経営理念を立てる

 実際、どのように経営理念を作成すればよいのでしょうか。

1 他社の経営理念を見て、イメージを膨らませる

経営理念をいざ作ろうと思っても、最初のうちは「まったくイメージが浮かばない」「漠然としたイメージしかない」といったこともあるでしょう。まずは、「経営理念とはどのようなものか」をイメージすることが重要です。他社の経営理念を見て、イメージを膨らませましょう。その際は、「自分の好きな企業」や「同業種の企業」「企業規模や企業としてのフェーズが近い企業」など、経営者自身が共感しやすい企業や自社と類似点のある企業を選ぶことが重要です。

 

2 経営者自身の実体験を振り返る

 経営理念は、経営者の思いや信条を言語化したものであるため、策定する際のヒントが経営者自身の実体験にあることもあります。時間をかけて自分自身と向き合い、実体験を振り返りましょう。振り返る際のポイントは、以下の通りです。

実体験を振り返る際のポイント

 これまで、どのような経験をしてきたか?(どのような経験が印象に残っているか?)
どのようなときに、喜びや感動を感じたか?(どうして、喜びや感動を覚えたのか?)
どのようなときに怒りや悲しみを感じたか?(どうして、怒りや悲しみを覚えたか?)
どういう理由で、この事業に取り組み始めたのか?(何のためにやっている事業なのか?)

 

3 将来的に「実現させたいこと」「絶対にやりたくないこと」を書き出す

 経営理念を作る際には、「どのような会社にしていきたいのか」「どのような事業を展開していきたいのか」などを考えることも重要とされています。将来的に、企業として「どのようなことを実現させたいのか」「反対に、絶対にやりたくないことは何か」を書き出しましょう

 その際は、以下のようなポイントを意識することが重要です。

・どのようなことで、「ナンバーワン」「オンリーワン」となりたいか?

・社会に対して、どのように貢献したいか?(どのような社会づくりに貢献したいか?)
・従業員には、どのようなことを意識してもらいたいか?(どのような従業員になってもらいたいか?)
・将来的に、必ず実現したいことは何か?(企業として、経営者として、どのような未来を望んでいるか?)
・今後、絶対にやりたくないことは何か?(企業として、経営者として、どうしても避けたいことは何か?)

 

4 社会的意義や企業の置かれた状況などと擦り合わせる

 企業として果たすべき役割は、業種や規模によって異なります。経営理念を作る際は、その点を意識する必要があります。将来的に「実現させたいこと」や「絶対にやりたくないこと」を、社会的意義や企業の置かれた状況などと擦り合わせましょう。「どのような社会づくりに貢献していきたいか」「自社の強みをどう活かしていきたいか」といった観点で考えることが重要です。

 

5 入れたい「キーワード」を考え、経営理念の原案を作る

次に、経営理念に入れたい「キーワード」をいくつか考えます。それを基に、経営理念の原案を作成しましょう。多く作り過ぎると、選ぶのが大変になったり、方向性が定まらなくなったりするため、原案は2、3個にとどめておくのが望ましいとされています。

 

6 納得いくまで、何度も作り直す

経営理念の原案ができたら、「これで本当によいのか」をじっくり時間をかけて考えます。「経営に込める思いを言葉にできているか」「他社の経営理念とほぼ似たようなものになってしまっていないか」「自社の置かれた状況に合ったものになっているか」などを確認することが重要です。納得のいく経営理念が作成できたら、社内報や企業のウェブサイトなどで社内外に示し、浸透させましょう。

 

 経営者にとって、「経営理念」をつくることは大切です。
 江戸時代から昭和にかけて活躍した近江商人(滋賀県出身の商人)は、現代の「経営理念」に通じる「三方よし」という商売哲学に基づいて、豪商へと成長したことで知られます。「商いとは、自らの利益のみならず、買い手としての顧客、そして、世間(商売先の地方)にとって良いものであるべき」という考え方でした。
戦国時代で言うと、武田信玄の「風林火山」、織田信長の「天下布武」といった「錦の御旗」のようなものであり、発展、繁栄のためのキーワードなのです。

