コンフリクトの影響とその効果

 「コンフリクトマネジメント」とは、組織内で意見の対立や口論が起きた場合に、放置せず積極的に問題解決を図ろうとする考え方や取り組みのことを指します。

 「コンフリクト」というとネガティブなイメージに捉えがちですが、組織内に生じる様々な意見や見解は、組織の活性化や新しい価値を創造することに繋がることがあるため、近年は積極的に活用しようとする動きがあります。

 あえて問題となっている話題に触れることで、意見の対立を招き、「問題解決のチャンス」と前向きに捉える企業も増えてきています。

 

「コンフリクト」はなぜ発生するのか

 企業活動を行う上で「コンフリクト」は避けては通れません。なぜ「コンフリクト」が発生してしまうのでしょうか。主に次のような場合が考えられます。

1 条件の対立

 主な要因としては、「上司と部下といった上下関係における対立」「仕事内容の差異」などが挙げられます。上司と部下の対立は、仕事に対してお互いが求める目標や条件が異なるため、意見が対立してしまうのです。

 「コストと品質」などが代表的な争点です。

2 認知の対立

 認知の対立とは、思考や価値観の違いが原因となるコンフリクトをいいます。同じ仕事をしていても、人によって仕事に対する考え方は様々です。その結果、価値観や解釈の違いから、思わぬところで対立が生じる場合があります。

3 感情の対立

 感情の対立は人の気持ちが原因となるため、解決することが最も難しい問題です。原因によっては、お互いが傷つき、根深くなりやすいので、慎重に解決する必要があります。心情的な衝突が主な原因です。

 上記のような対立が発生した場合に「コンフリクトマネジメント」が必要となります。「コンフリクトマネジメント」で速やかに問題の解決を図り、職場の風通しを良好にし、相互理解と結束を深めることが最大の目的です。

 

組織における対立・軋轢 コンフリクト

 コンフリクトとは、相反する意見から個人や集団の間に生じる葛藤や対立、そして紛争など、互いに譲らない緊張状態が生じることを指しています。

 コンフリクトは、組織において、個人間・部署・部門間、上司部下など様々なレベルで発生し、いかなる組織においてもコンフリクトは避けられないと言えます。
 しかし、コンフリクトは、必ずしもマイナスであるとは言えません。互いに議論し、考え、意見交換することで、相手への理解が深まるほか、競争することで意欲が高まり、その過程において当初のアイデアが発展する、または、新たな課題を発見する、さらには新たな視点から新しいアイデアが生まれるなども珍しくありません。
 コンフリクトのマイナス点には、「メンバーが不快感を味わう」「非効率的なコミュニケーションを図らねばならない」「情報が正しく伝達されず、歪められる可能性がある」などが考えられます。いずれにせよ根本的な原因となっている「意見の対立」を解消することが唯一の解決策であると言えます。

 

コンフリクトの発生要因

 企業・組織では、利害調整や意見交換が常に行われているため、顕在化したコンフリクトだけでなく、潜在的なコンフリクトも同時に存在しています。コンフリクトを予防するには、潜在的なコンフリクトを理解して、発生要因をコントロールする配慮が必要です。

 コンフリクト発生の主な要因は以下の通りです。

資源の希少性

 組織が活用できる資源(人・モノ・資金・情報)には限りがあり、必ずしも十分であるとは言えないため、その配分をめぐり互いに競合することで対立が生じる。

自立性の確保

 それぞれが自立を求めることで相手を統制し、自己の管理下に置きたいと意図することで対立が生じる。

意図関心の分岐

 組織内で共通の目標を確立するに至らず、協力関係のコンセンサスが成り立たないことから各個人が自身の判断で行動するに至り、結果、対立が生じる。

 コンフリクトの予防には、原因となる発生要因をあらかじめコントロールすることが大切です。また、企業・組織の業務プロセスに部署・部門間をまたぐ協働体制を設計し、集団疑集性(集団の団結力)を高めることで予防・改善を図ることができます。同時に、共通となる目標設定を行い、部門間のコミュニケーション頻度を高めていくなどの施策を行うことが大切です。

