大倒産時代のサバイバル経営術
「大倒産の嵐」が近づいている。金融モラトリアム法の終了と消費税の引き上げで中小企業はいくつ生き残れるのか。
事業を続けるのか それとも撤退するのか 真剣に考えるべき時が来ている。
「会社を潰す社長度」チェック
□赤字である
□減収か減益である
□実はBS、CFの意味を説明できない
□月次決算書や資金繰り表を作っていないか、作っていても見ていない
□ここ3月以内に、泣きつかれて、取引先の支払いを待ってあげたことがある
□経理担当者が過去半年以内に辞めたか、辞めたいと申し出たか、倒れたか、顔色が悪くなったか、手が震えている
□消費税や社会保険料を滞納している
□過去半年以内に銀行の担当者が急に代わった
□ここ3カ月以内に、本業以外の儲け話を1時間以上聞いてしまったことがある
□この1年間で本業以外の新規事業を始めた
□この半年間、経営のことで誰にも相談したことがない
□この半年間、税理士、弁護士、経営コンサルタントなどから、耳に痛いことを言われていない
□出勤していない役員や社員に給料を支払っている
□過去1ヵ月に読んだビジネス書は 3冊以下
□商工会や異業種交流会などの理事や役員を1つ以上している
□週に5日以上飲み歩いている
□浮気をしている
推定倒産危険度
1個~5個・・・30%未満
6個~10個・・・約50%
11個以上 ・・・70%以上
株式市場の活況とは裏腹に、大倒産時代の足音が ひたひたと忍び寄っている。果たしてどれだけの中小企業が これから生き残れるのか。
「本業がダメだから次」は会社を腐らせる
一方、「潰れる会社は潰れ、生き残る会社は生き残る」というのも事実です。会社を潰す社長にはいくつか共通点がある。「自分は大丈夫」と油断して、会社を潰してからそれに気づくことも多い。
まず放漫経営である。幸福の科学大川隆法総裁は、著書『智慧の経営』の中で「会社が倒産する原因は、ほとんどが放漫経営」と指摘している。 会社が生き残る術を考えるべき時に、大風呂敷を広げている余裕はない。強みの分野に集中して収益を上げ、生き延びなければならない。
この局面で多いのが、「うちは大丈夫」と根拠もなく思い込み、他分野に手を広げて失敗するケースです。本業が目立った業績を上げていないのに、社運をかけて異業種に挑戦するのは博打でしかない。こうした選択は会社を傾けかねない。「本業がダメだから次に行くということなら、本業の社員の士気も下がり、会社全体の業績も悪くなります。しかし、『次に行く』と朝礼で宣言する社長も結構いる。
神頼みよりまず自助努力
会社を潰す社長の第2の共通点は、「なんとかなるさ」と考える見通しの甘さである。
大川隆法総裁は、「光明思想を縁として、極めて甘い経営姿勢 どうにかなる、きっとよくなるという、人まかせ型、運まかせ型、神様まかせ型の甘い経営をしていると、倒産のもとになります」と述べている。
「我が社は発展する」という明るい考え方は事業を繁栄させる上で不可欠である。だが、それが、運任せや神頼みで努力をしない経営になるならレッド・カードである。
「天は自ら助くる者を助く」と言う。経営環境が厳しい時代には、手足を動かして収益を何とか確保しなければ生き残れない。他社が地道に頑張っているのに、「自分のところには天の助けが来る」と たか をくくり、何もしなければ潰れるのは当たり前のことである。
「不況だから」では経営改善しようがない
放漫経営や神頼み経営をしていると、経営難の責任を他人に押し付けるようになる。それが会社を潰す社長の第三の共通点である。「不況だから」が口癖の社長は経営改善のしようがない。
業績悪化の理由を社員に押し付けている社長も危ない。「悪い社長が社員に言うお決まりのセリフは、『お前ら頑張れ』『イノベーションしろ』。社員は陰で『まず変わるべきなのは社長なのに』って言っている。また、赤字の責任を経理担当者に押し付けて、怒鳴りつける社長もいる。 ストレスのあまり経理担当者が手を震わせていたり、病気になるようなことがあれば、社長は理由をよく考えた方がよい。
反省できない社長たち
会社を潰す社長の条件を整理すると、社長が「自分や自社の改善すべき点を反省できない」という一点に行き着く。そして、「自分は十分反省している」と思っている社長ほど天狗になっていることが多い。
大川隆法総裁は、「社長族というのは、極めて反省をしない“種族”と言えます。従業員が十人もいたら、もう反省しなくなります。自分を特殊な人間だと思って、いばっているのですが、それでは駄目なのです」と述べている。
自分の問題そっちのけで、勝手に振る舞うところに落とし穴がある。また、私生活の悩みにも注意が要る。
自らをマネジメントできない者が、他者をマネジメントできるはずがないと言える。反省できない社長のところから、一つひとつ会社が潰れていくのが現実である。「明日は我が身」と自らの驕りを戒めるとよい。
計画的に会社を処理する道もある
努力が足りずに経営不振に陥るケースもあれば、粘りすぎて自滅する場合もある。その線引きはどこですればよいのだろうか。
倒産は決して珍しくないと知っておくことが大事です。現在では約250万社の法人企業があり、日本人の50人に一人が社長という計算です。そんなに多ければ、淘汰が起こるのは当たり前のことです。カメラのフィルム関連の仕事など、技術革新が加速している中で業種自体がなくなるケースもあります。