 伊藤忠商事の創業者、初代伊藤忠兵衛もこの近江商人の先達たちを尊崇した一人で、現代にも多くの企業の経営理念の根幹となっています。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『経営入門』で以下のように説かれました。

「メーカーを例にとると、「当社では、こういう製品を作って売っています」という会社説明や、「うちの会社は、下請けとして、この部品を作って売っています」という説明だけをしていたのでは、多くの会社がついてくることはありませんし、事業が大きくなることもないのです。

 組織には経営理念が必要です。経営理念というのは、「組織全体が、どの方向に向かっていくのか」という理念であり、「錦の御旗」のようなものです。例えば、武田信玄の「風林火山」の旗や、織田信長の「天下布武」のスローガンのようなものです。そのような一つの旗印であり、目標です。組織には何かそういう旗印が要るのです。

 経営者は、経営理念を立てて、それを社員に学ばせ、「わが社は、どの方向へ行き、どのようなかたちで社会貢献をするのか」ということを繰り返し教えなくてはなりません。この訓練が大事です。

 教育によって社員に経営理念を神道させなければ、経営者一人の頭のなかにインスピレーションとして思いついたことを彼らに発信するたけになってしまいます。社員に学ばせて、自分と同じような働きができるようにするのが経営理念なのです。」(『経営入門』P-236~238)

「「経営理念」があれば、それぞれバラバラのところで仕事をしている社員たちが、「自分たちは、何のために仕事をしているのか」と思ったときに、その「経営理念」に立ち返ることができます。そして、「ああ、自分たちは、こういう目的のために働いているのだ。では、このようにしなければいけないな」と考えるようになっていくわけです。そういう意味で、「経営理念の結晶化」と、それを、社員教育を通して繰り返し教え込んでいくという「教育」が必要になってきます。
 ここのところで手を抜くと、いつまでたっても、社長一人の能力で全部をしなければいけなくなるため、「経営理念」を繰り返し教え込んで、幹部を育てていかなければいけません。要するに、会社になってきたら、番頭さんから始まって、重役や幹部社員、中堅幹部社員までつくっていかなければいけないし、さらに、末端に至るまで、一定の〝遺伝子〟をつくっていかねばならないのです。」
(『経営が成功するコツ』)

「経営者は、経営理念を立てて、それを社員に学ばせ、「わが社は、どの方向へ行き、どのようなかたちで社会貢献をするのか」ということを繰り返し教えなくてはなりません。
 教育によって社員に経営理念を浸透させなければ、経営者一人の頭のなかにインスピレーション(ひらめき、着想)として思いついたことを、彼らに発信するだけになってしまいます。社員に学ばせて、自分と同じような動きができるようにするものが経営理念なのです。」
(『経営入門』)

「経営理念とは何かというと、「わが社は何のためにあるのか」という質問に対する答えです。要するに、「わが社がこの世に存在する理由」なのです。
 この「わが社は何のためにあるのか」という質問を常に反芻できる人が経営者です。」
(『不況に打ち克つ仕事法』)

 では、「経営理念」は、その内容においていかにあるべきでしょうか。経営理念を練る際に大切にすべき心構えと経営理念に基づいた経営戦略について学ぶことができます。

「「何のためにやっているのか」という経営理念のところは、よくよく考えておかなければいけません。それが、社長一個人の私利私欲、自我我欲に発するものであったなら、多くの人たちがそれに惹きつけられ、勇気が出たりすることはありません。この経営理念を練る際には、「自分の私利私欲のためでないかどうか」ということを、よくよく考えなければいけません。
 「公の仕事である」と思いつつも、そのなかに経営者としての虚栄心や虚飾、うぬぼれの心などが入っていることはあります。そのため、この公的な欲望も、もう一段、透明感のある素直な目でもって見ていかないと、間違いが出ることは当然あります。これは、「無私」というよりは、仏教が昔から説いている「無我」の境地でしょう。
 経営理念というものも、単なる自画自賛、自社自賛のものになってはいけないのです。そのなかに、常に発展していく要素を秘めたものでなければいけないと思います。
 経営理念のなかには、無私、無我を超えて、「宇宙の理想」と言うべきものを導入しておかなければ駄目なのです。最終的に、わが社だけのことを考えるようなものになってはならず、宇宙の理法の一端を担っているつもりでやらなければいけません。」
(『社長学入門』)

