アプローチ・プレゼン・クロージングにおける応酬話法

 営業は、第一印象や熱意、商品説明のうまさで、成功、不成功が決まる場合が多いのですが、すんなり何らかの抵抗もなく買ってくれるケースはごく稀であり、「断り文句」が出て当然です。そんな時、この「断りや否定的な文句に対する対応のし方」を応酬話法といいます。
 応酬話法を「ああ言えば、こう言う」といった反論的な話法と誤解しないことです。

 アプローチの段階やクロージングの段階では、何らかの「断り(否定的)文句」が出てきます。従って、「断り文句に対する反応の仕方」、即ち、応酬話法の優劣が決め手となるのです。

場当たり的な返答ではなく、状況を想定した話法を準備することで、次につなげることを目
的とします。

 そして、この営業における問題を解決するのが応酬話法マニュアルです。

 

応酬話法マニュアルの作成法

(1)現状認識を行う。

①インタビュー、ロールプレイング、あるいは営業同行を通じ実際の商談の場における販売話法を調べお客様の断りの実態を把握する。

②販売ツール、商品、サービス等を調べ、そのセリングポイント、長所、短所、ライバルとの比較を表し書き出してみる。

③その表を基に、断りの内容とその根本原因と対策を営業マン全員で議論しあう。

(2)すべての断わり、反対話法に対して2~3種類の応酬話法をつくりマニュアル化する。

(3)マニュアルをベースに社内でロールプレイングを実施し、応酬の訓練を行う。

 

応酬話法の例

正面撃突法

 お客の断わりに対して真正面から反撃をする

 かなりハードな方法、そうしても大丈夫という細心の注意と見極めが必要。

 場面によってはセールスマンの自信と熱意を示すことになり効果的。

<例>

 お客:「他社製品の方がもっと安いのではないか」

 営マ:『何をおっしゃいますか、とんでもありません、絶対にそんなことはございません。』

間接否定方(オウム返し法)

 はじめに、お客の断わり言葉を、一応は「お客様のおっしゃる通りだと思います。」と素直に受け入れる。そのあとで「しかしですね」と反論する。

 いきなり反論するのと違って、かなりソフトな感じをお客は持ってくれる。

<例>

 お客:「もうしばらく様子を見てから買うよ」

 営マ:『そうですね。近頃の機械は非常によくできていますから、まだまだその気になればお使いになれると存じます。でも今の製品を下取りに出して、新しい製品をお使いになれば電気も3/4しか食いませんし、第一ほとんど故障しません。修理費はかからないし、安全第一、新しいものは、とても使い心地がよろしいかと存じます』

くり返し法

 お客の断わり文句をそのまま受け入れ、しかもお客が使った断わり言葉をそのまま答え(応酬)に用いて、逆にセールスのきっかけをつくっていく方法である。

<例>

 お客:「こんな不景気に、いらぬ出費は一銭でもおさえたいのだよ」

 営マ:『いや、お客様、なるほど不景気ですね。だからこそ、これをお使いになって儲けて頂きたいのです。』

質問法

 お客の反対に対して逆に質問する方法で次の利点がある。

 ・議論がさけられる。

 ・多くしゃべらなくてすむ。

 ・相手の欲求を相手に自認させる。

 ・相手の弱点がわかる。

 つまり、「なぜですか」と聞くことにより、顧客の反対が本当のものか、見せかけのものかを見分けることができる。

 はっきりした反対には顧客の理性に訴え理論的に説明する。

<例>

 営マ:「何か証拠でもおありでしょうか」「どこの会社のセールスがそのようにいったのですか」「本当にお客様がお使いになってみたのでしょうか」
 お客:「いいのは、わかった。しかし、先立つものがないのでしばらく見合わせたい」

