「売れない商品」で成果が上がる ロングテール革命

アマゾン、グーグルに見る「絞らない」戦略

 いま経済において、新たな動きが注目されている。2割の売れ筋商品や優良顧客が8割の成果を生み出すという「80対20の法則」に替わって、商品も顧客も絞りこまない方が成果が大きいという「ロングテール現象」が現れている。それは時間や距離という制約の下にあった「アナログ経済」から、一切の制約がない「デジタル経済」への移行の中で起き始めた“革命”かもしれない。

80対20の法則

 2割の売れ筋商品が売上げの8割を生む。イタリアの経済学者パレート(1848~1923)が唱えたことからパレートの法則と呼ばれる。恐竜の頭にたとえられる。

ロングテール現象

 あまり売れない8割の死に筋(ニッチ) 商品の売上げや今までリーチできなかった顧客からの売上げが大きくなる現象。恐竜の長いしっぽ(テール)にたとえられる。

ニッチが売れるアマゾン商法

 ロングテール現象とは、アメリカの技術専門誌「ワイヤード」のクリス・アンダーソン編集長が2004年に提唱したものである。

 それによると、世界最大のネット小売販売業者アマゾン(本社・米シアトル)は、売り上げの半分以上を上位13万位以下の本から上げていると指摘(後に3分の1と1と訂正)。13万という数字は、アメリカ最大の書店チェーンの「バーンズ&ノーブル」が一店舗平均して在庫として置いている数である。

 一般の書店では売れない商品や買わない顧客が、アマゾンでは売上げの柱の一つとなっている。アマゾンの在庫は約230万冊。上位13万タイトルが恐竜の頭だとすれば、約220万タイトルの1、2冊しか売れない商品が長い尻尾のように続いているという。

 ネットの世界は、時間、空間、重さなどの物理的な制約がないので、ネット上に何でも置いておくことができるし、そこから何でも買える。ということは、顧客が『欲しい』と思う、思考通りに行動が現実化する。結果としてロングテールという多様性がきれいに出てくるわけである。

「塵も積もれば山となる」で成功

 もう一つのロングテール企業の代表格が、検索サイトの雄・グーグルである。1998年にアメリカ・スタンフォード大の学生によって創業され、検索サイトの情報量の多さ、検索精度の高さ、使いやすい機能が支持され、わずか7年で年間売上げ5千億円を超えた。

 この会社がどこで稼いでいるかはやや見えにくいところがあるが、既存のビジネスの範疇で言えば、広告代理店のようなものです。例えば、グーグル検索で「レンタカー」と打ち込めば、複数の企業の広告が画面の一番上か右側に並ぶ。それをクリックして開いたとき、10円弱の広告料が広告主からグーグルに対して支払われる。また広告主は、事前にレンタカーという「言葉」を購入しておく必要があり、最も高い金額を出した会社が画面の上位に表示されるという仕組みである(このほかアドセンスというウェブサイト向け広告もある)。

 今まで自社のサービスを全国的に宣伝するには、テレビや新聞などマスメディアに広告を出す以外に手段はなかったが、こうした仕組みを利用すれば、中小企業でも全国にPRできる。

 グーグルなどの検索サイトは、大手広告代理店が見向きもしなかった膨大な数のスモールビジネスと顧客とを結びつけ、ロングテールを実現することで、急成長を遂げたという。

「コスト・ゼロの空間」でのビジネス

 ウェブというバーチャルな世界では(在庫や流通の)コストが限りなくゼロに近い。アイチューンズは何百万曲と増やしていくことができ、容量に限界がない。そういう空間だからこそ、そこに参加する人が急激に増えている。

 インターネットをはじめとするITのITの進歩によって、ビジネスや非営利事業などのコスト構造が明らかに変わってきている。現在は、あらゆる活動がネットの中の「コスト・ゼロの空間」を利用して何ができるかを模索している時期だと言ってよい。

コンピュータと人間の歩み寄り

 ウェブの世界の質的変化というのは、一つには、これまでコンピュータ側から見て分かるパソコン上のデータと、人間の側から見て分かるデータが別になっていたですが、お互いが歩み寄った、双方から理解できるハイブリッドのプログラム言語が出てきた。つまり、ウェブの世界と現実の世界が近づいたです。

 また、この言語は、これまで英語やフランス語、日本語が別々にあるのと同じようにいくつも並立していた複数のコンピュータ言語を橋渡しする「統一言語」の働きをします。このことによって、ウィンドウズでつくったデータをマックで見れるというような感じで、データの受け渡しができるようになり、ウェブの世界が一つになってきたわけです。

「80対20の法則」は終わった?