「初めは、「熱心で、誠実で、誠意がある」とか、「真心がこもっている」とか、「お客様のことを大事に考えている」とか、そのあたりからスタートして、成功していきます。しかし、一定数の従業員を抱えながら、まだまだ、危機のなかをかいくぐり、成功を続けていかなければいけない立場の人であれば、次は、その熱心さを超えて、「使命感」を持たなければいけないのです。
 そして、その「わが社の使命感」を、「経営理念」として、考え、まとめ上げなければいけないでしょう。しかし、それまでには、一定の年数はかかると思います。
 実際に、ある程度の紆余曲折を経、浮沈変転を経ながら、会社を軌道に乗せたあたりで、過去の成功や失敗など、今までの、いろいろな事例を踏まえた上での「経営理念」が出てくると思うのです。」
(『経営が成功するコツ』)

「経営者の仕事能力として大事なものは、「判断力」です。
 この世的な善悪、あるいは宗教や道徳による善悪の判断とは違うかもしれませんが、経営理念や経営者としての大きなものの考え方に基づいて、企業のなかで、そのつど、「取るべきもの」と「捨てるべきもの」を必ず決めなければいけなくなります。」
(『智慧の経営』)

「ここで難しいことは、「単なる浪費か、未来のための投資か」ということの見極めです。
 これを判断する基準は、基本的には会社の経営理念です。「当社の経営理念」というものに照らして、「この事業には存続の意義があるかどうか」ということを、心を空しゅうして考える必要があるのです。そして、「これは、天下国家のために、人類のために、どうしても、やらなくてはいけないことだ」「世の中のために、この業界のために、やらなくてはならないことだ」ということであるならば、何とかして、その事業を続けられるように頑張るべきです。」
(『経営戦略の転換点』)

 

経営理念作成の原則

 経営理念は業種業態あるいは社長の価値観によって、まったく変わったものになります。正解というものは存在しません。

 後々のことを考えて「このように作ったほうがよい」という原則がある。それは以下のとおりです。

1 社長自身の価値観で社長自身がしっかりと考えて作る

 幹部社員と意見交換を行うにしても、とにかくトップである社長自身がじっくりと考えて、自分の言葉で表現することが大切です。

2 社会全体・顧客・社員に対しての想い

 経営理念は社員だけではなく、顧客、取引先、銀行などの関係者や社会全体に対してのメッセージでもある。それらの人々に対してどのような想いを持っているかを示すことが大切です。

3 分かりやすく簡潔な言葉・文章を心がける

 経営理念は新入社員や外部の人にも理解しやすいものでなければなりません。

 また、理念策定後は朝礼等でそれを繰り返して唱和していくことになる。

 分かりやすく簡潔な表現を心がけることです。

 

経営理念の効果 

「経営理念を繰り返し浸透させておくと、さまざまな業務のなかで迷ったとき、方向性がわからないときに、この理念に基づいて判断がなされていきます。

 経営理念を小目標として、個別に小さくブレイクダウン(細分化)していけば、月次目標や毎日の目標、割り当てられた担当の仕事などになっていきます。経営理念があれば、経営者が個別に指導することができなくても、各人が「大きな経営理念から見て、どう判断すべきか」という結論を出すことができるのです。

 例えば、タクシー会社が、「お客様へのサービスを徹底し、お客様に快適な1日を過ごしてもらう」という経営理念を打ち出したとします。そうすると、「雨の日のサービスはどうあるべきか」「晴れた日はどうするべきか」「風の強い日はどうすべきか」など、細かい点についての取り決めがなされていなかったとしても、「こういう天気の日には、どのようなサービスをすべきか」ということを、経営理念に基づいて従業員が考えるようにならなければいけません。」

「経営理念に基づいて、社員が「個別の仕事はどうあるべきか」ということを判断するようになることが大事です。この経営理念があれば、会社の規模が百人になり、千人になり、一万人になったとしても、社員は、その理念を反芻しながら自分たちで考え、「このようにすべきである」というのがわかるのです。

