業務改善

 誰もが一度は「業務改善」に取り組んだ経験があると思います。

 業務改善と呼ばれる活動は、非常に範囲が広く担当者1人で取り組む仕事の改善から、システム投資などを要する規模の大きなもの(全社的改善)までさまざまです。

 中小企業にとって限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)の中で、いかに効率よく高い付加価値を出していくかが経営を行っていく上で非常に重要となる。

 一つ目は業務の「見える化」についてのステップ。

 二つ目に、業務の見える化により顕在化された課題に対して、対策への判断基準を定め、優先順位付けを行うというステップがある。

 三つ目が優先度の高い課題から対策を実行するというステップである。

 これらの3ステップを押さえることにより、限られた経営資源の中で成果の上がる仕組みを構築していくことができる。

1 業務の「見える化」
 業務改善の第一歩は、自社の業務の見える化を図ることから始まります。

 見える化とは、「問題点を顕在化して課題解決する仕組み・手法」のこと。

 問題点が見えなければ、誤った改善策を講じることになり、結果としてムダ(余計な作業負荷)が増え、本来の改善とは逆の結果・効果に陥ってしまいます。

 見える化のために最初にやることは、「仕事の棚卸し」をすること。
「仕事」とは、ヒト・モノ・カネの総和と言えます。洗い出しおよび改善の対象も、ヒト・モノ・カネで大きく区分することが重要です。

 業務改善の取り組みが失敗もしくは狙い通りの効果が上がらない要因として、この点が整理されないまま、枝葉の議論での改善に終始し、全体としての成果につながらないケースが挙げられます。
 「木を見て森を見ず」にならぬよう、スタート段階での整理が重要である。

 最もイメージが浮かびやすいのが、「モノ(目に見えるものの扱い)」への改善です。例えば、作業方法や仕事の工程改善などです。

 さらに、知恵の時代と言われるように、今はモノ以外の仕事も対象になってきている。
例えば、新しい業務課題に対応するためには、社内のルール、体制といった コト を見直す必要があるでしょう。

 また、既成概念、価値観、社内不文律およびモチベーションなどの考え方や行動、つまり、「ヒト」の分野についても改善・見直しの対象に入ってくる。

 コトやヒトは目に見えにくく、抽象的な概念です。
 しかし、成果を上げるためには非常に重要なターゲットであり、洗い出しの段階からしっかりと整理して考えていく必要がある。

 よって、業務改善の最終的な「あるべき姿」がヒトの改善、すなわち「企業体質改善」となるわけです。

 

2 改善力とは実行力
 改善のあるべき姿は、「ヒトの改善(企業体質改善)」にあります。いくら作業や仕組み、ルールの改善を行っても、それを全社員が同じ問題意識を持って実行できるかどうかが、改善の成果に大きな影響を与えているからで。
 一人ひとりが決めたことを実行する「体質」にならなければ、形だけの改善活動になってしまい、結果として業務改善が停滞、もしくは失敗するケースが多い。

 よって、モノ・コトの改善活動を進めていく中で、よい意味での現状否定により、各人の意識改革を行っていくこと(ヒトの改善)が重要である。これらは、「業務の見える化」を担保する意味でクルマの両輪である。

モノの改善からコトの改善へ。そして、最終的にヒトの改善ができて初めて「企業体質改善」となるのです。

 まずは、自社のあるべき姿を志向するところから始めていただきたい。

 

業務の洗い出し

1 業務を「見える化」する
 複雑で全体像や処理方法が分かりにくい業務(システム)も、同種・同様の仕事に分類、区分していくことで、その役割や処理方法を容易に理解することができるのです。

 今一度、必要性を理解した上で、業務の「見える化」(業務の洗い出し)を進めてみてください。

 

(1)手順1:目的別項目設定
 まず初めに行うべきは、「業務項目」を明らかにすることです。

 業務項目とは、企業が経営目的を達成していくために必要な「機能」のことであり、「販売」「生産」などで区分されます。

 そして、この機能別項目を洗い出すに当たり、推論的アプローチから、どういう経営機能が必要かを洗い出さねばならない。

(2)手順2:目的・方針の確認

 推論的アプローチにおいては、現在の経営目的と方針について、再確認することが第1ポイントとなる。

 つまり、経営者自身が中長期的な視野に立ち、将来、自社をどの方向に進めようとしているのか(あるべき姿の設定)、どのような経営体制を目指しているのかなどについて、明らかにしていく必要があります。