 売れ筋の商品や優良顧客の2割の部分に戦力を絞り込んで8割の成果を上げる「集中戦略」は、ロングテール現象の前に意味をなさなくなってしまうのだろうか。

ロングテール現象はネットビジネス特有のもの?

 2割の売れ筋の商品が8割ぐらいの売り上げを上げる一方で、残りの8割の死に筋(ニッチ)の商品はほとんど売れません。コンビニの場合、棚の広さが決まっているので、売れ筋だけを残す。1週間置いてほとんど売れないものは、棚から外していきます。

 ところが、ネット上のショッピングで発見されたのが、物理的な店舗では切り捨てていたニッチの部分でも結構儲かるということです。映画DVD、音楽CD、本といった情報系の商品に顕著です。

 これまでのマーケティングでは、売れ筋の2割に集中しようという考え方をとっていましたが、ニッチの中できらりと光る商品が注目されるようになっています。ネットの場合は仮想店舗ですので、いわば棚が無限大でありながら、コストが極めて低い。ですから、ロングテールはネットの中で成り立ちやすいと言えます。

ロングテールは一時的な「現象」ではなく「法則」と言えるのか?

 ロングテールとは、もともとアメリカの雑誌の編集長が言い出したことですが、それをマサチューセッツ工科大の経済学者たちが参加して、理論的に検討しています。したがってこれは、理論だと言ってもいのではないかと思います。

 ロングテールはネット以外でも成り立ち得るものだけれども、それに最も適しているのがネットということです。実際に、経済学者がアマゾンなどを調査し、理論的に否定していません。理論として確立しつつあると言っていいのではないでしょうか。

ロングテールはアマゾンやグーグルなどネットの「勝ち組」だから可能?

 普通のビジネスでも生かすことはできます。物理的な店舗で、ニッチな分野の専門店は数多くあります。しかし、そういうニッチな商品を欲しがる顧客の側は店がどこにあるか分かりづらい。お互いのマッチングができず、商売としてうまくいかないことも多い。

 ところが、ネットになると、お互いのマッチングが簡単にできるので、商売になるという形です。

 特に向いているのは、こだわりの強い消費。今の消費者はある程度オタク的な側面を持つ。そういう商品・サービスは、テレビ、雑誌、新聞、ラジオというマス媒体を使って宣伝するのは難しい。ニッチでありながら魅力的な商品は、お金をかけない広告、すなわち、ブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などクチコミ型のネットを活用するのが向いています。

これから伸びるロングテール型ビジネス

 アメリカでは情報系の商品が注目されていますが、日本の場合、富裕層が好む商品・サービスです。お金を持っていると、一つの領域に関してこだわる傾向が顕著に出てきます。彼らは旅行にしても車にしても、一般的なマスマーケティング商品には興味がない。

 例えば、1缶5万円のお茶の葉、小型ジェット機を使った旅行など、ニッチだがニーズはあって、ネットをうまく使えば顧客の数がある程度集まるようになった。そこには、80対20の法則ではなく、ロングテール理論でないと、アプローチしていけません。

 ここでカギとなるのが、ネットの中のクチコミです。これまでネットの中は「2ちゃんねる」のような荒れた環境が多かった。しかし、ブロードバンドになり、コンピュータのパワーも上がり、ソフトウェアが充実してきて、非常に穏やかなコミュニティーができ始めた。無秩序の中から秩序が生まれた。いわば、氷河期から温暖期になったわけです。

 ですから、お互いが人間関係を結んで、共同作業したり、仕事をしたり、歌ったり踊ったりできるようになった。その中で、例えば、知人や同じ趣味の人が情報交換するが広がっているわけです。これからは、顧客対企業の縦軸に加え、仲間づくり、人脈づくりという横軸が重要になります。

 そこでやるべきことは、ネットのコミュニティーの質の維持なのです。ハイクオリティーに保たないといけない。つまり、一種の社交クラブなのです。そこでクチコミで顧客が顧客を増やしていく。

