顧客との関係を深める視点

 売れない日が続くと、「何とかして売ろう」と焦るものですが、まず売ろうとするのをやめて相手の話を聞いてみてください。

 営業の仕事は ものを売ることではなく、お客様の問題解決のお手伝いをすることです。営業マンには、お客様と成長の感動を共有する使命があります。お客様の仕事がよりよくなるお手伝いをすることで、自分自身も人間として成長していく。すると、より高いレベルのお手伝いができるようになります。お客様はさらに喜ぶ。そうやって成長の感動を分かち合うことで強い絆が生まれるのです。

参考

「誰を幸せにしたいか」

 売ることを目的にすると、価値観の合わない人にも売ろうとします。誰でもいいから売る活動は必ずトラブルを生むものです。

 営業だけにとどまらず、働くことの使命は「誰を幸せにしたいのか」という問いへの答えを探すこと。「なぜ売れないのか」「どうすれば売れるのか」という問いを繰り返す営業マンは、プレッシャーにつぶされます。いつも自分へ正しい問いかけをすることです。すると、商品に込められた作り手の思いや、それを売るあなた自身が大切にしている価値観に共鳴するお客様が目の前に現れます。

 正しい問いかけは、私たちの思考と行動を正しい方向へ導いてくれます。

 あなたの売っている商品を一番喜んでくれる人は誰ですか? あなたは誰に商品を売っているのですか? 知らず知らずのうちに、「この人は買わないだろう」「ここはやめておこう」と自分で決めつけて、可能性を狭めていませんか? この決めつけを打ち破ることで、新しいお客様を創造することができるのです。

 大切なのは、「この人を幸せにしたい」という正直で誠実な心です。

 

売れない人の共通点

 こうした「前提」をもとに、売れない人と売れる人の違いを考えてみましょう。

 売れない営業マンは、買うつもりのない人、「ノー」の人を「イエス」に変えようとしています。一方、売れる人は、買おうとしている「イエス」の人をもっと喜ばせて、気持ちのよいイエスにするにはどうすればいいかを考えています。

 では、どうすれば「イエス」の人に会えるか。少なくとも、店に来てくれた人や商品について聞いてきてくれた人は基本的に「イエス」の人です。興味や関心がなければ私たちに接点を求めません。

 会えたなら、その人はイエスの人なのです。だからこそ、「よい感じ」で接するのです。せっかく会ってくれるのですから、気持ちよく過ごしていただける努力を怠らないこと。第一印象がよくない人はプロになれません。

 さらに言えば、売れない営業マンは、お客様に断る理由を与えています。

 例えば、洋服の販売で、「いかがですか」とお勧めしたとき、お客様から「ちょっと色がねえ」と言われる。これが三回続くと、四回目には、「ちょっと色は悪いかもしれませんが、いかがでしょう」と断りやすい言葉をかけるようになります。

 多くの人が、本来イエスと言ってくれるお客様に対しても、このように断られることを前提に話しかけています。

 自分から売れなくしているにもかかわらず、さらにしつこく「いかがですか」と聞くので、売れない上に悪印象を残してしまうのです。

 一方、売れる営業マンは、「この洋服を着てどこに出かけますか」と、イエスを前提に未来をイメージさせます。この根本的なスタートの違いで、お客様をイエスにもノーにもしているのです。

 

「技術」ではなく「魅力」

 営業には技術も必要ですが、何よりも求められるものは「人間的魅力」です。どんな人に人間的魅力を感じるかというと、素敵な笑顔、正しい言葉遣い、謙虚な態度、清潔感など たくさあります。自分の想像する限りの素敵な人を目指せばよいのです。

 他にも、靴の揃え方や髪が伸びないうちの散髪など、営業としての凡事を知っているだけでなく、している人は成績を上げています。

 売れない人には魅力がないのです。営業として当たり前のことを「知っている」だけで、「していない」うちは売れません。しかし、あるとき突然「し始める」と売れ始めるのです。

 また、売れる人を見ていると、常に「自分がどうしたいか」ではなく、「人から自分はどのように見えているか」「自分は何を期待されているか」を意識しています。自分がしたい髪型や着たい服を選ぶのではなくて、周りの人が望む自分になる努力を惜しみません。

 好感を持たれる姿勢とは何かを考え、「俺が俺が」という「我」を捨てる。そして、「おかげさまで」という感謝の思いで生きるのです。

 売れない日など長く続きません。なんでも「知っている」だけの つまらない人から、なんでも「している」実践の人になれば、誰でも売れる人に変われます。

 営業は神様に選ばれた人しか就けない職業です。そして、今あなたが営業をしているなら、間違いなくあなたは神様に選ばれた人なのです。

 

顧客との関係を深める視点

 継続して成果を上げるには、顧客との関係を深めていくしかありません。それには、顧客の課題や困りごとを発見し、それを解決していく努力が大事です。これは、営業マン個人任せでは限界もあります。

 企業の営業力は、「個別顧客対応力」「新規顧客開拓力」「顧客価値創造力」の合計に、「好印象頻度」を掛け合わせて決まると考えています。

営業力の公式

   企業の営業力=(個別顧客対応力+新規顧客開拓力+顧客価値創造力)×好印象頻度

 それぞれの力を磨きつつ、会社全体として好印象を積み重ねることが大切。営業部以外の社員が顧客と接した時に与える好印象、商品の使いやすさや良いイメージなど、すべてが営業力アップにつながる。

