マーケティングセグメンテーション

 市場には、さまざまなニーズやウォンツが顕在的・潜在的に ごちゃ混ぜ の状態となっています。そのため、そのままではマーケティング戦略を有効に実施することができません。

 たしかに、企業側としては、より多くの人をターゲットとして商品やサービスを売り出したいと思うかもしれませんが、それでは焦点がズレ たものしか生み出せないのです。たとえば、台所用洗剤1つとってみても、そのニーズやウォンツはさまざまです。通常の洗浄力でただ安いという商品では、すでにたくさんの商品があるなかで売上を伸ばすことは難しいでしょう。しかし、「手肌をコーティングする(乾燥肌対策)」「水を使わない(アウトドア向け)」「再生紙を利用したパック(環境への意識が高い方向け)」などの付加価値をつけることで、高価格帯でも売れる可能性があります。

 そのような付加価値や、あるいは自社の強みを生かして差別化するための基準となるのが、市場をさらに細分化した「市場セグメント」なのです。

 市場全体をみて商品やサービスを作るのではなく、市場を細分化しつつセグメントを分析して、よりピンポイントなニーズやウォンツに対応できるように商品やサービスを開発するのです。

 

セグメントマーケティングとは

 

 大量生産された商品を市場全体(マス)の顧客に向けて販売する手法は、「マス・マーケティング」といいます。一方、市場を細分化して絞り込み市場を選定する手法を「セグメント・マーケティング」といいます。

 マス・マーケティングが、一つの商品(製品)を大量生産・大量流通・大量販売してあらゆる買い手に販売しようとする方法であるのに対し、セグメントマーケティングは、市場をいくつかに分け、そのうちの一つもしくは複数のターゲットに狙いを定め、集中的に経営資源を投入していくことです。
 その業界でNo.1の企業以外(弱者)は、

 ・地域を限定してNo.1(オンリーワン)をつくる

 ・特化(○○限定、○○専用・専門)する

 ・戦線(商圏)を拡大しない

 ・品ぞろえを増やさない

 ・差別化という武器をつくる

 これらのことを肝に銘じておく必要があります。

 しかし、専門特化すべきなのに、デパート化し、品揃えを豊富に なんでも売ってしまうのです。その挙句に、価格競争に陥るといったパターンです。中小企業が大企業の真似をすれば結果は目に見えています。

 セグメンテーションを行う場合には、市場を細分化するための「変数」を活用します。

 変数とは、どのような基準で市場を分類するかの判断材料のことです。

 たとえば、年齢、性別、職業、年収、家族構成、あるいは価値観など多種多様です。

 これらの要素の中から、いかに顧客の心に響くようにセグメンテーションを行えるかが、マーケターの腕の見せどころと言えるでしょう。

 

 セグメント・マーケティングは、「集中型マーケティング」「分化型マーケティング」の二つに分類することができます。

1.マーケティング

 細分化された市場の中から一つまたは少数のセグメントに狙いを定めて、そこに集中的に経営資源を投入していくマーケティング手法です。

 これはニッチ企業がよく採用する戦略といえます。

2.分化型マーケテイング

 細分化された市場のそれぞれのセグメントに対して、それぞれ異なる経営資源を投入していくマーケティング手法です。

 言葉からもわかるように、複数の商品があっても同じ市場で売らないことです。

細分化するための基準例として、

・市場を年齢、性別、家族構成、ライフステージ、職業、所得、学歴などに基づいて区分する方法。

・市場を居住地域、就業従業地域、人口密度、気候などの異なる地理的単位で区分する方法。

・価値観、ライフスタイル、パーソナリティ(性格・個性)によって市場などによって区分する方法。

・購買頻度、使用目的、ロイヤルティー、特売反応などによって市場を区分する方法などがあります。
   

マーケット志向

 市場細分化によるセグメント・マーケティングは、販売先を特定の顧客層に絞り込むという意味で、マス・マーケティングと比べ、より「売る相手を知る」ことが求められるマーケティング手法といえます。

 さらに、最近では、「一人ひとりの顧客を知る」「一人ひとりの顧客に焦点をあてる」、マーケティング手法である「ワン・トウ・ワン・マーケティング」が主流になってきています。

 ワン・トウ・ワン・マーケティングでは、企業と顧客との一対一の関係づくりが重視され、各顧客のニーズに合った商品やサービスを提供し、顧客との長期的な関係づくりを目指します。
 ワン・トウ・ワン・マーケティングは、「カスタマー・リレーションシップ・マーケティング(CRM))」といわれたり、また、ロイヤルティーの高い優良顧客を重視することから「ロイヤルティー・マーケティング」ともいわれたりします。

