させることが肝要です。

 

管理職(ミドルマネジメント)の重要性

 ミドルマネジメントは、会社運営における指揮命令系統の中核的存在です。

 トップがいかに明確な指示を与えても、また、現場からいかに優れた提言が出てきても、ミドルマネジメントが機能しなければ、情報の適切なブレイクダウン、ボトムアップは実現しません。

 トップと現場の両方の視点をもちながら、一体感のある会社運営を推進していくのは、ほかならぬミドルマネジメント層なのです。

 また、ミドルマネジメントは、下位にあるロワーマネジメント(係長、主任)を機能させる責任も負っています。

 ロワーマネジメントの機能を発揮させることがミドルマネジメントの責任であると同様に、ミドルマネジメントの機能を発揮させるのはトップマネジメント(社長)の責任です。

 自社のミドルマネジメントが弱いと感じる場合には、ミドルマネジメント強化のために、これまで社長自身がどのような取り組みを行ってきたかを改めて確認する必要があるでしょう。

 

管理職に求められる要件

 管理職が中心となって組織に付加価値を生み出すためには、具体的には管理職にどのようなことが求められるのでしょうか?

1 より経営的な高い視点で、組織全体を見渡せる能力

 昇格することは「より経営に参画していくこと」。

 役職が上がるにつれ、重要な情報が伝えられ、より高い視点からの責任をもった判断が必要になってきます。

 自分や、自分のチームといった狭い空間ではなく、会社全体、業界全体、日本全体への影轡を考えた判断が必要となり、また、今日、明日、1週間後といった短いスパンではなく、1年後、5年後、10年後といった長いスパンでの判断が必要となってくるのです。それには、当然責任も伴います。

 ステージが上がった人にとって、最初のうちは相当プレッシャーを感じることでしょう。

 しかし、このプレッシャーに打ち勝っていかなければ、経営者のパートナーともいうべき管理職として力を発揮していくことはできません。

 まったくプレッシャーを感じないという人は、自分の視点が上がっていないという可能性が高いといえる。

 また、自分がより高い視点になるために、余裕をもてる時間をつくりだすということも重要です。

 常に一般社員と同じく現場の仕事に追われているようでは、高い視点で物事を考えることなどできないからです。

2 仕事のプロになり、常に仕事と結びつけた思考が必要

 プロとアマの違いは、そのまま管理職と一般職との違いということになるのですが、仕事のプロは、1日のうち8時間(会社にいる時間)だけ仕事のことを考えるのではなく、常に仕事のことを考えている状態の人のことをいいます。

 これは決して24時間仕事をしているといっているのではありません。

 家にいるとき、電車に乗っているとき、遊んでいるときであっても、常に仕事に関連したアンテナが立っており、日常の生活の中でも自分の仕事に有益な情報があれば、すぐさまそれをキャッチすることができるのが、本当の仕事のプロであり、経営的感覚なのです。

 これは、一朝一夕で意識してできるものではありません。

 本当に その仕事に没頭し、その仕事に誇りをもって接することができるようになって、はじめてそのような状態になるといえるのです。

3 経営者と同じ志をもち、その志に共感できるようにならなければいけない

 これが最も重要な点です。

 組織には多様な個性や考え方が必要ですが、その組織として何を目指しているのか、という点が共有されていなければ、決して強い組織にはなれません。

 真に「経営者と一体になる」ということは、「志」の部分で一体となることです。

 そうなっていなければ、継続的にその組織を経営者と一緒になって動かしていくことはできないのです。

 管理職になる社員は、経常者の志をしっかりと理解し、その志に沿った行動ができ、そして、その志を「自分の言葉」で後輩や部下に伝えていかなければならないのです。

 そのような管理職がいることで、組織全体が一体となり、各現場でトップと同じ判断ができるようになり、スピード感をもって、各現場で高い付加価値の商品やサービスを生み出していくことができるようになるのです。

 

管理職の職責

 管理者の強化を図るためには、社長は、以上のような役割を自覚させるとともに、次の4つの職責を果たすよう指導しなければなりません。 

1 部門計画と部門方針の策定 
 管理者の第一の職責は、経営環境の変化に正しく対応するため、全社計画と経営方針を部門に具体化し、担当部門の計画と方針を策定することです。
 管理者が、こうした職責を果たすようにするためには、管理者に全社的な経営計画や経営方針を正しく理解させるとともに、市場(競合)動向にも目を向け、環境変化に機敏に対応するようよく教育することです。
 そして、計画や方針立案能力の向上のための訓練をすることが大切です。