 経営理念がなく、各セクションの個別の目標や決められた仕事の内容があるだけならば、そこに決められていないことについては判断のしようがありません。

 したがって、経営者は経営理念をつくらなければいけないのです。その意味で、経営者は哲学者でなくてはなければいけません。難しい哲学である必要はありませんが、経営者は、考え方や思想をつくり出せる人でなければならないのです。

 そういうものがなければ人はついてきません。また、経営理念があるからこそ、大きな組織もつくれるのです。

 もし、経営理念がなく、「わが社は こういう仕事をしている」程度の認識しかないままであるならば、経営者は、努力して考えを重ね、その会社の経営理念を打ち出すべきです。「わずか十人程度の社員しかいないのに恥ずかしい」と思う場合もあるかもしれませんが、経営理念をつくることができれば、十人の会社を五十人、百人へと発展させることが可能です。しかし、社長が経営理念をつくらなければ、会社は社長の目が届く範囲の仕事しかできません。」(『経営入門』P-238~242)

 創業間もない企業や中小企業には、経営理念は特になくてもかまわないという考え方もある。パナソニック(当時の松下電器)が経営理念をつくったのも、創業して15年を経ってからであった。しかし、「大きくなったら経営理念をつくる」ではなく、「経営理念をつくるから大きくなる」というのが鍵である。

 とある全国の1万1476社を対象とした調査では、経営理念のある企業の平均経常利益は、「なし」と答えた企業の平均経常利益の1.7倍となったという。経営に成功するためには、経営理念は必須と言える。

 経営理念は、経営トップがその事業に込めた思いや信条を明文化したものであり、その思いの強さが人を動かす力になる。

 今日、IBMといえば世界的な大企業であるが、その大企業に最初の飛躍をもたらしたのは、まさに経営者の信条であった。2代目社長のトーマス・ワトソン・Jr は、「私たちが成功できたのは、主としてIBMの信条の力のおかげだ」と述べている。

 IBMの信条とは、(1)個人を尊重せよ、(2)世界中の会社のなかで、一番のサービスを提供せよ、(3)全ての仕事を最高のやり方で完了するという思想をもって遂行せよ、の3つが核となっている。

 ワトソンは、この信条の大切さについて3点指摘している。

 「一つ目は、生き残って成功を収めようとするあらゆる組織には、全ての方針と活動の土台となる健全な信条がなくてはならない。

 二つ目は、会社の成功にとって最も重要な要素を一つだけあげると、その信条を忠実に固守することである。

 三つ目は、変遷する世界からの試練にうまく対応するためには、企業はその一生を移ろううちに、その信条以外、自らの全てを変える覚悟をしておく必要があるということである。」

 

 経営理念は、ただ耳障りのよい文句を形だけ整えても機能しない。経営者自身の人生をかけた使命感によって裏打ちされている必要がある。そして、その経営理念に盛られた内容を原理原則として、自らが実践していることが前提となる。経営理念として社長が言っていることと、実際にやっていることが ズレていたりすれば、社員は誰もその経営理念を本気で信じたりしないからである。

 したがって、単に思いつきで好きな言葉を並べるのではなく、実際の経営で試行錯誤を繰り返すなかから生まれてきたものであるべきなのです。

 

 経営者の理念が本物になると、それを信奉し、それを他の社員にも伝道するような幹部が出現する。その幹部は、社長の分身としての仕事をし始め、組織を大きくしていく。

 

経営理念を作らなければ会社は大きくならない 

 大川隆法総裁は、『社長学入門』で以下のように説かれました。

「「なぜ、わが社が社員10人の会社から50人の会社にならなければいけないのか」「売上目標を『年商百億円突破』と掲げているが、なぜ わが社が燃焼百億円を突破しなくてければいけないのか」ということ、その目標の奥にある意味を考え抜かなれけばいけないのです。

 これは「経営理念」といわれるものですが、中小企業では、なかなか経営理念を立てられません。たいていの場合、中小企業の社長は、「自分一人で経営をしている」と思っていますし、経営理念は自分の「反省ノート」のようなものであり、他人に見られると恥ずかしいので、なかなか言葉に出して語れないものだからです。