 マーケットは絞れば絞る(細分化)ほど、あなたが扱う商品を欲するお客様が見えてきます。

 絞ることで見込み客が少なくなると考えがちですがそれは違います。

 あなたは万人に売ることを考えてはいけません。

 多くの営業会社が「商品ありき」からスタートしがちですが、「マーケットありき」からスタートすることを忘れないでください。

 

カスタマー・リレーション(顧客関係)のクオリティ

 あなたのビジネスで最も価値のある資産は「顧客」です。顧客を失うことは、バランスシートも損益計算書も消滅することを意味します。

 顧客の獲得には多額の費用がかかっています。

 顧客の獲得にかかる総コストと、最初の取引で得られた利益とを比べれば、初回取引ではほとんどの企業が損しています。

あなたの会社は一人ひとりの顧客に投資しているのだと。その投資から最大のリターンを得られるだけ長く顧客を維持するには、「The Top of the Consciousness Principle (一番に意識されるための法則)」と呼ばれるマーケティング・コンセプトが鍵となります。

 これをあなたの会社の強みにできるかどうかは、ダイレクト・マーケティングにかかっています。

 ダイレクトマーケティング(DM)とは、アメリカのDM協会の定義では、「一種類又はそれ以上の広告媒体を使用して、レスポンスや取引きをもたらす双方向性のあるマーケティング・システムです。

 レスポンスや取引きは発生する場所を問わず、計測可能でデータベースに蓄積されるものとする」となっている。
 我々を含め、業種業態に関わらず、収益を上げていくには、

 1)見込み客を集め、新規顧客として獲得し客数を増やす

 2)既存客への他種目販売を増やす

 3)既存客の顧客単価を増やす

以上の3点を継続実行していかなければならない。 
 この中でもいちばんコストのかかるのが1)の客数を増やすことである。

 しかし、2)、3)だけに力を入れただけでは限界があります。

 これらのマーケティング活動のコストを最小に抑え、効果を上げていかなければならない。

 ダイレクトマーケティング(DM)を継続して実践していくうえでの手法が、電話、ファックス、DM(ダイレクトメール:封書、ハガキ)、ニュースレター、Eメールといったパーソナルコミュニケーション媒体を使い、コミュニケーション内容も相手に合わせ変化させる。
 そして、各手法を単独で活用するだけではなく、ファックス・マーケティング+テレマーケティング、ダイレクトメール+テレマーケティングといったように、ミックスすることで、より効果が増します。

 「一番に意識される」は重要なことです。「金ない、人ない、モノない」の三重苦の中で売上アップを図るには、他と同じこと、過去の延長線上でやっていてはいつまでたっても儲けることはできず、赤字の垂れ流し状態を続けるだけです。「知恵を働かせる」ことが中小企業の強みです。

 小さな会社であっても強みはあるはずです。なければつくることです。

 「選択と集中」といわれるように、その強みをあなたを必要としているニッチマーケットに集中させることです。

 また、自社だけではなく異業とアライアンスを組むことで、あなたの強みを倍加させることも可能です。
 ここで大切なのは、商品というモノを売る発想をしないことです。

 

市場の細分化から参入マーケットを特

 企業・組織が新商品・サービスを市場に投入する際には、顧客の属性を趣味・趣向などで細分化し、自社の強みが最も活かせる顧客層をセグメント(購買行動において似通っている顧客層)することで分類し、どの市場に参入するかを決定して行かなければなりません。市場の細分化は、「マーケット・セグメンテーション」と呼ばれ、企業は、マーケット・セグメンテーションからコアターゲットを明確に定めることで、初めて市場での強みを発揮することができるようになります。

 マーケット・セグメンテーションを行い、コアターゲットを定めることで、初めて限りある経営資源を集中投下することができるようになることから、マーケティング・ミックス(4P戦略)の検討には、この「マーケット・セグメンテーション(ターゲット市場の細分化)」が不可欠だと言えます。参入マーケット確定後、ターゲット・セグメントに向けたポジショニングやコンセプトを策定していきますが、現代ではあらゆる市場において顧客は広範囲に散らばり、要求も様々であるため、企業は最も効果的かつ効率的に事業展開のできる魅力的な市場セグメントを見つけ出さなければなりません。

