経営の見える化

 見える化とは、その言葉通りに解釈すれば、それまで見えなかった、あるいは見えにくかった情報を誰が見ても分かるようにすることです。

 中小企業では、経営陣と社員、あるいは社員間の関係が密接であり、つねに誰が何をしているか様子をうかがうことができるため、すでに相互理解ができている、つまり見える化ができていると考えがちです。

 しかし、実際には、経営者から社員に対してビジョンや方針が十分に伝わっていないことは多いものです。

 ビジョンや方針は社長の頭の中だけにあり、社員は指示に従うだけ、というケースもあるでしょう。

 また、社員同士も自分の目先の業務遂行に注力するあまり、全社の動向やぼかのメンバーの様子に関心を寄せる余裕がないという事態もみられます。

 このような状況を解決するために、情報システムを使って積極的に情報を公開している会社もあります。

 しかし、単純にシステムを導入するだけでは、「見ようと思えばいつでも見られる」との安心感がアダになり、逆に以前よりも状況の認識や問題の発見が遅れることもあり得るのです。

 

見える化と可視化

 見える化の本当の意味を考えるために、見える化と いわゆる「経営の可視化」との比較をしてみましょう。

 経営の可視化とは、会社にとって都合のよいこと悪いことの区別なく、すべての情報をオープンにして誰もが目にすることができる状態にしておくことです。

 そのおもな目的は、情報を公開することそのものにあると認識されていることが多いようです。

 一方、見える化の目的は、あくまで「経営上の問題を解決する」ことにあります。

 見える化された指標は、経営者と全社員が一丸となって問題解決していくための共通の指針やモノサシにならなければなりません。

 また、可視化は、できるだけ多くの情報を公開することに主眼が置かれているため、「手の内は全部明かすから見たい人は勝手に見てね」というのが基本的なスタンスです。

 これに対し、見える化では、情報を相手に確実に理解してもらうために、公開すべき情報の吟味、分かりやすい見せ方の工夫などがなされていなければなりません。

 つまり、ガラス張り化が会社から社員に対する一方的な働きかけの側面が強いのに対して、見える化では、問題解決という共通の目的に向かった相互理解が要求されるのです。

 また、見える化では、可視化だけでは見えにくい情報についても、問題解決に必要と思われれば、何とか工夫して見えるようにすることが求められます。

 見える化の本当の意義は、システムなどで情報を羅列的に見えるようにするだけではなく、共有すべき情報が体系的に整理されており、社員がその情報を自立的かつタイムリーに入手し、自らの問題解決に活用することにあるのです。

 

社長にとっての見える化

 社長にとっての見える化の最大の目的は、自らの意思決定の精度を上げることにあります。

 たとえば、パイロットが飛行機を操縦する際には、飛行に必要なさまざまな情報が計器によって正確に表示されていなければなりません。

 いかにベテランパイロットといえども、経験や勘だけに頼ることなく計器によって自機の状態をつねに把握しておくことが求められます。

 社長が会社を導いていくこともこれに似ています。

 見える化された指標は飛行機に設置された計器と同じです。

 最終的な意思決定は、社長自身が行うことには変わりありませんが、見える化された指標を活用することで飛行の安全性・効率性を高めることができます。

 社長はこれらの経営上の重要指標を見極めて、つねに把握しておかなければなりません。

 ところで会社のなかでもっとも見える化が進んでいない人は誰でしょうか。

 それは残念ながら社長自身であることが多いのです。

 社員たちは、程度の差こそあれ「うちの社長は何を考えているのかよく分からない」と感じているものです。

 これは、社長と社員の立場の違い、仕事の幅の違い、知識や経験の違いなどからくるもので、ある意味仕方のないことです。

 しかし、だからこそ、社長は全社の見える化推進にあたって、まずは自分自身の考えや想いを社員たちにできるだけ理解してもらう必要があるのです。

 社長が社員に対して見える化すべきもっとも重要なことは、「会社はどこへ向かっているのか」(経営理念など)、「そのために何をすべきか」(中期経営計画など)について、社長自身がどのように考え、どのような「想い」をもっているのかということです。

 社員にとって肝心のこの部分がよく分からないと、どのように見える化を行っていけばよいのかが分かりませんし、見える化実現のためのやる気もわいてきません。

 