『しばらくとおっしゃっても、なかなかご決断にならない方が多いのですよ。しばらくとはどの位の期間お待ちすればよいのでしょうか』

実例話法

 お客の反対を判断して、それによく合う例話や第三者の実例を持ち出す方法で、人間の模倣本能を利用する。

<例>

 お客:「こんな高価なマンションなど私みたいな若僧に買えるはずがないよ」

 営マ:『いいえ、お客様、とんでもございません。今月の初めに32歳のサラリーマンの方がもっと高い部屋をお求めになりました』
 お客:「こんな高価な車、私のような安月給のサラリーマンにはとうてい手が出ないよ」

 営マ:『いいえ、最近の若い人は、多少お高くても、いざというとき安全だからと皆さん2,000㏄クラスものをお求めですよ。この間は学生さんがこれをお求めになられました。もっとも、親ごさんがお金をお出しになったのでしょうけれど』

聞き流し法(無視話法)

 お客の口からは、たいていの場合、習慣的に「いま忙しいから」「間にあっている」「考えておく」等の言葉がでてくるものである。このような重要でない口実や単なる言いのがれの反対にはそれを聞き流して、別の話をする。

資料活用法(カタログ提示話法)

 お客の断わりに対して、カタログ、パンフレット、写真、図表、統計表、証明書、VTR、見本、実物などあらゆる補助手段を活用して断わりを突破する方法。

<例>

 お客:「まだ、古い製品で十分間に合っているよ」

 営マ:『でしたら この表を見て下さい。今お替えになった方がかえって経費節減になると存じます』

 営マ:『このカタログをごらん下さい。これは実物とまったく同じですから、お決めになる参考にして下さい。』

お客自身による解決話法

 お客の断わりを、自分自身の手で解決させるやり方。セールスは、その断わりに反論せず側面から援助してあげる。

 落ちついて、お客の断わりに「なるほど」とうなずきながらその文句を子守り唄のように二、三度繰り返す。

 そして、お客の気持ちを前向きに誘導するよう仕向ける。

<例>

 お客:「女房がまだ早いといっているので買えないよ」

 営マ:『奥様がまだ早いといっておられる・・・』
お客:「家族の反対があるので買えない」

 営マ:『御家族の反対がなければ、お買いあげて頂けるというわけですね』

話題転換法

 同じ人が同じことをするにも、少しの間を入れることにより、新鮮な行動や考えが入り込み、もつれた糸が一挙に解決することがある。お客がなかなかウンといわないとき、話題を変えて、しばし商談からはずれる。

 例えば、『あの庭の花はなんですか。フリージャの花ですか』『最近、飛行機の事故が多いですね』など関心ありそうな話題にそらし、商談の手づまり状態を打破するのも一手である。

同情話法

 自分も相手の立場と同じ考えなのだということを理解させ、共感を覚えさせ、商談をスムーズに運ぶ方法。

<例>

 お客:「女房がうるさくてね」

 営マ:『そうですか、実は私の妻も、うるさくて何でも反対して困っているんです』

駆け引き話法

 買う気はあるが、条件づけや値引き強要する客に、では買ってもらわなくてよいとはぐらかし、引きとめようという衝動を誘引して、一気にクロージングにまでもっていく方法。

<例>

 お客:「どうも予算不足だな、○○円ぐらいになれば買うこともできるのだけれど」

 営マ:『解りました。これでもかなり勉強しているつもりです。これ以上まけろとおっしゃるのでしたら、私の力ではどうしようもありません。残念ですが、あきらめざるを得ません。』  

 このように、「駆け引き」の応酬話法は、お客の心の動きを読んで対応するのがミソです。

比較話法

 自社の商品を他社のものと比べて、有利な店を強調してお客の断わりを突破する方法。

セールスマンの販売態度や商品のセールスポイント、および、その流行度合(人気)、値段の点、アフターサービス体制などについて、できる限り我田引水にならないようにする。

 そして、説得力のある客観的資料を通じて、競争他社製品などと比較して、その中から自分の扱っている商品の特徴なり有利な点を強調し、断わりを突破するやり方である。

 場当たりなセールストークからは何も生まれません。

 応酬話法を標準化し、自社独自のマニュアルを作成してください。 

経営と真理 へ

「仏法真理」へ戻る