 

セグメンテーションの重要性

 すべての消費者を対象とした製品を開発し供給するのは容易ではなく、それが必ずしも良いとは限りません。市場が成熟期を迎える現代の日本において、人々のニーズは多様化しており、万人向けの製品はある意味「ニーズを満たしていない」とも考えられるからです。だからといって、個々のニーズに合わせた製品開発は顧客ニーズを満たすことはできますが、一部特定の分野を除き価格戦略が成り立ちません。そんな課題を解決すべく行われるのがセグメンテーションです。セグメンテーションでは、購買行動において似通っている顧客層の共通するニーズに着目し、市場を意味のある集団に分類します。その後、ターゲットとする集団に対して経営資源を集中投下することで、効率的かつ効果的なマーケティング戦略を可能にします。

 一方、対象を特定せず、全ての消費者に対し画一された方法を用いて行うマーケティング戦略・マーケティング活動を「マスマーケティング」といい、大量生産・大量販売を前提とした最寄品や消費財のマーケティング戦略として用いられています。市場の成長期にマーケットリーダーが用いる方法としては有効な手段ですが、前記した通り、消費者の価値観が多様化するなど成熟した市場では、特定のニーズに応えきれない課題が残ります。

 

セグメンテーション変数

 セグメンテーションを行う際、一般的に、①地理的変数(地理的分割)、②人口動態変数(人口動態分割)、③心理的傾向変数、④行動変数 の4つの変数を基準としてセグメンテーションを実施して行きます。市場のセグメンテーションは、その他にも様々な変数が考えられますので、参入する市場(業界)を判断したうえでセグメンテーションを発見していくことが、今後の成否を大きく左右する最大の要因になると言っても過言ではありません。

 

地理的変数
「地理的変数」とは、市場が存在する国、県、地域、エリアなど、地理に関する変数のことです。

 場所によっては、一年を通して温暖なところもあれば、寒冷な地域もあるでしょう。

 もちろん、交通の便や住民の移動手段などにも違いがあります。

 文化やその国ならではの規制にも注意しておかなければ、ビジネスに支障をきたす可能性もあります。

人口統計的変数
 「人口統計的変数」とは、年齢、性別、家族構成、職業、年収など、もっとも一般的なセグメンテーションの指標です。

 教育レベルや治安、人種や宗教など、地理的変数と密接に関わっている要素もあります。

 統計データを利用すれば、比較的簡単に収集できるのが特徴ですが、同じセグメント内でも異なるニーズやウォンツをもつ人が存在する可能性があるので注意が必要です。

心理的変数
 「心理的変数」とは、社会階層、ライフスタイル、性格、あるいは価値観などの違いによる分類のための指標です。

 人口統計的変数で分類されたセグメントの中にも、心理的変数によって異なるセグメントに分類される場合があります。

 ライフスタイルで分類したセグメントからそのままニーズを掘り起こせる場合もあるため、マーケティングでは重要視されています。

行動的変数

 製品に対する知識や使用頻度、購買パターン、利用シーンなどから分類するための指標です。

 たとえば、新しいものを積極的に取り入れる人もいれば、既存の同じ商品を購入し続ける人もいます。

 消費者の購入態度をもとにした「イノベーター理論」の5つのタイプなどは、行動変数を割り出すのに参考となるでしょう。

 経営資源にゆとりのない中小企業の場合、特にセグメンテーションが重要になってきます。市場が小さすぎると経営が成り立たず、大きすぎると大手企業との競争に巻き込まれる可能性が高いことから、自社にとって魅力的であり、他社が真似できない自社優位性の高いセグメントを選定し、その中からターゲットとする市場を選択することが、その後の成果を大きく左右する要因となります。

 

ターゲティング・アプローチ方法

 セグメンテーションにより市場の分類を行った後、いよいよ自社の狙う顧客層を明確にするターゲティングを行います。市場へのアプローチ方法は大きく分けて「①非差別化型マーケティング」「②差別化型マーケティング」「③集中化型マーケティング」の3つがあります。

①非差別化型マーケティング

 1製品と1マーケティング・ミックスにて市場全体をターゲットとする方法で、誰にでも必要で日常的に消費する製品のターゲティングに多く用いられます。非差別化型マーケティングでは、大量生産から生産コストを抑えることができ、かつ、マーケティングコストも抑えることができますが、一般的に平均化されたニーズしか満たせないことから、特定のニーズをもつ顧客を取りこぼす懸念があります。