見える化実現によるメリット

 経営の見える化は、社長だけではなく、一般社員も含めた会社全体に大きなメリットをもたらします。

 おもなメリットを整理すると、次のようになります。

1 ビジョンや経営戦略に対する社員の理解が深まる

 会社全体のビジョンや経営戦略について明確化し、それを社員にきちんと提示できている会社は多くありません。

 また、仮にそれができていたとしても、社員がそれを自分のものとして積極的に理解しようとする動機付けができておらず、結果として浸透していないといったこともあるでしょう。

 見える化が実現すれば、会社全体の姿がつねに共有され、社員の経営参画意識も高まるため、ビジョンや経営戦略への理解が深まります。

 また、採用時に会社が必要とする人材を伝えやすくなるため、それに共感できる人材を獲得しやすいというメリットもあります。

2 ビジョン、戦略、戦術、運営に一貫性をもたせることができる

 見える化によって、全社員が共通の判断基準・行動基準をもつことで、ビジョンを戦略、戦術、運営のレベルまで正しくブレイクダウンすることが可能になります。

 経営幹部から一般社員まで、それぞれの立場に応じて、「自分は何を目標とすべきか」、「そのために何をすべきか」が明らかにになり、一貫性をもった取り組みが可能になるのです。

3 一枚岩の組織をつくることができる

 見える化によって、ビジョンや戦略を社員が共有することで、全員の力で何とかしてそれを達成したいという一体感が生まれます。

 自分自身の目標達成はもちろんのこと、ほかの部門やメンバーの目標も共有することで、未達部門や未達メンバーのフォローも積極的に行おうとする姿勢も期待できるでしょう。

 私たちは人の頭の中をのぞくことはできません。したがって、相手が何を考えているのかは、その人の言動から推測する以外ありません。

 しかし、同じ職場で働く人間として、少なくとも、仕事に関して相手がどのように感じているかはできるだけ深く知っておきたいところです。

 相互理解が進んでいない集団では全社一丸となった取り組みなど期待できません。

4 現場の変化に即応したスピーディーな意思決定をおこなうことができる

 社長は、定期的な会議や報告書などによって会社の状況を把握していることが普通です。

 しかし、そこで入手しているのは「売上・利益」などのすでに結果として現れている業績情報が中心であり、たとえば、「取引先の満足度低下」などの経営悪化の予兆ともいえる情報は見過ごされがちです。

 見える化によって、各部門の業務内容や課題に応じた指標をあらかじめ設定し、それが社長のもとに集約されていれば、社長はその変化に応じて問題が深刻化する前にスピーディーな意思決定を行うことができます。

5 個人のノウハウが組織のノウハウとして蓄積される

 社員は、日々の業務を通じてさまざまなノウハウを獲得していきます。

 そして、通常そのノウハウは個人に蓄積されていくだけで、部門全体には十分にフィードバックされません。

 ごく基本的な業務の段取りやよくあるクレーム対応などについては、マニュアル化されていることもありますが、マニュアル化は大変手間がかかる業務です。

 また、現場は日々変化していますから、1年前のマニュアルはもう使えないということもあります。

 見える化によって、全社員の日々の活動内容を共有することによって、日報などの報告書自体を組織のノウハウとしてマニュアル化し、さらに日々更新していくことが可能になります。
  
6 より多面的な視点でのトラブル回避が可能になる

 業務のなかで問題が生じた場合、部下は上司にそのことを報告します。

 しかし、部下自身は、「この程度は問題ない」と認識していても、上司の感覚では「これはまずい」と感じることはよくあります。

 また、部下はできるだけ悪い報告はしたくないと考えていることもあるので、このギャップは起こって当然なのです。

 見える化によって、活動内容のポイントが確実に上司に伝わるようになれば、上司はトラブルの予兆を感じ取って未然に手を打つことができます。

 さらに、部門を超えた情報共有を行うことで、たとえば、営業マンの日報を読んだ経理部長が、「この会社の信用状況は大丈夫か」といった視点での指摘を行うことも可能になります。

7 内部統制・コンプライアンスが強化される

 見える化とは、「やるべきこと」「今やっていること」を明らかにすると同時に、「やってはいけないこと」を明らかにすることでもあります。

 明らかに法令に反することをやってはいけないのは当然ですが、白か黒か個々の社員レベルでは判断しにくいグレーゾーンもあります。

 また、それぞれの会社の経営方針によって、「法令違反ではないが、自社ではこのようなことはやってはいけない」ということもたくさんあるでしょう。

 会社としては、この部分に関するスタンスをはっきりさせておくことも重要でしょう。

 たとえば、自社の経営理念に反するような行動は許されるはずがありません。

 見える化によって、「自社としてやってはいけないこと」と社員が実際に「今やっていること」を明らかにすることによって、内部統制・コンプライアンスの強化につながります。