2 仕事と組織の取りまとめ 
 管理者の第二の職責は、仕事の取りまとめと部門組織の取りまとめを適宜適正に行なうことです。 
 仕事の取りまとめ(業務管理)のテーマには、
 ①日常の業務計画の策定と進行管理
 ②部門目標達成のために必要な業務の提示(指示)と結果の点検
 ③コストマネジメント(原価管理、経費管理など)とプロフィットマネジメント(利益管理)の徹底
 ④業務システム、業務方法の改善
などがあります。 
 また、部門組織の取りまとめ(組織管理)のテーマには、
 ①部下一人ひとりへの業務の分担と目標の割付け
 ②部下一人ひとりの権限と責任の明確化
 ③職場組織のチームワークの形成と職場の活性化
 ④メンバーへのフォロー
などがあげられます。 
 社長は、管理者が以上の職責を自覚し、実践するように、適切に権限と責任を委譲することが大切です。

3 部下の取りまとめ 
 管理者の第三の職責は、部下の指導育成と就業の管理です。
 部下の指導育成のテーマには、
 ①日常業務を通じた部下の育成指導(OJT)
 ②部下の統率(リーダーシップ)
 ③部下との適正なコミュニケーション
 ④部下の業績や能力に対する適正な評価と動機づけ
などがあります。 
 また、部下の就業管理のテーマには、
 ①就業態度の改善
 ②部下一人ひとりへのカウンセリングと苦情処理
 ③メンバーの掌握と職場の人間関係の改善(チームワークづくり)
 ④部下の定着管理
などがあります。 
 これらについても、管理者一人ひとりに自らの職責として自覚するよう徹底することが大切です。

4 独自業務の遂行 
 管理者の第四の職責は、独自業務を遂行することです。

独自業務には、
 ①担当業務の遂行
 ②上司の補佐とトップとのコミュニケーション(意見具申)
 ③他部門、関係職場との連携、協力、調整
などがあります。 

管理者には、仕事と部下の管理だけでなく、プレイングマネージャーとして自らの担当業務に精通し、見るべき成果をあげるようにさせなければなりません。
 さらに、社長や他部門、関係職場との連携、調整なども重要な管理者の仕事であることを教え込むことが大切です。

 

ミドルマネジメント(中間管理職)の強化 
 管理職の役割と職責を自覚させ、実践させるためには、社長が期待する管理職の要件を一人ひとりに提起するとともに、次のような方法を講じる必要があります。 
①経営理念や経営戦略、ビジョンなどの経営方針をよく理解させるため、経営会議や幹部会議に参加させる。 
②経営情報を可能な限りオープンにすることによって情報を共有化し、経営課題に対する共通の認識を得るようにする。 
③部下の評価・指導・育成能力を向上させるため、マネジメント理論と技法を学ばせる。 
④大局的な視野、状況変化への柔軟な対応力、自己革新できる能力、戦略的な思考力など、マネジメント全般に求められる能力を練成するため、必要に応じて外部研修に参加させる。  
⑤担当業務の専門知識を身につけるよう、自己啓発を奨励する。 

 昨今の厳しい環境下で企業が生き伸びていけるかどうかは、こうした高い能力をもったミドルマネジメントを何人擁しているかにかかっています。
 そして、トップマネジメントの役割と職務のうち、最も重要なものの一つは、こうした視点から管理者を養成するところにあります。
 今日の厳しい経営環境下で業績を確保していくために、末端の社員まで経営目標を行きわたらせ、機動力のある組織をつくるとともに、このような管理者の養成を急がなければなりません。