(3)手順3:「業務分類表」への落とし込み

 次に、経営の目的と方針を達成するため、どの経営機能が必要かについて推論的に洗い出し、見える化を図ります。

 洗い出した結果は「業務分類表」に取りまとめ、最終的に検証を行った上で決定する。

 具体的には、業務を大分類(経営管理機能、直接機能、間接機能、管理機能)、中項目(生産、販売、購買・外注、品質管理など)、小項目(経営方針、経営計画など)などに区分していく。

(4)手順4:業務全体の体系図を作成

 「木を見て森を見ず」とならぬよう、業務の洗い出しに当たっては、「業務全体体系図を作成する必要があります。これは、経営の基本機能である前述の大分類と中項目の関連を示したものです。

(5)手順5:業務の機能別分類

①経営管理機能
 「経営管理機能」とは、環境が変化する中、企業が永続発展していくために必要不可欠な機能です。

 特に、中項目の「経営企画」は、業種・規模にかかわらず計画的に経営を推進していく上で必要な機能です。
 「研究開発」は、固有の技術力を持つ技術開発型の企業においては、欠かすことができない強化すべき機能であるが、下請け型の中小企業の場合は一般的に弱体化しています。
 独自の技術開発力を強みにしていきたい下請企業や、自社製品の開発を目指している下請企業は、この研究開発の機能を強化していくことが重要です。

②直接機能
 直接的に付加価値を生む機能であり、業種や経営目的により企業ごとで異なります。
 業務効率化の推進によって、業務の生産性向上や業務のスピードアップを強烈に進めていく必要のある機能です。

③間接機能
 効率的に直接機能を果たすためのサービスを提供する機能であり、業種により若干異なる。

 例えば、「品質管理」は製造業において必要不可欠な機能であるが、小売・卸売業やサービス業では必要性の低い機能となる。

④管理機能
 全ての企業が保有している機能であり、業種・規模が異なっていても共通点は多く、大きな差異がありません。
 業務効率化の推進で、少ない人員で高付加価値を提供できる機能にすることが必要です。

 業務効率化の推進で、少ない人員で高付加価値を提供できる機能にすることが必要です。

 業務の洗い出しは、目的に照らして推論的にアプローチを行うことにより、現状に甘んじることのない、また、現状とかけ離れることのない経営機能別分類を行うことができます。
 目的に照らした区分整理を行うことで、自社の業務自体の過不足や強み・弱みの全体像が把握できるのです。

 

スキルの洗い出しと業務の取捨選択

1 個人スキルの洗い出し
 なぜ、業務の取捨選択の前に個人スキルの洗い出しを行う必要があるのか。

 高額のシステムに投資し、業務改善を図ろうとしても、実務担当者のITリテラシーが不足していると、狙い通りに機能を活用できない。あるいは、現状以上の作業負荷や後戻り仕事が発生してしまうケースがある。

 「業務の洗い出し」と「スキルの洗い出し」は、車の両輪であると言えます。

(1)手順1:全業務の抽出(各部門・工程ごと)
 業務分類表と業務全体体系図で整理する。そして、部門別、工程別、作業別に内容を整理する。

(2)手順2:習熟レベルのチェック
 部門別、もしくは工程別にスキルマップを作成し、各作業者の個別習熟度をチェックする。

 ポイントは、習熟度判定は必ず上長が行うことである。自己判定によるバラつきや恣意性を排除する必要がある。

 また、必ずスキルの基準に基づいて判定を行う。このスキルマップに基づく「スキルの洗い出し」により、実作業者の能力面から業務の取捨選択を判断することが可能になる。

2 業務の取捨選択
 いよいよ業務の取捨選択に取り掛かる。

 手元には「業務の洗い出し」の成果物として業務分類表と業務全体体系図、そして「スキルの洗い出し」の成果物としてスキルマップが用意されたことになります。

 これをもとに、自社に応じたフィルター(価値判断基準)を設定し、取捨選択を実施していくことになる。

(1)価値判断基準の設定
  判断基準で、まず検討すべきことは「重要度」の基準である。

 具体的には、
 ・自社の業務の重要性に応じて、重要かつ今後も自社においてやるべきこと(ランクA)
 ・重要だが、スキルマップに照らして技能伝承なども考慮に入れ、後任へ徐々に移管すべきこと(ランクB)
 ・重要度が低く、作業自体の見直しもしくは廃止すべきこと(ランクC)に分類する。