8 公正・公平な評価につながる

 多くの会社では、成果主義の人事考課制度が導入されており、評価項目として受注額や売上高など最終的な成果指標が取り入れられています。これらの指標は、客観的であり合理的なように思えますが、成果指標による評価だけでは、社員の地道な努力や他者への貢献など見えにくい部分は考慮されません。

 営業部門などにおいては、顧客に恵まれたかどうかの「運」に左右される部分も大きいでしょう。

 また、そもそも、間接部門などでは客観的な成果指標を設定しにくい場合もあります。

 その結果、成果主義の導入を進めれば進めるほど、社員の不満が高まることもあります。

 見える化によって、あらかじめ「何をもって成果とするか」を明らかにしておき、最終的な成果指標だけではなく、見えにくい部分も積極的に評価することで、評価に対する公正感・公平感が高まります。

9 取引先などの外部からの信頼を得られる

 見える化の範囲は社内だけにとどまりません。

 機密事項などの一部の情報を除いて、会社に今何が起こっているかを、できるだけ包み隠さず分かりやすく公開することで、外部からの信頼を得やすくなります。

 また、自社の見える化を進めて、外部からの信頼を得ることによって、外部からの情報も入手が容易になり、相互理解が深まるという効果も期待できます。

 中小規模の会社にとって、規模が小さいからすでに相互理解ができている、つまり、見える化ができていると考えがちですが、トップから社員に対してビジョンや方針が十分に伝わっていないことは多いものです。

 ビジョンや方針は社長の頭の中だけにあり、社員は指示に従うだけ、というケースもあるでしょう。

 また、社員同士も、自分の目先の業務遂行に注力することで、社内の動向やほかのメンバーの様子に関心を寄せる余裕がないという事態もみられます。

 見える化経営とガラス張り経営は異なると理解しましょう。

 経営のガラス張り化とは、会社にとって都合のよいこと悪いことの区別なく、すべての情報をオープンにして誰もが目にすることができる状態にしておくことで、受動的なスタンスが基本となります。
 一方、経営の見える化は、「経営上の問題を解決する」ことにあります。

 見える化された指標は、トップと全社員が一丸となって問題解決していくための共通の指針モノサシにならなければなりません。

 トップにとっての見える化の最大の目的は、自らの意思決定の精度を上げることにあります。

 会社のなかで最も見える化が進んでいない人は誰でしょうか。それはトップ自身であることが多いのです。

 社員たちは、程度の差こそあれ、「うちの社長は何を考えているのかよく分からない」と感じているものです。だからこそ、トップは社内の見える化推進にあたって、まずは自分自身の考えや想いを社員にできるだけ理解してもらう必要があります。

 トップが社員に対して見える化すべきもっとも重要なことは、「会社はどこへ向かっているのか(経営理念など)」「そのために何をすべきか(中期経営計画など)」について、社長自身がどのように考え、どのような「想い」をもっているのかを伝えることです。

 社員にとってこの部分がよく分からないと、どのように見える化を行っていけばよいのかが分かりませんし、見える化実現のためのモチベーションもわいてきません。

 見える化の本当の意義は、「共有すべき情報が体系的に整理されており、社員がその情報を自立的かつタイムリーに入手し、自らの問題解決に活用すること」にあります。

 このように、見える化とは大変広い意味であるため、見える化への取り組みや定義は企業によってさまざまです。

 

見える化へのステップ

 見える化実現のためには何から始めればよいのでしょうか。

第一ステップ 「ビジョン」・「戦略」・「ルール」の見える化

 社長が社員に対して「ことあるごとに目標や組織のあり方を伝えている」つもりでいても、社員によって受け止め方が違っていたり、それが会社のビジョンに基づくものであると理解されていないようでは、見える化 されているとはいえません。