②差別化型マーケティング

 複数のセグメントに対し、それぞれのマーケティング・ミックスを用いる方法で、主に自動車業界で用いられています。自動車メーカーは、小型自動車、ファミリーカー、スポーツカー、高級車など、あらゆる趣向と価格帯でニーズに合わせたフルライン製造を行うことで、細かなセグメントに対応し、総売上高を最大化しています。しかし、その反面、マーケティングコストは増加することになり、ハイリスク・ハイリターンな戦略であると言えます。

③集中化型マーケティング

 特定のセグメントに集中したマーケティング戦略を行い、特定の市場でのシェア獲得を目指します。経営資源を集中投下することで特定市場の知識が深まり、専門性が高まることから、主に中小企業で用いられており、事業規模が拡大しにくい反面、ローリスク・ローリターンな戦略であると言えます。

 

自社にとって魅力的で最適なセグメントを選ぶ

 ターゲットの選定時には、満たさなければならない様々な条件があります。自社にとって魅力的で最適なセグメントを選ぶ際には、「①有効な市場規模(Realistic Scale)」「②成長性(Rate of Growth)」「③競合状況(Rival)」「④顧客の優先順位(Rank)」「⑤到達可能性(Reach)」「⑥反応の測定可能性(Response)」の6Rに留意し総合的に判断していく必要があります。

①有効な市場規模(Realistic Scale)

 市場規模は大きければ大きいほど可能性も高く魅力的であると言えますが、その反面、競合他社が多いのも事実です。小さい市場の場合は、最低限、事業が成り立つセグメントをターゲッティングしなければなりません。

②成長性(Rate of Growth)

 市場の成長期には、売上拡大やシェア獲得のチャンスが生まれます。現在の規模だけではなく、将来性を見極めたターゲティングを行わなければなりません。

③競合状況(Rival)

 市場規模が大きければ大きいほど参入企業は多く、競争の激化から多大な開発費やマーケティング費の投下を必要とします。その結果、収益性が低下し、大きなリスクを伴う可能性も高いことから、競合状況の分析には力を入れなくてはなりません。

④顧客の優先順位(Rank)

 オピニオンリーダー(集団の意思決定(流行、買物、選挙など)に関して、大きな影響を及ぼす人物)や口コミ発信者に対し、優先的にアプローチをすることで、商品の普及を早め、流行を作り出すこともできることから、セグメントごとに優先順位を設け、その重要度に応じた対策を講じることも忘れてはなりません。

⑤到達可能性(Reach)

 インターネットが普及したことにより、ほぼ全ての地域へのリーチが可能となりましたが、ネットを介さない場合、地理的条件により最適なマーケティング活動が行えない場合があります。ターゲティングの際には、確実にそのセグメントに到達する方法があるのかを確認しなければなりません。

⑥反応の測定可能性(Response)

 広告の反響(効果)や商品に対する顧客満足度など、実施されたマーケティング戦略に対し、効果的な結果がもたらされているかを測定し、検証から微調整を繰り返すことが必要不可欠であることから、セグメントを選定する際には反応測定が正しくできるか否かを見極めなくてはなりません。

 

マーケティング戦略の基本 「セグメンテーション(市場の細分化)」

セグメンテーション変数

 セグメンテーションを行う際、さまざまな切り口で分けていく必要があります。

 その切り口を変数と言い、消費財市場と生産財市場では必要とされる変数にも違いがあります。

消費財市場

 消費財市場の場合、顧客の対象が個人消費者となるため、個人をそれぞれの属性に分けるための変数を用います。

地理的変数:国、地方、気候、人口密度、文化、政府による規制、都市化の進展度、顧客の行動範囲など

人口動態変数:性別、年齢、職業、家族構成、所得水準、学歴、宗教、人種、国籍など

心理的変数:ライフスタイル、価値観、性格、社会的階層、購買動機など

行動変数:購買活動、使用頻度、求めるベネフィット、購買パターンなど

生産財市場

 生産財市場の場合、顧客対象が法人や公官庁などの団体となるため、消費財市場の変数に加えてさらに複数の変数で緻密に分けていくことが重要です。

オペレーティング変数:使用頻度、利用状況など

購買方法:購買方針、購買基準など

購買に絡む状況要因:緊急性など

購買者の特性:決済権の有無など

 消費財市場と同じように人口動態変数を用いますが、このとき生産財市場においては企業規模や業種などで分けていきます。

 