 しかし、経営理念を作らなければ会社は大きくはなりません。

 自分一人の納得だけで済ましている間は、会社は大きくならないので、考えに考えて経営理念を作らなければいけないのです。

 「わが社は何のためにあるのか」「わが社の発展は、いったい何につながるのか。何が目的なのか」という理想、経営理念を練り上げて作らなければいけないわけです。

 ところが、中小企業の社長の場合、「そんなものは要らない」と言う人がほとんどです。「仕入れができて、売り上げが立てば、それで十分だ」「借金よりも利益が多ければよいのだ。それで終わりだ」と言う人が多いのですが、小なりとは言え、社員が20人、30人、50人と集ってきたら、その人たちにも働く上での生きがいがなければなりません。

 会社を発展させていくためには、道を開く勇気が必要です。その元になるものは何かというと、この経営理念なのです。」(『社長学入門』P-308310)

 

経営理念を立てることで正しさが立ち上がる 

「経営理念を立て、それを繰り返し述べて社員たちに理解させ、「わが社は、この理念を実現するために頑張っているのだ」ということを教え込めたら、そこに「正しさ」というものが立ち上がってきます。

 この「正しさ」というものを みなが意識したときに、勇気が出てくるのです。

 例えば、「わが社は環境問題の解決を図る」という経営理念を立てたとします。「環境をどのようによくしていくか」ということを経営理念として揚げたならば、それを繰り返し述べて社員に理解してもらう必要があります。

 そして、「環境問題を解決するための技術開発をすることが、わが社の理念なのだ」ということであれば、「わが社の決算書が、とりあえず赤字から黒字になればよい」というような、小さな目標で済まなくなってくるでしょう。

 環境を護るための技術について、「今は、これをやっているけれども、ほかにも、こういう技術があり、それも必要である」ということになってきます。

 環境問題には、空気もあれば水もあり、土もあります。また、住環境もあります。いろいろなところで環境問題は出てきます。そこで、「環境問題の解決」という理念を出したら、それに関してやらなければならない仕事が、ほかにもたくさん出てくるわけです。これが、会社が発展していく方向なのです。

 そのような経営理念を立てると、「わが社の売り上げは、今の50億円から100億円にならなければいけない。そして、100億円の次は300憶円に伸ばしていきたい」と社長が言っていることを、みなが納得するわけです。「そうだ。わが社が大きくならないと、日本の環境がよくならない」と思うようになります。

 この「正しさ」が立ち上がってくると、人間は強くなります。勇気がでてきます。一歩を踏み出す勇気、拡張する勇気が出てくるのです。

 社長から単に「年商50億円を100憶円に」という目標が出ても、下の人たちは、「社長は無茶苦茶なことを言うなあ」と思うたけですが、例えば、「日本の環境問題を解決するためには、わが社は、50憶円から100憶円に、100億円から300憶円に、さらには、1000億円、1兆円になってもおかしくないのだ」と社長が言えば、社員たちも、「それは、もっともである。その程度まで広がらなければ、日本全国の環境問題は解決しない」と思います。そして、会社の発展を目指すようになり、営業部門の人にも力が入ってきます。

 「これは、わが社だけの問題ではない。『日本のため』という大義名分」があるのだ。わが社の環境保全技術を日本中に広げたら、次は世界に出ていかなければならないのだ」ということになります。」(『社長学入門』P-310314)

 

どうすれば理念が浸透するのか

 多くの組織の問題は、理念がないことです。社員が理念として語っているつもりでいるものが、実は理念ではないことが多いんです 。

 例えば、空気清浄器をつくっている会社が「きれいな空気を世の中に送り出す」という理念を掲げているとします。でも、空気清浄器の会社がきれいな空気を送り出すことができなかったら困ります。

 タクシーの運転手さんに、「あなたの会社の理念は何ですか」と聞くと、「安心・安全・確実・丁寧に、お客様を運ぶことです」という答えが返ってきます。それは理念ではなく業務責任ですよね。こうした、いかにもそれらしく聞こえる理念を掲げている会社はとても多いのです。