 かつては伝統的な企業がやっていた運動会や社員旅行が社交クラブの役目を果たしていたのですが、今は、多くの人がそれを外に求めている。ビジネスとしてここをうまく吸収すればよいのです。

 

ネットビジネスだけじゃない「ロングテール戦略」

 ネットを活用したビジネスで広がるロングテール現象。しかし、死に筋(ニッチ)の商品・サービスに着目するビジネスは、ネットの世界だけとは限らない。現実の世界のビジネスの流れも踏まえ、「ロングテール戦略」のポイントを、マーケティング研究者、平林千春氏の話から考えてみたい。

(1)新市場を創り出す

 「新たなビジネスチャンスを探るときには、「80対20の法則」というのはあまり意味がない。今までは無視されてきた市場にこそ、個々の顧客の様々なウォンツ(ニーズを満たす特定の商品・サービス)が潜んでいる。それを小さく生んで、大きな市場に育てていくのがニッチ戦略です。こちらのほうがビジネスチャンスは大きい。

 例えば、ヤマト運輸の宅急便。それまで郵便小包や鉄道手荷物はありましたが、これは単にモノを運ぶというビジネスでした。ヤマト運輸は、モノに乗せて、ある人からある人への“気持ちを届ける”というビジネスモデルに変えたわけです。人と人とを結びつけるほうが、ニーズとしては大きかった。これまでのビジネスのパラダイムでは無視されていたウォンツを集めて、市場を創造したのです。

 ものごとの考え方の軸を転換していくことによって、ニュービジネスは成立していくということです。

 ヤマト運輸の宅急便は、既成市場のすき間を狙うニッチ戦略の代表的な成功例です。同社は高度成長期の長距離輸送事業に乗り遅れ、経営危機もささやかれた1970年代、日本にはなかった小口の宅配事業をスタート。「小口は採算が合わない」という常識を覆し、個人の生活に密着した物流市場を生み出し、郵便小包をはるかに上回る規模にまで拡大した。

 いきなり既成の市場でトップを目指すのではなく、限られた狭い分野で支配的な地位を確保していくニッチ戦略は、ベンチャービジネスや中小企業など弱者の戦略として有効です。

 ヤマト運輸は、全国で一人ひとりの「気持ちを届けたい」というウォンツを拾い集めた。「コストゼロの空間」に多くの人が参加するネットの世界では、こうしたウォンツはより集めやすくなる。ニッチ戦略によるニュービジネスが一層成立しやすい時代になったと言える。

(2)顧客にとっての「インフラ」をつくる

 ロングテール戦略は、インフラビジネスの一面がある。例えば、リクルートは、就職という場面での企業と学生の仲介に着目し、就職情報誌をつくりました。その後、転職、住宅、旅行などへと分野を広げ、『広告だけの本』という情報誌マーケットをつくり上げました。これは、いわば情報インフラです。

 グーグルも考え方は同じです。検索エンジンで世界中から欲しい情報を探してくるというのは、巨額の先行投資をして、巨大なコンピュータが世界中のウェブを見守っていて初めて成立することです。このシステムの上で多くの人がいろんなことをできるようにして、ロングテールを伸ばすことで、自分自身もさらに大きくなろうとしている。インフラ化するという発想なのです。

 Web2・0と呼ばれるネット社会の変化について解説した『ウェブ進化論』(梅田望夫著)によると、グーグルが世界中のウェブの情報を集めるコンピュータは30万台。ネットが「コストゼロの空間」といっても、検索サイトやその他のサービスがほとんどタダで使えるインフラとなっているのは、相当の設備投資の結果であるというわけである。

 ロングテールを追求しようとすれば、それなりの工夫や投資が欠かせない。かつ、最終的に顧客にとってリーズナブルな料金を実現する必要がある。「ネットビジネスなら必ずロングテールで儲けられる」というのは、安易な考え方だと知っておかねばならない。

(3)「一人の顧客のウォンツに応える」という使命感

 「グーグルが検索エンジンでやろうとしていることは、個人のどんな小さなウォンツでも、それに合った情報を世界から探してくるという、本来の顧客本位の立場に立っていると思う。自分のちょっとした願いでも、ネットを使えば実現するチャンスを見出せるということです。