4つのRの法則

 セグメンテーションを進める際、陥りがちなのが自社目線になってしまうことです。

 常に4つのRの法則を意識しながらセグメンテーションを進めることが大切です。

4つのRの法則

 Rank:優先順位付け  重要度に応じた顧客層のランク付けができているか

 Realistic:有効規模  十分な売上高と利益を確保するだけの規模があるセグメントか

 Reach:到達可能性  そのセグメントにおける顧客へ確実に製品を届けられるか

 Response:測定可能性  そのセグメントにおける顧客層からの反応は分析可能か

 自社が満足するセグメントが発見できたとしても、4つのRの法則に偏りがあれば売り上げにも影響が出てきてしまうのです。

逆に、これらの条件を満たしているセグメントであれば、よい反応が期待できるセグメントであると考えられます。

 

部門によって別のセグメンテーションを要す場合もある

 たとえば、商品開発部門のセグメンテーションであれば、過去の購買行動や購買実績など実際の行動変数を用いて分けることができます。

 しかし、プロモーション部門になると、訴えかけたい内容を的確に伝えるため、心理的変数や人口動態変数などを用いてセグメント化する必要があります。

 このように、同じ製品やサービスを開発していても、必ず同じセグメンテーションが必要になるわけではなく、時には別の切り口から分類するセグメンテーションが必要になる場合もあるのです。

 

 市場自体は変化していなくても、市場に対する「認識」を変化させるだけで業績が変わるのです。考え方の変化が業績の変化をもたらすわけです。これは、「認識力を上げるほど業績を上げ得る」という重要な事実を示しています。

 マーケティングの基本は、まず、ニーズ(需要)の発見。

 次に、ニーズの創造。

 「セグメンテーション」で、マーケット(市場)を区分し、その区分したところを攻めて、新しいニーズを発見・創造して、市場をつくり出せ。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『リーダーに贈る「必勝の戦略」』で以下のように説かれました。

「マーケティング、市場の開拓の基本はニーズの発見です。「人々が必要としているものを発見する」ということが基本的なやり方なのです。
 ただ、すでに類似商品がたくさんあったり、同じような会社が数多くあったりする場合には、ニーズを発見することは、なかなか大変です。すでにニーズが満たされている場合には、今度はニーズを創造しなければいけません。
 新しいニーズをつくるためには創意工夫が必要です。「もっとよい方法、もっとよい製品、もっと便利な製品がないか」ということを考えるのです。
 このように、マーケティングにおいては、ニーズを発見するだけではなく、次に、「ニーズをつくり出す。ニーズを創造する」ということをしなければいけません。
 また、誰にでも通用するようなものをつくることは、ほんとうの意味でのマーケティングではありません。
 昔、アメリカの自動車会社のフォードが、「T型フォード」という、黒塗りでまったく同じ形の自動車を大量生産することによって、自動車の値段を下げ、普通の労働者でも自動車を持てるようにしました。ヘンリー・フォードという人は、それで一時代を築き、財産をつくったのですが、フォードは、やがてGM(ゼネラルモーターズ)に敗れました。
 フォードは、なぜGMに敗れたのでしょうか。実は、フォードの成功したところが逆に失敗の原因になったのです。
 フォードは、同一規格で大量生産をすることによって自動車の値段を下げたわけですが、誰もが同じ真っ黒のT型フォードに乗っていたら、誰の車か区別がつきませんし、「同じ色と形の自動車ばかり走っていて、違うのはナンバープレートだけ」ということでは、やはり、おもしろくないでしょう。
 しかし、黒以外の、赤や青や白などの車をつくったら、作業工程が複雑になるため、値段が上がってしまいます。だからこそ、「同一規格で大量生産をすることによって値段を下げ、普通の人の給料で自動車を買えるようにする」という目標を立てたフォードが成功したわけです。
 ところが、その目標ゆえに次は敗れることになったのです。GMが、さまざまな層を狙った自動車をつくりはじめたら、フォードは競争に敗れてしまいました。
 このように、「何かで勝利したものが次は敗退に結びつく」ということがあります。
 市場のシェアを奪おうとしたら、ある程度の標準化・画一化をして、大量につくらないと、なかなか難しいのですが、大きなシェアを持っている会社を破る方法は、その標準化から漏れているところを攻撃することなのです。標準のモデルでは満足しない層を狙って攻撃するわけです。
 「セグメンテーション」といいますが、マーケットを区分して、その区分したところを攻めていく必要があります。そうすることによって、新しいニーズを発見・創造し、市場をつくり出すことができるのです。」
(197~200ページ)