 ミドルマネジメントを強化することによって、会社運営はどう変わるのか。

1 社長の意思決定補佐

 具体的には次のような点について改善が期待できる。

・重要な意思決定を行う際に必要な情報をミドルマネジメント層から逐一入手できる

・全社の戦略について社長が思いつかない斬新な提案が期待できる

・現場で起こっている問題のなかで、社長が関与すべき重要な問題に関する情報をスピーディーに入手できる

2 組織運営の改善

・社長方針の適切なブレイクダウンによって、全社一丸となった効果的な施策展開が可能となる。

・社長の考え方をミドルマネジメント層が共有することで、会社全体へのより正確・迅速な方針浸透が可能となる。

・ミドルマネジメント層の情報共有や意思統一によって、より強固でスムーズな部門間連携が実現する。

・ミドルマネジメント層がこれまでよりも一段高い視座をもつことで、会社経営への当事者意識が高まる。会社変革の提言者・実践者としての役割遂行が期待できる。

・ミドルマネジメント層がさまざまなマネジメント手法を学ぶことで、担当している部門の運営が高度化する。

3 人材育成のスピードアップ

・ロワーマネジメント層全体の効果的・効率的な育成が可能となる。

・ロワーマネジメント層のなかから、次代のミドルマネージャーを次々と輩出できる。

・マネジメントの学習と実践によって、ミドルマネージャー自身のさらなる成長が期待できる。動機づけを高めることで退職防止効果も期待できる。

 しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。この問題を解決しなければ、社内教育制度の内製化は不可能です。

 ミドルマネジメント強化は、会社経営において極めて重要な課題です。また、社長にしか解決できない課題でもあります。

 次のような点について社長自らが率先して取り組むことが必要です。

1 あるべきミドルマネージャー像を明確にする

 まずは、自社に必要なミドルマネージャー像を明確にします。「自社にとって」のミドルマネージャーのイメージを固める必要があります。

 具体的には、次の3つの視点で考えるとわかりやすいでしょう。 

(1)義務

 ミドルマネージャーが果たすべき義務を明確にします。
 たとえば、任せられた部門の業績目標達成はミドルマネージャーが果たすべき義務(職務)になります。

また、部下の育成計画遂行も同様です。ミドルマネージャーの職に就いている以上、これだけはやってほしいという社長の考えを示します。

(2)責任

 与えられた義務を果たせなかった場合に、その結果に対して責任を負うことについても明確にします。
 たとえば、ミドルマネージャーが適切な指示を出していたとしても、結果として部門目標が未達に終わった場合はミドルマネージャー自身が責任を負うことになります。

(3)権限

 与えられた義務について責任をもって全うしてもらうためには、ミドルマネージャーに相応の権限も与えなければなりません。
 部下を自由に使う権限はその代表であり、一定の予算を与える必要もあります。

 このように、ミドルマネージャーに対して、トップは何を期待し、どのような責任を求め、その全うのためにどのような権限を与えるのかを明示することが必要です。
 なお、「義務」「責任」「権限」の3つの要素はつねにバランスが取れていなければなりません。

2 PDCA管理能力を高める

 PDCA(「計画:Plan」、「実施:Do」、「評価:Check」、「改善:Action」)とは、計画を立案して必要な施策を実施したうえで、定期的に進捗状況を評価し、問題点を改善していくという経営に不可欠な管理サイクルです。

 ミドルマネージャーは自分の担当する部門について、主体的にこのサイクルを回していなければなりません。

 また、このサイクルを回す能力(精度と対象範囲)を向上させることが、ミドルマネージャーとしての成長に直結します。

 通常、社長の経営管理上の関心は部門ごとの最終的な業績数字のみに向かいがちです。

 しかし、ミドルマネジメント強化の点からは、彼らがきちんとPDCAサイクルを回せているかどうかも確認し、指導する必要があります。

 ミドルマネージャーには業績数字だけではなく、PDCAのそれぞれのステップについて、何をどのように行っているのかを報告させるようにしましょう。

 また、ミドルマネージャーには、自部門だけではなく、会社全体のPDCAサイクルにも参加することが求められます。

 社長が直接にかかわるべき経営戦略上の重要事項を除いて、日常的な会社運営のPDCAについては、できるだけミドルマネジメント層に任せていくようにします。

3 ミドルマネージャー同士の連携を強化する

 ミドルマネージャー同士の連携を強化し、ミドルマネージャーの集団としてさまざまな問題解決にあたらせることも大切です。

 自部門でなかなか対応できなかった問題について、他部門の力を借りたり、他部門と協力することで、容易に解決の道が開けることもあります。

 また、全社的な問題についても、ミドルマネージャー同士が連携することでより効果的な解決手法を見いだすこともできるでしょう。

 しかし、ミドルマネージャーは、自部門の運営に精一杯で、他部門との連携にまでなかなか気が回らないものです。

 定期的な部門長会議の開催や会社全体の問題を考える合宿を行うなど、ミドルマネージャーの有機的な連携を促進する機会を増やすことが大切です。

4 指揮命令系統を整備し遵守させる(マネジメントの3階層)

