仕入・販売計画の作成

 仕入計画の策定にあたっては、まず最初に売り上げ状況に注目する必要があります。商品の仕入れは、言うまでもなく、売れる商品を把握することが基本だからです。

 しかし、商品間の競争は激しく、常に売れ筋商品は変化しています。したがって、現時点での主力商品がいつまでもその地位を保っているとは限りません。

 そうしたことから、次の売れ筋商品は何かを常に把握すると共に、在庫の回転を考えながら適切な仕入数量を検討することや、外部要因(万引きなど)や内部要因(社内不正、伝票ロスなど)が原因となる商品ロス率をなるべく少なくするための方策なども考えておく必要があります。

 

仕入計画策定のステップ

現時点での売上状況の把握・次の売れ筋商品の把握
    

 適切な仕入数量の検討
    
 ロス率最少化のための方策  

販売活動との連動

 現在、リアルタイムに近い受発注が消費者から求められています。それだけに、仕入計画の精度の良し悪しは経営全体に響く大きな問題となります。

仕入をスムーズに、しかも在庫リスクを回避しながら行う体制の構築には、当然ながら、自社だけでなく、流通に関係する企業同士の連携が欠かせません。

 また、社内的には、リアルタイムを実現するためにITを利用したシステムの構築も必要です。

 

仕入計画作成のポイント

 仕入計画は、需要-販売-仕入と有機的に連結させて具現化していきます。

 また、仕入計画策定の際には、「売上高予算→在庫高予算→仕入高予算」という流れで、売上高を基準にして、仕入と在庫の内容が決まるため、販売計画(予算)の修正が生じた場合には、仕入計画(予算)と在庫計画(予算)も修正する必要があることに留意しましょう。
   

販売計画作成のステップ

 販売計画を策定するには、まず販売予測を行わねばなりません。

 そして、その予測に基づいて、一定期間における販売の量と金額を決定します。

 期間は一般的に、5年、3年、1年の期間で設定されることが多く、その中で3年、5年という中期・長期計画は、主に将来の経営戦略としての方向付けの一環として作成しますが、1年といった短期計画は、それを必達することが前提で策定されます。つまり、業務執行命令としての性格が強い計画となります。

 計画作成にあたっては、次のステップで進めます。

   販売需要予測 ⇒ 販売予測 ⇒ 販売目標 ⇒ 販売計画作成

販売活動との連動

 販売計画は、販売活動と連動させるため、製品別、販路・得意先別、営業所別、地域別などに細分化して、その運営と管理を行うことが大切です。

 精度の高い販売計画策定のコツの1つとして、個別計画の策定から入る(全体計画を策定する前)のも良いでしょう。

販売計画の作成方法

具体的な作成方法としては、一般的には、商品や製品などの売上数量と単価を個々に見積もり、それを積み上げて、売上高を計算する方法がなされていますが、その他には売上高の算定方法には以下のような方法もあります。

 ①顧客一人当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

②稼働時間の単位時間当たりの売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

 ③営業スタッフ一人当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

 ④店舗面積の単位面積当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

 販売計画の精度を高めることができるように、業種・業態の事情に合わせて適切な基準単位を決定することが肝要です。

販売単価の検討と売上高・粗利益の構成

売上高予測のための適切な基準単位が決まったら、商品の仕入原価やその事業にかかるさまざまなコストを考慮して販売単価を決定します。

 販売の見込み数量の設定については、単なる思い込みの数量ではなく、その商品・サービスにどのくらいのニーズがあるのか、成長性はどうかなどを慎重に検討して数量を見積もります。
 その際に重要なポイントは、売上高や原価、粗利益高の構成が全体的に整合性のとれた無理のない計画であるかどうかを検討することです。

 そして、再考の必要があれば、数量、単価、原価を修正したうえでシミュレーションを繰り返します。  

設備計画

 次に、設備計画を作成していきます。設備計画は企業によっては不必要なこともあります。

 設備計画とは、固定資産などの設備に「いつ」「どのくらい」投資するかを計画するものです。事業活動の中で固定資産が必要でない企業であれば、設備計画も必要ではありません。