 この判断基準が第一ポイントである。

 この判断基準に沿って、個々の業務ごとに、できれば現在の業務担当者だけでなく、部門横断で選抜したメンバーによってディスカッションを行い、業務を区分していく。

 実作業者は、慣れ親しんだ現状の業務が正しいという固定観念を抱きやすい。他部門のメンバーを参画させることで、現状否定の精神から聖域なき見直しをしていくことが肝要である。

(2)価値判断基準の設定
 重要度別ランク分けにより、現在の業務が三つに分類される。しかし、これでは業務の改善という意味では不完全である。

 ランクCについては、現状の業務実態に照らして不要(「捨てる」)と判断されたものなので問題ないが、ランクA(重要かつ今後も自社においてやるべきこと)と、ランクB(重要だが、スキルマップに照らし技能伝承なども考慮に入れ、後任へ徐々に移管すべきこと)については、業務自体はそのまま残っている。

 このランクAおよびBの業務を次の価値判断基準(「改める」「新しくする」)で、さらにふるいにかけていくことが重要です。

この作業によって、ランクAおよびBのように引き続き残す業務であっても、現状より会社の実態(業務内容や各人のスキル)に合ったものが残ることになる。

 業務とスキルの棚卸しと価値判断基準に基づいた取捨選択は、当然ながら相当の労力を要することになる。

 多くの企業は、いずれかの段階で挫折してしまうことが多い。しかし、得られる改善効果は大きいのです。

 

 「業務改善」は、企業活動継続の上で重要なキーワードです。

 業務改善とは、「原則として現状のプロセスを維持したまま、物事をより良くするための創意工夫を行うこと」です。
 既にある工程や作業を時代や社会状況の変化に合わせて改良(リファイン)し、より良い状態に持っていくことを指します。業務改善は、アプリの更新のように、1.0から2.0へバージョンを上げるというイメージです。
 混同されがちな言葉に「業務改革」があります。業務改善と考え方が異なります。業務改革は、「今あるプロセスの一部または全部を破壊して、まったく新しくプロセスを作ること」を指します。業務改革とは抜本的な改革であり、0から1をつくる作業です。
 企業活動を見直す際のポイントに、QCD(「Quality:品質」「Cost:コスト」「Delivery:納期」)という視点があります。業務改善も業務改革も、この3つの視点が基本にあることは共通しますが、業務改革は、より大きな変化を伴うものであり、関わる従業員への影響も大きくなります。

 業務改善に取り組むきっかけとして多いのは、「人が辞めたタイミングで業務の属人化が明らかになった」というものです。また、「なんとなくやり続けている仕事」が増え、それが従業員への過大な負荷やコストとなってきた状況を変えるために行う、というケースも多く見られます。

 近年では、社会的な環境変化への対応というケースも増えています。
 経済産業省によると、2050年には日本の人口は1億人を下回り、さらに、生産年齢人口の比率はピーク時の約50%にまで落ち込むと予測しています。

労働力の減少は特定の業界に限ったことではなく、人員が少なくても業務がスムーズに進む仕組みの構築が多くの企業にとって喫緊の課題となっています。打開策として、システムの利用や業務の自動化が進められ、それに伴い業務改善に取り組むケースが増えています。
 そして、コロナ禍でさらなる変化が生まれています。テレワークをはじめとした新しいはたらき方の普及で、人々が「これまでしていた作業は本当に必要なのか」「今までの仕事のやり方がベストなのか」と、考えるきっかけが生まれています。
 実際、テレワークを行うと、平時でもテレワークを続けたいと考える人が増えています。パーソル総合研究所の調査では、テレワークを経験した人のうち、5割超の人が今後もテレワークを継続したいと答えています。

こうした流れを受け、テレワーク対応を含む働く個人の変化への対応やリスクマネジメントの強化という観点から、業務改善へのニーズが高まっています。コロナ禍以降の新たな動きといえるでしょう。

 

業務改善の効果

 業務改善に取り組むことで、次のような効果につながります。

 

1 コスト削減、時間の確保

 業務改善により業務内容が可視化されたり、システム導入が行われたりすることで、業務効率はアップします。これは、残業による人件費や光熱費などの経費削減につながり、経営にプラスの効果を生みます。

 