 会社の指示・命令は、「トップマネジメント」⇒「ミドルマネジメント」⇒「ロワーマネジメント」⇒「全社員」の順に行われることが原則です。

 このような指揮命令系統のフレームについては、トップ自らが整備し、全社員に遵守させなければなりません。

 しかし、中小企業の場合は社員数も限られており、距離感も近いことからトップからロワーマネジメント層や一般社員に直接指示が出されることがあります。ロワーマネジメント層や一般社員から、トップに直接相談が行くこともあるでしょう。このような「中抜き」の指示・命令は、緊急事態やミドルマネージャー自身に問題がある場合など、例外的に必要なこともあります。

 しかし、それが常態化してしまうと、ミドルマネジメントに大きな支障が生じます。ミドルマネージャーにとっては自分の関与していないところでのやりとりについては、マネジメントのしようがありません。

 また、一般社員は自分が承認を得たい事項について、組織的な手続きを経ずに社長に直接お願いしたほうが早いと考えてしまう可能性があります。これではミドルマネジメントの存在自体が否定されているようなものです。

 トップが指示を出す場合は、ミドルマネージャーを通すことが原則です。

 また、一般社員からトップに直接の承認依頼などがあった場合にも、なぜ本来のルール通りに行わないのかを確認することが必要です。

5 十分な動機づけを行う

 ミドルマネジメントは、本来であれば楽しくて仕方のない仕事のはずです。

 多くの部下と予算を与えられ、それらを自分の裁量で動かして大きな仕事ができるのは社会人としての醍醐味です。

 しかしながら、実際には多くのミドルマネージャーが、トップとロワーの間で「上からは締め付けられ、下からは突き上げられる」と悩んでいます。

 せっかくこれまでの頑張りが認められて、ミドルマネージャーとしてのポジシンを得ているのに、その役割を果たせる喜びよりもストレスを強く感じてしまうのです。

 トップは、ミドルマネージャーに彼らの仕事のやりがいについて繰り返し伝え、動機づけを行う必要があります。

 ミドルマネジメントの「やりがい」としては、次のようなことが考えられます。

 ・経営全体へ影響力を発揮できる

 ・自部門をあるべき方向に導き、成長させる

 ・部門全体で目標を達成する

 ・部門全体で顧客や地域に貢献できる

 ・部下を成長させる

 ・自分自身が管理者として成長できる

 ミドルマネージャーがいきいきと働くことは、彼ら自身のためだけではなく、その下のロワーマネージャー、一般社員にとっても「自分も早くポジションアップしたい」という動機づけにつながります。

 ミドルマネージャーが苦しんでいる姿しか見えなければ、「昇進しても大変なだけ」という沈滞ムードが支配してしまいます。これでは社員は育ちません。

 社長は、ミドルマネージャーに対して高い要求水準をもち続ける一方で、社長自身が彼らを育て、また、彼らが輝けるような環境を整備しなければならないのです。

 

管理職の器

 ミドル・マネジメントにも器があって、第一に、仕事について精通しているエキスパートでなければならないが、自分の業績に直接には関係のない部分においても徳を積む考え方を持っていること。

 第二に、教育者としての資質を持っていること。そのためには、後進に教えられるだけの専門知識のストックがあること、また、さまざまな知識を学び、人生経験の幅を広げておくことで、人間をよく知っていること。

 第三に、部下を真に公平に人事考課できるために、より高次な精神的なるものを学び、威儀を正し、謙虚に、偉大なるものへ帰依する気持ちを持っていることである。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『成功の法』で以下のように説かれました。