 「新規顧客開拓力」は、文字通り新しい人間関係を築いていくことです。個人の努力としては、人脈に関する情報を集め、実際に会いに行く努力が必要です。さらに、相手の困りごとに対して、まずは、こちらが努力して相手に救いの手を差し伸べ、感動させるところまでいけば、相手は心を開きます。

 一方、既存顧客に対しては「顧客を教育する」という視点が必要となります。顧客が取り組むべき課題を発見し、営業側から解決のための情報や知識をあらかじめ提供するということです。

 縁がある顧客でも、しばらく何もしなければ、自社の商品に興味を示してくれなくなったり、競合他社に仕事をとられたりすることもあります。ですから、より顧客に近づき、顧客の課題を次から次へと見つけることで、関心を持ち続けてもらわなければなりません。

 

営業は創造性の高い仕事

 「顧客価値創造力」とは、営業部がアンテナとなって市場のニーズを探り、営業・宣伝部、開発部、製造部などを巻き込んで、今までにない商品やサービスを世の中に生み出すことです。 

 これは、新規顧客の獲得にも既存顧客の売上増にもつながります。

 こうしてみると、営業とは単なるセールス(売ること)ではなく、企業活動そのものであることが分かるはずです。

 企業活動とは、「世の中に新たな価値を創り出し、それを提供することで見合った利益を得て、従業員を養い、世の中に継続して存在すること」です。ですから、全社を挙げて取り組むべきものです。

 特に、顧客との接点が多い営業部には たくさんの情報が集まります。時には、経営陣に掛け合って会社の仕組みを変えたり、新しい商品の提案をしたりして、新しい価値を創り出す使命があるのです。「私は営業部だから、他部署に口出しはできない」などと考える人が多ければ、会社は傾いていきます。

 営業とは知的で創造性の高い仕事なのです。

参考

全体観の構築には理念が必要

 全社員が「営業」に当事者意識を持つには、「私たちはどんな企業を目指すのか」ということを考え続けることが大切です。

 維新後の日本は、国家としても崇高な志を持ち、企業も顧客を喜ばせたいという商人精神を持っていました。不幸にも、戦後の日本は、効率よく儲けることを目指した結果、分業が進み「自分の仕事だけやればい」という空気が蔓延しています。

 この哲学、理念不在の経営が発展の限界になっているのではないでしょうか。「どんな企業になりたいか」「どんな仕事をしたいか」という「思い」こそ、会社をまとめ、強くするのです。

 営業力を強化しようとする際、営業マンを採用する話になりがちですが、中小企業にとっては重い判断です。固定費は確実に増えるのに、成果を出せる営業マンを獲得できるかは分からないからです。

 

すべての社員を営業戦力に

 すべての社員に何らかの形で営業にかかわってもらう「全員営業」を提唱します。

 例えば、電話や人の対応に慣れている総務部門であれば営業のアフターフォロー、ITや書類作成が得意な管理部門であれば顧客管理、商品知識が豊富な製造部門には商談同行による支援などです。

 顧客から見れば、接する人が営業部の社員かどうかは関係ありません。各部門の強みを生かして営業に参画すれば、今いる社員のままで、会社の営業力は確実にアップします。

 

営業力と生産性を同時に強化

 そのためには、まず、今までやっていた仕事を見直すことが大事です。トップは「これをやれ」と指示しても、「やめていい」とはまず言わない。そのため、営業の現場には、いつの間にかやるべき仕事が年月とともに積み重なっていきます。

 成果が出ていない仕事や、今は必要性が低い仕事については、会社としてやめる意思決定をすることで余力を生み、その空いた時間を活用して、新たな営業の動きに取り組めばいいのです。そうすれば、現場の負担は今以上に増えないどころか、軽減する場合すらあるため、社員からの反発は出なくなります。

 各部門の生産性向上は、どちらにせよ取り組むべき課題です。ゆえに、全員営業を導入すれば、本来、取り組むべき各部門の生産性と、会社全体の営業力も同時にアップするという一石二鳥の成果が得られるのです。

 

計画の実行には個別対応を

 よく「やることをやれば成果は出る」と言われますが、「やれば」の部分がポイントです。「やること」は会社全体で計画を立てて体系化できますが、「やれば」の部分、つまり、計画を「実行」したり、方針を「運用」したりする部分は、社員によって能力差や意識差がありますので、すべて個別の対応が必要です。

 やることだけを決め、「あとはやっておけ」という経営者もいますが、これでは思うような成果は上がりません。具体策の一つは、営業マンと個別に面談し、問題解決の手を打つことです。たとえば、言い訳の見極めです。「他社より高いと言われた」というのは、言い訳でも、「他社より5%高いと言われた」は、検討すべき経営情報になります。「忙しい」という場合も言い訳でしょうが、「1日10件は訪問できても、それ以上は事務作業が多く難しい」というなら、改善するポイントが見えてきます。

 さらに、優秀な営業マンは、難易度の高い新規開拓に回すべきです。優秀な営業マンを取引額の多い既存顧客に回していることが多いはずですが、それでは会社の未来はありません。

 丁寧な個別対応には、時間も労力も必要ですが、この部分をどれだけやれるかによって、経営者の考える計画と現場の実行との差が、広がるか、無くなるかの違いが生まれるのです。

参考

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