 ここで気を付けなければいけないのは、設備投資を「工場などを建てる製造業だけが対象だと考えてしまうこと」です。ただし、この考え方は誤りです。

 例えば、「自社は飲食店なので工場も機械も購入する予定はない」と考えたとしても、企業成長に伴って大型の冷蔵庫を購入したり、新店舗を建てたり、改装したりする可能性もあるのです。

 よって、「この業種だから必要だ・不必要だ」という観点ではなく、自社の事業計画書の内容によって、設備計画が必要か不必要かが分かれるのです。

 ところで、設備とは具体的にどんなものを指すのでしょうか。一般的には固定資産を差します。

 固定資産とは、長期に渡って使用・保有する購入金額が10万円以上の資産を言います。よって、設備計画では「固定資産をいつ、どのくらい購入・投資していくか」を計画していきます。

 設備計画は「利益計画」や「資金計画」とも大きく関わってきます。固定資産は購入時に費用化せず、耐用年数に応じて費用化していくからです。これを減価償却といいます。そのため、固定資産の購入時期や購入金額が利益計画に大きく影響するのです。

 さらに、固定資産の費用化の方法(減価償却費の計算方法)は、定額法と定率法という方法があり、どちらを採用するかによって各年度の利益は大きく変わります。耐用年数も固定資産の種類によって違います。

 厳密に計算するのであれば、税理士と相談して耐用年数と減価償却の方法を加味して計画してください。

 次に、設備計画がどうして資金計画に関係するのかという点です。

 固定資産を購入する際の支払いについては様々な方法が考えられます。

 自己資金で一括支払いする場合やリースを組む場合、分割で支払う場合、金融機関から資金調達してその資金で支払う場合などです。

 固定資産を買うことを決定するだけでは不十分で、事業計画書全体としては、「どのように支払うか」という資金計画までを決めておく必要があるのです。

 設備計画も事業計画書全体で考える必要がありますし、利益計画、資金計画との整合性が重要となるわけです。

 

人員計画

 「売上計画」を作成していきましたが、それを実現するためには人員計画も必要となります。

 数人の会社や売上規模の小さな会社であれば、人員計画もそれほど複雑ではありません。しかし、通常は売上を伸ばそうとすれば、それだけ人員も必要となります。

 売上計画を立てたとしても、人員が足りずにそれが達成できないとなれば、そもそもの売上計画が意味を成しません。売上計画を無視して必要以上の人員を雇いすぎれば、利益圧迫、赤字の原因にもなりかねません。そのため、売上計画だけでなく人員計画も重要なのです。

 人員は、売上に比例して増やせばよいというわけではありません。

 例えば、3年後に売上を1億円増やす計画を立てるとします。そこで、現状では「1人当たり100万円の売上を上げている」ため、この計算をもとに「人員を100人増やせばよいか」というと、そうではありません。それらを支える間接部門の採用も必要かもしれませんし、すでに在籍している人員とこれから採用する人員が同じだけの能力があるかもわからないからです。これから採用する人材の方が能力が落ちることもあります。その際には、教育研修費が余分にかかるかもしれません。これから採用する人材の方が能力が高いという場合であれば、一人当たりの人件費が高くなるかもしれません。