 グーグルは地球上の60億人を顧客にし、個別の欲求に応えようとしているわけですが、そこまでいかなくても、ある限定された分野だったら、いくらでもできるわけです。

 商品・サービスを限定していくと、顧客は少なくなっていくわけですが、一人の人のウォンツだけでビジネスは十分成り立つと思う。個別のウォンツに徹底的に応えるというのは、『あなたの気持ちを大切にしていますよ』というメッセージになる。そうすると、その顧客がまた別の顧客を連れてくる。例えば、宗教が昔からやってきたこともこれなのです。その結果、顧客がその会社をブランドとして育てていくことになるわけです」

 グーグルは自らのミッションを、「世界中の情報を組織化し、それにあまねくだれからもアクセスできるようにすること」と位置づけている。アマゾンは、「現在流通している書籍やCDならば何でも顧客が望むものを届ける」ことを役割としている。

 ヤマト運輸は、平林氏が指摘するように、どこにいる人に対しても「気持ちを届ける」というビジネスモデルである。リクルートは就職、転職、結婚、転居といった人生の各場面での多様な選択肢を提供している。

 売れ筋やお得意先という2割に絞り込まず、ロングテールを追求することでマーケットは広がる。とはいえ、出発点はたった一人のウォンツ。これらの企業には、それぞれの分野で「どんな人のウォンツにも応えきる」という強烈な使命感のようなものがある。それがあって、初めて新市場を創り出していくことができる。

参考

 

新市場を創り出す

 「新たなビジネスチャンスを探るときには「80対20の法則」というのはあまり意味がない。今までは無視されてきた市場にこそ、個々の顧客の様々なウォンツ(ニーズを満たす特定の商品・サービス)が潜んでいる。それを小さく生んで、大きな市場に育てていくのがニッチ戦略です。こちらのほうがビジネスチャンスは大きい。

 例えば、ヤマト運輸の宅急便。それまで郵便小包や鉄道手荷物はありましたが、これは単にモノを運ぶというビジネスでした。ヤマト運輸は、モノに乗せて、ある人からある人への“気持ちを届ける”というビジネスモデルに変えたわけです。人と人とを結びつけるほうが、ニーズとしては大きかった。これまでのビジネスのパラダイムでは無視されていたウォンツを集めて、市場を創造したのです。

 ものごとの考え方の軸を転換していくことによって、ニュービジネスは成立していくということです」

 ヤマト運輸の宅急便は、既成市場のすき間を狙うニッチ戦略の代表的な成功例だ。同社は高度成長期の長距離輸送事業に乗り遅れ、経営危機もささやかれた1970年代、日本にはなかった小口の宅配事業をスタート。「小口は採算が合わない」という常識を覆し、個人の生活に密着した物流市場を生み出し、郵便小包をはるかに上回る規模にまで拡大した。

 いきなり既成の市場でトップを目指すのではなく、限られた狭い分野で支配的な地位を確保していくニッチ戦略は、ベンチャービジネスや中小企業など弱者の戦略として有効だ。

 ヤマト運輸は、全国で一人ひとりの「気持ちを届けたい」というウォンツを拾い集めた。「コストゼロの空間」に多くの人が参加するネットの世界では、こうしたウォンツはより集めやすくなる。ニッチ戦略によるニュービジネスが、一層成立しやすい時代になったと言えるだろう。

 

顧客にとっての「インフラ」をつくる

 ロングテール戦略は、インフラビジネスの一面がある。例えばリクルートは、就職という場面での企業と学生の仲介に着目し、就職情報誌をつくりました。その後、転職、住宅、旅行などへと分野を広げ、『広告だけの本』という情報誌マーケットをつくり上げました。これは、いわば情報インフラです。

 グーグルも考え方は同じです。検索エンジンで世界中から欲しい情報を探してくるというのは、巨額の先行投資をして、巨大なコンピュータが世界中のウェブを見守っていて初めて成立することです。このシステムの上で多くの人がいろんなことをできるようにしてロングテールを伸ばすことで、自分自身もさらに大きくなろうとしている。インフラ化するという発想なのです。

 Web2・0と呼ばれるネット社会の変化について解説した『ウェブ進化論』(梅田望夫著)によると、グーグルが世界中のウェブの情報を集めるコンピュータは30万台。ネットが「コストゼロの空間」といっても、検索サイトやその他のサービスがほとんどタダで使えるインフラとなっているのは、相当の設備投資の結果であるというわけです。