 見える化において、重要なのは、「めざすべきビジョンが示され、ビジョン実現のための戦略・ルールが共有できていること」にあります。

 スポーツ同様、経営においても同じルールがあってこそ、めざすべき目標に向かって何をすべきかが伝わるようになるのです。

「ビジョンやルールの見える化」のためのおもな要件

・会社のあるべき姿、経営ビジョンなどが明文化されている

・社員の行動指針があり、会社として「やるべきこと」「やってはいけないこと」が示されている

・ビジョンに基づいた中期計画、年度計画が策定され、かつ公開されている

・3年先の自社の中期目標について、その骨子部分は全社員が深く理解している

・社長は少なくとも月に1回は自分の言葉で社員にビジョンや戦略について語っている

・経営幹部陣はビジョンや戦略について社長とほぼ同レベルで理解している

第二ステップ 「問題」と「課題」の見える化

 見える化の次のステップは、現在自社に起こっている「問題」を把握したうえで、「では何をすべきか」という「課題」が明らかになっている段階です。

 活力ある企業体であるためには、「問題」(あるべき姿と現実のギャップ)の把握と「課題」(ギャップ解消のための施策)の設定を全社員が自立的に行っていく必要があります。たとえば、自社商品の既存顧客からの注文が減少している場合、「既存顧客への営業強化」「新規顧客の開拓」「新商品の開発」などのさまざまな課題が考えられます。

 また、問題をさらに掘り下げると「社員のモチベーション向上」などにも力を入れる必要があるかもしれません。

これらに優先順位をつけ、特定の課題に絞り込んだり、複数の課題を組み合わせたりして、「今何をするべきか」を明らかにするのが見える化の第二ステップです。

 なお、問題には「誰の目にも見えやすい情報」だけではなく、「注意しなければ見えにくい情報」、さらには「見えないように隠されている情報」などもあります。

 解決すべき問題を漏れなく取り上げることが必要です。

問題と課題の見える化」のためのおもな要件

・社長は全社の状態把握のために必要なさまざまな経営指標を入手し、経営判断に活用している

・全社や各部門にとって何が問題かについての定義が明らかになっている

・問題が起こったときには要因分析などで再発防止策を徹底している

・社長、経営幹部、部門長など役職に応じた裁量範囲が明文化されている

・部門目標、チーム目標、個人目標が明確になっており、全メンバーが共有している

・部門長は他部門の業績状況を把握し、必要に応じて提言を行っている

第三ステップ 「進捗管理」の見える化

 見える化の第三ステップは、第二ステップで設定した「今すべきこと」について、実際にどの程度取り組みが進んでいるかを把握し、必要に応じて新たな手が打てるようにすること、つまり、進捗管理ができている状態です。

 たとえば、「既存顧客への営業強化」というテーマに対しては、実際にどのような取り組みを行っていくのか、また、どのような状態になったら目標を達成したことになるのかについて明確にします。

 具体的に営業マンの訪問回数や最終的な注文額などの管理指標を設定し進捗を管理していくのです。

「進捗状況の見える化」のためのおもな要件

・ビジョン・戦略に基づく重点分野について、具体的な管理指標があり進捗管理されている

・数値計画の進捗状況は少なくとも週次単位で集計され、幹部陣で共有されている

・経営会議、部門会議など会議体系が整理されており、適切に運用されている

・報告・連絡・相談の基準が明確になっており、適切に運用されている

・部門長は、メンバーの定期報告から、行動結果だけではなくプロセスを読み取っている

・メンバー全員のスケジュールが共有されている

 中小企業が限られた資金や人員の中で、着実に業績を上げるためには、効率的に業務を遂行することが不可欠です。

 しかし、現実にはさまざまな理由で効率的とはいえない業務が発生します。 

 共通する原因の一つとして、「誰が」「何を」「どのようにして」業務を行っているのかを、当事者以外が関知していないことが考えられます。

 企業内に非効率な業務が存在していても、ほかの社員にそれらの問題が「見えていない」状態では、その非効率性はいつまでも改善できません。

 業務の効率化は、それらの問題を見える化し、認識を共有することから始まります。

 見える化は社内に大きなメリットをもたらします。

 組織は、全員が同じ考え・方向(目標、目的)に向かって進むことで大きな効果を発揮します。

 組織が烏合の衆であっては、せっかくの組織が意味を成しません。そのためにも、組織(経営)の見える化を推進してください。

 事業経営における業務の「見える化」は業務改革に繋がるもので、これまで社員が把握できていなかったことを把握できるようにすること。あるいは、一部の社員のみが把握していたことについて情報の共有を図ることです。
 限られた資金や人員の中で着実に業績を上げるためには、効率的に業務を遂行する全員参加型経営が不可欠となります。

 しかし、さまざまな理由で効率的とはいえない業務が発生しているのが実態です。

 業務の非効率を招く要因として、業務の手順がなく、過去のままになっていることが考えられます。 以前から慣例的に行われてきた業務が、時代とともに技術が進歩し、あるいは環境が変化することによって、いつの間にか非効率なものとなっていることがある。

