176 スマホ依存は国力低下に関わる弊害

 子供時代の読書量と大人になった時の知的能力に明確な相関性があることが、国立青少年教育振興機構の調査で分かりました。

 調査によると、小学校から高校生までの間に読書量が多かった人は、大人になった時に物事に進んで取り組む「主体的行動力」や、客観的・論理的に考える「批判的思考力」、自分を理解し肯定する「自己理解力」が高い傾向にあるという。

 さらに、紙の本で読書する人はパソコンやスマートフォンなどで読む人より、同様の行動力や認知能力が高い傾向にあることも分かりました。

 文部科学省によると、公立校の学校図書館の一人当たりの年間貸出冊数は2020年度、小学校の49冊に対し、中学校は9冊、高校は3冊と進学するにつれて減っています。若者の「活字離れ」を危惧する声も少なくありません。昨今、社会問題化している「スマホ依存」の弊害について、逆側から浮かび上がらせる調査結果と言えるでしょう。

 書籍として出版されている情報というのは、質が高く、知的な驚きや発見、創造性を刺激するものが豊富です。印刷された文字を丁寧に追って理解する行為の中で、洞察力や意志力も磨かれていきます。

 一方、読書の習慣を阻む主因だと考えられるスマホコンテンツには、脳内に依存を作り出す快楽物質「ドーパミン」を分泌させる効果があり、冷静に見ればさほど面白くもないコンテンツを無駄に消費し続ける習慣ができてしまいます。また、ネットニュースやブログなどは、常に大量の雑情報が流れてくるので、「深く思考する」というプロセスが削がれます。さらに、スマホが常に気になる状況が生まれることで集中力も散漫になってしまいます。

 媒体形態の差もあると言われています。紙を媒体とした書籍を読む行為と画面で情報を得る行為を比べると、人の頭の活性度が変わるといいます。本は、製紙に用いられるパルプ素材に光が反射する「反射光」で読みますが、この時、人の頭は分析的なモードになります。一方、テレビやパソコン、スマホの画面はスクリーン越しのライトである「透過光」で読みますが、この時、人の頭は受動的にそのまま受け止めようとします。そのため、「紙」で行う情報収集がより一層良質かつ厳密なものになることが分かる。

 国家レベルで考えると、スマホ依存は国民を低質な発想にし、国力の低下にまで繋がる大きな問題です。本を手に取り、知的生産性を高める努力をする人が増えることが、国力低下を止める一因となるでしょう。

参考

情報遮断で得られるもの

 テクノロジー依存から脱却するには、読書や瞑想などの精神的な活動、そして運動や音楽などを通してコミュニティの人々と豊かで深い関係を持つことが助けになります。

 私たちは目の前の人との会話をより楽しむことができるようになりました。また、車を運転するときも、グーグル・マップは使わないので、記憶を頼りに運転します。すると、住んでいる地域のことをより理解することができますし、普段は気づかなかったさまざまな変化に気づくこともできます。

 もちろん、最初は困難を伴いました。スマートフォンには、インターネット、メッセージ、地図、カメラ、すべてが入っていて、とても便利だからです。

 しかし、それらを遮断することで、技術に頼らなくてもよいことに気づきます。人間は自分の力で数多くのことができるのです。何かに集中するには、テクノロジーを遮断した方が、得るものが多いことに、人々は気づき始めています。「マルチタスク」は効率的とは限りません。

 

人間の「創造性」に目覚める

 最も重要なのは、人間に本来備わっている「創造性」に気づくことです。創造性を発揮するには、情報を遮断して、脳に休息を与えることが大切です。

 常に頭につきまとう、「誰かからメッセージが来るかもしれない」「仕事のメールが入るかもしれない」といった思考に邪魔されない時間を持つ。そうすることで、革新的なアイデアを得られます。ウォーキングやシャワーの間に、もっとも優れたアイデアを思いつくことがあるのは、このためです。

 こうしたテクノロジーと、距離を置く時には置き、ひと休みする。それが、精神衛生や創造性の向上、そして、人々と心の交流を取り戻す鍵となります。これが、今後のトレンドとなっていくでしょう。

参考

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