「第一に、高度な判断能力の点について考えるならば、管理職は、「有能である」という意味での器でなければいけないわけです。「有能である」というのは、「仕事について精通しているエキスパートである」ということです。
 この際に大事なことは、「自分の業績に直接には関係のない部分においても徳を積む」という考え方を持っていただきたいと思います。
 仕事のうちの六割、七割は、自分の業績に反映するものであってもよいのですが、残りの三割、四割は、将来、会社が成長していくための布石となり、自分のあとに来る者への布石となるようにしなければなりません。そういうことを、常々、念頭に置かねばならないと思います。
 管理職の器を考える際の第二は、教育者としての資質です。これは、必ずしも評価されていないところがあると思います。
 教育者としての管理職であるためには、もちろん、「後進の者を教えることができるようなノウハウ、つまり、専門知識におけるストックがある」ということが、まず前提として必要だと言えるでしょう。
 もう一つの条件としては、「人間をよく知っている」ということが必要だと言えます。人間をよく知っていなければ、真に人を教えることはできないはずですし、その人の長所を伸ばすこともできないのではないでしょうか。
 そのためには、管理職になるような人は、事前に、人間についてのさまざまな知識を学び、人生経験の幅を広げておく必要があります。
 この教育者としての能力の部分は、今後、ますます、時代の要請として脚光を浴びるようになってくるでしょう。
 管理職の器を考える際の第三は、「管理職に当たる人は、実際上、成績考課を行っているため、部下の経済問題について、大きな鍵を握っている」ということです。管理職は、部下の昇給や昇進、ボーナスの査定などを、仕事として行っているわけですが、「そのさじ加減一つによって、『将来、その人がどれだけ経済的に潤うか』ということが支配されている」と言っても過言ではないのです。
 それゆえに、評価における公平性ということを、どうしても考えなければならないのです。むしろ、威儀を正して、仏の意を問うようなつもりで、公平に人々に接し、公平な判断を下さねばなりません。自分の好き嫌いや、えこひいきだけで判定をしてはならないのです。
 この公平感というものを養っていくためには、単に、学校教育を受け、社会人教育を受けただけでは無理です。真なる公平感が出てくるためには、やはり、自分の心を真っすぐにする必要があります。心を真っすぐにするためには何が必要であるかというと、「より高次な、精神的なるものを学ぶ」ということです。「威儀を正し、謙虚に、偉大なるものへ帰依する」という気持ちを持っている必要があります。」

 

中間管理職のための時間術 部下を育て、上司を先読みする 

 「自分でやった方が速い」と思ったことありませんか?

 たとえば、部下に表作成を頼むと、「線の太さが・・・」といった細かいことが気になる。かといって自分でやってしまっては部下は成長しません。人に任せるには教える根気と我慢が必要です。

 「もうちょっと部下ができるようになってから任せます」と言う人も多いですが、逆です。任せるからできるようになる。ミスやトラブルもあるかもしれないけれども、それも含めて任せるということです。

 任せるときのポイントは、作業を任せるのではなく、目的や背景を伝えて、責任を持たせること。それがないと「やらされ仕事」になってしまいます。

 優先順位を伝えることも大切です。部下は意外に、重要度が低い仕事に時間をかけていることが多い。パレートの法則といって、成果の8割を8割を生むのは、重要度の高い2割の2割の仕事です。その2割に2割に集中させることも上司の役目だと思います。

 中間管理職の場合、上司の仕事を先読みすることも時間術のひとつです。

 上司の動きを先読みしたり、役員会議でどんな資料が必要になるかなどを考えることは、自分より上の立場の視点で物事を考える勉強にもなります。

 判断を速くすることも、訓練すればできるようになります。

参考

ミドル・マネジメントの育成

 ビジネスの成否を左右するのはミドル・マネジメントであり、また、若い人材の教育や指導を現場で行っていくのもミドル・マネジメントになります。

 そのため、人材育成の中でも最も重要になるのがミドル・マネジメントの育成ということになります。

 ミドル・マネジメントをうまく育成することができれば、企業の業績向上にも直接的に影響を及ぼします。

 近年では、特に、ビジネス・スクールなどで学ぶことができる標準的な経営スキルや、業務の「型」や企業文化を伝承する力を磨く必要性が高まっています。

 ここでのビジネス・スクールとは、卒業時にMBA(Master of Business Administration:経営学修士)の学位が与えられる大学院のことをいいます。

 MBAを取得するには通常2年間大学院に通うことになりますが、1年間のプログラムであったり、夜間プログラムや、通信教育で学ぶことができるプログラムも存在しています。企業経営者や管理職を対象に、EMBA(Executive MBA)コースを設けているビジネス・スクールもあります。

 EMBAのコースでは、多忙な経営幹部が短期間で経営学のエッセンスを学ぶことができるようにプログラムが設定されています。

 欧米の著名なビジネス・スクールとしては、ハーバード・ビジネス・スクールやシカゴ・ビジネス・スクールがあり、アメリカでは特に、企業経営者や管理職の多くがMBAを保有しています。

