人の意見を聞く

参考

リーダーに必要な厳しさと度量 – 「帝王学の築き方」

自ら道を拓く覚悟を持つ

 幸福の科学大川隆法総裁が、リーダー的立場にある人たちへの戒めとして最初に挙げたものは「 自分の考え方や心構えで道を拓いていく自覚 」である。政府がばらまく補助金や、経済政策による外部環境の変化などに頼ろうとする思いを捨て、どんな天候下でも推進していくべき考え方を持たねばならないとした。

 円高や円安によって利益が出る場合もあれば、政府のインフラ投資によって一時的に需要が発生することもある。こうした追い風を待つような甘い姿勢は、多くの人の生活や将来を預かっている立場にある者には許されない。

 たとえ、現在順境にあったとしても「 今、成功しているものが、次の失敗の種になってくるものもある 」と心得て、常に心を引き締めるべきだと力説。また、若くて無名だった時代の原点を時折振り返って、他の人の苦労に思いを馳せる心を忘れてはならないと語った。

 

部下の意見にどこまで耳を傾けるべきか

 法話では、人材養成とコストの兼ね合い、人材の生かし方、投資に見合った成果を上げる厳しさ、トップに必要な言行一致の姿勢や自分の考えを組織に浸透させるコミュニケーションのあり方など、「帝王学」の要諦を具体的な事例を挙げつつ縦横無尽に説かれた。

 さらに、トップの大きな悩みとして「部下の意見をどこまで聞くべきか」という問題がある。人の意見を聞き過ぎれば「優柔不断で頼りない」とされ、まったく聞かなければ独裁者呼ばわりされてしまう。

 大川隆法総裁は、「 人の意見を聞くことも大事だし、聞いても考えを変えない部分も要る。両方を持っていなければならない 」として、これを上手に両立させることは、帝王学の中でも非常に重要で難しい部分だと述べた。

 では、どう両立させていくべきか。一つヒントを挙げるなら、一般的には、自分の考えに反する意見を言う人を遠ざけたくなるのが人情というもの。だが、名宰相や名君といわれる人は意見を受け入れる度量を持った人が多かった。

 総裁は、失敗したことに対する反省や、足りざるところを謙虚に見直す気持ちがあるから、そういうことができると、正しく人の意見を取り入れるための心がけを示した。

 既にリーダー的な立場にある人のみならず、リーダーを志す若い人にも深い示唆を与えてくれる考え方です。

 

経営者が日常的に現場に出向いて直に意見を聞く

 職場では、「売り上げが思ったほど伸びない」「部下の仕事にミスが多い」「顧客からのクレームが増え始めた」、といった困ったことが出てくる。

 会社は、常にこのようなさまざまな問題に取り囲まれています。

 経営者、管理者の仕事は、日々、将来に向けて、さまざまな問題を解決していくことです。

 問題があるというのは、企業が生きている証拠であるともいえます。

「自分の組織ではすべて順調に推移しているので、何も問題がない」、という社長、管理者がいれば、むしろ問題です。

 時代とともに、顧客の志向が変化してきているのに気付かず、従来通りのやり方を踏襲しているうちに、「いつの間にかお客の数が少なくなった」という事態に陥るかもしれません。

 顧客への提案がことごとく受注失敗となるのは、「ライバルとの大きな価格差」にあったことに気付いていなかった、という怖さを私たちはいつも抱えています。
 管理者以上の立場になると、ふだんの仕事のなかから問題を発見して素早く手を打っていかないと、会社の存続そのものが危うくなります。

 

職場、現状の点検

 社長、管理者自らが現場に出向き、自分自身の目で見て、点検するのが問題発見の基本となります。

 企業活動の最前線で起きている、不具合や問題点、担当者が困っていることなどから、問題を発見します。

 現場のちょっとした変化を見逃さず、部下の立場になって、その真意を「聴く」ことが肝要です。

 当初の目標・計画通りに業務が行われているか、基準・標準からの逸脱はないか、という観点で、自分が預かる職場の現状点検をするなかから、重要度・緊急性の高い問題があぶりだされます。

 社長、管理者自身が、本来あるべき「基準・標準」を頭に入れて、部下と一緒に現状を観て、それとのギャップを共有化するところから、問題が明らかになります。

 