 

可視(見える)化のための推進体制

1 経営者の積極的な関与

 業務フローの可視化を推進するには、まず経営者の意思表示が必要です。

 可視化は、複数の部署にまたがる協力が不可欠であり、部署間の調整も必要になります。

経営者が号令をかけるだけでなく、可視化の実行に積極的に関与することが重要です。
   
2 可視化推進チームの整備

 業務フローの可視化は、複数の部署がかかわる作業ですので、それぞれの部署から担当者を選任して横断的な「推進チーム」を結成します。

 例えば、卸売業であれば、販売部門、出荷部門、経理部門、システム部門から全社的な視点でプロジェクトを進めることのできる人材を登用します。

 統括部や管理部といった全体の業務フローを把握している部署が既にある場合には、その部署を活用してもよいでしょう。 

また、税理士や公認会計士など、社外の専門家が可視化推進チームに参加することは有益です。

 業務の可視化の最終目的は業務マニュアルの作成となります。

 手順は、業務の棚卸(洗い出し)⇒業務(役割)分担表の作成の作成⇒問題点や改善策を見つける⇒業務改善に着手⇒業務ごとのフローチャート作成⇒業務の可視化(標準化)⇒業務マニュアルの作成

 各部署が情報を抱え込んで部署間で情報が共有されていないと、二度手間が発生したり、トラブルの発生時に適切な対応ができない、などの問題を引き起こす場合がある。
 暇を持て余している社員がいる一方で、過剰な業務量を抱えている社員がいると、業務の無駄や無理が生じる。

 ある業務を特定の社員だけが理解している状態だと、退職や休職などによってその社員が欠けた際に業務進行が滞ることがある。

 これらの事柄に共通する原因の1つとして、「誰が」「何を」「どのようにして」業務を行っているのかを当事者以外が関知していないことが考えられます。

 社内に非効率な業務が存在していても、ほかの社員にそれらの問題が「見えていない」状態では、その非効率性はいつまでも改善できません。

 業務の効率化は、それらの問題を可視化し、認識を共有することから始まります。

 

業務フロー(流れ)の見える化は緊急課題

 見える化を実現することは、社員の経営参画意識の向上、ビジョンや経営戦略への理解を深め、採用時に会社が必要とする人材を伝えやすくなるため、それに共感できる人材を獲得しやすくなります。 

 見える化により、ビジョンや戦略を社員が共有することで、全員の力で何とかしてそれを達成したいという一体感を育むためです。

 自分自身の目標達成、ほかの部門やメンバーの目標も共有することで、部門や未達メンバーのフォローも積極的に行おうとする組織人としての姿勢を確立することです。

 ほかの部署がどのような業務を行っているかが見えるようになり、その結果、必要な情報を持っている部署がどこであるかが分かるようになり、企業内の情報共有を促進する効果が期待できます。
 自社にとって、基幹となっている業務とそうではない補完的な業務の区別が分かるようになります。

 必要以上に処理時間がかかっている業務があった場合、その部署や担当者の業務推進方法が非効率な状態になっている可能性があります。

 ボトルネックを発見して、適切な助言や指導を行うことで、効率性を向上させるきっかけを得ることができます。

 同じ指示あるいは類似した指示が複数の異なる人から届く業務フローになっていたり、持っている情報を次にどこに伝えるべきかというルールが確立されていないと、社内の連絡に混乱を来します。業務フローを可視化することにより、連絡ミスが起こりやすい業務を発見できます。

 これまで、ベテラン社員などが経験や勘といった属人的な能力に頼って進めていた業務が、ほかの社員にも見えるようになり、組織として業務の手順を文書化(マニュアル)することができます。

 トップが入手しているのは、「売上・利益」などのすでに結果として現れている業績情報が中心となり、「取引先の満足度低下(不満、苦情)」などの経営悪化の予兆ともいえる情報の見過ごしを防ぎ、問題が深刻化する前にスピーディーな対応を行うためです。業務フローを可視化することにより、連絡ミスが起こりやすい業務を発見できるようになります。

 社員は、日々の業務を通じてさまざまなノウハウを獲得していきますが、そのノウハウは社員個々に蓄積されていくだけで、組織には十分にフィードバックされません。全社員の日々の活動内容(日報)を共有することで、報告書自体を組織のノウハウとしてマニュアル化(日々更新)していきます。