 そんな中、京都のMKタクシーや、長野の中央タクシーという会社は、「お客様が先、利益が後」という理念を掲げています。

 どういう場面でこの理念が活かされるのでしょうか。

 例えば、海外で結婚式を挙げる予定のカップルが成田空港に行く途中で渋滞に巻き込まれた時。たとえ間に合わなかったとしても、それは運転手の責任にはなりません。

 しかし、「お客様が先、利益が後」という理念を掲げる中央タクシーの運転手は、あらゆる手段を使って、お客様の目的を達成するために奔走します。

 中には、成田便を羽田便に振り換える手配をし、羽田空港にお連れしたケースもあるそうです。普通、ここまでやるタクシーの運転手はまずいません。これは業務責任の範疇ではなく、理念が仕事をしているということです。

参考

理念そのものが魅力的か

本物の理念が浸透していれば、その通りに人が動くはずです。しかし、「うちの会社には理念があるけれど、その通りに社員が動いてくれない」という経営者の悩みは尽きません。

これにも理由があります。まず、理念そのものに魅力がないのです。 社員が理念のもとに頑張りたいというエネルギーが湧いてこないのは、その理念を語る言葉に力がないからです 。

リッツ・カールトンの理念が書かれたクレド・カードは、毎日、何時間でも見ていたくなるものです。実際に、それを見ながら自分の中でいろんな仕事をイメージしていくと、楽しくてしょうがない。だから仕事をしたくなるのです。

 

「松下幸之助さんは、「本当に『資本金なし、体力なし、学歴なし』で全部を始め、だんだん会社が大きくなっていき、未知の体験にどんどん突入していく」というようなことを一代で経験し、最後は、自分の会社の製品も、もう分からないぐらい現代化していきました。
 この人の場合、「まずは、『思い』と言ってもいいし、『夢』が先にあった」ということは言えると思うのです。企業家は、ある意味での「ドリーマー」というか、「夢を持つ人」でなくてはいけません。夢がないと、やはり、「新しいものが立ち上がって大きくなる」ということはないでしょう。
 昭和恐慌(昭和五年)のころだったのですが、天理教にも視察に行って、「“宗教的”ミッション経営が非常に大事だ」ということを悟り、「松下教」ともいわれるような、いろいろな経営理念や教義のようなものを“編み出して”いって、それをみんなに共有してもらおうと、一生懸命努力したことは、やはり非常に参考になると思います。
(『「経営成功学の原点」としての松下幸之助の発想』より)

 松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助翁が、ある宗教団体の隆盛ぶりを視察し、「事業経営の使命」を学んだことは、あまりにも有名な話です。

 本来、経営者たる者は、自らの利益を追求するのみならず、国家の繁栄や人類の幸福に寄与することが、天より与えられた役割だと言えます。名経営者といわれる御仁が、こぞって宗教哲学を信奉する所以なのです。

「会社であれば、経営者は努力して経営理念をつくるべきなのでしょうが、会社を立ててすぐのころには、なかなかできないかもしれません。ただ、何年かして事業が大きくなり、すべて自分からの直接の指示で会社が動くわけではなくなってくるころには、「最初は箇条書き程度のものでもよいから、考え方を整理して出してください」と言われます。それから、株を上場するぐらいになったころには、何らかの経営理念は出されていなければならないのです。
物事には何でも、つくり上げていくときの基本理念のようなものが必要であり、最初からすべては用意できないとしても、やっていきながら、「だいたいこういう方向で運営していきたい」ということを考えていかなければならないわけです。
(『仏法真理が拓く芸能新時代』より)

「「災い転じて福となす」で、もし、「生命の有限さ」から、逆に「魂の永遠さ」のほうに気がついて、神仏に祈ったり、相対峙しようとしたりする人が増えてくるような風潮に持っていくことができたら、たとえ、世界的に大量の感染者が出て、多くの方が亡くなったとしても、おそらく、それは意義のあることになると思います。
 神様、仏様をこれほど嘲弄し、無視し、軽視して、「人間様の考えることで全部やれるのだ」というような傲慢な人類が溢れている時代に、こういったことが起きてくるのは、別におかしいことでも何でもありません。
 こうした傲慢の時代は長くは続かないので、「謙虚」にする必要があるのです。
(『社長学入門』より)