経営者が日常的に現場に出向いて直に意見を聞く

「収益を生み出す現場」を知る

 工場、工事現場、店舗など、企業には、いわゆる現場と呼ばれる場所があります。厳密な定義ではありませんが、総務や人事などのバックオフィスではなく、生産活動を行ったり、顧客と直接接触する部署を指していたりすることが多いようです。言い換えれば、企業の収益を生み出す中心となっている部門ともいえそうです。
 小さな小売店や工場では、バックオフィスと現場が同じ場所か、すぐ近くにあって、そこでの状況は経営者にも比較的わかりやすいでしょうが、企業規模が大きくなればなるほど、経営者と現場との距離は離れていくことが多くなりがちです。

そうした現場の声が、本人から直接、あるいは他の従業員を通して経営者に届くような仕組みをつくることは重要です。しかし、それだけでは正確な情報を得ることはできないことがあります。整理整頓の状況など、実際に見なければわからないこともあります。また、従業員からはその人にとって不利な情報は伝わってきにくいですし、従業員が気づいていない重要な問題が隠れている可能性もあります。複数の従業員を介した情報は、なおさらそうした懸念が増大します。

 

経営者自ら現場を訪ねる

 そうした課題を解決するためには、経営者自身が自ら現場に出向き、工場や店舗の状態を確認したり、従業員や顧客の様子を観察したりすることが必要です。そこで働いている従業員に経営者のほうから働きかけ、現場での課題、改善してほしい点などについて率直な意見を求めることは、正確な意思決定の重要な材料となり、自社の生産性を高め、顧客とのトラブルを未然に防ぐことにもつながります。

 少なくとも、時々思いついたように訪問するのではなく、ある程度日常的に現場を回る習慣を経営者自身が身に付けるべきでしょう。

 

経営者は現状に甘んじることなく常に改善や変革を意識して行動する

変革を推進するリーダーシップ

 経営者には常に変革を推進するリーダーとしての役割を果たすことが求められます。その前提として、問題点を発見し、ビジョンを明確に定め、到達すべき目標を自ら設定し、そして、それを組織的に実現するために、経営者としてのリーダーシップを発揮することが求められるのです。例えば、企業の持つ製品やサービスには必ずライフサイクルがあります。従業員は自社の製品やサービスに愛着を持っていることが多いため、それが衰退期にあっても切り捨てようという提案はなかなか出てきません。もちろん、経営者も同様の愛着はあるでしょうが、思い切ったリーダーシップを発揮して古いものを捨て、新しいものを導入していかなければ、企業としての未来はないのです。
 組織の人間関係の分析からは、少人数の組織であっても、インフォーマル(非公式)な人間関係の善し悪しが組織の生産性に大きく影響することが知られています。経営者は社内の複雑な相互依存関係を考慮しながら、単にフォーマル(公式)な権力を及ぼすのではなく、インフォーマルな人間関係をうまく処理しながら、影響力を与える存在である必要があります。現状に甘んじることなく、日常的に変革を継続できることは重要ですが、すべての従業員が変革のニーズに気づき、積極的に協力してくれない限りは、経営者ひとりがいくら努力しても変革を継続させることは難しいのです。

 

組織としての一体感をつくり、自発性を導く

 組織を効率的に動かすのはマネジメントですが、それを引っ張るのはリーダーシップであることを肝に銘じ、決してマネジメントとリーダーシップを混同してはなりません。変革をマネジメントの手法で解決するために、フォーマルな権力を背景として強制的にコントロールしようとすると、短期的には改革が実現したように見えても、その場限りで少しずつもとに戻ってしまいます。変革として定着しないことが多いのです。
       大規模組織の上層部にいる人ほど、マネジメントよりもリーダーシップの発揮に多くの時間を割くといわれます。できるエグゼクティブは、ほとんどの時間を誰かと話して過ごしており、話題は自分の職能分野にとどまらないで、さまざまな分野に及び、そして、命令よりも、あれこれと質問を投げかけたりして、彼らと交流する人たちが知らず知らずに自ら気づき、自ら動き出す契機をつくり出すかたちで影響力を発揮しているものです。自ら「重要な」意思決定をすることはまれであって、むしろ、周囲の人々との絆を強めて、組織としての一体感をつくり出し、知らず知らずに影響を与えながら自然とリードしていく人材となっているのです。