 

 マーケット・セグメンテーションのポイントは、顧客ニーズに合わせた商品を、ただ漠然と市場に投げ込むのではなく、「どの商品を、どの市場に出すか」を明確にすることです。

 やはり、顧客ニーズから発想していかなければ成功はないのです。顧客が困っていること、悩んでいることを発見する。客観的に見て、ボトルネックになっている部分を見つけて、差し上げる。それを解決するために、こちらが出来ることは何かを一心に考える。そういう愛の思いがあってほしいと思います。

 これからの経営は、「新商品をつくりました」「新しいサービスがあるから買ってください」といったプロダクト・アウトの考え方だけではなく、マーケット・インの発想をしていくべきでしょう。マーケットが考えていること、すなわち、お客様のニーズに合わせて、こちら側が変わっていかなければならないということです。そのように発想を切り替えられない限り、商売が成功するということは考えられません。少なくとも、成功し続けることはできないでしょう。

 

市場細分化戦略の事例

 マーケット・セグメンテーションを考える上で、身近な例として自動車業界を取り上げます。

 日本国内の各メーカー(トヨタ、日産、三菱、マツダ、ホンダ)がセグメント・マーケティングを行っている中で、どのようなラインナップを準備してきたか、現在に至るまでの流れを考えてみてください。
 トヨタ、日産、三菱は、昔からフルラインナップを提供するメーカーとなります。一方、マツダやホンダは、大型車を提供していませんでしたが、現在では、トヨタ、日産、三菱同様、フルラインナップを提供しています。その結果、これらのメーカーはセダン以外にスポーツカー、3ドア、5ドア、RV車などを提供しており、フルラインナップを提供する競合同士で消耗戦を招く恐れを持っていると言えます。

 

ホンダスーパーカブの市場細分化戦略

 ホンダは、「ホンダスーパーカブ」でアメリカのバイク市場で大成功を収めました。ホンダがアメリカ市場に進出する際に、競合と比べてブランド力・品質・コストで突出するものがありませんでした。そこで、セグメンテーションを行い、ホンダは小型バイクに活路を見いだしたのです。大型バイク市場が過熱していたアメリカでは、小型バイク市場は重要視されていませんでした。しかし、小型バイクをコストを下げて売り出すことで、ブランドの認知向上と市場拡大を実現させています。ホンダの事例では、セグメンテーション(S)に小型バイク・ターゲティング(T)に安さを求める人・ポジショニング(P)で「圧倒的な安さの小型バイク」の位置づけを明確にしました。既に飽和している市場で品質やブランド力で欧米メーカーに勝てないなら、手つかずの市場でコストを下げて売り出すという戦略に切り替えたのです。逆転の発想で打ち出した施策は見事に成功を収め、世界にホンダの名を轟かせました。無理して技術面・ブランド力で勝たなくとも、ポジショニング次第で成功に導けるのです。

 

ユニクロの市場細分化戦略

 ユニクロは、ファッション業界としては異例のセグメンテーションで、世界的に有名な企業へと昇り詰めています。ファッションといえば、オシャレにこだわりがある人をセグメントする企業が多い中、ユニクロはオシャレ嫌いをセグメントしています。ベーシックなデザイン・豊富なカラーバリエーション・機能性の3つの軸で、オシャレに抵抗を持っている人からオシャレが好きな人まで幅広い層の獲得に成功しています。ユニクロは、オシャレを追及するファッションとは真逆の戦略で大衆の心を掴みました。セグメントにオシャレ嫌い、ターゲティングにコーディネートのしやすさを求める人、ポジショニングにコーディネートしやすい安い服という位置づけをしています。なんにでもシンプルに合わせやすいからこそ、オシャレが苦手な人も得意な人も購入しやすい服となっています。

 

市場細分化戦略(セグメント)で他社と差別化を図る

 市場細分化戦略は、顧客の属性や購買行動を徹底的に分析し、ニッチなニーズに応えることで自社のポジションを確立するとともに、顧客を獲得できる戦略です。

 セグメント(S)で、抽出したデータを類似グループに分けたら、ターゲティング(T)で自社が狙うべき層を明確にします。さらに、ポジショニング(P)で、競合にはない自社の強みを創出していきます。

 フィリップ・コトラーの提唱通りに、STPはセグメント・ターゲティング・ポジショニングの順で分析するのが一般的です。

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