人間力

参考・引用

 組織は論理だけでは動かせません。人はときに論理より感情で動く生き物だからです。そこで注目されるのが「人間力」。人間力は組織を運営する人にとって欠かせない力ですが、概念が漠然としていることもありつい後回しにされがちです。

 人間力は「社会を構成し運営するとともに,自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」(「人間力戦略研究会報告書(2003)」)です。
 「知的能力的要素」「社会・対人関係力的要素」「自己制御的要素」の3つから構成されています。

知的能力的要素:

 基礎学力、専門的な知識・ノウハウ、論理的思考力、創造力

社会・対人関係力的要素:

 コミュニケーションスキル、リーダーシップ、公共心、規範意識 、相互啓発力

自己制御的要素:

 意欲、忍耐力、自己受容・自己実現力

 

人間力を高める3つの方法

 人間力は「経験」「書物」「人」を通して高めることができます。

1 経験から学ぶ

 社会・対人関係力的要素、自己制御要素のいずれも、自らの経験を通して学ぶことができます。ただし、経験するだけでは学びになりません。ポイントは「可能な限り客観的に見直すこと」です。
 経験は生きていれば誰にでも生まれますが、特定の出来事を振り返って考えられる人はあまりいません。たいがいは喜んだりがっかりしたりでおしまいです。したがって、失敗や成功を体験したときに、出来事を振り返る習慣をもつだけで人間的な成長の度合いが変わってきます。
 また、より客観的に経験を見直すために、できごとや自分が思ったことを紙に書き出すのがおすすめです。
 頭の中にあるものを外に出すことで気づきは格段に生まれやすくなります。

2 人から学ぶ
 師匠、先生、先輩、仲間から学ぶのも有効な方法です。
 生きたお手本なので、一番吸収しやすい学び方といえるかもしれません。

 学びが得られる場面もバリエーションに富んでいます。

・行動を観察してマネする

 ・質問する

 ・言動の意味を考える

 ・話し合う

 ・体験談を聞かせてもらう

 ・雑談する

 この方法で壁になるのは「先生や仲間をどうやって見つけるか」です。近くで見つけられなかったら、自ら探しに行きましょう。
 探すときのポイントは、「自分がなりたいと思っている人たちのグループに入ること」です。

 経営に携わりたいと思っているなら、例えば、ビジネス関連の勉強会やセミナーに出れば自分より先を行く人に会える確率が高い。仮に見つけられなくても、そこで知り合った人を介して知り合えることもあります。人との出会いはどこにあるかわかりません。学びたい気持ちをもって、とにかく行動してください。

3 書物から学ぶ

 人間力は書物から学ぶこともできます。我々が悩んでいることは、すでにたくさんの人が悩んできたことでもあるからです。
 同じような悩みを乗り越えてきた人が書いたものを読むことで、自分ならどうするか考えるヒントが得られます。
 読むのは好きな本でかまいませんが、お勧めは中国古典です。「論語」や「孫子」などは耳にしたこともあるかと思います。ビジネスパーソン向けの書物として注目を集めることもたびたびあります。古くから読み伝えられている書物には、時代を超えて通用する考え方の本質が書かれています。
 現代のような教科書がなかった時代には、漢文が教科書として用いられていました。また、偉人たちの背景を探ると中国古典に突き当たることもめずらしくありません。長い年月を経て残っているだけに、質の高さは折り紙付きです。

 さらに、宗教書も大切です。

「管理職としての能力の基礎を身に着ける上で、オールマイティ(万能)な書物として宗教書が挙げられます。宗教書を勉強すると、人の心がよくわかるようになるのです。」(『経営入門』P-111)

「仏の心、神の心を説く宗教書を読んでおくことによって、自分の心の底に揺れない不動の中心軸ができてきます。これが、さまざまな困難の時に、その困難を乗り越えていく力となります。」(『仕事と愛』P-88)

 「人が見えるための能力」(=管理能力)を身につけるには、経験的な方法、人生の師を見つけること、多くの書物を読むことがある。

 書物のなかでも特に大事なものは、伝記物、歴史物、詩を含む文学、そして宗教書、である。

 管理職となっていくには、これらの学びによって、人の心に精通するための努力を惜しんではならない。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『仕事と愛』で以下のように説かれました。

「出世の条件の三番目を充分に習得するためには、人間学の研究が不可欠となります。
 人間学の研究方法の基礎はいくつかあります。一つ目は、人間に関する見識を、自分自身が多くの人のあいだで練られて身につけるという、経験的な方法です。二つ目は、人生の師ともいうべき人を、いち早く見つけるということです。そうした人を見つけて、その人の的確な洞察力や観察力、直観力を学ぶことです。そして、どのように世の中や他人を見るかという見識を学ぶことです。三つ目は、やや常識に属することですが、多くの書物を読むということです。
 書物のなかでも特に大事なものがあります。一つは、偉人たちの生涯を書いた伝記物です。これは出世のためには不可欠のバイブルともいえましょう。次に必要なのは歴史物です。過去の歴史を知っているというのは、未来が分かるということにもなります。
 「過去の歴史のなかで、どのような事件が起きてきたのか。それに対して、偉人や他の人たちがどのように対処してきたのか。そして、その結果どうなってきたのか」ということを学ぶことは、未来において、自分を取り巻くさまざまな環境下で起きる事件がどうなっていくのかを予見する能力になります。
 これは、大学受験などをするときに、受験校の過去の問題を研究するのとまったく同じことなのです。人類史において過去に起きたことを学ぶことによって、未来を予見する能力を磨くことが大切です。
 一に伝記、二に歴史と言いました。三番目に必要なものは、詩を含めた文学でしょう。
 人間の心は何によって揺さぶられるのか、ということを知っておく必要があります。知性によって動く人あり、理性によって動く人あり、さまざまな条件下で人は動きますが、人がいちばん動きやすいのは、なんといっても感性です。感性に訴えることがなければ、大量の人を動員することは難しいのです。感性に訴えるのは非常に大きなことです。
 感性を磨くためには、文学作品や芸術作品への関心を忘れてはなりません。何が人の心を動かすのか、心を打つのか、胸を打つのかを知っておくことです。
 そして四番目に、これが最後ということではなく、ある意味において筆頭にあげなければならないものが宗教書でしょう。これは文学書よりもさらに奥にあるものです。仏の心、神の心を説く宗教書を読んでおくことによって、自分の心の底に、揺れない不動の中心軸というものができてきます。それが、さまざまな困難のときに、その困難を乗り越えていく力となります。
 このように、管理職となっていくには、人の心に精通するための努力を惜しんではならないのです。」
(94~97ページ)

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