 

経営者・幹部が研究開発、営業活動を率先垂範で行動する

人を動かすには、自ら動いて範を示す

 人を動かそうと思うのなら、経営者が自ら動いて範を示すことが肝要です。経営のパラダイムが大きく変化してきました。安くてよい物を提供できれば売れるという「供給指向」の市場から、顧客が求める物をタイムリーに提供していかないと売れない「需要指向」の市場に大きく転換しています。そして、経済のサービス化、ソフト化などといわれますが、付加価値の源泉がノウハウや売り方などのソフト的な部分に移ってきています。そこで、顧客満足度を高めるには末端に至るまで一人ひとりの従業員の行動の質を高める必要があります。顧客から信頼される存在にならなければ、継続的な取引、リピーターとしての信頼を勝ち取ることができません。そのため、最前線で顧客と直接対応する従業員には、自分で考え、自分から率先して動き、採算性を考える企業家的な能力を発揮してもらわなくてはならない場面が増えています。そこでは、幅広い職務領域をこなして、自律的に動いてくれる従業員であってほしいものです。このような人材は一朝一夕に育成できるものではありませんし、経営者や管理者に意識的に育てようとする意気込みがなければ育てることも難しいのです。経営者にも管理者にも、常に率先して範を示す行動が求められているということです。
 人を動かそうとするなら、まず、範を示して、その意味を説明して納得してもらい、実際に体験をさせて、ほめてあげて(加点主義の評価)、自信を持たせなくては、人はなかなか納得して動きません。納得してくれなければ持続もしないものです。

 

ノウハウの移転で従業員を育てる

 中小製造業における研究開発では、経営者が技術者でない場合でも、自らがあたかも研究開発のプロジェクト・マネージャーのような役割を担って引っ張らざるを得ない場面が多いものです。任せられる工場長や技術者が育っていれば別ですが、多くの場合は経営者が率先垂範でプロジェクトを引っ張っていかざるを得ません。
 これは営業活動においても同様です。マーケティング、販売促進においては、社長の人的ネットワークを契機に進める例が圧倒的に多いのが実態です。社長が方針を示して従業員に指示するだけでは、成果を出すことは難しいのが現実です。現在のような厳しい経済状況のもとでは、企画提案型の営業ができるかどうかが、業績に大きな影響を与えます。それを担える人材を育てるには、社長自ら営業活動の手本を見せることで、ノウハウの移転が進むことになり、従業員も育つのです。

 

研究開発や営業活動でのトラブル対応に従業員を積極的に参画させる

 従業員の育成では、OJTが最も効果があるということは改めていうまでもないでしょう。OJTをうまく機能させるには、「①上司や先輩との時間や空間をできるだけ共有すること」、「②やさしい仕事から難しい仕事へと仕事経験の階段を用意すること」、「③従業員自らが考えてさらに高度な勉強を自主的に進められるように、つないでいくこと」が重要です。とはいえ、仕事のなかでの修羅場経験が一皮むける体験となり、鍛えることになるのはいうまでもありません。そのような機会を有効に機能させることが、従業員を育てることになります。失敗が許されない現場で緊張感を持ちながらトラブルを解決する経験が自分を鍛え、その後の自分自身の能力開発への取り組みも大きく変質させるのです。

 

語ることからはじめる

 もし、一人だけでできる仕事であるならば、組織はいらない。

 本来、組織とは、一人ではできない仕事を多くの人達が協力してやろうという考えの下に生まれたものです。

 さらに、組織は一人ひとりの力を協働させ、一人プラス一人を二人として考えるのではなく、これを3にも4にもするというシナジー効果を期待するのが組織づくりの目的なのです。

