組織の業務(役割)分担と業務改善
規模の小さな組織ほど業務(役割)分担は緊急課題です。
営業会社において業務の効率化は経営の生命線となります。
中小企業にとって現有資産である人材を有効活用するためには業務の改善は必須です。
「適材適所」という言葉があるが、小さな組織には当てはまらないでしょう。
ですから、役割分担が必要なのです。
役割分担は、業務自体をルーチンワーク化し、誰に代わってもできることを目指します。
業務をシンプルにし、ルーチンワーク化することで、組織を収益に直結した業務に集中させることを目的とします。
組織における役割分担とは「人に仕事を付ける」から『仕事に人を付ける』ことで、業務の標準化を可能にするものです。
標準化は
・行動についての決まりごとをつくる
・その決まりごとを具体的に繰り返し教育し、実行する
・定期的にその決まりごとを修正し、追加する
業務改善は企業にとって永遠の課題でもあります。
経営者のすべては業務改善の必要性を認識していますが、どれだけの企業が達成できているかは疑問です。
マンパワーに依存した業務推進には限界があります。
業務改善は業務のムリ・ムダ・ムラを無くすことで、コスト削減、実行可能な経営計画の策定、メンタルヘルス対策、ノウハウの構築など数多くの問題の解決を可能にしてくれます。
経営陣の生産性を向上
社員が各自の役割を認識できており、それが、社長、経営幹部(リーダー)の認識と一致しているなら、互いの認識にギャップは発生しないはずです。
しかし、実際には、互いの認識にギャップがあることがほとんどです。この原因の一つに『役割分担が曖昧』があります。「我が社の課題は○○だ!」と社長・リーダーの誰もが認識しているのに、いつまで経っても解決策が出てこない、あるいは、誰も具体的に手をつけようとしないのは、責任(遂行)者たるべき人が「これは自分の仕事」と認識していないからなのかもしれません。
すなわち、社長とリーダー、リーダー同士の間でも認識のギャップがあるのではないでしょうか。
各リーダー間、あるいはリーダーと社長の間の認識のギャップを調整し、改めて互いに納得できる職務分担表を作成することで、各自の役割を明確にし、業務効率を高めていかなければなりません。
経営陣の間で互いの役割認識にギャップがないか確認し、また、ギャップがあるような重要業務については、
・誰が責任者か
・誰が実務担当者か
・誰と誰は進捗を知っていなければならないか
ということを認識し、分担していきます。
役割分担表の作成
企業の多くが「人に仕事を担わせる」形で行われています。
これを『仕事に人を担わせる』ではどうでしょう。
社員は、効率の良い、より程度・質の高い、より生産性が高いと思われる仕事を担当し、誰に変わってもできる仕事は、契約社員・パート社員等を活用することができます。
同じ仕事に複数の人が関わったり、中堅社員が新入社員の指導にかかりっきりになったり、誰にでもできる仕事に正社員が関わったり、といったムダを省くことができるようになります。
各人の得意な部分をうまく組み合わせて補完的な関係を作れれば、組織全体のレ
ベルアップが図れるのです。
限られた現有資産の中で、役割分担の仕組みは中小企業にとって欠かせません。
組織が小さいからこそ、現有資産を最大限生かすことが重要なのです。
役割分担表の作成により社内体制の見直しを今すぐ始めてください。
役割分担表を作成するには、業務の棚卸から始めます。
そして、棚卸した業務を以下の手順により見直してください。
(1)その業務は本当に必要か
①業務の目的を説明出来るか
②管理者に説明出来ないものは止める
③やらないでよいことをやっていないか
(2)もっと他に必要なものはないか
①必要なものでやられていないものはないか
②将来のために今やるべきことはないか
(3)どの業務に一番時間をかけているか
①時間は最大の原価(人件費)である
②それほど時間をかける必要があるか
③半分の時間で出来ないか
(4)業務を細かく分けすぎていないか
①みんなが同じことをやっていないか
②集約化・専門化出来ないか
③分担業務の連携はうまく行われているか
(5)仕事は平均に割り当てられているか
①特定の人に片寄っていないか
②忙しい時と暇な時とが極端でないか
(6)能力を有効に活用しているか
①業務を処理するだけの技術を持っているか
②能力以上、以下の業務をやらせていないか
③もっと他に能力を生かせる業務はないか
(7)業務は標準化されているか
①自己流でやっていないか
②誰がやっても同じ結果が出せるか
③いつでも他人と交替出来るか
職務分担表の作成は、具体的には次のようなステップを踏みます。
(1)調査対象業務の設定
経営者は何の業務について職務分担を再認識するかを整理
(2)関係者のリストアップ
経営者はその業務に関連すると考える人材をすべてリストアップ
(3)関係者の現状認識調査
関係者(=幹部)各人に、その業務を進めるための役割をいくつか示す
(4)関係者の役割認識調整
調査結果から認識のギャップなどの問題を抽出
(5)職務分担(表)の決定
全員討議のうえ、新しい職務分担を決定
経営陣は、業務遂行に際して、各人の役割分担を明確にする習慣を定着させるためにも、職務分担表の作成は不可欠です。
職務分担表の効用
・幹部間の役割分担が曖昧で、現在進捗が遅い業務の活性化が図れる
・新しく決定した施策のスムーズな実現が期待できる
・常に業務にあたる際に関係者各人の役割分担を明確にしようとする習慣が定着する
複数の職務ができる多能的な人材を育成すると同時に、柔軟な応援体制が組めるようにする
ISO9001 を取得した企業では、品質の維持が目的ですが、それを日常的に達成するためには人材の育成が条件となります。それぞれの職場で必要とされる能力や技能を一覧にして、各人がどのような能力、技能をいくつ持っており、それがどのレベルかを一目瞭然にし、スキルアップをめざしています。求められる目標を明確にしたうえで、たえず進捗状況を確認しながら、一人ひとりが自律的にひとつずつ能力を身に付け、あるべきレベルに到達することをめざすわけです。
改善活動など、その先の部分では知恵をつくり出す能力が求められています。若いうちから難しい問題にチャレンジし、それを一つひとつ解決した経験が優秀な人材へと育てるのです。小さな改善の積み上げの経験が思いがけない成果にもつながるのです。
自分の仕事について、計画と実績を比較して問題点を把握し、改善を実施
若手だけに任せているだけでは企業は回りません。中堅従業員や管理・監督者層の従業員も一体となって、難局を乗り切らなくてはなりません。営業であれば、企画提案型の営業でなければ新規開拓は難しいでしょう。こうすれば、顧客にとってメリットがあるということを織り込んで提案をつくることが必要です。新製品の開発であっても、マーケットのニーズ、市場が求めている物を的確につかむ必要があります。需要にあわせて柔軟に動く必要があるのです。課題は次々に出てくるものです。これに自ら企画し、提案し、実際に業務も処理する。PDCAサイクルを自ら回せる中堅従業員や管理・監督者層の厚さが、企業の競争力を形成します。大きな方針は経営者が示しますが、それを受けて、各人がチャレンジ精神を発揮する組織へと変えていくことが求められます。