利益計画

 売上がいくらあっても、利益がなければ経営は成り立ちません。利益計画は大変重要です。 

 しかし、「3年後、5年後には利益はこのくらいになっている」というような利益の予想だけを立てても意味がありません。

 利益は段階によっていくつかの種類に分かれます。

 売上から原価を引いたものが「売上総利益」、または「粗利益」と言います。

  売上-売上原価=売上総利益

 売上総利益から「販売費および一般管理費」を引いたものを営業利益といいます。

  売上総利益-販売費および一般管理費=営業利益

 販売費および一般管理費は、販売費と一般管理費に分かれます。

 販売費は広告宣伝費など販売に掛かる費用で、一般管理費はバックオフィス機能など、事業活動を行う上で一般管理に掛かる費用全般をいいます。

 営業利益は「事業活動で生み出した利益」という意味を持っていますので、ここが赤字ですと事業活動で利益を生み出していないともいえます。

 さらに、営業利益から営業外収益をプラスして、営業外費用をマイナスしたものが「経常利益」です。

  営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益

 営業外収益・営業外費用は、事業活動以外で経常的に発生する収益・費用です。

 例えば、長期に銀行借入をしている企業であれば、支払利息が営業外費用の代表的なものです。

 経常利益から特別利益と特別損失をプラスマイナスしたものが「税引き前当期純利益」となります。

  経常利益+特別利益-特別損失=税引き前当期純利益

 特別利益・特別損失は「経常的ではない特別な理由で起きたもの」です。

 例えば、固定資産を売却した時の売却益・売却損などがそれにあたります。

 税引き前当期純利益から税金を引いたものが当期純利益となります。 

  税引き前当期純利益-税金=当期純利益

 事業計画書の利益計画は、詳細に作るのであれば「当期純利益」までを作成するのがよいでしょう。 

 そこまで詳細に作成しない場合でも、事業活動で利益が出ているかどうかを判断できる「営業利益」までは最低限作成するべきです。

 利益計画は「売上計画」「原価計画」「人員計画」「設備計画」ができていないと作成できないことがわかります。

 販売費および一般管理費も、「売上に関わらず発生する固定費」と「売上に応じて発生する変動費」に分かれます。売上計画をしっかりと作成していないと「経費の計画=利益計画」が作成できません。

 なお、起業時に詳細の試算が難しい場合には、同じ業界の平均的な売上原価率(売上原価÷売上)の指標を参考にするのも一つの方法です。日本政策金融公庫のHP小企業の経営指標調査などで確認ができます。

利益計画の6ステップ

 商品の収益性を考えるため、利益を因数分解してみます。

  利益=売上数量×1個当たり粗利益-諸経費

 さらに、各要素は分けて考えることができます。売上数量は、市場の大きさとシェアにより算出できるでしょう。粗利益は、製品価格から製造原価を引けば算出できます。諸経費は、さまざまな費用項目の和です。これにより、次のように計算式を書き換えることができます。

  利益=市場規模×シェア×(販売価格―製造原価)−(費用項目A+費用項目B・・・)

 利益を増やしたいという経営課題に対して、誰が何をするのか、各部署への具体的な指示ができなければなりません。そのためには、利益の実態を細かい要素に分け、アクションにつなげることが必要です。利益をどのように分解していくのか、さまざまな方法がありますので、組織や施策に応じて考えてみましょう。

 

自社の粗利益率の現在水準と傾向を把握しているか

粗利益は売上の質をみる指標 定期的にチェックせよ

 

 粗利益(売上総利益)は、損益計算書で最初に計算される利益です。

粗利益は売上高から売上原価を差し引いて計算します。

商業を営む企業の売上原価は販売された商品の仕入原価のことで、期首商品棚卸高に当期商品仕入高を加え、期末商品棚卸高を差し引くことによって計算されます。また、製造業を営む企業の売上原価は、販売された製品の製造原価のことで、期首製品棚卸高に当期製品製造原価を加え、期末製品棚卸高を差し引くことによって計算されます。製造業の場合には、商業の場合と違って物づくりの過程がありますので、この当期製品製造原価の中には物づくりのための材料費や労務費(人件費)、そして外注加工費や減価償却費などの経費が含まれます。

 粗利益は、その企業の商品(製品)の売価と仕入値(製造原価)との差額として把握されますので、その企業の販売に対する仕入効率や製造効率を反映します。また、粗利益率は、売上高に占める粗利益の比率(粗利益÷売上高)として示されます。粗利益は、自社で販売する商品や製造する製品の売上の質、すなわち利益が十分に含まれているかどうかを見る指標として重要ですので、商・製品別や得意先別に定期的にチェックしていきます。