 

「コンフリクト」が発生 あなたならどうする

 あなた自身が、もしくは、あなたが働く職場で「コンフリクト」が発生したと仮定します。対立する双方の行動は大きく分けると下記のようになります。あなたならどんな行動を起こすでしょうか。

(1)競争

 双方がお互いの利得にこだわり、競い合う状況です。お互いに意見を譲らず、相手を打ち負かそうとします。

(2)妥協

 自分も意見を譲りますが、相手にも譲るよう求めます。双方、納得のいくところで折り合いをつけようとします。

(3)和解

 双方が譲歩し合って一旦問題を解決することです。相手との関係を今後も維持することを重視した考え方です。

(4)回避

 コンフリクトそのものを避け、問題に直面しないことをいいます。

(5)協調

 お互いの意見を否定することなく、自分と相手の利得がより大きくなる方法を一緒に見つけようと働きかけることをいいます。

 双方が前向きに捉え仕事に専念できるような解決策を目指すことが「コンフリクトマネジメント」です。後腐れなく、対立や衝突をポジティブに捉え、その後の成長や発展に繋げられるようにすることが大切です。

 

コンフリクトの理解と解決策

 コンフリクトは時に組織を分裂させる危険性を孕んでおり、迅速かつ適切な対応が必要になります。ハーバード・ビジネススクールのジェームズ・ウェアとルイス・バーンズは、個人間のコンフリクトに対処するためには、まず「状況をよく理解する」、そして、「状況そのものを変える」、または、「当事者の態度や対応を変える」などの対応が必要になるとしています。また、具体的な手段として1.交渉、2.抑制、3.建設的な対峙の3つを挙げています。

 コンフリクトに迅速かつ適切に対応するためには、コンフリクトそのものを深く理解する必要があり、その視点として、ジェームズ・ウェアとルイスバーンズは、現象面から本質的な問題点の把握までを以下の4点にまとめています。

1 コンフリクトが個人及び企業・組織に及ぼしている効果を見極める

 コンフリクトにはプラスの効果・マイナスの効果の双方が存在します。解決に向けた対処を行う前に、プラス効果・マイナス効果のどちらがより強く現れているかを分析し、対処方法や対処時期を見極める必要があります。

2 コンフリクトのパターンを把握する

 コンフリクトにはきっかけとなった行動が必ず存在します。そのきっかけに対し、どのような対応を示し、その後どのようにしてコンフリクトが深まったのかというパターンを把握することが大切です。パターンを把握できれば、コンフリクトの根本原因が少しずつ明確化し、対処の糸口が見えてくることが大半です。

3 実質的問題と感情的問題を理解する

 コンフリクトは多くの場合、実質的問題と感情的問題という2つの異なる問題から生じています。

 実質的問題は、経営方針や運営方針、実行手段、役割と職責などの事業運営で生じる意見の食い違いです。一方、感情的問題は、当事者同士が抱いている個人的な認識や感情(好き・嫌いなど)によるものです。企業・組織では、感情的問題を表面化しにくいため、実質的問題にすり替えコンフリクトが生じる場合があります。逆に、最初は実質的問題であったことが、不満が蓄積することで個人的感情に原因があると当事者が疑い始め、感情的問題に転換して解決が難しくなるケースもあります。

4 コンフリクトの根底にある要因を理解する

 コンフリクトが生じる要因は、外部要因と個人的要因の双方が考えられます。

 外部要因には、時間的制約、資源配分、予算制約、そして業務へのプレッシャーなどがあり、個人的要因には対抗意識、相性、仕事のスタイル、そしてストレスと許容範囲などがあります。