 しかし、現実では、組織とは名ばかりの集団(個人の集まり)と化している会社が少なくありません。

 どのオーナー企業の社長も、程度の差こそあれ、裸の王様になってしまうものです。

 それは、現場のリーダーが悪いからです。

 社内の腐食は現場から始まり、最終的に会社全体を蝕んでいきます。

 企業が腐る責任は、もちろん社長にあるのですが、腐るプロセスは、現場を軽視した社長ではわからないのです。職責が上に行けば行くほど現場から離れてしまいます。

 すべては現場に赴き、すべては現場で解決することです。

 社長は現場を認識しないまま、大きな判断をしなければならなくなってしまいます。

 社長は現場からの問題意識とヒントを常につかんでおく必要がある。

 そのためにも、現場のリーダーと情報を共有し、信頼関係を構築して現場の認識不足にある社長を支援してもらうことが大切です。

 組織の信頼関係は社長がもつ夢や考えから生まれてくるものだからです。
 社員にとって、夢を真剣に語れないリーダーは魅力がないのです。

 経営環境は厳しく、苦しいハングリーな状況だからこそ、社員に夢・ビジョンを語ることが重要です。

 ビジョンがなければ、時代的進化も価値観の進化もない。
 夢・ビジョンが今ひとつ明確でないなら、現場のリーダー達と一緒になって夢・ビジョンをつくることです。

 夢を考え、夢を描き、夢を語り、夢をビジョンにする、ビジョンを実現するための仕組をつくることが求められているのです。

 組織に今を考え未来を見つめる習慣がなくなったら進化はありえません。 
 夢・ビジョンによって、社員一人ひとりの考え方が変わり、行動が変わり、そして成果も変わることは、成長企業の創業の歴史が物語っています。
 リーダーシップというのは、時代とともにその求められる要素が異なってきます。

 産業が未成熟な時代から成熟化され、閉塞感が漂う今の時代を迎え、新たな時代価値・事業価値を構築できるビジョン力をもった、価値創造型リーダーの登場を期待するようになります。
 現場でのちょっとした非常識を大切にしてこそ、新たな常識を見つけることができるのです。

 常識とは自分の中にあるもの。非常識とは自分の中にないものです。

だからこそ、常識×非常識は、自分だけではつくりにくく、どうしても自分自身は、どんどん常識的な発想、常識的な思考に陥ってしまうのです。
  「自分の中にある常識×他人の中にある非常識=革新」という公式を、無理やりにでも自分の価値基準にはめ込まなければならないのです。

 組織を自由闊達な成長集団に変えるための一番の近道は、社長自身が変わることなのです。

 社長の成長は会社の成長であり、社長の考えは会社の理念でもあり、それだけに社長の影響力は大きいのです。
 会社は社長の器以上には大きくならないことを肝に銘じることです。