 

 

商品別の粗利益率や加工高比率の把握をし、低下している場合にはその原因を追究しているか

 企業では、粗利益や加工高を拡大するために売上高の増加を図ろうとします。しかし、売上高の増加がそのまま粗利益や加工高の増加につながるわけではありません。粗利益率の低い商品・製品ばかりが売れると、かえって企業全体の粗利益が低下してしまう場合さえあるからです。従って、まず粗利益率ないし加工高比率を商品・製品ごとに計算してグループ化します。粗利益率の高い商品・製品グループについては、既存得意先の深耕や新規得意先の開拓など売上高の拡大策を検討します。一方、粗利益率の低い商品・製品グループについては、製品・商品別や得意先別に原因分析をして改善策を講じることが必要です。

 

 

粗利益または加工高に対する人件費の割合を把握しているか

 粗利益または加工高に占める人件費の割合を「労働分配率」といいます。人件費の増加率が粗利益や加工高の増加率を上回ると、労働分配率は上昇し、収益性の悪化を招きます。このため、健全経営を行うためには、粗利益や加工高を高めると当時に、人件費を管理することにより労働分配率を一定の比率内に収めていくことが必要です。一般に、労働分配率が50%を超えると、経営体質がかなり劣っていると評価されます。業種や企業規模を考慮して、各企業にとって適正と考える労働分配率を設定し、人件費よりも粗利益や加工高の上昇率が上回るように人経費や従業員構成を管理していくことが重要です。

 

 

利益計画に基づく予算と実績のチェックを定期的に行っているか

 損益分岐点を活用して目標利益から売上目標を算定したならば、まず、それに基づき利益計画を作成します。そして、次に、目標利益達成のための詳細な予算を作成していきます。この予算に沿うかたちで、予算と実績を定期的にチェックしていくことになります。予算は月次単位で作成し、この月次予算と月次の実績値とを比較して管理を行っていきます。現在、安価な中小企業向けの会計ソフトも普及しており、通常、予算管理機能も備えているため、日々の実績値を集計するだけでなく、費目ごとに月次予算を設定して月次レベルで管理することによって、利益計画と予算管理をより実効性のあるものにすることができます。

 

 

当初予算の見直しや修正を適時に行っているか

 予算は、月次レベルで実績と比較して管理していくことが重要ですが、同時に、予算は随時に見直しを図ることも大切です。企業を取り巻く環境は常に変化しており、企業内外の環境も常に一定であるわけではありません。予算立案時に予測できなかった環境の変化が起きているならば、環境変化を踏まえた予算に修正しなければなりません。毎月の予算実績の比較分析と同時に、常に企業内外の環境変化に目配りをして、予算修正の必要性の有無を判断することが重要です。予算の上方修正により企業の逸失利益を防ぐとともに、下方修正により実現不可能な計画を回避しなければなりません。

 

 

設定した売上高目標と実績とを対比して、その差異の原因を追究しているか

 企業の業績は、前期実績と当期実績との比較、損益計画における計画と実績との比較の両面から分析できます。特に、企業を取り巻く内外の事業環境の変化をもとに立案した損益計画における計画と実績の比較は重要です。新年度の経過とともに、計画と実績の差額を把握し、その原因を分析して残りの期間での対応策を検討していきます。外部環境の原因分析としては、顧客や業界の動向、競争関係、法的規制の変化、新技術・新商品の登場などの視点が考えられます。一方、内部環境の原因分析としては、営業体制、棚卸資産の購買体制、設備の稼働率、設備投資の金額やタイミングなどの視点が考えられます。

 

 

販売費や一般管理費について予算を立てて管理しているか

 販売費は、商品やサービスを販売するために必要となる費用で、販売担当者の人件費、旅費交通費、販売手数料、販売促進費、広告宣伝費、接待交際費などがあげられます。

一般管理費は、企業を運営するために必要となる費用で、総務や人事・経理担当者の人件費、光熱費、減価償却費、通信費などがあげられます。販売費や一般管理費は仕入原価や製造原価に比べて、管理が行き届かずつい膨らみがちになります。費目ごとに予算を設定して地道な進捗管理をするとともに、重点的に管理していく費目を選定して、予算実績管理に組み込んでいくことも必要です。

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