倒産には二種類ある。会社が完全になくなるケースもありますが、借金だらけでも利益が出ている部門があれば、何らかの形で事業を継続する道はあります。倒産してもすべてが終わるわけではなく、再生することも可能なのです。
不安なら諦める道もある
採算性さえあれば、何らかの再生の道はあります。早めに事業の将来性や財務状況を見極めること。早期発見が大切 です。「今月給料払えないや」まで行ってしまったらアウトですが、「このままだと3ヵ月後に給料払えないかな」という段階で相談に来られた方は、何とかなることが多いのです。どこまで行ったら倒産を考えるべきかのボーダーを決めるは難しいのですが、経営が不安になって、その不安が解消できる見込みがないなら、むやみに突き進まないほうが賢明ではないでしょうか。
とはいえ、採算性を見極めるにしても、数字が分からなければ判断するのは困難です。
経営には教習所がない
例えば、仮にローンで社用車を買うとする。ローンという負債と車という資産はプラスマイナスゼロに思えるけれど、ローンは利息が付くし、車を売る時は買い値より安価で手放さざるを得ないから本当はマイナスです。こういうコスト感覚がないと経営が行き詰っていきます。
金融機関との付き合い方でも、銀行は交渉相手を見て金利を変えると知っておきましょう。「何か言ったら、貸してくれなくなるのでは」と思い込む経営者が圧倒的に多いのですが、それは間違いです。
現代では経営の上で知っておくべき知識は様々です。しかし、多くの中小企業の経営者は無知なのです。自動車免許のように教習所に通わなくても、誰でも社長になれるからです。ですから、経営の相談相手に恵まれるかどうかが中小企業経営の生命線 だと言えます。
社長にも大事なホウレンソウ
経営知識の問題以前に、社長としての資質に問題があるケースもあります。よくあるのは、連絡が成り立たないこと。相談に来て「次までにこれをしましょう」とアドバイスしても連絡がない。あるいは、準備すべき書類などの約束を守らない。経営難で憔悴し判断力が落ちているのかもしれませんが、こういう社長は取引先や金融機関との連絡もうまくいっていない可能性があります。「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」は、社長にとっても大切な基礎 なのです。
裸の王様にならないための社長の心得
耳に痛い人の声を聞く
経営者はついワンマンになってしまい、部下などが物を言わなくなりがちです。イエスマンに囲まれて、知らない間に裸の王様になってしまう。だから、常に謙虚でいるように心がける必要があります。
経営者は、知らぬ間に天狗になっているのが普通で、自分ではなかなか分からないものです。ですから、会社の規模にかかわらず、外部からビシッと進言してくれる人を そばに置いておくべきでしょう。エイチ・アイ・エスも、松下幸之助の番頭をしていた方を社外取締役に招いています。ハッキリと物を言う人で、耳に痛いことも多いのですが、こういう人は必要です。経営に携わってくれる経験豊富な人を見つけて、役員などとして一緒に参加してもらうべきでしょう。
自分が未熟だからうまくいかない
うまくいかないのは自分がまだ未熟だから。赤字や経営危機で大変なのであれば、もっと勉強しなくては駄目です。経営のプロから謙虚に教わることも必要です。
継続か、撤退か
決断の時は今 夜逃げや自殺をする前に
かつて、「夜逃げ屋本舗」というドラマがあった。借金を抱えた依頼人一家のもとに「夜逃げ屋」が現れ、追ってくる債権者をかわしながら、夜逃げさせるというストーリーです。だが、ドラマが美化する夜逃げと実像は違う。そもそも夜逃げは犯罪です。事業も借金も放置して逃走すれば、お世話になった金融機関や取引先はどうなるのか。一緒に逃げてきた家族にしても、自分の名前も名乗れず、病院にも学校にも行けないことになる。ましてや、自殺などもっての外である。
こうした事態になる前に、 経営改善のための地道な努力を行うか、もしくは計画的に事業をたたむ準備を始めるのか、社長は見極めを迫られている。
ビジョンだけでなく現実も見据える
「なんとかなる」という漠然とした思い込みを捨て、足元の経営の実態をつぶさに見つめるところから経営再建は始まる。
大企業に成長するイメージも大事だが、危機の時代には現実を見るシビアな目を持つのが生命線である。
経営再建といえば、バリバリの実業家のイメージを抱きがちである。「うちもやろう」と中小企業の社長が迂闊に真似して大風呂敷を広げると痛い目に遭う。
放漫体質を改め、削減できるコストは削り、儲けられるところで儲ける。集中と撤退の見極めが生命線を握る。安易な神頼みに陥ることなく、地道に手足を動かさなければ、次に淘汰されるのは我が社かもしれない。このように、己を戒められない社長には もう後がない。
「自分は大丈夫」が命取り
ドラッカーには、セミナーの最後に言う口癖があったという。「『いい話を聞いた』で終わりにしないでください。月曜から何をするかを考えてください」。会社のサバイバルのためには、何よりも自分の問題だと受け止めることが大事である。「自分は関係ない」「自分は大丈夫だ」と考えている人こそが、次に会社を潰す社長となる。大倒産時代のカウントダウンは もうすでに始まっている。