 まずは、日頃の発言から変えてみましょう。

 人を理解するためには、コミュニケーションが欠かせません。

 最近では、社員がトップの話を聴く機会が減っているようです。

 会社がすぐに変わることは困難でしょうが、日々トップが社員に語りかけることで、最初はさざ波 でも、しだいに大きなうねりとなって全員に共鳴していきます。

 これらのことは最終的にお客様にも伝わるものです。
変化が激しく、過去の経験が役に立たない今日こそ、社長は素直に社員の言葉に耳を傾け、自分の考えを伝えるべきです。

 それをすることによって、衆知を集め、社員の心を掌握し、変革への第一歩を踏み出すことができるのです。

社長の思いを伝える

 自社の職場で、部下や周りの人と質の高い対話が実現できたら、どのようなことが期待できるでしょうか。

 まず、組織が一つにまとまり、一体感が出てきます。

 みんなが一体になって仕事に取り組めば、仕事は楽しくなります。

 苦しい状況を乗り越えることもできます。

 リーダーといわれる人たちは、組織の一体感をつくりあげるために、いろいろな工夫や努力をしているはずです。

 対話は情報の共有を促進します。

 ITを使ったグループウエアで情報を提供することはできますが、これは一体感を生み出すまでには至らないものです。

 相手との直接の対話を通じて情報を共有すると同時に、情報の裏にある、奥深いところの思いを共有化しなければ、本当の意味での一体感は生まれません。

 多くの中小企業の従業員からは、

 ・「上が何を考えているかわからない」

 ・「組織が何を考えているかわからない」

 ・「隣の部署のボスが何を考えているかわからない」

 ・「現場にどんな問題が起こっているかわからない」

 ・「うちの課題は情報が共有化されていないことです」

などの声が聞こえてきます。

対話の場を設ける

 組織では、「隣の人が何をやっているのかまったくわからない」ということがよくあります。

 そして、お互いに根深い不信感を抱いていることもあるようです。

 対話の場が設けられなければ、お互いが推測と憶測と疑念に凝り固まり、不信感がさらに大きくなるでしょう。なおのこと対話が大事なのです。

 お互いがわかり合えば協力し合えるのです。

 しかし、不信感のかたまりでは、何か問題が起こったときに責任のなすりあいになってしまうかもしれません。

 質の高い対話でお互いがわかり合い、苦しさや厳しさが理解できたときに、人は支援の手を差し伸べることができるのです。そうなると、組織力は飛躍的に向上します。
 
 協力しないで足のひっぱり合いをしていると、組織力は小さなものになってしまいます。

 組織全体の力を最高かつ最大限にするには、その組織のメンバー一人ひとりがどれだけ協力し合えるかにかかっているのです。

 チームワークの促進は、どこの企業でも大きな問題となっています。

 組織横断的に質の高い対話が実践できれば、協力し合える文化ができてきます。

 たとえば、営業部門と製造部門がお互いに本音で話し合えば、営業はいいかげんな発注はできなくなります。  

 逆に、製造部門でも、営業部門がいかに苦労しながら注文をとっているかがわかれば、注文に対して納期を間に合わせるように努力するという協力の姿勢が生まれます。

 

話を「聞く」ことで人材育成が促進される

 上司が部下の話を聞くようになると、部下自身、ものごとをより深く考えなければならなくなります。

 また、上司と話をすることによって、なんらかの「気づき」を得ることもできます。

 その対話が質の高いものであれば、そのまま人材育成につながるのです。

 人材を育成するうえで、いちばん大事なことは、経験のある先輩や上司と対話していくことです。

 これが本当のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)であるといえます。

 しかし、OJTを含め社内の教育体制は今問題を抱えています。

 それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

 その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。   

 この問題を解決しなければ、教育制度の内製化は不可能です。

社員の効果・効率的活用

 中小企業の経営において一番重要視しなければならないのが、経営の「尺度」としての「労働生産性」と「労働分配率」です。

 それらが、自社でどれくらいの数値であるかを最初に確認しなければなりません。

 ここで問題になるのは、これらの労働生産性や労働分配率の数値が標準より悪い時で、売上規模と比較して人員過多のケースが多い。
 たいていの中小企業は、粗利のうち約50%前後を労働分配率が占めており、労働生産性も1名当たり60万円前後でしょう。

 こうした会社では、社員を多機能型の人材にしなければ、経営が成り立たない時代なのです。

 しかし、余剰人員がいるように感じても、なかなか人員をカットできないのが現実です。

 それならば、自社に在籍している社員をフル活用するしかないのです。
 大企業であれば、リストラと称して人員カットの戦術をとることもできるでしょうが、規模の小さな会社は、社員1人ひとりに現業務との兼務で他の業務もやってもらう必要があります。その場合、特に直接営業に関与していないルーチンワーク的な業務活動をしている社員に「他の業務」をやってもらう場合、営業に関する仕事に従事させるべきです。営業関連の業務をやらせることで、多機能型の人材化がいっそう早く進むからです。ただし、この場合でも、彼らが現状を理解できるようしっかりと説明して、心から協力する気持ちをもたせなければなりません。

 あなたの会社の社員は何人前の人が多いだろうか。

 たいていの会社では「1人前の人」が多いだろうが、「半人前の人」が会社の中にたくさんいるとしたら、それは大変な問題です。何といっても、粗利の約50%は人件費なのです。
 人件費は、もちろん一定の枠があるので、「半人前の人」の頭数だけ多くいるような会社は、1人当たりの給与が低くなることは当然なのです。

 だからこそ、1人ひとりが1.5人前以上の人間になって初めて配分されるパイ(給与)も大きくなる。

 これが動かしようのない現実であることを、朝礼やミーティングでしつこく社員に教えることです。

 社員の質のアップは、彼らの心からの理解がないとできません。

 

会社の老化

 人が老いるのと同じように、すべての会社に老化は忍び寄る。

 旧態依然とした年功序列や硬直的な人事、社内のコミュニケーション不足。

 こうした事柄を放置すれば、気付かないうちに会社は、過去の成功体験にこだわり、現実の変化に無関心になっていってしまいます。 

 そのまま手をこまねいていると、会社は最悪の場合、倒産という「死」を迎える。

 それを避けるには、会社の老化を経営者が自覚し、その対策を打たなければならないのです。

 その打開策は、組織のモチベーションアップであり、コミュニケーション力の強化です。

 これらを強化するには、社員一人ひとりが組織人としてやらなければならない行動である基本動作の習得です。

老化の兆候

 長引く不況、社会環境・産業構造の激変といった厳しい事業環境はどこも同じはずだが、企業の明暗は大きく分かれている。それは、経営者を含めた全社にまん延する「過去の成功体験への執着」と「無関心」です。