 多くの会社で成果主義の人事考課制度が導入されているが、成果指標による評価だけでは、社員の地道な努力や他者への貢献など見えにくい部分は考慮されません。

 営業部門などでは、顧客に恵まれたなどの「運」に左右される部分もあったり、間接部門などでは客観的な成果指標を設定しにくい場合もあり、成果主義の導入を進めれば進めるほど社員の不満が高まる可能性もあります。

 あらかじめ「何をもって成果とするか」を明らかにし、最終的な成果指標だけではなく、見えにくい部分も積極的に評価することで、評価に対する公正感・公平感を持たせること。
 「やるべきこと」「今やっていること」「やってはいけないこと」を明らかにし、内部統制・コンプライアンスの強化を図ります。

 中小企業が限られた資金や人員の中で着実に業績を上げるためには、効率的に業務を遂行することが不可欠です。組織としてチームとして事業展開していくには、すべての部門が見えなければなりません。
 見えないことで、ムダ・ムラ・ムリが発生し、さまざまな問題が起こってきます。特に、コンプライアンスに関する問題が発生する原因は場当たり的な事業運営にあります。

 問題が発生するたびに あたふた とするばかりで、その場しのぎの解決に走ってしまいます。しかし、現実にはさまざまな理由で効率的とはいえない業務が発生します。

 以前から慣例的に行われてきた業務が、時代とともに技術が進歩し、あるいは環境が変化することによって、いつの間にか非効率なものとなっていることがある。

 各部署が情報を抱え込んで部署間で情報が共有されていないと、二度手間が発生する、トラブルの発生時に適切な対応ができない などの問題を引き起こす場合がある。

 暇を持て余している社員がいる一方で、過剰な業務量を抱えている社員がいると、業務の無駄や無理が生じる。

 ある業務を特定の社員だけが理解している状態だと、退職や休職などによってその社員が欠けた際に業務進行が滞ることがある。
 これらに共通する原因の1つとして、「誰が」「何を」「どのようにして」業務を行っているのかを 当事者以外が関知していないことが考えられます。社内に非効率な業務が存在していても、ほかの社員にそれらの問題が「見えていない」状態では、その非効率性はいつまでも改善できません。

 業務の効率化は、それらの問題を可視化し、認識を共有することから始まります。
 非効率な業務や適正な状態から外れている業務は、あるべき「基準」との乖離が生じている業務であるといえます。従って、「本来、業務がこのようになされるべき」という「基準」を明確に持っていなければ、どのような状況が非効率あるいは異常であるのか、また、現状があるべき状態と比べてどの程度の乖離があるのかを認識することができません。
 業務の可視化は、本来あるべき基準を明確にするという効果を持っており、このことからも組織化に欠かせない改善策となります。

可視化の基本となるのが社内の意思疎通を強化することです。

 可視化によって明確になった基準は、「手順書」「ガイドライン」「ルール」などの名称で呼ばれます。

 こうした基準を策定することで、業務を基準に沿って進めることができ、業務の標準化やそれに伴う効率・正確性の向上が図れます。

ここで考えていただきたいのは、どんなに可視化を図っても、組織の根底にあるのは「理念」「ビジョン」であり、ES(従業員満足)」です。

 ・トップと幹部、幹部と社員、トップと社員のコミュニケーション不足

 ・社員の組織人としての基本動作の習得不足

 ・顧客満足より従業員満足

 

 今日では、コンピュータという便利な道具がありますので、売上データや仕入データなどが数字でプリントアウトされてきます。それを表にするだけでなく、グラフにして視覚的にわかりやすいように表示しましょう。この時、ただグラフ化するだけでなく、その課題や対応策についても発想しやすいように表現方法を工夫します。それには、顧客別や製品別、前月や過去の同月比との対比といった具合に、さまざまな視点からデータを見たり比べたりできることが必要です。何が起こっているのか、どうすればもっとよくなるのか、そうした発想につながるようなデータ活用を工夫しましょう。

 

業務成果や課題については社内に掲示し、全員が理解できるようにしているか

 売上や生産数量、利益率、付加価値率、不良率など業務の成果に関する情報は、事務所や作業場、バックヤードなど、外部の人には目に触れない所に掲示しましょう。重要な情報ということで経営者や管理者が業績にかかわるデータを隠していると、従業員の協力は得られません。データを提示して企業と一体になって頑張る、そして、頑張ると各自にそれが報いられるという励みが必要です。また、企業や職場の課題についてもわかりやすく表現して掲示しましょう。
 このような掲示物は必要なタイミングで随時、また定期的に内容を更新しましょう。いつも同じ物では従業員は注目しなくなります。

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