 あらゆる書籍やCDなどが買えるアマゾンも、「他のネット小売をはるかに上回る約3億ドル(約345億円)をウェブサイトとデザインの開発に投資している」(同社ジェフ・ベゾス最高経営責任者)という

 ロングテールを追求しようとすれば、それなりの工夫や投資が欠かせない。かつ、最終的に顧客にとってリーズナブルな料金を実現する必要がある。「ネットビジネスなら必ずロングテールで儲けられる」というのは、安易な考え方だと知っておかねばならないだろう。

 

「一人の顧客のウォンツに応える」という使命感

 グーグルが検索エンジンでやろうとしていることは、個人のどんな小さなウォンツでも、それに合った情報を世界から探してくるという、本来の顧客本位の立場に立っていると思う。自分のちょっとした願いでも、ネットを使えば実現するチャンスを見出せるということです。

 グーグルは地球上の60億人を顧客にし、個別の欲求に応えようとしているわけですが、そこまでいかなくても、ある限定された分野だったら、いくらでもできるわけです。

 商品・サービスを限定していくと、顧客は少なくなっていくわけですが、私は一人の人のウォンツだけでビジネスは十分成り立つと思っている。個別のウォンツに徹底的に応えるというのは、『あなたの気持ちを大切にしていますよ』というメッセージになる。そうすると、その顧客がまた別の顧客を連れてくる。例えば、宗教が昔からやってきたこともこれなんです。その結果、顧客がその会社をブランドとして育てていくことになるわけです。

 グーグルは自らのミッションを、「世界中の情報を組織化し、それにあまねくだれからもアクセスできるようにすること」と位置づけている。アマゾンは、「現在流通している書籍やCDならば何でも顧客が望むものを届ける」ことを役割としている。

 ヤマト運輸は、平林氏が指摘するように、どこにいる人に対しても「気持ちを届ける」というビジネスモデル。リクルートは就職、転職、結婚、転居といった人生の各場面での多様な選択肢を提供している。

 売れ筋やお得意先という2割に絞り込まず、ロングテールを追求することでマーケットは広がる。とはいえ、出発点はたった一人のウォンツ。これらの企業には、それぞれの分野で「どんな人のウォンツにも応えきる」という強烈な使命感のようなものがある。それがあって初めて、新市場を創り出していくことができる。

 

「絞り込まない戦略」を生かすには「コストゼロ」の時間空間をつくり出す

 2割の重要な部分が8割の成果をもたらすという「80対20の法則」。限られた時間と空間の中で、限られた資源を用いて仕事をするとき、この法則から逃れることはできない。

 しかし、物理的・経済的な制約がほとんどなく、膨大な情報をストックしたり移動できれば、「80対20の法則」に縛られなくなる。そこでは、重要でないはずの8割からも大きな成果が生まれる(「収穫逓増の法則」が働く)。

 そうした環境はネットが有利だが、もし、コストを限りなく小さくできるなら他分野でも応用できる。

 今後さまざまなニュービジネスの誕生が予想されるなか、こうした「コストゼロの時間・空間」をどうつくるかを考えることが大切です。

 

独自性や質が一層問われる

 航空会社のマイレージサービスや、スーパーの買い物ポイント制など、優良顧客を優遇し、増やしていく「集中戦略」は今なお有効です。

 「80対20の法則」と絞り込まない「ロングテール戦略」のどちらかだけが正しいということではない。そのビジネスの目的、経営理念、目標、規模によってとるべき戦略も違うだろうし、また両者を併用するケースもあるだろう。

 ただ一つ言えるのは、Web時代になって、より多くの人が、多様な成功を目指せるようになったということです。

 これまでニッチな商品・サービスに着目し、大きな市場や事業に育てるのは、一部の天才や抜きん出た事業家にだけ許されたことであった。その道が今はネットという手段によって、ごく普通の人にも開かれている。

 敷居が低くなった分、経営者やビジネスマンが実現しようとしていることの独自性や使命感、サービスそのものの質が一層問われることになろう。

 「80対20の法則」とロングテールの両方をいかに駆使し、成功を手にするか。それぞれの人にそれぞれの答えがある。

参考

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