 ビジネス・スクールで学ぶことにより、マーケティングやファイナンスなどの普遍性の高い経営科学を学び、経営者、管理職としてのスキル身につけることができます。それ以外にも、副次的な効果として、他業界のビジネス・パーソンと接する機会を持ち、視野を広げることができ、人脈も広がります。

 日本では、これまではビジネス・スクールの数が少なく、MBAを取得するためには海外のビジネス・スクールに入学するしかないという状況でした。近年、日本国内でもMBAを取得できる大学院が増えてきており、また、経営幹部向けの経営教育を提供する大学や機関も増えています。

 また、企業内の選抜研修において、外部の大学や研修企業を活用して経営教育を提供する企業も増えてきています。

 MBAそのものではありませんが、製造業を中心にその内容を転用した「技術経営(MOT:Management Of Technology)」を取り入れる企業も広まっています。

 これからのミドル・マネジメントを育成していくために、企業組織内部で自ら開発するにせよ、外部機関や研修を活用するにせよ、効果的なプログラムを開発していくことが日本企業には求められています。

 企業間の競争が激しくなり、事業拡大やグローバル規模でのM&Aの活用など、企業経営者に求められる能力は広くかつ深くなってきており、企業組織の将来のために優秀なマネージャを体系的に育成していくことは重要な課題となっています。

 

ミドル・マネジメントに求められるスキル

 ミドル・マネジメントが「型」や企業文化を次世代に伝承していくために求められる具体的なスキルとしては、コーチングや質問力が挙げられます。

 コーチングとは、メンバーの潜在能力や意欲を引き出すために相互のコミュニケーションを通じて指導する方法のことをいいます。
 質問力とは、相手にロジカルに本質を考えさせるためにコミュニケーションを行動レベルでイメージさせるものです。最近では、役員会に質問力を強化するためのプログラムを導入する企業も出てきています。

 また、複数の相手への問いかけの技術として、ファシリテーション(物事の簡易化)に対するニーズも高まってきています。

 いずれのスキルも、一方的に主張を押し付けようとするのではなく、相手の熟練度や思考の癖等も踏まえたうえで、考えさせながら物事を習得させようとするところに特長があります。

 このようなスキルが求められるのは、雇用形態の多様化や企業組織のグローバル化に伴って、伝承する相手が自社の正社員のみでなく、派遣社員、外注先のスタッフ、外国籍のスタッフなど、対象が広がってきているという事情があります。

 

ミドル・マネジメント育成の戦略

 一方、多くの企業ではミドル・マネジメントの育成について悩みを抱えています。

 どのように能力を伸ばしていくかという方法論の問題もありますが、誰の育成を優先するかという選択と集中の問題も大きいのです。

 本来ならば、全ての社員に平等に機会を与え、育成を図ることが望ましいでしょう。

 しかし、1人の経営幹部候補を育成するには経済的、時間的コストがかかるため、企業組織として保有する資源に限りがある以上、特定の潜在能力がありそうな社員に絞り込まざるを得ないのです。

 そのため、新入社員の時には同じ研修を受けていたのに、途中から育成プログラムに参加できるものと参加できないものが現れるといったことが起こってきます。

 若年層を対象に早期の育成を狙うほど、こうした事態が目立ってくることになります。

 育成プログラムに参加できる者のモチベーションは上がりますが、そうでない者のモチベーションは下がってしまうことが考えられます。

 そのため、マネジメント層が注意すべきことは、誰を幹部候補として選抜するのかを慎重に検討し、メンバーに対して説明できるようにしておくことです。

 誰が経営幹部候補として選ばれたかは、誰の目から見ても明確であるため、組織内に対して強いメッセージを発していることを強く意識しなければならないのです。

 また、幹部候補の選抜から漏れた者へのケアとして、「敗者復活制度」のような仕組みを取り入れることなどがあります。

 実際に目立たないような傍流部門にいたからこそ、トップ・マネジメントの目を気にせずに自由に仕事に取組み、結果としてマネジメント能力が伸びるというケースもあります

 マネジメント側も、大器晩成型の人材がいることを忘れてはならないのです。

 これまでの多くの日本企業においては、育成したいマネージャ像が明確でないまま、何となくさまざまな部門を異動させ、結果的に人が育つのを待つというやり方が採用されていましたが、これは、企業にとっても個人にとっても効率的とは言えないと思います。

 将来的に育って欲しい人材像を示した上で、配置やアサイン(役割の割り当て)を考えるという戦略的な発想が今後の日本企業には求められています。

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