2 従業員のスキル向上やキャリア形成による組織内でのシナジー創出、採用力強化

 業務改善で生まれた人員的・時間的な余裕は、新規事業の開拓のようなクリエイティブな仕事、戦力アップのための人材育成などへ投入できます。これにより、組織全体の成長が見込めます。
 また、いわゆるZ世代と呼ばれる若手層は、個人の能力開発や成長に関心が高いという傾向があります。業務改善活動は、長期的には採用力の強化につながるとも考えられるでしょう。

 

業務改善の流れ

ステップ1 関係各所からのヒアリング、業務の可視化

 まず、改善しようとしている業務を徹底的に可視化しましょう。
そのために、業務に関わる従業員から、現状についてのヒアリングを行います。ここで得られた情報は、その後の全てのステップに大きな影響を及ぼします。誰が何の作業を行っているのか、業務はどのようなフローで進んでいるのかなど、細かく徹底的に聞き出すことが重要です。

 問題の裏側にある根本的な問題を見つけるには、「こうだろう」という先入観を排除することが重要です。ヒアリング相手への敬意と共感は保ちつつ、第三者的な視点を忘れずに、冷静に話を聞きましょう。さらに、「誰がヒアリングを行うか」というのも重要なポイントです。自分の上司や経営層に不満を伝えるというのは、従業員にとってハードルが高いものです。ヒアリング対象者やその現場との利害関係がない人物を選ぶなど、人選にも配慮しましょう。業務改善チームを組み、中立の立場を保てる立場の人々を主体に業務改善を行うのもおすすめです。

 

ステップ2 課題整理、方針策定

 ステップ1の結果をベースに課題を整理します。目に見えている課題だけでなく、それを引き起こしている「根本的な課題」を見つけ、対処を考えます。そして、解決のためにどう業務改善を進めるのか、方針を決めます。

 

ステップ3 実行計画の策定

 ステップ2で決めた方針に基づき、実行計画を作ります。具体的には、タスクの洗い出し、実行スケジュール、実行するための体制構築などを行います。

 実行時の動きを徹底的にリアルにイメージしながら、実施に際してやるべきことを全て洗い出しましょう。例えば、体制決めであれば、人材をどこからアサインするか、アサインするためには事前にどのような準備が必要で、誰にどのような情報を伝えておくべきか、誰に許可を取るのかといったことまで細かく決めておきましょう。そして、現実的に実行可能かも検証することも重要です。入念に想定を行うことが実行時になってからの計画の頓挫や不備の発生を防ぐことにつながります。

 

ステップ4 計画実行

 ステップ3で立てた計画に沿って、システム活用、工程の自動化、外部委託などを実行します。PDCAを回すことを前提に現場に無理が出ないように進めましょう。

 

ステップ5 振り返り

 計画実行の結果を振り返り、PDCAサイクルを回していきます。

 

実施時のポイント

振り返りは必ず行いましょう。そして、必要があれば、ステップ2や3に戻り、改善を繰り返します。

改善活動は、「一度で完璧にする」と思わず、長期的目線を持って行うことが大切です。繰り返しの中で少しずつ理想の形に近づけていくことを意識しましょう。

 

社内で推進するのが困難な場合の対応策

 前述の全てのステップを社内の人間だけで行うこともできますが、次のようなことから、社内だけで改善活動を完結させるのは難しいことも少なくありません。

・自分に不利益が出るのを恐れて本当のことを話さない従業員がいる
・業務改善活動の担当者の技量的な問題で進まない など

 その場合、コンサルタントなどの力を借りるのも手です。例えば、ステップ1のヒアリングのみを依頼するなど、一部だけでもプロの力を借りると業務改善を効率的に進める助けになります。

 

業務改善に役立つフレームワーク

 業務設計上の課題を見つけるためには、フレームワークを活用すると効率的かつ網羅的に課題を整理できます。

 

ECRS(イクルス)

 ECRS(イクルス)は、「Eliminate(排除する)」「Combine(結合する)」「Rearrange(交換する)」「Simplify(簡素化する)」の頭文字を取ったもので、効果的な業務改善を目的に考えられたフレームワークです。それぞれの視点から改善点を洗い出します。
 また、「E C R S」の順番で業務改善の効果が高い傾向があるため、優先順位をつける上で効果的です。

 

PDCAサイクル

 PDCAサイクルは、「Plan(計画する)」「Do(実行する)」「Check(評価する)」「Action(改善する)」の頭文字をとったもので、継続的に業務改善を行うためのフレームワークです。業務設計時や業務設計を見直した後の振り返り時に活用します。

 