 松下幸之助翁に薫陶を受けた人物に、二つの大企業を立ち上げ、JALの再建に成功した稲盛和夫氏がいます。彼もある宗教団体の思想にふれ、企業を発展へと導きました。京セラを起業したときに参加した講演で、「ダム経営」はどうすればできるかの質問に、「思わんとあきませんなぁ」と呟いた幸之助翁。聴衆たちがその答えに失笑するなか、幸之助翁の一言に万感の思いを受け止めた稲盛氏は、強く「思う」ことの重要さが胸に響いたそうです。彼もまた、哲学者の一人だったのでしょう。

「戦後の経営者としては、松下幸之助氏に続いて「経営の神様」的な扱いをされ始めている稲盛和夫氏がいますが、京セラを立ち上げ、第二電電を立ち上げ、JALの再建にも成功して、中国でももてはやされている状況です。
 松下幸之助氏の経営理論に影響を受け、また、生長の家という宗教の『生命の実相』に書かれた光明思想に惹かれ、宗教的理念を経営理念として昇華させることで社員をまとめ、動機づけし、発展の原理へと導いていったものでしょう。そういう意味では、経営学において成功理論を研究していくときに、宗教的精神を十分に研究したことで成功に結びつけていった事例が数多くあるわけですので、「宗教」と「事業経営的な成功」との相性が悪いとは、必ずしも言えないものがあります。
(『幸福学概論』より)

「急速に発展している企業においては、人材の“刃こぼれ”が必ず起きてくるので、そのことを冷静に知っておかなければいけません。
 その際に情の問題が出てきます。「ほんの五年前には社長の片腕であった人が、使えない人になる」というようなことが起きてくるわけです。これは、「会社が発展している」ということを意味するので、例えば、「日本中の環境問題を解決する」というような経営理念、大義名分があり、本当にそれを実現したいと考えているのであれば、もう一段高い能力を持った人を、上に引き上げるなり、新たに雇うなりしなければいけません。
 そういう大義名分というか、本当に正しい経営理念を持っていたならば、無私の心で人材の登用についての判断ができますが、経営理念がなく、「儲かったら、みんなで山分けしたらよい」というような、会社が単なる利益共同体であった場合には、自分の権益を護ろうとする人がけっこう抵抗するため、どうしても発展しなくなります。ここに“踏み絵”があるのです。」
(『社長学入門』より)

「あるところに所属してはいるけれども、全体についても、できるだけ意識を持たなければいけなくて、「当社はいったい何をやっているところなのか」ということを、やはり知っていなければいけないでしょう。
 「自分の仕事は皿洗いです」とか、「自分の仕事は、淹れられたコーヒーを持っていく仕事です」とか、「自分の仕事は調理場の大掃除をする仕事です」とか、バラバラの仕事はあるかとは思います。しかし、トータルとしては、例えば、ファミレスの経営をやっている場合、「当社はほかのところとは違って、こういうところに力を入れてやっているのです」「家族の方々にくつろぎの空間を提供して、家族の仲が良くなるような、そういう楽しい憩いの場をつくりたい」というファミレスとしての経営理念があってやっているというなら、いろいろな部署で仕事はしているとは思うけれども、全体では、そういう考えを一体として持っていなければいけないのです。これが「経営理念」というものの力です。
(『私の人生論』より)

「不況になると、どこも言い訳の山になりますが、うまくいかないことの言い訳を、いくら理路整然と説いたところできりがありません。それよりも、勇気を持って行動する、チャレンジすることが非常に大事です。チャレンジできない理由は、ほとんどの場合、失敗を恐れる心があることです。
 恐怖を乗り越えていくためには「信仰心」や「熱意」が必要です。そして、その熱意は、『リーダーに贈る「必勝の戦略」』にも書いてあるように、使命感から生まれてきます。したがって、恐怖を乗り越えるためには、自分の志や会社の経営理念のなかに、“魂”を打ち込むことが大事です。「会社の経営理念に“魂”が入っているか」「自分のビジネス理念に“魂”が宿っているか」「本当に、天下国家、万民のためにやろうとしているか」ということを自らに問うことです。さすれば必ず道は開けていきます。
(『朝の来ない夜はない』より)