 コンフリクトの原因は必ずしもひとつではなく、複数の要因が複雑に絡み合っているケースが大半です。対立が深まるにつれ、当初の原因とは別の要因が主な原因となってしまうことも多々あります。

 

「コンフリクトマネジメント」の進め方

問題解決までのステップの一例

(1)相手を否定せず、尊重して話し合いを進める

 まず、初めにコンフリクトマネジメントにおいて「協調」が最も重要だということを認識しましょう。

 意見が対立した時に、相手を否定してしまうと関係は悪化する一方です。これでは前向きな解決には至りません。それに加え、相手を罵倒したり侮辱したりする行動が伴えば、その確執はますます深くなり、解決することができない可能性もあります。

 まずは、相手を尊重し、相手の話に耳を傾けることを忘れないようにしてください。

(2)双方の一致と相違を明確にする

 次に、双方から出た意見を比較し、「一致している部分は何か」「どのような相違があるのか」など、お互いの考え方を整理します。これにより、「コンフリクトマネジメント」の方向性や目的がはっきりします。

(3)コンフリクトの原因を見つける

 (2)の過程で一致する点と相違点を明確にしたら、次は原因を考えましょう。「何が原因で対立しているのか」「解決の難易度はどのくらいなのか」など、ヒアリングを交え、具体的な原因を探っていきます。

(4)双方があらゆる角度から客観的に原因について考える

 対立が起きている時はお互い感情的になっているため、冷静さを失いがちです。それにより視野も狭くなっている可能性もあります。

 「コンフリクトマネジメント」では、自分自身のことや原因について客観的に捉え、広い視野で物事を考える力が必要です。また、あらゆる角度から原因を見つめることで、スムーズな解決を図ります。

(5)お互いが納得のいく着地点を探し、協力して解決に取り組む

 双方が納得のいく着地点を探すことがポイントです。お互いにメリットが生じるような着地点が理想です。それを導き出したら、解決に向かって協力して取り組むよう促します。

 お互いにメリットが生じるような着地点が見つかれば、問題解決だけでなく利益も生まれます。また、ポジティブな認識を共有することは、仕事の質や人間関係の向上にも繋がります。

 

コンフリクトの有効活用

 コンフリクトは、迅速かつ適切に対応しなければ大きなトラブルに発展する可能性があり、看過できない重要な問題であると言えますが、コンフリクトが及ぼすプラス効果を上手くコントロールすることで、組織の効率化や活性化、そして生産性の向上につなげることができます。

 コンフリクトが及ぼすプラス効果を以下に示します。

緊張感による動機づけ

 コンフリクトは、企業・組織内に緊張を生み出すと言えます。適度な緊張感は社内に刺激をもたらし、行動を促す効果が期待できます。特に、営業職においては、競争環境が営業社員のモチベーション向上へとつながり、良質な結果を褒賞することで、モチベーション向上の正のスパイラル醸成につなげることもできます。逆に、コンフリクトが全くない場合、緊張感のない社内は気が緩み、業務ミスや対応モレにつながるなど、トラブルにつながる可能性があります。また、人によっては退屈さを感じるなど、早急離職につながる可能性を秘めていると言えます。

アイデアの創出

 コンフリクトにより、建設的な議論が繰り広げられることで、相手への理解が深まるほか、競争することで意識が高まり、その過程において当初のアイデアが発展する、または、新たな課題を発見する、さらには、新たな視点から新しいアイデアが生まれることがあります。組織内で考え方の異なる部署・部門や、立場が異なり別の視点で物事を見ることのできる組織メンバー間でなどで意見交換を行うと、新たな発見やアイデアを獲得できる可能性がより高まります。

組織変革の推進

 コンフリクトを非合理的な対立・軋轢と決め付けず、組織変革のチャンスと捉え議論を深めていくことで、より良い企業・組織づくりが可能となります。全てに合意があり、円滑に業務が遂行することが必ずしも良いとは限りません。時には立ち止まり、他の批評を真摯に受け止め、見直すことも大切です。

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