ロジックツリー(決定木分析)

 ロジックツリーは、さまざまな課題をツリーのように枝分かれさせ、分解して考えるフレームワークです。ある課題に対して原因を網羅的に把握するために活用します。

使い方はシンプルですが、ツリーを枝分かれさせるだけでは十分な効果を発揮しません。使うときには、「漏れなくダブりなく」を意識し、ツリーの根っこにある部分を的確に設定することが大切です。業務設計の際には、ある業務上の課題を分析するときに使います。

KPT

 KPTは、「Keep(続けるべきこと)」「Problem(辞めるべきこと)」「Try(新しく挑戦すること)」の頭文字をとったもので、これら3つの要素に分けて現状分析を行うためのフレームワークです。現状の課題分析や振り返り時に活用します。

 

バリューチェーン分析

 バリューチェーン分析は、開発・製造からアフターサービスまでの一連の業務プロセスを機能ごとに分類し、どの工程でどのような価値が生まれるのかに着目して、自社の強みと課題を可視化するフレームワークです。自社の強みが明確になることで、伸ばすべきポイントが明確になります。業務設計で各工程の業務の価値を見直し、優先順位を決める際に役立ちます。

業務設計を効率的に行うためにアウトソーシングも活用できる

 業務設計を効率的に行いたい場合には、BPOを活用する方法もあります。BPOは、企業の業務プロセスの一部をアウトソーシングする方法です。対象となる業務のプロが業務を行うため、業務品質の向上とコスト削減効果が期待できます。

 企業全体の業務を俯瞰できる人材が自社にいないといった課題を抱える企業は、アウトソーシングを活用することで自社に適した業務設計が構築できるでしょう。

 

業務改善を進める上での注意点

 業務改善活動の全体を通して、留意したいことがあります。

1 業務改善の意図を徹底的に伝え、従業員に当事者意識をもってもらう

 業務改善を行う際には、従業員一人ひとりのマインドセットをしっかり整える必要があります。
 当事者意識が生まれないと、ヒアリングをしても問題についての核心的情報がなかなか出てきません。また、「やらされ感」を抱き、改善活動に非協力的な態度をとることもあります。
 従業員に業務改善を自分事と思ってもらい、関わる人々の目標を統一する努力を継続しましょう。トップが業務改善の意義や実行への強い意志を示すのはもちろん、業務改善を社内プロジェクトとし、社内コミュニケーションを強化することも有効です。

2 「合理的」に進めない

業務の合理化、効率化を目指して行う業務改善ですが、改善活動そのものを合理的に進めようとすると反発が起こりがちです。
 現場では、「問題の合理的な解決策は分かっているが実行できていない」ということも少なくないでしょう。その場合、必ず実行をはばむ何らかの理由があります。
 働いている一人ひとりに寄り添い、心を通わせることで、理由を洗い出していきましょう。

3 業務改善についてポジティブに考えてもらう

経営層から見れば良いことずくめに見える業務改善でも、現場ではたらく人からは、ネガティブな思いによって「できない」「無理だ」と決めつける否定的な声が出ることも少なくありません。

業務プロセスが変わることに対するネガティブな感情(例)

・仕事を取られて自分の存在価値がなくなってしまうのではないか
・面倒なことが増えて忙しくなるのではないか

また、以前に改善しようとして うまくいかなかった という過去の記憶や、それにより大変な思いをしたというトラウマが本人たちの中に根強く残っていることもあるでしょう。
 いずれも、頭ごなしに否定するのではなく、裏にある心理を知り、その不安を取り除いていくことで、納得まで持っていくことが大切です。
 それでも、抵抗感や不安が非常に強い場合は、いきなりプロセスを大きく変えることは見送り、小さなことから変更していくなど、状況に合わせ、できるところから少しずつ進めましょう。
 「やることは少し変わったけれど自分の存在価値は失われなかった」「作業が楽になった」、といった安心感、成功体験を持ってもらうことが、その後の業務改善をポジティブにとらえてもらうために大切な一歩となります。

 

自社に合った方法で生産性向上を目指そう

 業務改善にマニュアルはありません。自社の抱えた課題に対しての最適なアプローチは、業務の自動化、廃止、削減、標準化、外部委託など、社内外の状況にあわせてまったく異なります。
 最初から方法を決めて改善活動を行うのではなく、業務にかかわる従業員一人ひとりと向き合いながら、無理のない範囲から着手していくとよいでしょう。

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