 大川隆法総裁は、自著『経営が成功するコツ』のなかで、経営者に対して「使命感」を求めています。起業した当初は熱心さや誠実さは大切ですが、紆余曲折を経て、危機を乗り越えて成功を続けていく立場となれば、熱心さを超えた会社に課せられた「使命感」に目覚めることが肝心であると。トップとしての経営者は、過去の経緯を踏まえて「わが社の経営哲学」とは何かを抽出し、結晶化させることが大切なのです。

「お店であれば商売成功の秘訣をある程度固めて、“のれん分け”ではありませんが、今で言えばチェーン店に当たるようなもので、自分の考え方や経営理念の下に事業を行っていけるような弟子をつくることです。
ただ、この前には、その考え方をまとめて、パッケージ化して人に分け与えられるような知的努力は必要だと思うのです。
 「大ならん」と欲せば、必ず、その「仕組み」や「システム」をつくっていくという考え方は持つべきです。つまり、会社でも社長一人の“直感”だけで経営しているうちは絶対に大きくはならないのであって、考え方を明らかにし、「システム」や「活動の仕方」、「やり方」を明確にしていくことによって、ほかの人もまねることができるようにしなければいけません。
(『「成功の心理学」講義』より)

「従業員というのは、「経営理念」とか「経営方針」とかを言われても、なかなか理解ができないわけです。
 ところが、(従業員は)「人事」なら分かるのです。もちろん、新入社員には少し厳しいかもしれませんが、若手の社員や女子社員であっても、発表された人事を見れば、社の方針がどうなっているのかが分かるわけです。
 従業員にとって、人事の結果は、経営方針の一部として理解しやすいものであり、そのときどきでトップがどのような考えを持っているかは、人事を見れば一目瞭然です。その意味で、「人事はトップの責任として残る」ということを知らなければいけません。
(『経営とは、実に厳しいもの。』より)

 大川隆法総裁は、自著『経営が成功するコツ』のなかで、経営者に対して「使命感」を求めています。起業した当初は熱心さや誠実さは大切ですが、紆余曲折を経て、危機を乗り越えて成功を続けていく立場となれば、熱心さを超えた会社に課せられた「使命感」に目覚めることが肝心であると。トップとしての経営者は、過去の経緯を踏まえて「わが社の経営哲学」とは何かを抽出し、結晶化させることが大切なのです。

「構想力は、経営理念とはまた別なものです。経営理念は会社の旗印ですが、構想というのは事業の具体的なあるべき姿です。経営者は、「どのように仕事を事業化し、どのような規模にするか。そして、どの方向に進めていくか」という構想を練らなければいけません。
 経営者、あるいは経営管理者など、トップに近いところまで来た人であるならば、休みの日であろうと、心から離れないものがあるはずです。仕事のビジョン、全体の構想を繰り返し考え、つくり出していく力が必要です。
(『経営入門』より)

「最初は、自分の直感や霊感、あるいは経験等を通して、いろいろと判断していると思います。
 やっていくうちに、ある程度、安定軌道ないし成長軌道に乗ってくると思います。その段階になったら、最初からはできないと思いますが、「わが社は、どうやって成功したか」ということを考える習慣をつけなければいけないのです。
 考える習慣をつけて、最初は、箇条書き程度のものでよいので、そういうことを思いついたときに、書き抜いていくことです。さらに、社員の前で、自分の折々の考え方を話して、かたちに残していくことです。次には、マニュアルのようなものがだんだんできてきたら、版を重ねて変えていっても構わないので、いわゆる教科書化していくことです。そのようにして、テキストの部分をつくっていくことが大事です。これができるようになってくると、経営規模を広げていくことができます。要するに、自分がやらなくても、人に任せて、できるような部分ができてくるのです。直感だけでやっていたら、人に任せることはできないわけです。
(『実戦起業法』より)

ビジネスと真理 へ

「仏法真理」へ戻る