 業種や景気によっては採用予定通りに進まない可能性もあるので、それらを見込んだ計画にしていく必要もあります。

 さらに、人員計画は人数だけでなく、人件費の計画でもあります。人件費が利益に大きなインパクトを与えるからです。

 どのくらいの給与が必要で、どの程度の法定福利費(社会保険など)や福利厚生費(通勤費など)がかかるかまでを計画をすることになります。

 人員計画は「売上計画や利益計画(人件費の計画)との整合性」を意識して作成する必要があるのです。

人件費の算出

 人件費は、設定した年間の給与に人員の人数を掛けて算出します。また、パート・アルバイトについては、時給を年間の時間数で掛けて算出します。社会保険の会社負担分などの法定福利費、残業代についても、一定の割合(例えば給与額の25~30%程度)を見積もり、人件費を算出しておくとよいでしょう。
 また、経費の中でも人件費は割合が高い項目ですので、損益計画が仕上がった段階で起業する業種の経営指標と比較してみましょう。人件費が絡む経営指標として、人件費対売上高比率や従業員一人あたり人件費を確認してみるとよいでしょう。
 日本政策金融公庫のHP小企業の経営指標調査などで確認ができます。

 

資金計画

 「利益が出ていること」と「資金があること」はイコールではありません。

 例えば、利益計画で3年後に利益が出るようになるとしても、1年目や2年目に資金が不足してしまえば、3年目まで事業を継続することができないからです。また、3年という長いスパンの話だけでなく、短期的にも重要となります。

 例えば、黒字経営をしていたとしても、今月の支払いのための資金が不足すれば倒産してしまう可能性があるのです。

 利益計画は、損益計算書の計算方法に合わせて発生主義で計算されています。

 発生主義とは、資金の動きではなく、その事象の発生に合わせて計算をする方法です。

 例えば、11月1日に30円分仕入を行い、その商品を100円で販売します。その取引を掛取引にして、支払いも入金も翌月の12月末日だとします。利益計画では、11月に売上高100円、原価30円なので、利益70円となります。しかし、11月末の時点で利益が70円あっても、手元に現金があるわけではないので、それを使って他の支払いに充てることができません。

 このように、利益(損益計算書)の動きと資金の動きは違うので、資金計画が必要となってくるのです。

 売上計画と利益計画で出てきた数値を、資金の増減に合わせて表を作り直したものが資金計画となります。

 例えば、売上が100万円の取引があったとしても、取引先によって入金のペース(入金サイト)が違えば、資金計画も大きく変わります。 

 売上100万円の入金のペースが「A社50万円分は即入金、B社50万円分は1ヵ月後入金」の場合と、「A社30万円分は即入金、B社30万円分は1ヵ月後、C社40万分は3ヵ月後」の資金計画では、資金計画はまったく異なるものになります。

 これは支払いの場合も同様です。仕入を30万円分したとして、すべてが同じ条件での支払いペースでないのであれば、それぞれの取引を反映した資金計画になるようにします。

 このように、販売先や仕入れ先毎の取引を加味して計算することになるので、売上計画、利益計画も詳細に作成しておかないと、資金計画の精度が低くなってしまいます。

 資金計画では「いつ、いくら資金が不足するのか」ということが分かります。これが分かることによって、「銀行からの借入の資金調達や返済をどのようにしていくのか」という、さらに精度の高い資金計画が立てられるようになるわけです。 

 

利益計画

 あらゆる市場が成熟化し、企業間の生存競争は激しさを増している中、企業にはいかに環境変化に適応していくかが要求されています。

 また、利益の伸び以上に人件費・諸経費が増加している企業も多く、利益計画がこれまで
以上に重要性を増しています。

 利益計画とは、目標利益の設定を第一とし、収益および費用を総合的に検討し、経営の諸計画を管理していくことです。

 「収益-費用=利益」という従来の考え方は、利益は結果として出るものとされます。

 しかし、市場環境が変化し、売り上げが伸びない一方で費用が増え、結果としての利益が出づらくなっている企業も少なくありません。

 このような状況下においても、経営計画を練る際には最低限の利益は確保しなければなりません。

 そして、そのためには、

 ・売り上げをどのように達成するか

 ・費用をどのように低減するか

を検討し、目標利益を設定します。

 つまり、「収益-利益=費用」の発想が求められているのです。

 また近年では、目標利益がキャッシュを増加させるものであるか、すなわち「キャッシュフロー」までも視野に入れた利益計画が重要視されています。

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