1 過去の成功体験への執着

 過去へ執着することの怖さは、自分達ではそのことがなかなか分からないところにあります。

 自覚症状が無いことが最大の特徴です。

 成功体験に固執して、自ら視野を狭めてしまうことです。

 過去にヒット商品を生み出した経験が忘れられず、二匹目のドジョウばかりを追うのです。

 過去の経営判断や既に動き出した計画、従来の仕事のやり方にこだわるあまり、軌道修正や撤退が遅れてしまいます。

 「手段」がいつの間にか「目的」になってしまう。

 過去の成功体験に無意識にこだわり、それが邪魔になって問題点に気付かない会社は少なくありません。

2 会社を蝕む無関心

 倒産企業の多くは、経営環境や社内体制の問題点を正しく把握する能力が著しく低下し、顧客ニーズに鈍感になる。

 社内の風通しが悪く、他部門との情報交換ができず、自己中心的な社員が増え、給料さえ貰えればあとは知らないといった ぶらさがり意識も強くなっていきます。

 こうした組織では、トップに正しい情報が集まらず、結局、意思決定を誤ってしまう。

 「無関心」の怖さは増殖を始めると止まらなくなることです。

 社員の中には、不満やアイデアがあっても、「どうせ言ってもムダ」という心境に陥っている人達がいることです。
 放っておけば、その社員達は自分で考えることをしなくなってしまうことです。

 こうした環境が次第に広がり、経営者は「裸の王様」になってしまう。

 社員がモノを考えなくなる原因には、

 ・社長が腰巾着のようなイエスマンや同族で会社幹部層を固めている弊害

 ・不振企業は収益管理など基本的な体制が整っていない場合が多い

 ・会社の情報が公開されないため、従業員達はそもそも何が問題なのかが分からない

 ・従業員は、自分の会社という意識が持てないから、モチベーションが上がらない

老化の防止と若返り策

 まず、社長が社員と5~6人ずつディスカッションして、会社を変えたいと考えているキーマンを探すことです。

 人間の世界と同様に、会社の老化も、手をこまぬいていると猛スピードで進むことを経営者が自覚し、自浄する仕組みを社内に持つことでしか、企業の活力を維持できない。そのためには、経営者は何をすべきか。従業員のためにどんな仕組みが必要なのか。

1 自分の提案で会社が変わる

 その実感が社員の参加意識を生み、会社の老化を防ぐ。

 従業員の改善提案は現場の叫びであり、まず聞いてあげることです。

 提案を採用すれば、自分が会社に貢献したと実感し、励みにしてくれる。そうやって会社に知恵を蓄積していきます。
    
2 少数、独立採算のチームカンパニー制

 「チームカンパニー制」のチームリーダーは、「社長」として他チームの社長達と業績を競わせ、生産性を大幅アップを可能にする。

 単に与えられた仕事をこなすという意識から、いろいろな業務ができることで、仕事が面白い、責任感、やりがいも増す。

3 肩書き廃止

 縦割り組織へのこだわりを解消することで、自由な発想と鋭い感性が身につく。
(1)他の部署と密接に協力できる柔軟性ができる

(2)社員同士が知恵を出し合って、協力して働く体制ができる
 ユニークな商品は、決してワンマンプレーからは生まれません。

(3)業績で評価されるから、減点や失敗を恐れるようになる
 他部署への協力や、縁の下の力持ち的な業務で頑張った社員を評価するためには、上司だけでなく、同僚などからの評点も参考にする360度評価を採り入れることも必要でしょう。

 役職があると、人間はどうしても「俺の縄張りだ」として自分の担当部署に固執してしまい、縦割り意識が生じます。 それが組織の老化を招く。

 役職を廃止する代わりに、各部署には「責任者」を置く。

 これは、恒久的な肩書きではなく、他部署に異動すれば外れるものです。

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